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	<title>脳科学辞典 - 利用者の投稿記録 [ja]</title>
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	<updated>2026-04-15T18:24:56Z</updated>
	<subtitle>利用者の投稿記録</subtitle>
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		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37649</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-04-18T09:07:46Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物実験において空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経基盤が明らかになってきた。医学、電気生理学、心理学、薬理学など様々なアプローチから、海馬が空間記憶の中枢であるという仮説が実証された。近年の神経科学的手法の進歩により、空間記憶の分類や記憶過程に対応した海馬内領域の機能分化を示す実験的証拠が得られている。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは、経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識（サーヴェイ的知識、認知地図的知識）は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展した。この他、空間的知識には、ランドマークに関する知識やルート的知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、また環境の形態の知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3742991 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;があり、空間記憶とはこういった知識の獲得に必要とされる認知機能である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。この空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶であり、1試行にのみ有効で次の試行においてキャンセルされる空間作業記憶と区別される。&lt;br /&gt;
　これらの二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37648</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37648"/>
		<updated>2017-04-18T01:38:10Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物実験において空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経基盤が明らかになってきた。医学、電気生理学、心理学、薬理学など様々なアプローチから、海馬が空間記憶の中枢であるという仮説が実証された。近年の神経科学的手法の進歩により、空間記憶の分類や記憶過程に対応した海馬内領域の機能分化を示す実験的証拠が得られている。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは、経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識（サーヴェイ的知識、認知地図的知識）は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展した。この他、空間的知識には、ランドマークに関する知識やルート的知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、また環境の形態の知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3742991 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;があり、空間記憶とはこういった知識の獲得に必要とされる認知機能である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。この空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶であり、1試行にのみ有効であり、次の試行においてキャンセルされる空間作業記憶と区別される。&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37434</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37434"/>
		<updated>2017-03-07T07:53:33Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物実験において空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経基盤が明らかになってきた。医学、電気生理学、心理学、薬理学など様々なアプローチから、海馬が空間記憶の中枢であるという仮説が実証された。近年の神経科学的手法の進歩により、空間記憶の分類や記憶過程に対応した海馬内領域の機能分化を示す実験的証拠が得られている。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは、経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識（サーヴェイ的知識、認知地図的知識）は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展した。この他、空間的知識には、ランドマークに関する知識やルート的知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、また環境の形態の知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3742991 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;があり、空間記憶とはこういった知識の獲得に必要とされる認知機能である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37433</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37433"/>
		<updated>2017-03-07T07:30:11Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は水や餌の場所、危険な場所の情報を得て生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識（サーヴェイ的知識、認知地図的知識）は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展した。この他、空間的知識には、ランドマークに関する知識やルート的知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、また環境の形態の知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3742991 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;があり、空間記憶とはこういった知識の獲得に必要とされる認知機能である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37432</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37432"/>
		<updated>2017-03-07T05:14:04Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は水や餌の場所、危険な場所の情報を得て生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識（サーヴェイ的知識、認知地図的知識）は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展した。この他、空間的知識はランドマークに関する知識やルート的知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、また環境の形態の知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3742991 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;も含む。空間記憶とはこういった知識の獲得に必要とされる認知機能である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37431</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37431"/>
		<updated>2017-03-07T05:11:02Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は水や餌の場所、危険な場所の情報を得て生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識（サーヴェイ的知識）は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる認知地図理論をベースに進展した。この他、空間的知識はランドマークに関する知識やルート的知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、また環境の形態の知識&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3742991 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;も含む。空間記憶とはこういった知識の獲得に必要とされる認知機能である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37430</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37430"/>
		<updated>2017-03-07T04:47:20Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。通常我々は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、動物にとって空間記憶は水や餌の場所、危険な場所の情報を得て生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失すると考えた。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは経験主義という点において、これらと対立するものであったが、物体の配置に関する空間的知識は、物体と物体の相対関係についての主観的な認知を想定している点から、両者と相反するものではない。神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる空間レイアウトの考えである認知地図理論をベースに進展した。この他、空間記憶はランドマークに関する知識、ルート的知識、環境の形態の知識も含む。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37427</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37427"/>
		<updated>2017-03-03T10:46:08Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。我々は通常は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、広く動物にとって空間記憶は水や餌の場所、危険な場所の情報を得て生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失する。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは、経験主義という点においてこれらと対立するものであったが、空間についての高次の知識である物体の配置に関する知識は主観的に認知された空間レイアウトであり、物体と物体の地理的な相対関係を想定している点において両者と相反するものではない。特に神経科学アプローチからの空間研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、Tolmanによる空間レイアウトの考えである認知地図理論をベースに進展した。この他、空間記憶はランドマークに関する知識、ルート的知識、環境の形態の知識も含む。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37426</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37426"/>
		<updated>2017-03-03T10:30:44Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
　空間記憶は、目的のものを探す、目的地へ向かう、家に戻るなど、我々の日常生活の至る場面で駆動する記憶である。我々は通常は特別な努力なく空間的な定位や移動を行っているが、広く動物にとって空間記憶は水や餌の場所、危険な場所の情報を得て生命活動を維持するために必要不可欠な機能である。空間とは何かについての哲学的論争において、カントは「空間」は生得的に人間の感性にそなわった主観的な形式であると主張した。一方、デカルトは「空間」とは物体が存在する場所そのものであるから、物体がなくなれば空間が消失する。心理学者Tolmanの「空間」の位置づけは、経験主義という点においてこれらと対立するものであったが、空間についての高次の知識である物体の配置に関する知識は主観的に認知された空間レイアウトであり、物体と物体の地理的な相対関係を想定している点において両者と相反するものではない。空間記憶研究は、空間が絶対的なものであるか相対的なものであるかについての哲学的議論を離れ、主にTolmanによる空間レイアウトの考えの発展形である認知地図理論をベースとして、その神経基盤の解明が進んできた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37425</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37425"/>
		<updated>2017-03-01T11:20:52Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：イントロですので、認知地図ではなく、空間記憶についてのご解説をお願いします。空間記憶の概念の形成に至るまでの研究の歴史や、重要性などについてお願いいたします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターン完成能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターン分離能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17556551&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37424</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37424"/>
		<updated>2017-03-01T10:36:12Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　本解説では、空間記憶の測定や分類、空間記憶を担う神経基盤について、動物実験を中心に解説する。加えて、ヒトの空間記憶と脳の可塑性について、学習および発達的視点から解説する。&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：イントロですので、認知地図ではなく、空間記憶についてのご解説をお願いします。空間記憶の概念の形成に至るまでの研究の歴史や、重要性などについてお願いいたします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==認知地図==&lt;br /&gt;
Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターンコンプリーション能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターンセパレーション能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いことが根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37423</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37423"/>
		<updated>2017-02-28T06:41:25Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　本解説では、空間記憶の測定や分類、空間記憶を担う神経基盤について、動物実験を中心に解説する。加えて、ヒトの空間記憶と脳の可塑性について、学習および発達的視点から解説する。&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：イントロですので、認知地図ではなく、空間記憶についてのご解説をお願いします。空間記憶の概念の形成に至るまでの研究の歴史や、重要性などについてお願いいたします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物は、餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動をとる。それには、自身の位置や目的の場所を定位する、あるいは、その地点まで移動するというナビゲーション能力が必要である。Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターンコンプリーション能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターンセパレーション能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17303747&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いことが根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37421</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37421"/>
		<updated>2017-02-28T06:21:38Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;京都橘大学 健康科学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI：&amp;lt;selfdoi /&amp;gt;　原稿受付日：2017年2月1日　原稿完成日：2017年XX月XX日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：宮川剛&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：spatial memory　独：räumliches Gedächtnis　仏：mémoire spatiale&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。この空間記憶は、個々人が知覚する環境の主観的イメージの記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　本解説では、空間記憶の測定や分類、空間記憶を担う神経基盤について、動物実験を中心に解説する。加えて、ヒトの空間記憶と脳の可塑性について、学習および発達的視点から解説する。&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：「〜を解説する」という表現は避け、具体的な抄録をお願いします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==空間記憶とは==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;u&amp;gt;（編集部コメント：イントロですので、認知地図ではなく、空間記憶についてのご解説をお願いします。研究の歴史や、空間記憶の概念の形成に至るまでの経過などについてお願いいたします。）&amp;lt;/u&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物は、餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動をとる。それには、自身の位置や目的の場所を定位する、あるいは、その地点まで移動するというナビゲーション能力が必要である。Tolman&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図のイメージを描いて、[[餌探し行動]]や[[危険回避行動]]をするという考えである。[[認知地図]]に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　認知地図以前の単純な[[S-R理論]]では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において[[報酬]]を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。後の[[場所細胞]]の発見は、脳内に認知地図が存在することを示す有力な実験的証拠となった。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;の研究は、環境内に明確なゴール地点が設定されていないフィールドを[[ラット]]に探索させた時にも、場所に対応した神経発火が5分程度で形成されることを報告している。したがって、認知地図は報酬と行動との関係とは別に、動物が環境内を探索するときに急速に形成され、保持される性質のものであるといえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　[[8方向放射状迷路]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は[[参照記憶]]と[[作業記憶]]に分類された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　例えば、8走路のうちの特定の4走路に[[報酬]]を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間作業記憶]]である。ここでいう作業記憶は、[[ヒト]]や[[霊長類]]における[[中央実行系]]や複数のモダリティの情報貯蔵を想定した作業記憶ではなく、特定の課題を完遂するまでの一時的な情報貯蔵を意味する。迷路課題においては、その試行で選択した走路と選択していない走路を記憶し、その次の試行ではキャンセルされるような記憶を指す。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが[[空間参照記憶]]である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす[[海馬]]損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、[[自己中心的枠組み]]に基づくものと[[他者中心的枠組み]]に基づくものに分類される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が[[経路統合]]である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、[[スナネズミ]]が仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットでは経路統合に海馬や[[嗅内皮質]]が関与しているいわれるが、[[ヒト]]を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とで[[ポインティング課題]]（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、[[頭頂皮質]]が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経基盤  ==&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けた[[H.M.]]が[[宣言記憶]]の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、[[齧歯類]]を対象とした海馬[[損傷研究]]が盛んに行われた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬認知地図仮説の中で、[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]らは[[Localeシステム]]と[[Taxonシステム]]という２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　O&#039;Keefe &amp;amp; Conway&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として(1)十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として(2)複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により(1)の課題の成績が著しく悪化したが、(2)の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　同様の結論が[[Morris水迷路]]を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する[[手掛り課題]]の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====場所細胞====&lt;br /&gt;
　その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる[[場所細胞]]である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年[[wj:ノーベル生理学・医学賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton&amp;lt;ref name=ref01&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる[[多電極記録法]]が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、[[CA1野]]の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====頭部方向細胞====&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および[[視床前核群]]において[[頭部方向細胞]]が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====格子細胞====&lt;br /&gt;
　この他に、空間の座標情報を表象する[[格子細胞]]も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与した[[wj:エドバルド・モーセル|Moser夫]][[wj:マイブリット・モーセル|妻]]は[[wj:ジョン・オキーフ|O’Keefe]]による場所細胞の発見と並んで[[wj:ノーベル生理学医学賞|ノーベル生理学医学賞]]の受賞を受けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である[[長期増強]]([[long term potentiation]]; [[LTP]])は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットは[[Barnes迷路]]での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、[[貫通線維]]のシナプスをLTP誘導刺激を繰り返すことにより、これ以上LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA型グルタミン酸受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働く[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[阻害薬|薬理学的阻害]]による空間記憶課題への影響が検討されてきた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬として[[拮抗型阻害薬]][[AP5]]や[[非拮抗型阻害薬]][[MK-801]]などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での[[視覚弁別課題]]の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である[[放射状迷路]]を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が[[場所学習]]を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA型グルタミン酸受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、[[記銘]]([[acquisition]])と[[保持]]([[retention]])と[[想起]]([[retrieval]])の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA型グルタミン酸受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA型グルタミン酸受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA型グルタミン酸受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA型グルタミン酸受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA型グルタミン酸受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　最近では、NMDA型グルタミン酸受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA型グルタミン酸受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA型グルタミン酸受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA型グルタミン酸受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref name=nakazawa&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して[[歯状回]]に至るシナプス、歯状回から[[苔状線維]]を介して[[CA3野]]に至るシナプス、CA3から[[シャッファー側枝]]を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る[[反回性経路]]が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA型グルタミン酸受容体を必要とすることが分かっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　海馬内の機能分化は、David Marr (1971)が提唱した[[パターン完成]]と[[パターン分離]]の理論に基づいて検討されてきた。パターン完成とは、一部の手掛りから全体を想起する能力であり、パターン分離は環境の違いを弁別する能力である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA型グルタミン酸受容体が発現しない[[ノックアウトマウス]]に[[水迷路]]訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた&amp;lt;ref name=nakazawa /&amp;gt;。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この動物では、目印の少ない環境での場所細胞の発火に欠陥が見られた。これらの結果について、Nakazawaらは、CA3野のNMDA型グルタミン酸受容体は一部の手掛りから全体を想起する「[[パターンコンプリーション能力]]」に関与すると結論付けた。これに対して、歯状回の顆粒細胞はパターンセパレーション能力が高い可能性が指摘されている。歯状回の場所細胞は、環境に応じて敏感に発火パターンを変化させることや、歯状回のNMDA型グルタミン酸受容体が発現しないノックアウトマウスでは、空間の違いを弁別させる文脈恐怖条件付けの成績が悪いことが根拠である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[神経毒]]の微量投与による[[局所破壊法]]を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　子どもの空間認知はランドマーク（目印）を検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;&amp;lt;/pubmed&amp;gt;1101663&amp;lt;/ref&amp;gt;。ランドマークを利用したターゲット探索は、目印とターゲットの空間関係を理解する必要があり、この空間情報処理はおよそ2歳頃に可能になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6617310&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。空間をまとまった形に統合する空間表象の獲得にはさらに時間を要する。空間表象の形成には他者中心的枠組みにルートを統合する必要があるが、これが可能になるのは9歳頃である&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Golledge, R., Gale, N., Pellegrino, J., and Doherty, S.&#039;&#039;&#039; &amp;lt;br&amp;gt;Spatial knowledge acquisition by children: Route learning and relational distances&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Annals of the Association of American Geographers&#039;&#039; 82, 223-244. 1992 [https://www.jstor.org/stable/2563895?seq=1#page_scan_tab_contents JSTOR]&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この見解は、子どもの空間知覚についてのPiagetの指摘と一致する。Piagetは、3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「3つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。このように、8歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられる傾向がある&amp;lt;ref name=ref02&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　空間記憶を司る脳領域は、身体的成熟後にも経験や訓練によって可塑的に変化する。Maguireらは、脳の体積を計測できる画像診断により、ロンドンのタクシー運転手は、それ以外の被験者と比較して、海馬の後部のサイズが大きく、前部は小さいことを報告した。つまり、複雑な経路を記憶する訓練により、海馬の構造が変化したと考えられる。この傾向はドライバー歴と比例して強くなることも報告された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10716738&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬損傷患者のうち海馬の後部に損傷が及んでいない場合は、損傷をうける前に学習したルートを想起できという症例報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8843066&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;とあわせると、空間情報は海馬の後部に貯蔵されると考えられる。この空間記憶を取り出し、柔軟な経路を選択する場合には、海馬の他に背外側[[前頭前野]]も関与する可能性も指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24501370 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。[[アルツハイマー病]]患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref name=ref02 /&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
*[[海馬]]&lt;br /&gt;
*[[迷路]]&lt;br /&gt;
*[[場所細胞]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37332</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37332"/>
		<updated>2017-02-01T12:53:17Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、ヒトを対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である放射状迷路を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA受容体阻害薬が場所学習を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている。Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもの空間認知はランドマークを検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる。Piagetによる子どもの空間認知に関する初期の研究において、８歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられると指摘されている。Piagetは3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「３つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。また、老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。アルツハイマー病患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt; 。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
(執筆者：上北朋子　担当編集委員：入來篤史)&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37331</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-02-01T12:50:26Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、ヒトを対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である放射状迷路を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA受容体阻害薬が場所学習を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている。Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもの空間認知はランドマークを検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる。Piagetによる子どもの空間認知に関する初期の研究において、８歳以下の子どもの空間認知は自身の見え方にしばられると指摘されている。Piagetは3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「３つの山課題」を実施し、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると回答する傾向があることを報告した。また、老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。アルツハイマー病患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくなる状態が推測される&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt; 。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37330</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-02-01T12:46:20Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、ヒトを対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である放射状迷路を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA受容体阻害薬が場所学習を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている。Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもの空間認知に関する初期の研究において、８歳以下の子どもでは、空間は自身の見え方にしばられると主張した。3つの大きさが異なる山の模型を提示し、子ども自身とは異なる場所に置かれた人形が山をどのように見るかを判断させる「３つの山課題」において、6歳から8歳の子どもは、人形から見える山の景色と自身の見えを同じであると答えた。子どもの空間認知はランドマークを検出し再認する段階、ランドマークをルートの係留点として使用する段階、いくつかのルートを使用して空間をまとまった形（俯瞰図）に統合することができる段階をたどる。老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。これは、頭部方向細胞を含む神経経路が入力情報に対して機能的に反応できなくなっている可能性がある。アルツハイマー病患者においても、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。海馬や海馬への入力情報の混乱、すでに経験したことのある場所への馴染みが欠如することによって、経路を発見できなくル状態が推測される&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Dudchenko, P. A.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Why People Get Lost: The Psychology and Neuroscience of Spatial Cognition.&amp;lt;br&amp;gt;New York: Oxford University Press; 2010.&amp;lt;/ref&amp;gt; 。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37329</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37329"/>
		<updated>2017-02-01T12:04:22Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶と空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報である。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、ヒトを対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である放射状迷路を用いた実験においても、LTPを阻害する投与量のNMDA受容体阻害薬が場所学習を阻害することが確認された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2189143&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 これらの研究は、空間記憶にNMDA受容体の機能が必要とされることの実験的証拠といえる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている。Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
　発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37326</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37326"/>
		<updated>2017-01-31T11:59:46Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12040087&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている。Nakazawaらは、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;19378463&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37325</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37325"/>
		<updated>2017-01-31T11:37:49Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路や放射状迷路の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Shapiro, M.L.,&amp;amp; Caramanos, Z.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt; NMDA antagonist MK-801 impairs acquisition but not performance of spatial working and reference memory.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039; 1990;18:231–243.&amp;lt;/ref&amp;gt;。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477320&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や運動経験&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; 。 最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制することや空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;24669503&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37324</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-31T11:21:17Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;221551  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;3005525  &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2869411&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Robinson,G.S., Crooks, G.B., Shinkman, P.G.,&amp;amp; Gallagher, M.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Behavioral effects of MK-801 mimic deficits associated with hippocampal damage.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Psychobiology.&#039;&#039;1989;17:156–164.&amp;lt;/ref&amp;gt;。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
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		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-31T10:53:30Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;17069897 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37322</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37322"/>
		<updated>2017-01-31T10:50:31Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7088155&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;5124915&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8351520 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11882899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9643555 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37321</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37321"/>
		<updated>2017-01-31T10:37:48Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J., &amp;amp; Conway, D.H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;Oxford, UK: 1980&amp;lt;/ref&amp;gt;.は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37320</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-31T10:07:24Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978))&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;O&#039;Keefe, J. &amp;amp; Nadel, L.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;The hippocampus as a cognitive map.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Oxford University Press&#039;&#039;:Oxford, UK: 1978&amp;lt;/ref&amp;gt;. によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37319</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-31T09:56:23Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;Tolman = ref2&amp;gt;&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;(1980)&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 13406589 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念&amp;lt;Tolman=ref2/&amp;gt;はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37318</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37318"/>
		<updated>2017-01-31T09:36:52Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;(1980)&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告され、経路統合には海馬や嗅内皮質ではなく、頭頂皮質が関与している可能性が指摘されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18687893 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37317</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-31T09:29:33Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt &amp;amp; Mittelstaedt (1980)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Mittelstaedt, M.L., &amp;amp; Mittelstaedt, H.&#039;&#039;&#039;(1980)&amp;lt;br&amp;gt;Homing by path integration in the mammal.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Naturwissenschaften.&#039;&#039;:1980,67:566–567&amp;lt;/ref&amp;gt;は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37316</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-31T09:23:28Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2623016 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt and Mittelstaedt(1980)は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37315</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37315"/>
		<updated>2017-01-31T09:21:36Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Olton, D.S.,&amp;amp; Samuelson, R.J.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed:Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Animal Behavior Processes.&#039;&#039;:1976,2:97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt and Mittelstaedt(1980)は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37314</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-31T09:11:12Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;18870876&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;13376757&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;や、ゴール地点において報酬を与えられない移動&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;Tolman,E.C. &amp;amp; Honzik, C. H.&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Introduction and removal of reward, and maze performance in rats&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of California Publications in Psychology.&#039;&#039;:1930,4;257–275&amp;lt;/ref&amp;gt;によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt and Mittelstaedt(1980)は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
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		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37243</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-20T07:06:53Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt and Mittelstaedt(1980)は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
発達に伴い、空間の情報処理は質的に変化していく。子どもでは、空間は自身の見え方にしばられる。発達に伴い、現在の見え方とは関係なく、位置を視覚化できるようになり、空間全体をまとまった形に統合することができる。&lt;br /&gt;
老化に伴って、距離や方向を統合する能力は失われていく。アルツハイマー病では、特に頭部方向細胞を含む脳領域に障害が生じる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37227</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37227"/>
		<updated>2017-01-19T08:58:48Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt and Mittelstaedt(1980)は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37226</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2017-01-19T08:56:27Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸とした右方向、左方向といった空間情報だる。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象（認知地図）に基づく空間情報である。自己中心的枠組みの中で、移動距離や方向を統合し自己の位置を継続的に定位する機能が経路統合である。Mittelstaedt and Mittelstaedt(1980)は、スナネズミが仔を探しまわり、発見してから巣まで連れ戻す際に直線的な経路をとることから、帰巣の際に経路統合が実行されていることを指摘した。ラットでは経路統合に海馬や嗅内皮質が関与しているいわれるが、人を対象とした研究では、海馬や嗅内皮質損傷患者も統制群の参加者とでポインティング課題（目隠しをして角度変更をともなう移動した後、スタート地点を指さす）の成績に差がなかったことが報告されている(Sharager et al., 2008)。Sharager et al. 2008は、経路統合には海馬や嗅内皮質は関与せず、頭頂皮質が関与している可能性を指摘している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37225</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37225"/>
		<updated>2017-01-19T08:27:58Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的枠組みと他者中心的枠組み　===&lt;br /&gt;
　空間情報は、自己中心的枠組みに基づくものと他者中心的枠組みに基づくものに分類される。自己中心的枠組みとは、空間を移動する動物自身を基軸として右方向、左方向といった空間情報であり、その情報処理には海馬の機能を必要としない。これに対して、他者中心的枠組みとは、絶対空間内の空間表象に基づく空間情報であり、海馬がその機能を担う。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37089</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37089"/>
		<updated>2017-01-16T09:28:58Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 自己中心的、他者中心的=== &lt;br /&gt;
経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37088</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37088"/>
		<updated>2017-01-16T07:05:17Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。この二つの空間記憶を要する課題の遂行に及ぼす海馬損傷の効果が検討された結果、海馬は空間作業記憶にも空間参照記憶の両機能を有していると考えられた(Okaichi &amp;amp; Oshima, 1990)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自己中心的、他者中心的、経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37075</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=37075"/>
		<updated>2017-01-13T08:49:55Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
=== 空間作業記憶と空間参照記憶===&lt;br /&gt;
　8方向放射状迷路(Olton,1978)での空間課題の遂行時に、動物がおかすエラーのパターン分析から、空間記憶は参照記憶と作業記憶に分類された。例えば、8走路のうちの特定の4走路に報酬を置き、これらを選択させる課題の訓練をする時、動物が報酬のない走路を選択せず、報酬のある走路のみに一度だけ訪れれば、この課題を最も効率よく解決したといえる。そのためには、動物はその試行で既に訪れた走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間作業記憶である。また、報酬が置かれる走路、または決して置かれることない走路はどこであるかを記憶する必要があり、これが空間参照記憶である。空間作業記憶は、その試行で選択した走路と選択していない走路を、装置の外にある環境刺激との位置関係において保持し、その次の試行ではキャンセルされる記憶である。このように1試行にのみ有効な空間作業記憶に対して、空間参照記憶は訓練期間中、全試行にわたって有効な記憶である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
自己中心的、他者中心的、経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=29020</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2015-03-03T07:06:11Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
空間参照記憶、空間作業記憶&lt;br /&gt;
自己中心的、他者中心的、経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。こういった場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞によってもたらせる情報により、動物は空間の表象を築くと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=29019</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=29019"/>
		<updated>2015-03-03T06:58:19Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
空間参照記憶、空間作業記憶&lt;br /&gt;
自己中心的、他者中心的、経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この記憶研究の流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞、頭部方向細胞、格子細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
　空間情報を符号化する細胞は場所細胞だけではない。海馬および視床前核群において頭部方向細胞が発見された(Taube, 1998)。この細胞は、動物が環境の中のどの位置にいるかに関わらず、動物がある特定の方向に向いた場合に発火するという特徴をもつ。すなわち、方位依存的な発火をする細胞である。この他に、空間の座標情報を表象する格子細胞も海馬に隣接する内側嗅内皮質で発見された(Witter &amp;amp; Moser. 2006)。この発見に寄与したMoser夫妻はO&#039;keefeによる場所細胞の発見と並んでノーベル生理学医学賞の受賞を受けた。１つの場所細胞が空間の中で一か所だけに発火ピークを持つのに対して、格子細胞は複数のピークをもち、発火位置は空間全体に方眼を描くように配置される。実際、海馬と内側嗅内皮質は相互連絡があり、海馬を損傷すると、この細胞の場所フィールドも不安定になる。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。その結果、NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=28160</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=28160"/>
		<updated>2014-10-09T10:45:22Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
空間参照記憶、空間作業記憶&lt;br /&gt;
自己中心的、他者中心的、経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は、電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経毒の微量投与による局所破壊法を用いた研究でも、海馬を構成する3領域（CA1,CA3,歯状回）の機能が異なることが水迷路課題を行動指標として示された。訓練前に各領域を損傷されたラットの空間記憶障害の重篤さは歯状回を破壊したラットで最もひどく、CA1損傷ラットでは全海馬損傷ラットと同程度であり、CA3損傷ラットでは障害は示されなかった(Okada &amp;amp; Okaichi, 2009)。したがって、空間記憶の形成に歯状回とCA1領域は役割を担う一方で、CA3領域は空間記憶の形成に関与しないといえる。ただし、歯状回損傷の効果は障害の程度が著しく、空間記憶以外の行動障害をもたらしている可能性も残る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=28159</id>
		<title>空間記憶</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=28159"/>
		<updated>2014-10-09T10:28:14Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
空間参照記憶、空間作業記憶&lt;br /&gt;
自己中心的、他者中心的、経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は、電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分化  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　上述したNMDA受容体の空間記憶における役割に関する研究では、海馬全体のNMDA受容体の機能を検討している。しかし、海馬の下位領域のNMDA受容体が異なる機能を持つという研究(Nakazawa, Quirk, Chitwood, Watanabe, Yeckel, Sun, Kato, Carr, Johnston, Wilson &amp;amp; Tonegawa, 2002; Lee, Yoganarasimha, Rao, &amp;amp; Knierim, 2004)が報告され、海馬内の機能分化が検討され始めた。海馬内では、嗅内皮質から貫通線維を介して歯状回に至るシナプス、歯状回から苔状先生を介してCA3野に至るシナプス、CA3からシャッファー側枝を介してCA1野に至るシナプス、さらにそこから嗅内皮質に戻るシナプスが閉回路を形成している。これに加えて、CA3野には、側枝を出して再びCA3野に戻る反回性経路が存在する。苔状線維からCA3に至る経路のシナプスで生じる長期増強はNMDA受容体を必要としないが、反回性経路からCA3に戻る経路のシナプスでの長期増強はNMDA受容体を必要とすることが分かっている(Harris &amp;amp; Cotman, 1986)。Nakazawa et al. (2002)は、CA3限定的にNMDA受容体が発現しないノックアウトマウスに水迷路訓練し、訓練後のプローブテストにおいて、迷路を取り囲む環境刺激の数を変化させた。その結果、CA3ノックアウトマウスでは刺激の数が少なるにつれて、記憶したプラットホーム位置の想起が難しくなった。この結果についてNakazawaらは、CA3野のNMDA受容体は一部の手掛りから全体を想起する「パターンコンプリーション能力」に関与すると結論付けた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
利根川らの研究　&lt;br /&gt;
CA1ノックアウトとCA3ノックアウトの違い&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=28158</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-10-09T05:25:34Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の分類  ==&lt;br /&gt;
空間参照記憶、空間作業記憶&lt;br /&gt;
自己中心的、他者中心的、経路統合&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分離  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
利根川らの研究　&lt;br /&gt;
CA1ノックアウトとCA3ノックアウトの違い&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は、電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== ヒトの空間記憶  ==&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=28157</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-10-08T12:30:57Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶を査定する行動テスト  ==&lt;br /&gt;
水迷路課題、放射状迷路課題、物体探索課題、バーンズ迷路課題&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬下位領域における機能分離  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
利根川らの研究　&lt;br /&gt;
CA1ノックアウトとCA3ノックアウトの違い&lt;br /&gt;
岡田らの研究&lt;br /&gt;
CA1,CA3の単独破壊&lt;br /&gt;
Moserらの研究、東北大飯島らの研究&lt;br /&gt;
背側と腹側の機能分離&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は、電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
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		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-10-08T11:54:52Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は、電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶へのNMDA受容体の直接的関与が証明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
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		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-10-08T11:37:27Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は、電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　海馬で発見されたシナプスの可塑的変化である長期増強(Long term potentiation; LTP)は、神経細胞レベルでの記憶現象であるみなされ、特に空間記憶におけるLTPの関与が集中的に研究された。その初期の実験において、LTPが減衰しやすい老齢ラットはBarnes迷路での空間課題の成績が悪いこと(Barnes, 1979)、貫通線維のシナプスを飽和させ、LTPを生じさせなくすると同課題において空間記憶障害が生じること(McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen, 1986)が報告され、LTPと空間記憶の相関関係が示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　空間記憶とLTP関係を明らかにするため、LTPの誘発時に働くグルタミン酸NMDA受容体の薬理学的阻害による空間記憶課題への影響が検討されてきた。NMDA阻害薬として、拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などが使用された。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶を必要とする課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶の形成には&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間学習課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶（空間表象）の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A9%BA%E9%96%93%E8%A8%98%E6%86%B6&amp;diff=28154</id>
		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-10-08T11:02:09Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。場所細胞の発見により、O&#039;Keefeは2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。場所細胞に関する研究は、電気生理学の技術の洗練化とともに発展し、数多くの成果を上げた。Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, C.らはラットの脳に４チャンネルの記録電極を挿入し、一定箇所から３か月間という長期の記録に成功した(Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe, 2002)。この実験では、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを継続的に観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いた71日目にもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　長期増強の現象は、過去経験の痕跡が永続的に保持される記憶の性質と類似しており、神経科学はLTPと記憶が共通の生理基盤を持つことを証明しようとしてきた。Barnes(1979)は老齢ラットではLTPが減衰しやすいこと、そして、これらのラットが巣穴の位置を記憶させるBarnes迷路での空間課題に障害を示すことを報告した。また、McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen(1986)は、貫通線維のシナプスを飽和させるとBarnes迷路において空間記憶障害が生じることを報告している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　空間記憶におけるグルタミン酸NMDA受体の機能は、拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などのNMDA受容体阻害薬を用いて検討されてきた。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶を必要とする課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶の形成には&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間学習課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶（空間表象）の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
	<entry>
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		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-05-12T10:13:01Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。その後、Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe (2002)は、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを長期間にわたり観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いたのちにもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　長期増強の現象は、過去経験の痕跡が永続的に保持される記憶の性質と類似しており、神経科学はLTPと記憶が共通の生理基盤を持つことを証明しようとしてきた。Barnes(1979)は老齢ラットではLTPが減衰しやすいこと、そして、これらのラットが巣穴の位置を記憶させるBarnes迷路での空間課題に障害を示すことを報告した。また、McNaughton, Barnes, Rao, Baldwin &amp;amp; Rasmussen(1986)は、貫通線維のシナプスを飽和させるとBarnes迷路において空間記憶障害が生じることを報告している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　空間記憶におけるグルタミン酸NMDA受体の機能は、拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などのNMDA受容体阻害薬を用いて検討されてきた。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶を必要とする課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶の形成には&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間学習課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶（空間表象）の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
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		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-05-12T08:53:15Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。その後、Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe (2002)は、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを長期間にわたり観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いたのちにもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、そのイメージを長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　空間記憶におけるグルタミン酸NMDA受体の機能は、拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などのNMDA受容体阻害薬を用いて検討されてきた。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶を必要とする課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶の形成には&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間学習課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶（空間表象）の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
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		<title>空間記憶</title>
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		<updated>2014-05-12T08:14:53Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名：spatial memory&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　動物が餌の隠し場所や巣穴の位置を記憶して再び訪れたり、危険な場所を避けるといった行動には、目的地や自分の現在地点を特定する認知能力が必要である。このような空間や場所に関する認知を支えるのが空間記憶である。実験動物として用いられるラットやマウスは優れた空間記憶をもつことから、動物の記憶研究の中で空間記憶は頻繁に取り上げられ、その神経システムの解明が進んでいる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 認知地図  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　Tolman (1948)は、動物の空間行動を「認知地図」という概念によって説明した。これは、動物が空間内を移動するとき、その空間の地図用のイメージを描いて、餌探し行動や危険回避行動をするという考えである。認知地図に基づく行動は、環境内にある複数の刺激の空間的関係性と、複数の刺激と出来事との関係性の構築によって実行される。認知地図以前の単純なS-R理論では、刺激を与えられても行動が実行されない場合や行動しても刺激が与えられない場合には学習が生じないと考えられてきた。しかし、台車に載せての受動的な移動(McNamara, Long &amp;amp; Wike, 1956)や、ゴール地点において報酬を与えられない移動(Tolman &amp;amp; Honzik, 1930)によっても潜在的な学習が生じているという実験的証拠が得られ、それまでの単純なS-R理論で説明することができなかった空間行動は認知地図の概念によって説明された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 空間記憶の神経基盤  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 空間記憶と海馬  ===&lt;br /&gt;
　海馬を含む側頭葉内側部の切除手術を受けたH.M.が宣言記憶の障害を示すという報告(Scoville &amp;amp; Millner, 1957)以来、齧歯類を対象とした海馬損傷研究が盛んに行われた。この流れの中で、Tolmanの認知地図の概念はO&#039;Keefe &amp;amp; Nadel (1978)によって海馬認知地図仮説へと発展し、海馬が空間認知の神経基盤であると考えられた。海馬認知地図仮説の中で、O&#039;KeefeらはLocaleシステムとTaxonシステムという２つの記憶システムを提案した。Localeシステムは環境の中で自分の位置を特定する、いわゆる認知地図を利用した空間行動を支えるシステムであり、Taxonシステムは特定の手掛りに対する接近行動と回避行動の強化によって駆動されるシステムである。O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)は、これらのシステムと海馬の関係について検討した。この実験では、Localeシステムを要する課題として①十字型迷路の周辺に分散された複数の手掛りから報酬位置を特定する課題と、Taxonシステムを要する課題として②複数手掛りが報酬走路近くにまとめて配置された課題が設けられ、各システムに及ぼす海馬損傷が検討された。海馬損傷により①の課題の成績が著しく悪化したが、②の課題の成績は手術前よりもむしろ改善された。これにより、Localeシステムに基づく行動は海馬依存的であるが、Taxonシステムに基づく行動は海馬非依存的であることが明らかになった。同様の結論がMorris水迷路を用いたMorris, Garrud, Rawlins &amp;amp; O&#039;Keefe(1982)においても報告されている。プール内の一か所の水面下に隠れたプラットホームの位置をプール周囲の複数の刺激の位置との関係で記憶させる場所課題の学習には海馬損傷の効果があった。しかし、目印刺激のある見える逃避台への接近行動を測定する手掛り課題の学習には海馬損傷の効果がなかった。この効果の分離は、O&#039;Keefe &amp;amp; Conway (1980)による海馬依存的なLocaleシステムと海馬非依存的Taxonシステムの分離に対応するものと考えられる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 場所細胞の発見  ===&lt;br /&gt;
　海馬が空間認知の神経基盤であることは、海馬の神経細胞の活動を記録する電気生理学的研究によっても支持された。その先駆的研究は、O&#039;Keefe &amp;amp; Dostrovsky (1971)によるユニット記録研究である。彼らは自由探索中のラットの海馬神経細胞の活動を記録し、ラットが空間の特定の領域を横切るのに同期して高頻度で発火する細胞の存在を報告した。これがいわゆる場所細胞である。その後、Wilson &amp;amp; McNaughton (1993)により、同時に100個以上の神経細胞を記録することのできる多電極記録法が開発され、ラットが特定の位置に来ると複数の神経細胞が同時発火する相関的発火が生じることも明らかになった。また、Lever, Wills, Cacucci, Burgess, &amp;amp; O&#039;Keefe (2002)は、円形広場と正方形の広場の中でラットが探索行動をしている間に、CA1野の場所細胞がどのように場所フィールドを形成していくかを長期間にわたり観察した。探索1日目には、円形広場でも正方形の広場でも共通した場所フィールドが形成されるが、5日目には1日目の場所フィールドが崩れ、一方の空間を探索しているときに発火していた場所細胞が他方の空間では発火しなくなったり、それぞれの空間で異なる場所フィールドが形成された。探索21目には、環境の違いに応じた場所フィールドの違いが顕著になり、ラットをホームケージに戻し数週間の遅延を置いたのちにもこの傾向が維持された。このことは、CA1野の神経細胞が地理的な特徴に基づいて空間を弁別し、そのイメージを長期間記憶していることを示唆した。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 海馬のシナプス可塑性  ==&lt;br /&gt;
=== 長期増強と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== NMDA受容体と空間記憶  ===&lt;br /&gt;
　空間記憶におけるグルタミン酸NMDA受体の機能は、拮抗性AP5や非拮抗性MK-801などのNMDA受容体阻害薬を用いて検討されてきた。AP5をラットの脳室内に慢性投与すると、水迷路場所課題の獲得が困難になるが、水迷路での視覚弁別課題の獲得には障害が生じなかった(Butcher, Hamberger, &amp;amp; Morris, 1991; Morris, 1989; Morris, Anderson, Lynch, &amp;amp; Baudry, 1986)。MK-801の腹腔内投与もまた、水迷路場所課題の獲得を妨げたが、手掛り課題の獲得は妨げなかった(Robinson, Crooks, Shinkman, &amp;amp; Gallagher, 1989; Whishaw &amp;amp; Auer, 1989)。報酬課題である放射状迷路の場所課題の学習に対してもNMDA受容体阻害薬の効果が確認された(Ward, Mason, &amp;amp; Abraham, 1990)。このようにNMDA阻害薬が空間記憶を必要とする課題の学習を選択的に妨げることから、空間記憶の形成には&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ところで、記憶には、記銘(acquisition)と保持(retention)と想起(retrieval)の三つのプロセスがある。空間記憶について、NMDA受容体の阻害効果は記銘時に限定され、保持および想起を妨げることがないことが研究者間で一致して報告されている。具体的には、水迷路(Robinson et al., 1989: Heale &amp;amp; Harley, 1990)や放射状迷路(Shapiro &amp;amp; Caramanos, 1990)の場所課題の獲得時にAP5やMK-801を投与すると学習障害が生じるが、課題の獲得後に投与しても遂行は妨げられないという結果が得られている。海馬を完全に破壊すると、障害は記憶の全てのプロセスに及ぶことから、記憶形成時に限定された働きは、NMDA受容体の機能的特徴であるといえる。そして、この特徴はNMDA受容体が長期増強の誘発時にのみ必要とされるという分子レベルのプロセスと対応している。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　後に、NMDA受容体阻害薬投与以前の課題経験(Bannerman , Good, Butcher,Ramsay &amp;amp; Morris, 1995)や運動経験(Cain et al., 1996, Saucier &amp;amp; Cain, 1995)があれば障害が生じないという結果が、様々な空間学習課題について報告され、必ずしもNMDA受容体は必ずしも空間記憶の形成に必要でないという反証が報告された。この見解の不一致に関して、空間と課題の経験を操作した複数の条件でNMDA受容体の阻害効果が再検討された。NMDA受容体阻害薬が課題の経験に関わらず、新奇な環境において空間記憶障害を引き起こすことが明らかにされ、NMDA受容体が空間記憶（空間表象）の形成に必要とされることが明らかになった(Uekita &amp;amp; Okaichi, 2005)。最近では、NMDA受容体阻害はLTPの低下を抑制すること(Villarreal, Do, Haddad, &amp;amp; Derrick, 2002)や空間記憶の長期保持を向上させることが報告されている(篠原・畑, 2014)。&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
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		<title>迷路</title>
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		<updated>2014-05-12T02:23:54Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Tomokouekita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;[http://researchmap.jp/read0102345 上北 朋子]、奥村 紗音美&amp;lt;/font&amp;gt;（イラスト作成）&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;同志社大学 心理学部心理学科&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI [[XXXX]]/XXXX　原稿受付日：2012年8月23日　原稿完成日：2012年11月8日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：[http://researchmap.jp/atsushiiriki 入來 篤史]（独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター）&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
英語名：maze　独：Labylinth　仏：labyrinthe&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=&lt;br /&gt;
　迷路は動物の空間や場所に関する[[学習]]能力や、これを支える記憶を測定するための装置である。主に[[wikipedia:ja:げっ歯類|げっ歯類]]（[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]や[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]）を対象とした[[行動神経科学]]、[[生理心理学]]の実験、および[[遺伝子改変動物]]の行動評価に用いられる。空間と場所は、実験場面や研究者によって用語が使い分けられているが、実験操作的には同じ手続きのもと調べられる。 &lt;br /&gt;
}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 迷路を用いた行動実験の歴史  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:Uekita fig1.jpg|thumb|right|200px|&amp;lt;b&amp;gt;図1．LashleyⅢ型迷路&amp;lt;/b&amp;gt;&amp;lt;br /&amp;gt;図の下方がスタート地点で、上方が報酬（黄丸）の置かれたゴールである]] 　動物の迷路学習の最初の研究は、[[wikipedia:W. S. Small|W. S. Small]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;W S Small&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Experimental study of the mental processes of the rat II.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;American Journal of Psychology&#039;&#039;:1901,12;206-239&amp;lt;/ref&amp;gt; によるもので、この研究で用いられた迷路は、[[wikipedia:ja:ハンプトン・コート宮殿|ハンプトン・コート宮殿]]の迷路をもとに作製された。スタート地点とゴールの間に、6か所の分岐と5つの袋小路をもつ複雑な構造であったが、走行経験とともに袋小路に入るエラーが減少した。同様の迷路を用いて、[[ラット]]がどのように迷路課題を解決しているかが検証された&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;H Carr, J B Watson&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Orientation in the white rat.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Journal of Comparative Neurology and Psychology&#039;&#039;:1908,18,27-44&amp;lt;/ref&amp;gt;。[[視覚]]、[[嗅覚]]、[[聴覚]]、[[洞毛]]からの情報を遮断しても成績が悪くならなかった。しかし、訓練後に迷路の一部の走路を短くすると、それ以前に訓練されたラットが短縮された走路の壁にぶつかったことから、ラットは感覚情報ではなく、[[wikipedia:ja:筋|筋]]運動の連鎖を学習して課題解決していると考えられた。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[wikipedia:ja:カール・ラシュレー|Lashley]]&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;K Lashley&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Brain mechanisms and intelligence: A quantitative study of injuries to the brain.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;University of Chicago Press&#039;&#039;:1929&amp;lt;/ref&amp;gt;は、迷路学習に必要な認知機能と関連脳部位を明らかにするために、より単純化された「Ⅲ型迷路」を使用した。この迷路は3つの選択点をもつ単純な構造で、出発地点から左、右、左へ曲がると報酬にたどりつける(図1)。この課題をラットに学習させた後に[[皮質]]の様々な部位を損傷し、同じ課題の[[テスト]]を行った。再学習の成績は、損傷の場所に関わらず、損傷の量が大きくなるにつれて悪くなった。Lashleyは脳における記憶のありかをつきとめることはできなかった。その後、主にラットや[[マウス]]を対象とした膨大な数の脳破壊実験により、空間処理を必要とする迷路学習には海馬が関与しているという共通認識が得られた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　1990年代には、発達過程のある時期に脳のある領域に限定して、マウスの遺伝子を操作する方法が利根川ら&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8980238&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;により確立された。長期増強の誘発に必要なNMDA受容体サブユニットを海馬[[CA1]]領域でノックアウトすると、長期増強が起こりにくくなるとともに、[[水迷路]]における場所課題の学習障害がみられた。空間的・時間的に限局した精巧なノックアウト技術の確立、電気生理学的手法による神経活動の記録および迷路での行動評価を行ったこの研究は、分子と行動の関連を明らかにしようとする脳科学研究の突破口となった。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 迷路実験の手続きと測定される認知機能  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== T迷路およびY迷路  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:Uekita fig2.jpg|thumb|right|300px|&amp;lt;b&amp;gt;図2．T迷路(左)とY迷路(右)&amp;lt;/b&amp;gt;&amp;lt;br /&amp;gt;図の下方がスタート地点で、上方の2走路が選択走路である。]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　3本の走路から構成され、選択点が1点の最も単純な高架式迷路である。3本の走路がT字状に設置されたものが[[T迷路]](図2右)、Y字状に設置されたものが[[Y迷路]](図2左)である。3本の走路のうち1本が出発走路で2本が選択走路である。基本的にはT迷路とY迷路では以下の課題を同じ手続きで実施できる。ただし、走路の間隔が120度のY迷路では全ての走路の間隔が等しいため、動物が侵入した走路を次の選択のスタート走路とみなし、試行を連続して行うこともできる。したがって、実験者の介入を制限すべき行動の測定にはY迷路が適している。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 場所課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　餌のありかについての学習、すなわち場所学習を測定する最もシンプルな課題である。訓練に先だって装置馴致を行い、動因操作として通常自由[[摂食]]時の85％の体重を維持する餌を与える。訓練では、いずれかの選択走路の先端の報酬皿にペレットや[[wikipedia:ja:ショ糖|ショ糖]]溶液などの報酬を置き、動物が出発走路の先端から分岐点まで移動した後、左右の走路のどちらを選択するかを観察する。報酬のある走路の選択を正反応、報酬のない走路への侵入を誤反応とする。誤反応の後、同一試行内で正しい走路の選択を許す場合を修正法、修正を許さない場合を非修正法と呼ぶ。訓練により、動物は常に報酬のある走路を選択するようになり、報酬の位置についての場所学習が成立したとみなされる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　ただし、スタート地点が固定され、かつ報酬が常に同じ走路にある場合、特定の方向に曲がるといった筋感覚の学習（反応学習）による解決も可能である。どちらの学習が行われたかを検証するためには、180度迷路を回転させて、訓練とは反対側からスタートさせるテスト試行が必要である。訓練試行とは逆方向に曲がり、実験環境における絶対的に同じ位置を選択した場合、場所学習が行われていたとみなされる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 場所非見本合わせ課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　自然環境において、以前に訪れて餌を採取した場所には餌がないため、異なる場所を探索することが効率のよい採餌である。場所非見本合わせ課題はこのような反応傾向を測定する課題であり，その実験手続きは、見本試行と選択試行で構成される&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 7126316 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。見本では左右どちらかを強制選択（片側走路はブロック）させ、報酬を与える。その後、選択試行では左右の走路を自由選択させ、見本段階で選んでいない走路に入ることを正反応とし、正反応の場合には報酬を与える。この課題は反応を左右の走路間で交替することにより報酬を得ることから、交替行動とみなされることもある。これまで[[海馬]]損傷により、この課題の成績が悪化することから、場所非見本合わせ学習が海馬依存であると考えられてきた&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10751449&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。最近の[[ノックアウトマウス]]を用いた研究により、交替行動そのものには[[AMPA型グルタミン酸受容体]]サブユニットGluA1が関与するという知見が得られている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;21125585&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　自発的交替行動の観察には，実験者の介入が少ない120°Y迷路での連続試行型の実験が望ましい。15分程度の探索を許し、どの走路をどのような順番で選択したかを記録する。3回連続で異なる走路に入った数が総選択数中どれだけの割合であったかが交替率となる（下記式参照）。&amp;lt;br&amp;gt;交替率（%）=交替行動数 ÷（総選択数－2）×　100　&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;21860534&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　正常なラットやマウスは、既に訪れた走路よりも、まだ訪れていない新たな走路を選択する傾向があり、交替率が高くなる。[[スコポラミン]]や[[アンフェタミン]]の投与により、同一走路を連続して選択する行動が現れると、交替率は低下する&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;C L Richman,W N Dember,P Kim &#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Spontaneous alternation in animals: A review.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Current Psycholocial Research and Reviews&#039;&#039;:1987,5,358–391&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 手掛り弁別課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　手掛り弁別課題には、[[単純弁別課題]]、[[同時弁別課題]]、[[継時弁別課題]]があり、T迷路やY迷路を用いてこれらを行うことができる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　単純弁別課題では、常にライトで照らされた走路を選択すれば報酬が得られる。動物は明るい走路と暗い走路を見分けるだけで良い。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　同時弁別課題では、2本の選択走路にそれぞれ視覚的（黒または白）、または[[触覚]]的に異なる手掛り板を挿入し、常に同じ手掛りを選択すると報酬が得られる。動物は手掛りの違いを弁別しなければならない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　継時弁別課題では、報酬の位置を知らせる手掛りが1つずつ提示される。例えば、スタート走路に白い手掛り板が挿入された時には左に行けば報酬が得られ、黒い手掛り板が挿入された時には右に行けば報酬が得られる。この課題では動物はいつどのように反応するかを手掛りをもとに学習する。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　古くから海馬損傷動物が同時弁別課題ではなく継時弁別課題の学習障害を示すことが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;4438558&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。しかし，手掛りがスタート走路だけでなく選択走路の分岐点においても明示されている場合、海馬損傷動物も継時弁別の学習が可能であることが最近報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15317854&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 放射状迷路  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:Uekita fig3r.jpg|thumb|right|250px|&amp;lt;b&amp;gt;図3．8方向放射状迷路&amp;lt;/b&amp;gt;&amp;lt;br /&amp;gt;中央プラットフォームから出発させ、走路の先端のカップに報酬を獲得させる。動物が隣回りに走路を選択することを防ぐために、プラットフォームと各走路の間に扉を設置することもある。]] 　中央プラットホームから8本の走路が放射状に設置された高架式の迷路で、走路の先端に報酬がある(図3)。もともと空間記憶を測定するために考案されたが、報酬の置き方により記憶の様々な側面を測定できる。また、項目数を増やすために12本や24本走路が使用されることもある。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 空間作業記憶課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　この課題では全ての走路の先端に報酬がある。全ての報酬を効率よく獲得するために、動物は既に餌を獲得した走路を避けるようにしながら、まだ訪れていない走路を選択する。10試行程の訓練により、8回の選択で8個の報酬全てを獲得することができるようになる。このことから、動物はその試行において既に訪れた走路の位置を装置外刺激との関係において記憶していると考えられた。この記憶は場所に関する記憶を要し、かつ、その試行のみに有効な記憶であるため、[[空間作業記憶]]とみなされる&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;D S Olton,R J Samuelson&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Remembrance of places passed: Spatial memory in rats.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Journal of Experimental Psychology: [[Animal]] Behavior Processes&#039;&#039;:1976,2,97–116&amp;lt;/ref&amp;gt;。ただし、この[[作業記憶]]は実験手続き上の操作的定義であり、[[中央演算処理]]を要するヒトの作業記憶とは区別されるべきである。ラットにおいて空間作業記憶課題獲得後の海馬[[NMDA型グルタミン酸受容体]]阻害により、本課題の遂行障害が生じることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9507170 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 空間参照作業記憶課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　この課題では半数の走路の先端に報酬がある。効率よく報酬を獲得するには、動物はその試行で既に選択した走路はどこであるかについての記憶（空間作業記憶）と報酬が置かれている走路、又は置かれることのない走路はどこであるかについての記憶（空間参照記憶）の両方を用いることが要求される。&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;D S Olton,B C Papas&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Spatial memory and hippocampal function.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Neuropsychologia&#039;&#039;:1979,17,669–682&amp;lt;/ref&amp;gt;。[[8方向放射状迷路]]の場合、40試行程度の訓練により、動物は報酬のない走路を選択しないで、報酬のある走路のみに一度だけ訪れるようになる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 手掛り課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　迷路の周囲をカーテンで囲み装置外刺激の利用を制限した上で、走路に視覚や触覚的に異なる手掛板を敷き、特定の手掛り板の走路に報酬を置く。この課題では、空間情報処理の要因を排除して、手掛りと報酬の[[連合学習]]（手掛り参照記憶）とすでに訪れた走路の作業記憶（手掛り作業記憶）を測定することができる。参照記憶に関しては、海馬損傷により空間参照記憶は障害されるが、手掛り参照記憶には影響がない。一方、作業記憶に関しては、海馬損傷により空間作業記憶と手掛り作業記憶の両方に障害が生じる。したがって、海馬は空間認知と作業記憶の両方の機能に関与していると考えられる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;6439229&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 水迷路  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:Uekita fig4.jpg|thumb|right|250px|&amp;lt;b&amp;gt;図4．水迷路&amp;lt;/b&amp;gt;&amp;lt;br /&amp;gt;プール中の1か所にある逃避台（点線円筒）まで泳ぐことを訓練する。丸、三角、四角は装置外刺激を示す。]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[空間学習]]を測定する課題として[[wikipedia:Richard G. Morris|Richard G. Morris]] (1981)&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;R G M Morris&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Spatial localisation does not depend on the presence of local cues.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Learning and Motivation&#039;&#039;:1981,12,239-260&amp;lt;/ref&amp;gt;によって考案された。水の入った大きな円形プールの中にある逃避台まで泳ぐことを訓練する課題である（図4）。ラットを使用する場合、水深は通常40cm程度であるが、後肢が底につく程度の浅い水深(12cm)でも同様に課題を行うことができる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12467123&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。浅い水迷路は、水温、水質の管理が容易であることや、動物の不安を軽減できること、遊ぎ能力の衰えた老齢動物にも適用できるなどの利点がある。Morrisは水を乳白色に濁らすが、使用する動物が白色であれば、墨汁などで黒濁するほうが、動物の軌跡を追跡しやすい。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 場所課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　逃避台は水面下の定位置に逃避台が沈められている。プールの水は不透明で、沈められた逃避台は見えない。逃避台は動物の頭を壁側に向け、仮想の東西南北の1か所からスタートさせ、逃避台に到達するまでの時間（逃避潜時）を測定する。試行を繰り返すうちに、動物は逃避台の位置を憶え、短時間で逃避台に到達できるようになる。ビデオトラッキングによる遊泳の軌跡の分析を行うと、訓練初期には壁沿いに円を描くような軌跡やプール全体にランダムに広がる軌跡が見られるが、20試行程度行うと、どのスタート地点から出発しても逃避台まで直線的な軌跡が描かれる。これは動物が装置外刺激との関係において逃避台位置を学習したためである。このような課題は場所課題と呼ばれる。場所学習が成立したかどうかは、プローブテストにより確認することができる。このテストでは逃避台を取り去り、プールを扇形に4分割して各象限での遊泳時間を計測する。学習が成立していると、訓練時に逃避台のあった位置の横断回数が多く、その象限で泳ぐ時間も長くなる。この課題は[[空間参照記憶]]のみを要する課題で、空間作業記憶を考慮する必要がないため、1日複数回の訓練が可能である。また、ノーマルな動物において学習が早く成績が安定しているため幅広い分野で用いられている。海馬破壊やNMDA受容体の阻害はいずれも課題の獲得障害をもたらすが、獲得後の再訓練においては海馬破壊が課題の遂行障害をもたらすのに対し、NMDA型[[グルタミン酸]]受容体の阻害は遂行を妨げない&amp;lt;ref name=&amp;quot;morris&amp;quot;&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;2552039&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 手掛り課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　逃避台は水上に出ており、泳ぎながら逃避台を見ることができ、見える目標地点まで泳ぎつくことを訓練する。この課題は複雑な学習要素を含んでおらず、視覚、動機づけ、運動能力に異常はないかを確認するために使用される。スタート地点と逃避台の位置関係は試行ごとにランダムに変化するように設定する。装置外刺激の存在は混乱要因となるので、プールの周囲をカーテンで囲み、装置外の刺激を利用できない状況下で訓練を行う。通常、海馬損傷やNMDA受容体阻害によりこの課題の学習障害は生じない。ただし、感覚運動障害を引き起こす投与量のNMDA型グルタミン酸受容体[[阻害薬]]の投与は、手掛り課題の学習障害をもたらす &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;7477321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 空間弁別課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　見かけの等しい見える２つの逃避台の位置関係を弁別させる空間課題である。2つの逃避台のうち、一方を逃避可能な正の逃避台、他方を逃避不可能な偽の逃避台に割り当てる。正の逃避台は訓練を通じて同じ位置にあるが、偽の逃避台は試行ごとに異なる位置に移動する。動物は移動する逃避台を避け、常に一定の位置にある逃避台を選択することが求められる。NMDA型グルタミン酸受容体阻害により空間弁別課題の学習障害が生じる。この障害は，訓練以前の課題の学習経験とは関係なく、新しい環境で訓練を行うと生じることが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15839801&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 視覚弁別課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　見かけの異なる2つの逃避台を視覚的性質の違いにより弁別させる課題である。プールの周囲をカーテンで囲み、装置外の刺激を利用できない状況下で訓練を行う。外観の異なる2つの逃避台（例えば、灰色と白黒縞模様）のうち、一方を逃避可能な正の逃避台、他方を逃避不可能な偽の逃避台に割り当てる。逃避不可能な偽の逃避台はバネや糸で底面とつながれており、動物がこれに登ることができない。スタート地点と2つの逃避台の位置関係は、試行ごとにランダムに変化する。海馬損傷やNMDA受容体阻害は視覚弁別課題の学習は妨げない&amp;lt;ref name=&amp;quot;morris&amp;quot; /&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 遅延場所合わせ課題  ====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
:　逃避台位置が1日の複数試行においては変化しないが、翌日には異なる位置に逃避台を移して訓練を行うという課題である。各訓練日の第1試行が見本試行となり、動物は迷路内をランダムに泳ぎ、逃避台を探す。それ以降の試行が選択試行となる。各訓練日の第1試行で潜時が長いが、第2試行以降の潜時は大きく短縮される。これは、第1試行において逃避台到達後に周囲を見渡すことにより、この位置で逃避できたというイベント記憶が形成されることによる。この記憶は翌日には有効でないため、作業記憶とみなされる場合もある。第1試行と第2試行の逃避潜時の短縮の度合い（節約率）が評価される。また、第1試行と第2試行の間の試行間間隔を操作することにより、脳損傷や薬理学的処置、その他の実験的処置による記憶障害の遅延依存性について評価することができる。海馬損傷ラットでは15秒遅延条件においても障害を示すが、NMDA型グルタミン酸受容体阻害ラットは20分以上の遅延条件で障害を示すことが報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10226773&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== バーンズ迷路  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:Uekita fig5.jpg|thumb|right|250px|&amp;lt;b&amp;gt;図5．バーンズ迷路&amp;lt;/b&amp;gt;&amp;lt;br /&amp;gt;明るく照らされされた迷路におかれた動物は、決まった位置にある暗い穴へと逃げ込む。それ以外の穴はダミーで逃げ込むことができない。丸、三角、四角は装置外刺激を示す。]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ラットやマウスが暗く囲われた場所を好み、明るく開けた場所を嫌う性質を利用した迷路課題である(図5)。円形のテーブルの外周に見かけの等しい18個の穴があり、そのうちの1つのみがトンネルとなっており、暗い場所へと逃避することができる。トンネルへと続く正しい穴の場所は、装置外刺激の空間的な関係性によって識別できる。テーブル中央の小さな円筒に動物を入れ、円筒を持ち上げて試行を開始する。訓練により、動物は逃避可能な穴に直線的に向かうようになる。逃避潜時や誤反応（逃避穴以外の穴をのぞいた回数)を学習測度として用いる。Morris水迷路と同様に訓練後に全ての穴を逃避できないようにしてプローブテストを行うことも可能である。この時、逃避穴のあった位置での滞在時間を学習の測度とする。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　この他、[[バーンズ迷路]]を用いた[[wikipedia:ja:帰巣行動|帰巣行動]](homing)に関する研究も多い。ラットやマウスが巣穴を離れて餌を探索し、巣穴に餌を持ち帰る性質をもつ。正常な動物は目隠しをしても直線的な道筋で巣穴まで戻ってくるが、海馬損傷により帰巣方向が不正確になる&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10560926&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この帰巣行動は経路統合に依存したものとみなされ、海馬において内的な運動手掛りを統合しながらルートをたどる処理が行われていると考えられている。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 高架式十字迷路  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:Uekita fig6.jpg|thumb|right|250px|&amp;lt;b&amp;gt;図6．高架式十字迷路&amp;lt;/b&amp;gt;&amp;lt;br /&amp;gt;不安を測定する場合、2本の走路には高い壁を設置して使用する。壁あり走路をclosed arm、壁なし走路をopen armと呼ぶ。]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　十字に交わる4本の走路をもつ高架式迷路である。古くは他の迷路と同様に特定の走路に報酬を置き、その位置を学習させる場所課題の実施に用いられてきた。この迷路を使用した初期の実験において、[[海馬認知地図仮説]]が証明された&amp;lt;ref&amp;gt;&#039;&#039;&#039;J O&#039;Keefe,D H Conway&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;On the trail of the hippocampal engram.&amp;lt;br&amp;gt;&#039;&#039;Physiological Psychology&#039;&#039;:1980,8,229-238&amp;lt;/ref&amp;gt;。近年、[[高架式十字迷路]]は[[不安]]の測定に使用されることが多い。4本のうち2本の走路は高い壁があり(closed arm)、残りの2本は壁がなく解放された走路である(open arm) (図6)。狭く暗いところを好む齧歯類は、closed armでの滞在時間が長くなる。不安レベルが低下するとopen armへの進出が増加し、逆に不安レベルが高まるとopen armへの進出が減少する。それぞれの走路での滞在時間のほかに移動距離も測定し、活動レベルの影響を考慮しておく必要がある&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;16035954&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
*[[空間記憶]] &lt;br /&gt;
*[[認知地図]]　（迷路の解説で）&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references /&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Tomokouekita</name></author>
	</entry>
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