<?xml version="1.0"?>
<feed xmlns="http://www.w3.org/2005/Atom" xml:lang="ja">
	<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/api.php?action=feedcontributions&amp;feedformat=atom&amp;user=Yukifujita</id>
	<title>脳科学辞典 - 利用者の投稿記録 [ja]</title>
	<link rel="self" type="application/atom+xml" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/api.php?action=feedcontributions&amp;feedformat=atom&amp;user=Yukifujita"/>
	<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%89%B9%E5%88%A5:%E6%8A%95%E7%A8%BF%E8%A8%98%E9%8C%B2/Yukifujita"/>
	<updated>2026-04-18T01:17:39Z</updated>
	<subtitle>利用者の投稿記録</subtitle>
	<generator>MediaWiki 1.43.8</generator>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=25315</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=25315"/>
		<updated>2014-03-13T01:04:35Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&amp;lt;div align=&amp;quot;right&amp;quot;&amp;gt;  &lt;br /&gt;
&amp;lt;font size=&amp;quot;+1&amp;quot;&amp;gt;藤田 幸、[http://researchmap.jp/ToshihideYamashita 山下 俊英]&amp;lt;/font&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&#039;&#039;大阪大学 大学院医学系研究科分子神経科学 分子神経科学&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
DOI XXXX/XXXX　原稿受付日：2012年12月4日　原稿完成日：2014年月日&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
担当編集委員：[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫]（大阪大学 大学院生命機能研究科）&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;/div&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{PBB|geneid=4804}}&lt;br /&gt;
英語名: Low-affinity nerve growth factor receptor　独：Nervenwachstumsfaktor-Rezeptor mit niedriger Affinität&lt;br /&gt;
同義語：低親和性神経栄養因子受容体、p75、p75&amp;lt;sup&amp;gt;NTR&amp;lt;/sup&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|thumb|250px|&#039;&#039;&#039;図1．p75とTrk受容体の構造&#039;&#039;&#039;]]&lt;br /&gt;
[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|thumb|250px|&#039;&#039;&#039;図2．神経栄養因子と受容体の結合&#039;&#039;&#039;]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{{box|text=&lt;br /&gt;
　低親和性神経成長因子受容体 (p75)は、[[神経栄養因子]] (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型[[受容体]]であり、[[腫瘍壊死因子]] ([[tumour necrosis factor]], [[TNF]])受容体スーパーファミリーに属する (図1)。[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、[[脳由来神経栄養因子]] ([[brain-derived neurotrophic factor]], [[BDNF]])、[[neurotrophin-3]] ([[NT-3]])、[[neurotrophin-4/5]] ([[NT-4/5]])と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)にて結合し、[[|Trk受容体|tropomyosin receptor kinases (Trk) 受容体]]とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)にて結合するようになると考えられている。一方で、別の神経栄養因子受容体であるTrk受容体は、神経栄養因子と高親和性 (Kd = 10-11)に結合する。p75は神経栄養因子との結合により、[[細胞死]]や細胞生存の調節、[[軸索伸長]]の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref name=ref1&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11114882 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
}}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==低親和性神経成長因子受容体とは==&lt;br /&gt;
　低親和性神経成長因子受容体 (p75)は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された &amp;lt;ref name=ref2&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 3022937 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。神経栄養因子とは、神経系において[[細胞増殖]]や[[分化]]の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体には[[TrkA]]、[[TrkB]]、[[TrkC]]があり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一方、神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、[[トランスゴルジネットワーク]]で転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、[[proNGF]]が[[交感神経]]細胞や[[オリゴデンドロサイト]]などのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である &amp;lt;ref name=ref3&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==構造==&lt;br /&gt;
　p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つの[[wikipedia:ja:αヘリックス|α-helical]] domainからなる[[Death domain]]を有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、2つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==ファミリー==&lt;br /&gt;
　腫瘍壊死因子(tumour necrosis factor, TNF)受容体スーパーファミリーに属する。p75のホモログとして、neurotrophin receptor homolog 1 (NRH1), NRH2が報告されている&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11598917&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==発現==&lt;br /&gt;
　p75は発生期には中枢神経系において広範囲に発現しているが、成体では発現が減少する&amp;lt;ref name=ref102&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12671646&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。成体マウスにおいて、p75は脊髄後根神経節 (dorsal root ganglia; DRG)や網膜の一部の細胞で発現しているが、大脳皮質や小脳における発現はほとんど検出されていない&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;15694321&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。また、p75の発現は病態下で上昇することが知られている（[[低親和性神経成長因子受容体#疾患との関連|疾患との関連]]参照)&amp;lt;ref name=ref102 /&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref15721744&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経系での機能  ==&lt;br /&gt;
　Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う&lt;br /&gt;
&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10851172&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。他にも、シュワン細胞の遊走、[[ミエリン]]形成、[[シナプス]]形成の制御や、感覚神経機能、[[カルシウム]]流入の調節などの機能を示す。p75の下流では[[JNK]]、[[p53]]、[[NF-κB]]、[[TRAFs]]、[[SC-1]]、[[Rho]]、[[Rac]]などの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死誘導===&lt;br /&gt;
====ニューロトロフィンと細胞死====&lt;br /&gt;
　p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される &amp;lt;ref name=ref4&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8878481 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の[[wikipedia:ja:鳥類|鳥類]][[網膜]]神経細胞である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8774880 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。中和[[wikipedia:ja:抗体|抗体]]を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、[[プログラム細胞死]]が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。[[交感神経細胞]]の培養系では、低濃度のNGF、[[wikipedia:ja:塩化カリウム|KCl]]で細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された&amp;lt;ref&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;pubmed&amp;gt;9472042&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref name=ref3 /&amp;gt;。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、[[sortilin]]を介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、[[Vps10-domain]]を有する。sortilinは[[脳]]、[[脊髄]]、[[wikipedia:ja:筋|筋]]など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;14985763&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。sortilinとp75の両者を発現する[[上頸神経節]]神経細胞や[[wikipedia:ja:血管平滑筋|血管平滑筋]]細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示す[[プリオン]]ペプチドPrPや[[&amp;amp;beta;アミロイド]]と結合する&amp;lt;ref&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;pubmed&amp;gt;11489911&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9410912&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、[[wikipedia:ja:狂犬病ウイルス|狂犬病ウイルス]]の[[wikipedia:ja:エンベロープ|エンベロープ]]上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く&amp;lt;ref&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;pubmed&amp;gt;9857182&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
====細胞死のシグナル伝達====&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/[[Bax]]経路の活性化が報告されている。JNKの下流で、[[c-jun]]の[[リン酸化]]、p53、[[Bad]]、[[Bim]]の活性化、[[ミトコンドリア]]へのBaxの移行と[[チトクロームc]]の放出、[[カスパーゼ]]の活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKは[[Fasリガンド]] の発現を誘導し、[[Fas受容体]]の活性化を介して神経細胞死を誘導する。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　p75自体は触媒活性を持たないが、様々な[[アダプタータンパク質]]と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質である[[neurotrophin receptor interacting factor]] ([[NRIF]])、[[neurotrophin associated cell death executor]] ([[NADE]])、[[neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen homolog|neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog]] ([[NRAGE]])、[[TNF receptor associated factors]] ([[TRAFs]])は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現する[[zinc fingerタンパク質]]である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される&amp;lt;ref name=ref103&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11750124&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref10545116&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10545116&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、p75の活性化は、[[E3ユビキチンリガーゼ]]である[[TRAF6]]によるNRIF 63の[[ユビキチン化]]を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;16252010&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。加えて、NRIFの核内移行には、[[γ-セクレターゼ]]によるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する&amp;lt;ref name=ref105&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10764727&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される&amp;lt;ref name=ref106&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10985348&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[Schwann cell factor 1]] ([[SC1]])はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させると[[wikipedia:BrdU|BrdU]]の取り込みが減少することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10485890 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、[[Cdc42]]の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9852160 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10894779 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この系では、p53ファミリーに属する[[p73]]が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform([[deltaN-p73]])が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞生存 ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、[[NF-κB]]も報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質である[[Traf 6]]が結合する。[[Interleukin-1 receptor-associated kinase]] ([[IRAK]])は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、[[MyD88]]と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、[[非典型的タンパク質キナーゼC]] ([[atypical protein kinase C]], [[aPKC]])、[[p62]]がリクルートされる。さらに、aPKCの基質である[[IκBキナーゼ]] ([[IKK]])が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16939974 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質である[[Shc]]のリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達する[[Akt]]のリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15056278 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75 exon III -/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8128229 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から[[松果体]]へ交感神経が投射しているが、p75 exon III-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。[[wikipedia:ja:汗腺|汗腺]]への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11978834 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していない[[wikipedia:ja:ニワトリ|ニワトリ]]胚の毛様体神経節神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。[[低分子量Gタンパク質]]の一種であるRhoファミリーは、[[アクチン]]骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10595511 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。p75によるRhoAの不活性化には、[[cAMP]]-[[cAMP依存性タンパク質キナーゼ]][[PKA]]シグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、PKAが活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している[[脂質ラフト]]に移行し、下流へのシグナル伝える &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12682012 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10234043 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、[[myelin associated glycoprotein]] ([[MAG]])、[[Nogo]]、[[oligodendrocyte glycoprotein]] ([[OMgp]]) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全て[[Nogo受容体]] (NgR)に結合することが知られている。NgRは[[GPIアンカー型タンパク質]]で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性は[[Rho guanine nucleotide dissociation inhibitor]] ([[Rho-GDI]])との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 動物モデル  ===&lt;br /&gt;
　Leeらは[[ジーンターゲッティング]]によりp75のexon3を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1317267 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、[[wikipedia:ja:潰瘍|潰瘍]]などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、[[カルシトニン遺伝子関連ペプチド]]や[[サブスタンスP]]を発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11559852 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、[[大脳皮質]]の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
{| class= &amp;quot;wikitable&amp;quot;&lt;br /&gt;
|+ 表．p75を介した細胞死誘導/細胞生存&lt;br /&gt;
| align=&amp;quot;center&amp;quot; style=&amp;quot;background:#f0f0f0;&amp;quot;|&#039;&#039;&#039;p75結合因子&#039;&#039;&#039;&lt;br /&gt;
| align=&amp;quot;center&amp;quot; style=&amp;quot;background:#f0f0f0;&amp;quot;|&#039;&#039;&#039;p75を介した細胞死誘導/細胞生存作用&#039;&#039;&#039;&lt;br /&gt;
| align=&amp;quot;center&amp;quot; style=&amp;quot;background:#f0f0f0;&amp;quot;|&#039;&#039;&#039;Reference&#039;&#039;&#039;&lt;br /&gt;
|-&lt;br /&gt;
| &#039;&#039;&#039;リガンド&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Neurotrophins||細胞死誘導/細胞生存||&amp;lt;ref name=ref101&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;8332899&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;&lt;br /&gt;
|-&lt;br /&gt;
| &#039;&#039;&#039;膜貫通タンパク質&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;Trks||細胞死誘導/細胞生存||&amp;lt;ref name=ref102&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;9927421&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;&lt;br /&gt;
|-&lt;br /&gt;
| &#039;&#039;&#039;アダプタータンパク質&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;NRIF&amp;lt;br&amp;gt;NADE&amp;lt;br&amp;gt;NRAGE/MAGE-D1&amp;lt;br&amp;gt;TRAFs||細胞死||&amp;lt;ref name=ref103&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11750124&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref10545116&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10545116&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref105&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10764727&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref106&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10985348&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref107&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;10514511&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;&lt;br /&gt;
|-&lt;br /&gt;
| &#039;&#039;&#039;アダプタータンパク質&#039;&#039;&#039;&amp;lt;br&amp;gt;TRAFs&amp;lt;br&amp;gt;IRAK||細胞生存||&amp;lt;ref name=ref107 /&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref108&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;11487608&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt; &amp;lt;ref name=ref109&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt;12034707&amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;&lt;br /&gt;
|}&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連  ==&lt;br /&gt;
　p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や[[虚血]]、[[てんかん]]発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する &amp;lt;ref name=ref15721744&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[アルツハイマー病]]は[[タウ]]タンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1309947 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している[[神経堤]]由来の[[wikipedia:ja:メラニン細胞|メラニン細胞]]は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[amyotrophic lateral sclerosis]] ([[ALS]])患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11771768 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[pilocarpin]]投与によるてんかんモデル動物では、[[海馬]]、[[梨状葉]]、[[内嗅皮質]]において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　[[皮質脊髄路]]の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 関連項目 ==&lt;br /&gt;
*[[軸索再生]]&lt;br /&gt;
*[[Nogo]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&amp;lt;references /&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=3089</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=3089"/>
		<updated>2012-02-26T18:13:24Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: p75&amp;lt;br&amp;gt; p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11114882 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|RTENOTITLE]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|RTENOTITLE]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 神経栄養因子との結合  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 3022937 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である &amp;lt;ref name=&amp;quot;ref3&amp;quot;&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 機能  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死の誘導  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8878481 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8774880 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10485890 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9852160 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;,&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10894779 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref name=&amp;quot;ref3&amp;quot; /&amp;gt;。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞生存 ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16939974 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15056278 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8128229 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11978834 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10595511 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12682012 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10234043 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 動物モデル  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1317267 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11559852 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1309947 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11771768 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references /&amp;gt; &amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[軸索再生]]の項目 &amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[Nogo]]の項目 &amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;（執筆者：藤田幸、山下俊英、担当編集委員：村上富士夫）&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2890</id>
		<title>軸索再生</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2890"/>
		<updated>2012-02-22T04:03:43Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: Axon regeneration&amp;lt;br&amp;gt;軸索再生とは、外傷などにより切断された神経細胞の軸索が標的細胞へ向かって伸展し、神経回路を再構築することである。末梢神経軸索が損傷領域を超えて再生するポテンシャルを有するのに対し、中枢神経系は神経細胞の複雑なネットワークで構成されており、一度損傷を受けてこのネットワークが破壊されると回復は難しい。切断された中枢神経軸索が再び伸展し、標的細胞とシナプスを形成することが出来れば機能的な回復が望めるはずであるが、実際にこのような現象はほとんど起こらない。損傷を受けた神経細胞が再び神経ネットワークに組み込まれて機能するためには、軸索の伸展、標的部位への誘導、標的細胞とのシナプス形成、ミエリン化という段階をふんだ再生が必要である。すなわち、損傷した中枢神経軸索から標的細胞への新たな軸索再生が不可欠である。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png|RTENOTITLE]][[Image:2. 軸索再生阻害のシグナル伝達機構.png|RTENOTITLE]]&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 中枢神経系における軸索再生  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ヒトを含む成体哺乳類の神経軸索が、外傷などにより切断された場合、末梢神経では損傷部を超えた軸索の再生が認められるのに対し、中枢神経では軸索の再生は難しいと考えられてきた。この原因として、中枢神経系の損傷部の環境が再生に適していないという外的要因と、中枢神経細胞自体の軸索伸長能が弱いという内的要因の二点があげられる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする外的要因  ===&lt;br /&gt;
哺乳類の中枢神経系には、軸索再生を抑止する機構が神経細胞を取り巻く周囲の細胞に存在すると考えられている。1920年代にRamon y Cajalは、末梢神経である後根神経の軸索を切断し、その後の軸索再生を観察した。再生しかけた後根神経の軸索は、脊髄の中には侵入することがなかった。1980年代には、DavidとAguayoが、脊髄損傷後の欠損部に末梢神経の周囲組織を移植し、この移植片内に軸索が再生することを観察した。以上の研究から、中枢神経の周囲の環境が、軸索の再生に適していないと考えられている。中枢神経細胞の再生を困難にさせる外的要因として、1) 軸索再生阻害因子、2) グリア瘢痕の形成、3) 炎症反応などが存在する。&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 1) 軸索再生阻害因子 ====&lt;br /&gt;
中枢神経軸索は、オリゴデンドロサイトの細胞膜表面のリン脂質からなるミエリンにより覆われている。軸索が損傷された後にも、ミエリンはdebrisとして残存し、この中には、複数の軸索再生阻害因子が含まれることが報告されている。中でも、myelin associated glycoprotein (MAG), Nogo, oligodendrocyte myelin glycoprotein (OMgp)についての研究が進んでいる。MAGは、1回膜貫通型の糖タンパク質であり、免疫グロブリン様ドメインを有する。Nogoは、2回膜貫通構造を持ち、スプライシングにより長さの異なる3種のタンパク質として発現する。このうち、最も長いNogo-Aには再生阻害作用を有する2つのドメインがある。N末端側のamino-Nogoと、疎水性領域に挟まれる66個のアミノ酸配列からなるペプチド配列Nogo-66である。OMgpは、GPIアンカー型のタンパク質で、セリンスレオニンリッチドメインとロイシンリッチリピートを有する (図1)。このように、これらの因子は全て構造が異なるにもかかわらず、Nogo受容体 (NgR)、PIR-Bといった共通の受容体を介して軸索再生阻害シグナルを伝える。NgRは細胞内ドメインを持たないGPIアンカー型タンパク質である。従って、NgR単独では細胞内にシグナルを伝えることは不可能で、神経栄養因子の受容体として知られるp75と共受容体を形成し、ミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達することが報告されている。p75はこれらの軸索再生阻害因子の存在下で、低分子量Gタンパク質であるRhoAを活性化することで軸索伸展を阻害する。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoAは、アクチン骨格系を制御する因子で、細胞内ではRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)と結合した不活性化の状態で安定となっている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。しかし、ある種の細胞においては、p75/NgRのみではリガンドで刺激してもRhoが活性化されない。そこで、新たにLingo-1が受容体複合体の構成要素として同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 14966521 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。こうして、NgR/p75/Lingo-1の受容体複合体形成により、Rhoが活性化されて軸索伸展が阻害されるという基本モデルが確立された（図2）。Rhoの活性化は、そのエフェクターであるRhoキナーゼの活性化を誘導し、軸索再生阻害作用を示す。これは、Rhoキナーゼの阻害剤がミエリン由来軸索再生阻害因子の作用を抑制することによって証明されている。さらに、この下流のシグナルとして、Rhoキナーゼの基質であるCRMP-2の不活性化が示されている。CRMP-2は、微小管構成タンパク質であるチュブリン二量体と結合し、微小管重合を促進することが知られている。MAG刺激で、CRMP-2はRhoキナーゼによるリン酸化を受けて不活性化し、微小管重合を抑制することから、ミエリン由来軸索再生阻害因子は、Rho/Rhoキナーゼの活性化を介して微小管重合を抑制し、軸索伸長阻害作用を示すことが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 近年、MAG、Nogo、OMgpの三者を欠損したマウスが作成された。中枢神経軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われるが、MAG、Nogo、OMgp全てを欠損したマウスにおいても、脊髄損傷後の有為な軸索再生は認められなかった。このことから、これら以外の軸索再生阻害因子による寄与も大きいことが考えられる &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 20547125 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MAG、Nogo、OMgp以外に軸索再生を阻害する因子として、軸索反発因子がある &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16858390 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。軸索反発因子は、発生期における神経回路の形成を担うことが知られている。脊髄損傷モデル動物では、損傷領域周辺で、Semaphorin、Ephrin、Wnt、Repulsive guidance molecule (RGM)などの軸索反発因子の発現が増強する。これらの因子の作用を減弱させることで、損傷後の神経軸索の再生や機能回復に繋がることが報告されている。脊髄損傷モデルにおいて、Sema3Aの発現上昇が確認されており、Sema3A阻害剤の投与により縫線核脊髄路の再生、運動機能の回復が示された。Ephrin-B3は、発生期に脊髄正中線に発現し、軸索反発因子として働くが、ミエリン存在下、神経突起の伸長を抑制することが示された。Ephrin-B3は成体マウス脊髄白質のオリゴデンドロサイトに発現することが確認されている。in vitroの神経突起伸展アッセイにおいて、Ephrin-B3が小脳顆粒細胞や大脳皮質神経細胞の突起伸展を抑制することが確認されている。in vivoの実験においても、Ephrin-B3の受容体であるEphA4欠損マウスでは、脊髄損傷後の皮質脊髄路と赤核脊髄路の再生と機能回復が示されたことから、Ephrin-B3は軸索再生阻害タンパク質の一種であると考えられている。Wnt1, Wnt5aの発現は、脊髄損傷後1日で損傷部周辺での発現が上昇する。これらの受容体であるRykの中和抗体の投与により、脊髄損傷後の再生軸索の増加が認められている。RGMは、GPIアンカー型のタンパク質であり、脊髄損傷後、損傷部周辺での発現上昇が確認されている。in vivoの神経突起伸展アッセイにおいて、RGMがRhoAの活性化を介して小脳顆粒細胞の突起伸展を抑制することが示されている。in vivoにおいても、脊髄損傷後2週間にわたり、RGM中和抗体を局所投与し、その機能を抑制すると、皮質脊髄路の再生及び運動機能の回復が認められている。RGMはオリゴデンドロサイト由来のミエリンに発現しているが、脊髄損傷後の損傷部位に集積するミクログリアにも強く発現している。これは、免疫系細胞の軸索再生への関与を示唆している。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 2) グリア瘢痕 ====&lt;br /&gt;
損傷を受けた中枢神経系では、損傷周囲部に反応性アストロサイトが集積し、グリア瘢痕と呼ばれる高密度の瘢痕組織を形成する。これは、軸索再生を妨げる物理的な障害となり得る。また、グリア瘢痕に集まる細胞から産生される因子は、化学的に軸索の再生を妨げる。損傷部位に集積する反応性アストロサイトは、軸索伸長を阻害するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (chondroitin sulphate proteoglycans: CSPGs)を産生する。CSPGsは長大な糖鎖である硫酸グリコサミノグリカンとコアタンパク質からなる分子で、aggrecan、brevican、neurocan、versican、phosphacan、NG2などが知られており、軸索伸長阻害作用を示す。脊髄損傷後、CSPGsのコアタンパク質からグリコサミノグリカンを除去するコンドロイチナーゼABCを投与すると、CSPGsが分解され、感覚神経線維と運動神経繊維の再生および、運動機能、固有感覚の回復が認められた。CSPGsはepidermal growth factor (EGF)受容体を介して軸索伸長阻害作用を示すことが示唆されている。脊髄損傷モデル動物に対して、EGF受容体の阻害剤を投与すると、縫線核脊髄路のセロトニン作動性神経繊維の再生、及び運動機能、膀胱機能の回復が認められた。他にも、瘢痕組織の線維芽細胞からは、再生反応を阻害するSemaphorin3Aが産生されることが知られている (上記1)参照)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、グリア瘢痕には、損傷治癒や機能回復を促す方向に作用するという面もある。グリア瘢痕の形成により、炎症細胞の遊走や細胞の変性を局所にとどめ、損傷領域を最小限に抑えられると考えられている。また、一部のアストロサイトは、軸索再生を促すことが示唆されている。glial fibrillary acid protein (GFAP)陽性の反応性アストロサイトを除去することにより、脊髄損傷後の脱髄の悪化、神経やオリゴデンドロサイトの細胞死の増加、運動機能の悪化することが示されている。脊髄損傷後のアストロサイトの反応性を制御する因子として、STAT3が報告されている。アストロサイトのSTAT3を欠損させたマウスでは、脊髄損傷後、アストロサイトの損傷部への遊走や蓄積が抑制される。また、STAT3を負に制御するSocs3をアストロサイトで欠損させたマウスでは、脊髄損傷後の運動機能の回復が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16783372 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==== 3) 炎症反応 ====&lt;br /&gt;
通常状態では、血液脳関門の存在のため、免疫細胞を含む血液系の細胞の中枢神経系への侵入は限定されている。しかし、損傷時には血液脳関門は破壊され、免疫系細胞が中枢神経系に侵入し、炎症反応を誘導する。免疫細胞は多くの因子を産生し、神経変性を惹起する方向に働くと考えられてきた。一方で、免疫反応が中枢神経の修復に寄与するという報告もあり、中枢神経の軸索再生に対して、促進と阻害の二面性をもつ。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の自然免疫の役割: 脊髄損傷後には、好中球、マクロファージなどが、損傷部修復のために集積するが、これらの細胞は、組織への障害性も併せ持つ。脊髄損傷後、好中球は活性化し、myeloperoxidaseやelastaseなどの傷害性因子を産生する。脊髄損傷モデル動物に、これらの因子の阻害剤を投与すると、機能的な回復が認められている。マクロファージも神経細胞やグリア細胞に対する傷害性因子を産生する。一方で、これらの細胞の活性化は損傷部位の修復にも貢献する。脊髄損傷後、LPSを投与しマクロファージからのサイトカイン産生を誘導すると、損傷部の空洞化が抑制され、神経線維の側枝形成が促されることが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の獲得免疫の役割: 獲得免疫系においては、リンパ球が主要な役割を担う。脊髄損傷後には、T細胞が中枢神経系のタンパク質に反応性を示し、活性化することが報告されている。これらのT細胞は脊髄損傷後、早期における組織障害を悪化させたり、神経変性を進行させる。一方で、myelin basic protein (MBP)に反応性を示すT細胞が、脊髄損傷後の組織修復や機能回復を促すという報告もある &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 18490917 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする内的要因  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
中枢神経軸索の再生能が低下する内的要因として、細胞内cAMP濃度の減少が考えられている。胎生期の神経細胞では、細胞内cAMP濃度が高いが、生後まもなく、神経細胞内のcAMP濃度が劇的に減少する。ミエリン存在下で培養した神経細胞に、細胞膜透過性のcAMPアナログであるdibutyryl cyclic AMP (db-cAMP)を処置すると、神経軸索の伸長が促される。cAMPの分解酵素phosphodiesteraseの阻害剤であるrolipramの投与により、cAMPの濃度上昇を誘導すると、脊髄損傷後のセロトニン作動性神経線維の再生が促され、運動機能が回復する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15173585 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この分子機構として、cAMP濃度上昇に伴う、転写因子cAMP response element binding protein (CREB)のリン酸化の亢進と、これに続くポリアミン合成酵素Arginase I (Arg I)の発現上昇が重要であると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の投与によっても、細胞内cAMPの濃度が上昇する。神経栄養因子はcAMPの合成は誘導せず、分解を抑制する。神経栄養因子がTrk受容体に結合すると、細胞内でextracellular signal-regulated kinase (Erk)の活性化が起こり、phosphodiesteraseが阻害される。この結果、cAMPの分解が抑制されて、細胞内cAMP濃度が上昇する。Erk活性化によるPDE活性阻害とdb-cAMPは相乗的にcAMPの濃度を上昇させる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索再生の再評価  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
O. Stewardらによると中枢神経の軸索再生は以下の様に定義されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12629662 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt;1) 中枢神経系から、中枢神経系ではない環境 (特に損傷などにより生じた瘢痕組織)へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;2) 宿主以外に由来する移植組織へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;3) 切断部またはその周囲から再生した軸索が生じている&amp;lt;br&amp;gt;4) もとの中枢神経系とは異なる経路で再生した軸索が走行している&amp;lt;br&amp;gt;5) 再生した軸索が妥当な再生距離を示す &amp;lt;br&amp;gt;損傷後5 ~ 7日: 損傷からの回復と、伸長反応の開始&amp;lt;br&amp;gt;損傷後7 ~ 10日: 再生軸索が損傷部位に達する&amp;lt;br&amp;gt;損傷後10 ~ 14日: 再生軸索が損傷部周囲を伸長&amp;lt;br&amp;gt;損傷後14 ~ 21日: 再生軸索が遠位の非損傷部位へ侵入&amp;lt;br&amp;gt;損傷後21日以降: 再生軸索が最大で約1mm /日の速度で遠位部の中を伸長&amp;lt;br&amp;gt;6) 再生中には、軸索が伸長時に観察されるような形態 (成長円錐のような先端)を示す &amp;lt;br&amp;gt;7) 再生した軸索は、通常の軸索のような走行を示さず、蛇行性に伸長する&amp;lt;br&amp;gt; 中枢神経の軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われる。完全損傷モデルの場合、全ての軸索が切断されるため、切断された脊髄の段端がはなれて、脳脊髄液で満たされた間隙ができる。また、損傷部周辺では二次的な変性がおこり、切断面をさらに遠ざけてしまう。そこで、組織へのダメージを最小限にするため、不完全損傷モデルが使用されることが多い。不完全損傷モデルには、腹側皮質脊髄路のみを残し、他の皮質脊髄路の繊維は全て切断するdorsal hemisectionモデルや、一側を完全切断して反対側を残すlateral hemisetionモデルがある。最近の研究から、成体哺乳類の中枢神経系においても、薬剤投与や遺伝子操作により、脊髄損傷モデル動物における軸索再生が誘導されることが報告されている。しかし一方で、これらの結果の再現性に疑問を投げかける研究結果も報告されている。2003年に、National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS)により、Facilities of Research Excellence – Spinal Cord Injury (FORE – SCI)というプログラムが開始され、それまでに報告されていた脊髄損傷モデル動物を用いた軸索再生研究の再評価がなされた。その結果、再現性が確認されたのは、12件中2件 (うち1件は報告されていたものよりも、弱い回復)のみであった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 22078756 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。これらの研究結果からも、中枢神経の軸索再生を実現することの難しさが伺える。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 末梢神経系における軸索再生  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
末梢神経は中枢神経に比べ、著明な軸索の再生が認められる。末梢神経では、細胞体が無傷であれば、軸索が切断されても再生が可能である。末梢神経系に存在するグリア細胞であるシュワン細胞は、損傷の刺激で増殖・活性化し、神経再生を促す。&amp;lt;br&amp;gt;末梢神経の軸索が切断されると、損傷部位より遠位の軸索は、ワーラー変性と呼ばれる過程により断片化し、ミクログリアなどの貪食細胞により除去される。この際、シュワン細胞は柱状に配列し、Büngner’s bandと呼ばれる構造を形成する。Büngner’s bandは、再生軸索の足場を確保するとともに、神経栄養因子を供給して、再生軸索の伸長を助ける。細胞体側の残存した軸索は (やや退縮するが)、成長円錐を形成し、Büngner’s bandの中を伸長する。&amp;lt;br&amp;gt; 末梢神経の再生に関しても、cAMPの細胞内濃度の上昇が重要である。上記の通り、神経栄養因子はcAMPの分解を抑制し、細胞内cAMP濃度を上昇させる。神経栄養因子とdb-cAMPの両方の投与により、脊髄損傷後の感覚神経軸索の再生が促される。損傷前に感覚神経の細胞体が存在する脊髄後根神経節にdb-cAMPを投与しておき、損傷後に神経栄養因子neurotrophin-3 (NT-3)の投与を行うと、損傷1-3ヶ月後に損傷領域を超えて感覚神経の再生が認められる。損傷領域を超えての軸索再生はdb-cAMP、NT-3それぞれ単独投与では認められないことから、脊髄損傷後の軸索再生に必要な細胞内cAMP濃度上昇を促すためには、cAMPの投与と分解の抑制の両方が必要である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12086637 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;, &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12086638 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references /&amp;gt; &lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[p75]]の項目&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[シュワン細胞]]の項目&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt; (執筆担当者: 藤田幸、山下俊英、担当編集委員: 村上冨士夫)&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2889</id>
		<title>軸索再生</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2889"/>
		<updated>2012-02-22T03:50:57Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: Axon regeneration&amp;lt;br&amp;gt;軸索再生とは、外傷などにより切断された神経細胞の軸索が標的細胞へ向かって伸展し、神経回路を再構築することである。末梢神経軸索が損傷領域を超えて再生するポテンシャルを有するのに対し、中枢神経系は神経細胞の複雑なネットワークで構成されており、一度損傷を受けてこのネットワークが破壊されると回復は難しい。切断された中枢神経軸索が再び伸展し、標的細胞とシナプスを形成することが出来れば機能的な回復が望めるはずであるが、実際にこのような現象はほとんど起こらない。損傷を受けた神経細胞が再び神経ネットワークに組み込まれて機能するためには、軸索の伸展、標的部位への誘導、標的細胞とのシナプス形成、ミエリン化という段階をふんだ再生が必要である。すなわち、損傷した中枢神経軸索から標的細胞への新たな軸索再生が不可欠である。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png|RTENOTITLE]][[Image:2. 軸索再生阻害のシグナル伝達機構.png|RTENOTITLE]]&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 中枢神経系における軸索再生  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ヒトを含む成体哺乳類の神経軸索が、外傷などにより切断された場合、末梢神経では損傷部を超えた軸索の再生が認められるのに対し、中枢神経では軸索の再生は難しいと考えられてきた。この原因として、中枢神経系の損傷部の環境が再生に適していないという外的要因と、中枢神経細胞自体の軸索伸長能が弱いという内的要因の二点があげられる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする外的要因  ===&lt;br /&gt;
哺乳類の中枢神経系には、軸索再生を抑止する機構が神経細胞を取り巻く周囲の細胞に存在すると考えられている。1920年代にRamon y Cajalは、末梢神経である後根神経の軸索を切断し、その後の軸索再生を観察した。再生しかけた後根神経の軸索は、脊髄の中には侵入することがなかった。1980年代には、DavidとAguayoが、脊髄損傷後の欠損部に末梢神経の周囲組織を移植し、この移植片内に軸索が再生することを観察した。以上の研究から、中枢神経の周囲の環境が、軸索の再生に適していないと考えられている。中枢神経細胞の再生を困難にさせる外的要因として、1) 軸索再生阻害因子、2) グリア瘢痕の形成、3) 炎症反応などが存在する。&amp;lt;br&amp;gt;1) 軸索再生阻害因子&amp;lt;br&amp;gt; 中枢神経軸索は、オリゴデンドロサイトの細胞膜表面のリン脂質からなるミエリンにより覆われている。軸索が損傷された後にも、ミエリンはdebrisとして残存し、この中には、複数の軸索再生阻害因子が含まれることが報告されている。中でも、myelin associated glycoprotein (MAG), Nogo, oligodendrocyte myelin glycoprotein (OMgp)についての研究が進んでいる。MAGは、1回膜貫通型の糖タンパク質であり、免疫グロブリン様ドメインを有する。Nogoは、2回膜貫通構造を持ち、スプライシングにより長さの異なる3種のタンパク質として発現する。このうち、最も長いNogo-Aには再生阻害作用を有する2つのドメインがある。N末端側のamino-Nogoと、疎水性領域に挟まれる66個のアミノ酸配列からなるペプチド配列Nogo-66である。OMgpは、GPIアンカー型のタンパク質で、セリンスレオニンリッチドメインとロイシンリッチリピートを有する (図1)。このように、これらの因子は全て構造が異なるにもかかわらず、Nogo受容体 (NgR)、PIR-Bといった共通の受容体を介して軸索再生阻害シグナルを伝える。NgRは細胞内ドメインを持たないGPIアンカー型タンパク質である。従って、NgR単独では細胞内にシグナルを伝えることは不可能で、神経栄養因子の受容体として知られるp75と共受容体を形成し、ミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達することが報告されている。p75はこれらの軸索再生阻害因子の存在下で、低分子量Gタンパク質であるRhoAを活性化することで軸索伸展を阻害する。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoAは、アクチン骨格系を制御する因子で、細胞内ではRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)と結合した不活性化の状態で安定となっている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。しかし、ある種の細胞においては、p75/NgRのみではリガンドで刺激してもRhoが活性化されない。そこで、新たにLingo-1が受容体複合体の構成要素として同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 14966521 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。こうして、NgR/p75/Lingo-1の受容体複合体形成により、Rhoが活性化されて軸索伸展が阻害されるという基本モデルが確立された（図2）。Rhoの活性化は、そのエフェクターであるRhoキナーゼの活性化を誘導し、軸索再生阻害作用を示す。これは、Rhoキナーゼの阻害剤がミエリン由来軸索再生阻害因子の作用を抑制することによって証明されている。さらに、この下流のシグナルとして、Rhoキナーゼの基質であるCRMP-2の不活性化が示されている。CRMP-2は、微小管構成タンパク質であるチュブリン二量体と結合し、微小管重合を促進することが知られている。MAG刺激で、CRMP-2はRhoキナーゼによるリン酸化を受けて不活性化し、微小管重合を抑制することから、ミエリン由来軸索再生阻害因子は、Rho/Rhoキナーゼの活性化を介して微小管重合を抑制し、軸索伸長阻害作用を示すことが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 近年、MAG、Nogo、OMgpの三者を欠損したマウスが作成された。中枢神経軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われるが、MAG、Nogo、OMgp全てを欠損したマウスにおいても、脊髄損傷後の有為な軸索再生は認められなかった。このことから、これら以外の軸索再生阻害因子による寄与も大きいことが考えられる &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 20547125 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MAG、Nogo、OMgp以外に軸索再生を阻害する因子として、軸索反発因子がある &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16858390 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。軸索反発因子は、発生期における神経回路の形成を担うことが知られている。脊髄損傷モデル動物では、損傷領域周辺で、Semaphorin、Ephrin、Wnt、Repulsive guidance molecule (RGM)などの軸索反発因子の発現が増強する。これらの因子の作用を減弱させることで、損傷後の神経軸索の再生や機能回復に繋がることが報告されている。脊髄損傷モデルにおいて、Sema3Aの発現上昇が確認されており、Sema3A阻害剤の投与により縫線核脊髄路の再生、運動機能の回復が示された。Ephrin-B3は、発生期に脊髄正中線に発現し、軸索反発因子として働くが、ミエリン存在下、神経突起の伸長を抑制することが示された。Ephrin-B3は成体マウス脊髄白質のオリゴデンドロサイトに発現することが確認されている。in vitroの神経突起伸展アッセイにおいて、Ephrin-B3が小脳顆粒細胞や大脳皮質神経細胞の突起伸展を抑制することが確認されている。in vivoの実験においても、Ephrin-B3の受容体であるEphA4欠損マウスでは、脊髄損傷後の皮質脊髄路と赤核脊髄路の再生と機能回復が示されたことから、Ephrin-B3は軸索再生阻害タンパク質の一種であると考えられている。Wnt1, Wnt5aの発現は、脊髄損傷後1日で損傷部周辺での発現が上昇する。これらの受容体であるRykの中和抗体の投与により、脊髄損傷後の再生軸索の増加が認められている。RGMは、GPIアンカー型のタンパク質であり、脊髄損傷後、損傷部周辺での発現上昇が確認されている。in vivoの神経突起伸展アッセイにおいて、RGMがRhoAの活性化を介して小脳顆粒細胞の突起伸展を抑制することが示されている。in vivoにおいても、脊髄損傷後2週間にわたり、RGM中和抗体を局所投与し、その機能を抑制すると、皮質脊髄路の再生及び運動機能の回復が認められている。RGMはオリゴデンドロサイト由来のミエリンに発現しているが、脊髄損傷後の損傷部位に集積するミクログリアにも強く発現している。これは、免疫系細胞の軸索再生への関与を示唆している。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
2) グリア瘢痕&amp;lt;br&amp;gt; 損傷を受けた中枢神経系では、損傷周囲部に反応性アストロサイトが集積し、グリア瘢痕と呼ばれる高密度の瘢痕組織を形成する。これは、軸索再生を妨げる物理的な障害となり得る。また、グリア瘢痕に集まる細胞から産生される因子は、化学的に軸索の再生を妨げる。損傷部位に集積する反応性アストロサイトは、軸索伸長を阻害するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (chondroitin sulphate proteoglycans: CSPGs)を産生する。CSPGsは長大な糖鎖である硫酸グリコサミノグリカンとコアタンパク質からなる分子で、aggrecan、brevican、neurocan、versican、phosphacan、NG2などが知られており、軸索伸長阻害作用を示す。脊髄損傷後、CSPGsのコアタンパク質からグリコサミノグリカンを除去するコンドロイチナーゼABCを投与すると、CSPGsが分解され、感覚神経線維と運動神経繊維の再生および、運動機能、固有感覚の回復が認められた。CSPGsはepidermal growth factor (EGF)受容体を介して軸索伸長阻害作用を示すことが示唆されている。脊髄損傷モデル動物に対して、EGF受容体の阻害剤を投与すると、縫線核脊髄路のセロトニン作動性神経繊維の再生、及び運動機能、膀胱機能の回復が認められた。他にも、瘢痕組織の線維芽細胞からは、再生反応を阻害するSemaphorin3Aが産生されることが知られている (上記1)参照)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、グリア瘢痕には、損傷治癒や機能回復を促す方向に作用するという面もある。グリア瘢痕の形成により、炎症細胞の遊走や細胞の変性を局所にとどめ、損傷領域を最小限に抑えられると考えられている。また、一部のアストロサイトは、軸索再生を促すことが示唆されている。glial fibrillary acid protein (GFAP)陽性の反応性アストロサイトを除去することにより、脊髄損傷後の脱髄の悪化、神経やオリゴデンドロサイトの細胞死の増加、運動機能の悪化することが示されている。脊髄損傷後のアストロサイトの反応性を制御する因子として、STAT3が報告されている。アストロサイトのSTAT3を欠損させたマウスでは、脊髄損傷後、アストロサイトの損傷部への遊走や蓄積が抑制される。また、STAT3を負に制御するSocs3をアストロサイトで欠損させたマウスでは、脊髄損傷後の運動機能の回復が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16783372 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
3) 炎症反応&amp;lt;br&amp;gt; 通常状態では、血液脳関門の存在のため、免疫細胞を含む血液系の細胞の中枢神経系への侵入は限定されている。しかし、損傷時には血液脳関門は破壊され、免疫系細胞が中枢神経系に侵入し、炎症反応を誘導する。免疫細胞は多くの因子を産生し、神経変性を惹起する方向に働くと考えられてきた。一方で、免疫反応が中枢神経の修復に寄与するという報告もあり、中枢神経の軸索再生に対して、促進と阻害の二面性をもつ。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の自然免疫の役割: 脊髄損傷後には、好中球、マクロファージなどが、損傷部修復のために集積するが、これらの細胞は、組織への障害性も併せ持つ。脊髄損傷後、好中球は活性化し、myeloperoxidaseやelastaseなどの傷害性因子を産生する。脊髄損傷モデル動物に、これらの因子の阻害剤を投与すると、機能的な回復が認められている。マクロファージも神経細胞やグリア細胞に対する傷害性因子を産生する。一方で、これらの細胞の活性化は損傷部位の修復にも貢献する。脊髄損傷後、LPSを投与しマクロファージからのサイトカイン産生を誘導すると、損傷部の空洞化が抑制され、神経線維の側枝形成が促されることが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の獲得免疫の役割: 獲得免疫系においては、リンパ球が主要な役割を担う。脊髄損傷後には、T細胞が中枢神経系のタンパク質に反応性を示し、活性化することが報告されている。これらのT細胞は脊髄損傷後、早期における組織障害を悪化させたり、神経変性を進行させる。一方で、myelin basic protein (MBP)に反応性を示すT細胞が、脊髄損傷後の組織修復や機能回復を促すという報告もある &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 18490917 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする内的要因  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
中枢神経軸索の再生能が低下する内的要因として、細胞内cAMP濃度の減少が考えられている。胎生期の神経細胞では、細胞内cAMP濃度が高いが、生後まもなく、神経細胞内のcAMP濃度が劇的に減少する。ミエリン存在下で培養した神経細胞に、細胞膜透過性のcAMPアナログであるdibutyryl cyclic AMP (db-cAMP)を処置すると、神経軸索の伸長が促される。cAMPの分解酵素phosphodiesteraseの阻害剤であるrolipramの投与により、cAMPの濃度上昇を誘導すると、脊髄損傷後のセロトニン作動性神経線維の再生が促され、運動機能が回復する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15173585 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この分子機構として、cAMP濃度上昇に伴う、転写因子cAMP response element binding protein (CREB)のリン酸化の亢進と、これに続くポリアミン合成酵素Arginase I (Arg I)の発現上昇が重要であると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の投与によっても、細胞内cAMPの濃度が上昇する。神経栄養因子はcAMPの合成は誘導せず、分解を抑制する。神経栄養因子がTrk受容体に結合すると、細胞内でextracellular signal-regulated kinase (Erk)の活性化が起こり、phosphodiesteraseが阻害される。この結果、cAMPの分解が抑制されて、細胞内cAMP濃度が上昇する。Erk活性化によるPDE活性阻害とdb-cAMPは相乗的にcAMPの濃度を上昇させる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索再生の再評価  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
O. Stewardらによると中枢神経の軸索再生は以下の様に定義されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12629662 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt;1) 中枢神経系から、中枢神経系ではない環境 (特に損傷などにより生じた瘢痕組織)へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;2) 宿主以外に由来する移植組織へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;3) 切断部またはその周囲から再生した軸索が生じている&amp;lt;br&amp;gt;4) もとの中枢神経系とは異なる経路で再生した軸索が走行している&amp;lt;br&amp;gt;5) 再生した軸索が妥当な再生距離を示す &amp;lt;br&amp;gt;損傷後5 ~ 7日: 損傷からの回復と、伸長反応の開始&amp;lt;br&amp;gt;損傷後7 ~ 10日: 再生軸索が損傷部位に達する&amp;lt;br&amp;gt;損傷後10 ~ 14日: 再生軸索が損傷部周囲を伸長&amp;lt;br&amp;gt;損傷後14 ~ 21日: 再生軸索が遠位の非損傷部位へ侵入&amp;lt;br&amp;gt;損傷後21日以降: 再生軸索が最大で約1mm /日の速度で遠位部の中を伸長&amp;lt;br&amp;gt;6) 再生中には、軸索が伸長時に観察されるような形態 (成長円錐のような先端)を示す &amp;lt;br&amp;gt;7) 再生した軸索は、通常の軸索のような走行を示さず、蛇行性に伸長する&amp;lt;br&amp;gt; 中枢神経の軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われる。完全損傷モデルの場合、全ての軸索が切断されるため、切断された脊髄の段端がはなれて、脳脊髄液で満たされた間隙ができる。また、損傷部周辺では二次的な変性がおこり、切断面をさらに遠ざけてしまう。そこで、組織へのダメージを最小限にするため、不完全損傷モデルが使用されることが多い。不完全損傷モデルには、腹側皮質脊髄路のみを残し、他の皮質脊髄路の繊維は全て切断するdorsal hemisectionモデルや、一側を完全切断して反対側を残すlateral hemisetionモデルがある。最近の研究から、成体哺乳類の中枢神経系においても、薬剤投与や遺伝子操作により、脊髄損傷モデル動物における軸索再生が誘導されることが報告されている。しかし一方で、これらの結果の再現性に疑問を投げかける研究結果も報告されている。2003年に、National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS)により、Facilities of Research Excellence – Spinal Cord Injury (FORE – SCI)というプログラムが開始され、それまでに報告されていた脊髄損傷モデル動物を用いた軸索再生研究の再評価がなされた。その結果、再現性が確認されたのは、12件中2件 (うち1件は報告されていたものよりも、弱い回復)のみであった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 22078756 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。これらの研究結果からも、中枢神経の軸索再生を実現することの難しさが伺える。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 末梢神経系における軸索再生  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
末梢神経は中枢神経に比べ、著明な軸索の再生が認められる。末梢神経では、細胞体が無傷であれば、軸索が切断されても再生が可能である。末梢神経系に存在するグリア細胞であるシュワン細胞は、損傷の刺激で増殖・活性化し、神経再生を促す。&amp;lt;br&amp;gt;末梢神経の軸索が切断されると、損傷部位より遠位の軸索は、ワーラー変性と呼ばれる過程により断片化し、ミクログリアなどの貪食細胞により除去される。この際、シュワン細胞は柱状に配列し、Büngner’s bandと呼ばれる構造を形成する。Büngner’s bandは、再生軸索の足場を確保するとともに、神経栄養因子を供給して、再生軸索の伸長を助ける。細胞体側の残存した軸索は (やや退縮するが)、成長円錐を形成し、Büngner’s bandの中を伸長する。&amp;lt;br&amp;gt; 末梢神経の再生に関しても、cAMPの細胞内濃度の上昇が重要である。上記の通り、神経栄養因子はcAMPの分解を抑制し、細胞内cAMP濃度を上昇させる。神経栄養因子とdb-cAMPの両方の投与により、脊髄損傷後の感覚神経軸索の再生が促される。損傷前に感覚神経の細胞体が存在する脊髄後根神経節にdb-cAMPを投与しておき、損傷後に神経栄養因子neurotrophin-3 (NT-3)の投与を行うと、損傷1-3ヶ月後に損傷領域を超えて感覚神経の再生が認められる。損傷領域を超えての軸索再生はdb-cAMP、NT-3それぞれ単独投与では認められないことから、脊髄損傷後の軸索再生に必要な細胞内cAMP濃度上昇を促すためには、cAMPの投与と分解の抑制の両方が必要である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12086637 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;, &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12086638 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references /&amp;gt; &lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[p75]]の項目&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[シュワン細胞]]の項目&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt; (執筆担当者: 藤田幸、山下俊英、担当編集委員: 村上冨士夫)&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2888</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2888"/>
		<updated>2012-02-22T03:50:33Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: p75&amp;lt;br&amp;gt; p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11114882 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|RTENOTITLE]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|RTENOTITLE]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 神経栄養因子との結合 ==&lt;br /&gt;
p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 3022937 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である &amp;lt;ref name=ref3&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 機能 ==&lt;br /&gt;
Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死の誘導 ===&lt;br /&gt;
p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8878481 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8774880 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10485890 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9852160 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;,&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10894779 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref name=ref3 /&amp;gt;。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&lt;br /&gt;
神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16939974 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15056278 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御 ===&lt;br /&gt;
p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8128229 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11978834 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10595511 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12682012 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10234043 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 動物モデル ==&lt;br /&gt;
Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1317267 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11559852 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連 ==&lt;br /&gt;
p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1309947 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11771768 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献 ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[軸索再生]]の項目&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;脳科学辞典の[[Nogo]]の項目&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;（執筆者：藤田幸、山下俊英、担当編集委員：村上冨士夫）&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2887</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2887"/>
		<updated>2012-02-22T03:47:10Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: p75&amp;lt;br&amp;gt; p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11114882 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|RTENOTITLE]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|RTENOTITLE]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 神経栄養因子との結合 ==&lt;br /&gt;
p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 3022937 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である &amp;lt;ref name=ref3&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 機能 ==&lt;br /&gt;
Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死の誘導 ===&lt;br /&gt;
p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8878481 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8774880 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10485890 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9852160 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;,&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10894779 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref name=ref3 /&amp;gt;。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&lt;br /&gt;
神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16939974 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15056278 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御 ===&lt;br /&gt;
p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8128229 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11978834 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10595511 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12682012 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10234043 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 動物モデル ==&lt;br /&gt;
Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1317267 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11559852 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連 ==&lt;br /&gt;
p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1309947 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11771768 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献 ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
（執筆者：藤田幸、山下俊英、担当編集委員：村上冨士夫）&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2886</id>
		<title>軸索再生</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2886"/>
		<updated>2012-02-22T03:42:04Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: Axon regeneration&amp;lt;br&amp;gt;軸索再生とは、外傷などにより切断された神経細胞の軸索が標的細胞へ向かって伸展し、神経回路を再構築することである。末梢神経軸索が損傷領域を超えて再生するポテンシャルを有するのに対し、中枢神経系は神経細胞の複雑なネットワークで構成されており、一度損傷を受けてこのネットワークが破壊されると回復は難しい。切断された中枢神経軸索が再び伸展し、標的細胞とシナプスを形成することが出来れば機能的な回復が望めるはずであるが、実際にこのような現象はほとんど起こらない。損傷を受けた神経細胞が再び神経ネットワークに組み込まれて機能するためには、軸索の伸展、標的部位への誘導、標的細胞とのシナプス形成、ミエリン化という段階をふんだ再生が必要である。すなわち、損傷した中枢神経軸索から標的細胞への新たな軸索再生が不可欠である。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png|RTENOTITLE]][[Image:2. 軸索再生阻害のシグナル伝達機構.png|RTENOTITLE]]&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 中枢神経系における軸索再生  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ヒトを含む成体哺乳類の神経軸索が、外傷などにより切断された場合、末梢神経では損傷部を超えた軸索の再生が認められるのに対し、中枢神経では軸索の再生は難しいと考えられてきた。この原因として、中枢神経系の損傷部の環境が再生に適していないという外的要因と、中枢神経細胞自体の軸索伸長能が弱いという内的要因の二点があげられる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする外的要因  ===&lt;br /&gt;
哺乳類の中枢神経系には、軸索再生を抑止する機構が神経細胞を取り巻く周囲の細胞に存在すると考えられている。1920年代にRamon y Cajalは、末梢神経である後根神経の軸索を切断し、その後の軸索再生を観察した。再生しかけた後根神経の軸索は、脊髄の中には侵入することがなかった。1980年代には、DavidとAguayoが、脊髄損傷後の欠損部に末梢神経の周囲組織を移植し、この移植片内に軸索が再生することを観察した。以上の研究から、中枢神経の周囲の環境が、軸索の再生に適していないと考えられている。中枢神経細胞の再生を困難にさせる外的要因として、1) 軸索再生阻害因子、2) グリア瘢痕の形成、3) 炎症反応などが存在する。&amp;lt;br&amp;gt;1) 軸索再生阻害因子&amp;lt;br&amp;gt; 中枢神経軸索は、オリゴデンドロサイトの細胞膜表面のリン脂質からなるミエリンにより覆われている。軸索が損傷された後にも、ミエリンはdebrisとして残存し、この中には、複数の軸索再生阻害因子が含まれることが報告されている。中でも、myelin associated glycoprotein (MAG), Nogo, oligodendrocyte myelin glycoprotein (OMgp)についての研究が進んでいる。MAGは、1回膜貫通型の糖タンパク質であり、免疫グロブリン様ドメインを有する。Nogoは、2回膜貫通構造を持ち、スプライシングにより長さの異なる3種のタンパク質として発現する。このうち、最も長いNogo-Aには再生阻害作用を有する2つのドメインがある。N末端側のamino-Nogoと、疎水性領域に挟まれる66個のアミノ酸配列からなるペプチド配列Nogo-66である。OMgpは、GPIアンカー型のタンパク質で、セリンスレオニンリッチドメインとロイシンリッチリピートを有する (図1)。このように、これらの因子は全て構造が異なるにもかかわらず、Nogo受容体 (NgR)、PIR-Bといった共通の受容体を介して軸索再生阻害シグナルを伝える。NgRは細胞内ドメインを持たないGPIアンカー型タンパク質である。従って、NgR単独では細胞内にシグナルを伝えることは不可能で、神経栄養因子の受容体として知られるp75と共受容体を形成し、ミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達することが報告されている。p75はこれらの軸索再生阻害因子の存在下で、低分子量Gタンパク質であるRhoAを活性化することで軸索伸展を阻害する。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoAは、アクチン骨格系を制御する因子で、細胞内ではRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)と結合した不活性化の状態で安定となっている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。しかし、ある種の細胞においては、p75/NgRのみではリガンドで刺激してもRhoが活性化されない。そこで、新たにLingo-1が受容体複合体の構成要素として同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 14966521 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。こうして、NgR/p75/Lingo-1の受容体複合体形成により、Rhoが活性化されて軸索伸展が阻害されるという基本モデルが確立された（図2）。Rhoの活性化は、そのエフェクターであるRhoキナーゼの活性化を誘導し、軸索再生阻害作用を示す。これは、Rhoキナーゼの阻害剤がミエリン由来軸索再生阻害因子の作用を抑制することによって証明されている。さらに、この下流のシグナルとして、Rhoキナーゼの基質であるCRMP-2の不活性化が示されている。CRMP-2は、微小管構成タンパク質であるチュブリン二量体と結合し、微小管重合を促進することが知られている。MAG刺激で、CRMP-2はRhoキナーゼによるリン酸化を受けて不活性化し、微小管重合を抑制することから、ミエリン由来軸索再生阻害因子は、Rho/Rhoキナーゼの活性化を介して微小管重合を抑制し、軸索伸長阻害作用を示すことが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 近年、MAG、Nogo、OMgpの三者を欠損したマウスが作成された。中枢神経軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われるが、MAG、Nogo、OMgp全てを欠損したマウスにおいても、脊髄損傷後の有為な軸索再生は認められなかった。このことから、これら以外の軸索再生阻害因子による寄与も大きいことが考えられる &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 20547125 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。MAG、Nogo、OMgp以外に軸索再生を阻害する因子として、軸索反発因子がある &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16858390 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。軸索反発因子は、発生期における神経回路の形成を担うことが知られている。脊髄損傷モデル動物では、損傷領域周辺で、Semaphorin、Ephrin、Wnt、Repulsive guidance molecule (RGM)などの軸索反発因子の発現が増強する。これらの因子の作用を減弱させることで、損傷後の神経軸索の再生や機能回復に繋がることが報告されている。脊髄損傷モデルにおいて、Sema3Aの発現上昇が確認されており、Sema3A阻害剤の投与により縫線核脊髄路の再生、運動機能の回復が示された。Ephrin-B3は、発生期に脊髄正中線に発現し、軸索反発因子として働くが、ミエリン存在下、神経突起の伸長を抑制することが示された。Ephrin-B3は成体マウス脊髄白質のオリゴデンドロサイトに発現することが確認されている。in vitroの神経突起伸展アッセイにおいて、Ephrin-B3が小脳顆粒細胞や大脳皮質神経細胞の突起伸展を抑制することが確認されている。in vivoの実験においても、Ephrin-B3の受容体であるEphA4欠損マウスでは、脊髄損傷後の皮質脊髄路と赤核脊髄路の再生と機能回復が示されたことから、Ephrin-B3は軸索再生阻害タンパク質の一種であると考えられている。Wnt1, Wnt5aの発現は、脊髄損傷後1日で損傷部周辺での発現が上昇する。これらの受容体であるRykの中和抗体の投与により、脊髄損傷後の再生軸索の増加が認められている。RGMは、GPIアンカー型のタンパク質であり、脊髄損傷後、損傷部周辺での発現上昇が確認されている。in vivoの神経突起伸展アッセイにおいて、RGMがRhoAの活性化を介して小脳顆粒細胞の突起伸展を抑制することが示されている。in vivoにおいても、脊髄損傷後2週間にわたり、RGM中和抗体を局所投与し、その機能を抑制すると、皮質脊髄路の再生及び運動機能の回復が認められている。RGMはオリゴデンドロサイト由来のミエリンに発現しているが、脊髄損傷後の損傷部位に集積するミクログリアにも強く発現している。これは、免疫系細胞の軸索再生への関与を示唆している。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
2) グリア瘢痕&amp;lt;br&amp;gt; 損傷を受けた中枢神経系では、損傷周囲部に反応性アストロサイトが集積し、グリア瘢痕と呼ばれる高密度の瘢痕組織を形成する。これは、軸索再生を妨げる物理的な障害となり得る。また、グリア瘢痕に集まる細胞から産生される因子は、化学的に軸索の再生を妨げる。損傷部位に集積する反応性アストロサイトは、軸索伸長を阻害するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (chondroitin sulphate proteoglycans: CSPGs)を産生する。CSPGsは長大な糖鎖である硫酸グリコサミノグリカンとコアタンパク質からなる分子で、aggrecan、brevican、neurocan、versican、phosphacan、NG2などが知られており、軸索伸長阻害作用を示す。脊髄損傷後、CSPGsのコアタンパク質からグリコサミノグリカンを除去するコンドロイチナーゼABCを投与すると、CSPGsが分解され、感覚神経線維と運動神経繊維の再生および、運動機能、固有感覚の回復が認められた。CSPGsはepidermal growth factor (EGF)受容体を介して軸索伸長阻害作用を示すことが示唆されている。脊髄損傷モデル動物に対して、EGF受容体の阻害剤を投与すると、縫線核脊髄路のセロトニン作動性神経繊維の再生、及び運動機能、膀胱機能の回復が認められた。他にも、瘢痕組織の線維芽細胞からは、再生反応を阻害するSemaphorin3Aが産生されることが知られている (上記1)参照)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、グリア瘢痕には、損傷治癒や機能回復を促す方向に作用するという面もある。グリア瘢痕の形成により、炎症細胞の遊走や細胞の変性を局所にとどめ、損傷領域を最小限に抑えられると考えられている。また、一部のアストロサイトは、軸索再生を促すことが示唆されている。glial fibrillary acid protein (GFAP)陽性の反応性アストロサイトを除去することにより、脊髄損傷後の脱髄の悪化、神経やオリゴデンドロサイトの細胞死の増加、運動機能の悪化することが示されている。脊髄損傷後のアストロサイトの反応性を制御する因子として、STAT3が報告されている。アストロサイトのSTAT3を欠損させたマウスでは、脊髄損傷後、アストロサイトの損傷部への遊走や蓄積が抑制される。また、STAT3を負に制御するSocs3をアストロサイトで欠損させたマウスでは、脊髄損傷後の運動機能の回復が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16783372 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
3) 炎症反応&amp;lt;br&amp;gt; 通常状態では、血液脳関門の存在のため、免疫細胞を含む血液系の細胞の中枢神経系への侵入は限定されている。しかし、損傷時には血液脳関門は破壊され、免疫系細胞が中枢神経系に侵入し、炎症反応を誘導する。免疫細胞は多くの因子を産生し、神経変性を惹起する方向に働くと考えられてきた。一方で、免疫反応が中枢神経の修復に寄与するという報告もあり、中枢神経の軸索再生に対して、促進と阻害の二面性をもつ。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の自然免疫の役割: 脊髄損傷後には、好中球、マクロファージなどが、損傷部修復のために集積するが、これらの細胞は、組織への障害性も併せ持つ。脊髄損傷後、好中球は活性化し、myeloperoxidaseやelastaseなどの傷害性因子を産生する。脊髄損傷モデル動物に、これらの因子の阻害剤を投与すると、機能的な回復が認められている。マクロファージも神経細胞やグリア細胞に対する傷害性因子を産生する。一方で、これらの細胞の活性化は損傷部位の修復にも貢献する。脊髄損傷後、LPSを投与しマクロファージからのサイトカイン産生を誘導すると、損傷部の空洞化が抑制され、神経線維の側枝形成が促されることが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の獲得免疫の役割: 獲得免疫系においては、リンパ球が主要な役割を担う。脊髄損傷後には、T細胞が中枢神経系のタンパク質に反応性を示し、活性化することが報告されている。これらのT細胞は脊髄損傷後、早期における組織障害を悪化させたり、神経変性を進行させる。一方で、myelin basic protein (MBP)に反応性を示すT細胞が、脊髄損傷後の組織修復や機能回復を促すという報告もある &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 18490917 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする内的要因  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
中枢神経軸索の再生能が低下する内的要因として、細胞内cAMP濃度の減少が考えられている。胎生期の神経細胞では、細胞内cAMP濃度が高いが、生後まもなく、神経細胞内のcAMP濃度が劇的に減少する。ミエリン存在下で培養した神経細胞に、細胞膜透過性のcAMPアナログであるdibutyryl cyclic AMP (db-cAMP)を処置すると、神経軸索の伸長が促される。cAMPの分解酵素phosphodiesteraseの阻害剤であるrolipramの投与により、cAMPの濃度上昇を誘導すると、脊髄損傷後のセロトニン作動性神経線維の再生が促され、運動機能が回復する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15173585 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この分子機構として、cAMP濃度上昇に伴う、転写因子cAMP response element binding protein (CREB)のリン酸化の亢進と、これに続くポリアミン合成酵素Arginase I (Arg I)の発現上昇が重要であると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の投与によっても、細胞内cAMPの濃度が上昇する。神経栄養因子はcAMPの合成は誘導せず、分解を抑制する。神経栄養因子がTrk受容体に結合すると、細胞内でextracellular signal-regulated kinase (Erk)の活性化が起こり、phosphodiesteraseが阻害される。この結果、cAMPの分解が抑制されて、細胞内cAMP濃度が上昇する。Erk活性化によるPDE活性阻害とdb-cAMPは相乗的にcAMPの濃度を上昇させる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索再生の再評価  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
O. Stewardらによると中枢神経の軸索再生は以下の様に定義されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12629662 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt;1) 中枢神経系から、中枢神経系ではない環境 (特に損傷などにより生じた瘢痕組織)へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;2) 宿主以外に由来する移植組織へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;3) 切断部またはその周囲から再生した軸索が生じている&amp;lt;br&amp;gt;4) もとの中枢神経系とは異なる経路で再生した軸索が走行している&amp;lt;br&amp;gt;5) 再生した軸索が妥当な再生距離を示す &amp;lt;br&amp;gt;損傷後5 ~ 7日: 損傷からの回復と、伸長反応の開始&amp;lt;br&amp;gt;損傷後7 ~ 10日: 再生軸索が損傷部位に達する&amp;lt;br&amp;gt;損傷後10 ~ 14日: 再生軸索が損傷部周囲を伸長&amp;lt;br&amp;gt;損傷後14 ~ 21日: 再生軸索が遠位の非損傷部位へ侵入&amp;lt;br&amp;gt;損傷後21日以降: 再生軸索が最大で約1mm /日の速度で遠位部の中を伸長&amp;lt;br&amp;gt;6) 再生中には、軸索が伸長時に観察されるような形態 (成長円錐のような先端)を示す &amp;lt;br&amp;gt;7) 再生した軸索は、通常の軸索のような走行を示さず、蛇行性に伸長する&amp;lt;br&amp;gt; 中枢神経の軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われる。完全損傷モデルの場合、全ての軸索が切断されるため、切断された脊髄の段端がはなれて、脳脊髄液で満たされた間隙ができる。また、損傷部周辺では二次的な変性がおこり、切断面をさらに遠ざけてしまう。そこで、組織へのダメージを最小限にするため、不完全損傷モデルが使用されることが多い。不完全損傷モデルには、腹側皮質脊髄路のみを残し、他の皮質脊髄路の繊維は全て切断するdorsal hemisectionモデルや、一側を完全切断して反対側を残すlateral hemisetionモデルがある。最近の研究から、成体哺乳類の中枢神経系においても、薬剤投与や遺伝子操作により、脊髄損傷モデル動物における軸索再生が誘導されることが報告されている。しかし一方で、これらの結果の再現性に疑問を投げかける研究結果も報告されている。2003年に、National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS)により、Facilities of Research Excellence – Spinal Cord Injury (FORE – SCI)というプログラムが開始され、それまでに報告されていた脊髄損傷モデル動物を用いた軸索再生研究の再評価がなされた。その結果、再現性が確認されたのは、12件中2件 (うち1件は報告されていたものよりも、弱い回復)のみであった &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 22078756 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。これらの研究結果からも、中枢神経の軸索再生を実現することの難しさが伺える。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 末梢神経系における軸索再生  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
末梢神経は中枢神経に比べ、著明な軸索の再生が認められる。末梢神経では、細胞体が無傷であれば、軸索が切断されても再生が可能である。末梢神経系に存在するグリア細胞であるシュワン細胞は、損傷の刺激で増殖・活性化し、神経再生を促す。&amp;lt;br&amp;gt;末梢神経の軸索が切断されると、損傷部位より遠位の軸索は、ワーラー変性と呼ばれる過程により断片化し、ミクログリアなどの貪食細胞により除去される。この際、シュワン細胞は柱状に配列し、Büngner’s bandと呼ばれる構造を形成する。Büngner’s bandは、再生軸索の足場を確保するとともに、神経栄養因子を供給して、再生軸索の伸長を助ける。細胞体側の残存した軸索は (やや退縮するが)、成長円錐を形成し、Büngner’s bandの中を伸長する。&amp;lt;br&amp;gt; 末梢神経の再生に関しても、cAMPの細胞内濃度の上昇が重要である。上記の通り、神経栄養因子はcAMPの分解を抑制し、細胞内cAMP濃度を上昇させる。神経栄養因子とdb-cAMPの両方の投与により、脊髄損傷後の感覚神経軸索の再生が促される。損傷前に感覚神経の細胞体が存在する脊髄後根神経節にdb-cAMPを投与しておき、損傷後に神経栄養因子neurotrophin-3 (NT-3)の投与を行うと、損傷1-3ヶ月後に損傷領域を超えて感覚神経の再生が認められる。損傷領域を超えての軸索再生はdb-cAMP、NT-3それぞれ単独投与では認められないことから、脊髄損傷後の軸索再生に必要な細胞内cAMP濃度上昇を促すためには、cAMPの投与と分解の抑制の両方が必要である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12086637 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;, &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12086638 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references /&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; (執筆担当者: 藤田幸、山下俊英、担当編集委員: 村上冨士夫)&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._%E3%83%9F%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E7%94%B1%E6%9D%A5%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%9B%A0%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2885</id>
		<title>ファイル:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._%E3%83%9F%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E7%94%B1%E6%9D%A5%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%9B%A0%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2885"/>
		<updated>2012-02-22T03:26:36Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: 「ファイル:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png」の新しい版をアップロードしました&lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2884</id>
		<title>軸索再生</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F&amp;diff=2884"/>
		<updated>2012-02-22T03:24:59Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: Axon regeneration&amp;lt;br&amp;gt;軸索再生とは、外傷などにより切断された神経細胞の軸索が標的細胞へ向かって伸展し、神経回路を再構築することである。末梢神経軸索が損傷領域を超えて再生するポテンシャルを有するのに対し、中枢神経系は神経細胞の複雑なネットワークで構成されており、一度損傷を受けてこのネットワークが破壊されると回復は難しい。切断された中枢神経軸索が再び伸展し、標的細胞とシナプスを形成することが出来れば機能的な回復が望めるはずであるが、実際にこのような現象はほとんど起こらない。損傷を受けた神経細胞が再び神経ネットワークに組み込まれて機能するためには、軸索の伸展、標的部位への誘導、標的細胞とのシナプス形成、ミエリン化という段階をふんだ再生が必要である。すなわち、損傷した中枢神経軸索から標的細胞への新たな軸索再生が不可欠である。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1._ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png]][[Image:2._軸索再生阻害のシグナル伝達機構.png]]&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 中枢神経系における軸索再生 ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ヒトを含む成体哺乳類の神経軸索が、外傷などにより切断された場合、末梢神経では損傷部を超えた軸索の再生が認められるのに対し、中枢神経では軸索の再生は難しいと考えられてきた。この原因として、中枢神経系の損傷部の環境が再生に適していないという外的要因と、中枢神経細胞自体の軸索伸長能が弱いという内的要因の二点があげられる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする外的要因  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
哺乳類の中枢神経系には、軸索再生を抑止する機構が神経細胞を取り巻く周囲の細胞に存在すると考えられている。1920年代にRamon y Cajalは、末梢神経である後根神経の軸索を切断し、その後の軸索再生を観察した。再生しかけた後根神経の軸索は、脊髄の中には侵入することがなかった。1980年代には、DavidとAguayoが、脊髄損傷後の欠損部に末梢神経の周囲組織を移植し、この移植片内に軸索が再生することを観察した。以上の研究から、中枢神経の周囲の環境が、軸索の再生に適していないと考えられている。中枢神経細胞の再生を困難にさせる外的要因として、1) 軸索再生阻害因子、2) グリア瘢痕の形成、3) 炎症反応などが存在する。&amp;lt;br&amp;gt;1) 軸索再生阻害因子&amp;lt;br&amp;gt; 中枢神経軸索は、オリゴデンドロサイトの細胞膜表面のリン脂質からなるミエリンにより覆われている。軸索が損傷された後にも、ミエリンはdebrisとして残存し、この中には、複数の軸索再生阻害因子が含まれることが報告されている。中でも、myelin associated glycoprotein (MAG), Nogo, oligodendrocyte myelin glycoprotein (OMgp)についての研究が進んでいる。MAGは、1回膜貫通型の糖タンパク質であり、免疫グロブリン様ドメインを有する。Nogoは、2回膜貫通構造を持ち、スプライシングにより長さの異なる3種のタンパク質として発現する。このうち、最も長いNogo-Aには再生阻害作用を有する2つのドメインがある。N末端側のamino-Nogoと、疎水性領域に挟まれる66個のアミノ酸配列からなるペプチド配列Nogo-66である。OMgpは、GPIアンカー型のタンパク質で、セリンスレオニンリッチドメインとロイシンリッチリピートを有する (図1)。このように、これらの因子は全て構造が異なるにもかかわらず、Nogo受容体 (NgR)、PIR-Bといった共通の受容体を介して軸索再生阻害シグナルを伝える。NgRは細胞内ドメインを持たないGPIアンカー型タンパク質である。従って、NgR単独では細胞内にシグナルを伝えることは不可能で、神経栄養因子の受容体として知られるp75と共受容体を形成し、ミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達することが報告されている。p75はこれらの軸索再生阻害因子の存在下で、低分子量Gタンパク質であるRhoAを活性化することで軸索伸展を阻害する。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoAは、アクチン骨格系を制御する因子で、細胞内ではRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)と結合した不活性化の状態で安定となっている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害する (1)。しかし、ある種の細胞においては、p75/NgRのみではリガンドで刺激してもRhoが活性化されない。そこで、新たにLingo-1が受容体複合体の構成要素として同定された (2)。こうして、NgR/p75/Lingo-1の受容体複合体形成により、Rhoが活性化されて軸索伸展が阻害されるという基本モデルが確立された（図2）。Rhoの活性化は、そのエフェクターであるRhoキナーゼの活性化を誘導し、軸索再生阻害作用を示す。これは、Rhoキナーゼの阻害剤がミエリン由来軸索再生阻害因子の作用を抑制することによって証明されている。さらに、この下流のシグナルとして、Rhoキナーゼの基質であるCRMP-2の不活性化が示されている。CRMP-2は、微小管構成タンパク質であるチュブリン二量体と結合し、微小管重合を促進することが知られている。MAG刺激で、CRMP-2はRhoキナーゼによるリン酸化を受けて不活性化し、微小管重合を抑制することから、ミエリン由来軸索再生阻害因子は、Rho/Rhoキナーゼの活性化を介して微小管重合を抑制し、軸索伸長阻害作用を示すことが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 近年、MAG、Nogo、OMgpの三者を欠損したマウスが作成された。中枢神経軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われるが、MAG、Nogo、OMgp全てを欠損したマウスにおいても、脊髄損傷後の有為な軸索再生は認められなかった。このことから、これら以外の軸索再生阻害因子による寄与も大きいことが考えられる (3)。MAG、Nogo、OMgp以外に軸索再生を阻害する因子として、軸索反発因子がある (4)。軸索反発因子は、発生期における神経回路の形成を担うことが知られている。脊髄損傷モデル動物では、損傷領域周辺で、Semaphorin、Ephrin、Wnt、Repulsive guidance molecule (RGM)などの軸索反発因子の発現が増強する。これらの因子の作用を減弱させることで、損傷後の神経軸索の再生や機能回復に繋がることが報告されている。脊髄損傷モデルにおいて、Sema3Aの発現上昇が確認されており、Sema3A阻害剤の投与により縫線核脊髄路の再生、運動機能の回復が示された。Ephrin-B3は、発生期に脊髄正中線に発現し、軸索反発因子として働くが、ミエリン存在下、神経突起の伸長を抑制することが示された。Ephrin-B3は成体マウス脊髄白質のオリゴデンドロサイトに発現することが確認されている。in vitroの神経突起伸展アッセイにおいて、Ephrin-B3が小脳顆粒細胞や大脳皮質神経細胞の突起伸展を抑制することが確認されている。in vivoの実験においても、Ephrin-B3の受容体であるEphA4欠損マウスでは、脊髄損傷後の皮質脊髄路と赤核脊髄路の再生と機能回復が示されたことから、Ephrin-B3は軸索再生阻害タンパク質の一種であると考えられている。Wnt1, Wnt5aの発現は、脊髄損傷後1日で損傷部周辺での発現が上昇する。これらの受容体であるRykの中和抗体の投与により、脊髄損傷後の再生軸索の増加が認められている。RGMは、GPIアンカー型のタンパク質であり、脊髄損傷後、損傷部周辺での発現上昇が確認されている。in vivoの神経突起伸展アッセイにおいて、RGMがRhoAの活性化を介して小脳顆粒細胞の突起伸展を抑制することが示されている。in vivoにおいても、脊髄損傷後2週間にわたり、RGM中和抗体を局所投与し、その機能を抑制すると、皮質脊髄路の再生及び運動機能の回復が認められている。RGMはオリゴデンドロサイト由来のミエリンに発現しているが、脊髄損傷後の損傷部位に集積するミクログリアにも強く発現している。これは、免疫系細胞の軸索再生への関与を示唆している。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
2) グリア瘢痕&amp;lt;br&amp;gt; 損傷を受けた中枢神経系では、損傷周囲部に反応性アストロサイトが集積し、グリア瘢痕と呼ばれる高密度の瘢痕組織を形成する。これは、軸索再生を妨げる物理的な障害となり得る。また、グリア瘢痕に集まる細胞から産生される因子は、化学的に軸索の再生を妨げる。損傷部位に集積する反応性アストロサイトは、軸索伸長を阻害するコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (chondroitin sulphate proteoglycans: CSPGs)を産生する。CSPGsは長大な糖鎖である硫酸グリコサミノグリカンとコアタンパク質からなる分子で、aggrecan、brevican、neurocan、versican、phosphacan、NG2などが知られており、軸索伸長阻害作用を示す。脊髄損傷後、CSPGsのコアタンパク質からグリコサミノグリカンを除去するコンドロイチナーゼABCを投与すると、CSPGsが分解され、感覚神経線維と運動神経繊維の再生および、運動機能、固有感覚の回復が認められた。CSPGsはepidermal growth factor (EGF)受容体を介して軸索伸長阻害作用を示すことが示唆されている。脊髄損傷モデル動物に対して、EGF受容体の阻害剤を投与すると、縫線核脊髄路のセロトニン作動性神経繊維の再生、及び運動機能、膀胱機能の回復が認められた。他にも、瘢痕組織の線維芽細胞からは、再生反応を阻害するSemaphorin3Aが産生されることが知られている (上記1)参照)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、グリア瘢痕には、損傷治癒や機能回復を促す方向に作用するという面もある。グリア瘢痕の形成により、炎症細胞の遊走や細胞の変性を局所にとどめ、損傷領域を最小限に抑えられると考えられている。また、一部のアストロサイトは、軸索再生を促すことが示唆されている。glial fibrillary acid protein (GFAP)陽性の反応性アストロサイトを除去することにより、脊髄損傷後の脱髄の悪化、神経やオリゴデンドロサイトの細胞死の増加、運動機能の悪化することが示されている。脊髄損傷後のアストロサイトの反応性を制御する因子として、STAT3が報告されている。アストロサイトのSTAT3を欠損させたマウスでは、脊髄損傷後、アストロサイトの損傷部への遊走や蓄積が抑制される。また、STAT3を負に制御するSocs3をアストロサイトで欠損させたマウスでは、脊髄損傷後の運動機能の回復が認められている (5)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
3) 炎症反応&amp;lt;br&amp;gt; 通常状態では、血液脳関門の存在のため、免疫細胞を含む血液系の細胞の中枢神経系への侵入は限定されている。しかし、損傷時には血液脳関門は破壊され、免疫系細胞が中枢神経系に侵入し、炎症反応を誘導する。免疫細胞は多くの因子を産生し、神経変性を惹起する方向に働くと考えられてきた。一方で、免疫反応が中枢神経の修復に寄与するという報告もあり、中枢神経の軸索再生に対して、促進と阻害の二面性をもつ。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の自然免疫の役割: 脊髄損傷後には、好中球、マクロファージなどが、損傷部修復のために集積するが、これらの細胞は、組織への障害性も併せ持つ。脊髄損傷後、好中球は活性化し、myeloperoxidaseやelastaseなどの傷害性因子を産生する。脊髄損傷モデル動物に、これらの因子の阻害剤を投与すると、機能的な回復が認められている。マクロファージも神経細胞やグリア細胞に対する傷害性因子を産生する。一方で、これらの細胞の活性化は損傷部位の修復にも貢献する。脊髄損傷後、LPSを投与しマクロファージからのサイトカイン産生を誘導すると、損傷部の空洞化が抑制され、神経線維の側枝形成が促されることが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt;脊髄損傷後の獲得免疫の役割: 獲得免疫系においては、リンパ球が主要な役割を担う。脊髄損傷後には、T細胞が中枢神経系のタンパク質に反応性を示し、活性化することが報告されている。これらのT細胞は脊髄損傷後、早期における組織障害を悪化させたり、神経変性を進行させる。一方で、myelin basic protein (MBP)に反応性を示すT細胞が、脊髄損傷後の組織修復や機能回復を促すという報告もある (6)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 再生を困難にする内的要因  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
中枢神経軸索の再生能が低下する内的要因として、細胞内cAMP濃度の減少が考えられている。胎生期の神経細胞では、細胞内cAMP濃度が高いが、生後まもなく、神経細胞内のcAMP濃度が劇的に減少する。ミエリン存在下で培養した神経細胞に、細胞膜透過性のcAMPアナログであるdibutyryl cyclic AMP (db-cAMP)を処置すると、神経軸索の伸長が促される。cAMPの分解酵素phosphodiesteraseの阻害剤であるrolipramの投与により、cAMPの濃度上昇を誘導すると、脊髄損傷後のセロトニン作動性神経線維の再生が促され、運動機能が回復する (7)。この分子機構として、cAMP濃度上昇に伴う、転写因子cAMP response element binding protein (CREB)のリン酸化の亢進と、これに続くポリアミン合成酵素Arginase I (Arg I)の発現上昇が重要であると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の投与によっても、細胞内cAMPの濃度が上昇する。神経栄養因子はcAMPの合成は誘導せず、分解を抑制する。神経栄養因子がTrk受容体に結合すると、細胞内でextracellular signal-regulated kinase (Erk)の活性化が起こり、phosphodiesteraseが阻害される。この結果、cAMPの分解が抑制されて、細胞内cAMP濃度が上昇する。Erk活性化によるPDE活性阻害とdb-cAMPは相乗的にcAMPの濃度を上昇させる。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索再生の再評価  ===&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
O. Stewardらによると中枢神経の軸索再生は以下の様に定義されている (8)。&amp;lt;br&amp;gt;1) 中枢神経系から、中枢神経系ではない環境 (特に損傷などにより生じた瘢痕組織)へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;2) 宿主以外に由来する移植組織へ、再生した軸索が伸長する&amp;lt;br&amp;gt;3) 切断部またはその周囲から再生した軸索が生じている&amp;lt;br&amp;gt;4) もとの中枢神経系とは異なる経路で再生した軸索が走行している&amp;lt;br&amp;gt;5) 再生した軸索が妥当な再生距離を示す &amp;lt;br&amp;gt;損傷後5 ~ 7日: 損傷からの回復と、伸長反応の開始&amp;lt;br&amp;gt;損傷後7 ~ 10日: 再生軸索が損傷部位に達する&amp;lt;br&amp;gt;損傷後10 ~ 14日: 再生軸索が損傷部周囲を伸長&amp;lt;br&amp;gt;損傷後14 ~ 21日: 再生軸索が遠位の非損傷部位へ侵入&amp;lt;br&amp;gt;損傷後21日以降: 再生軸索が最大で約1mm /日の速度で遠位部の中を伸長&amp;lt;br&amp;gt;6) 再生中には、軸索が伸長時に観察されるような形態 (成長円錐のような先端)を示す &amp;lt;br&amp;gt;7) 再生した軸索は、通常の軸索のような走行を示さず、蛇行性に伸長する&amp;lt;br&amp;gt; 中枢神経の軸索再生の研究には、脊髄損傷モデルがよく使われる。完全損傷モデルの場合、全ての軸索が切断されるため、切断された脊髄の段端がはなれて、脳脊髄液で満たされた間隙ができる。また、損傷部周辺では二次的な変性がおこり、切断面をさらに遠ざけてしまう。そこで、組織へのダメージを最小限にするため、不完全損傷モデルが使用されることが多い。不完全損傷モデルには、腹側皮質脊髄路のみを残し、他の皮質脊髄路の繊維は全て切断するdorsal hemisectionモデルや、一側を完全切断して反対側を残すlateral hemisetionモデルがある。最近の研究から、成体哺乳類の中枢神経系においても、薬剤投与や遺伝子操作により、脊髄損傷モデル動物における軸索再生が誘導されることが報告されている。しかし一方で、これらの結果の再現性に疑問を投げかける研究結果も報告されている。2003年に、National Institute of Neurological Disorders and Stroke (NINDS)により、Facilities of Research Excellence – Spinal Cord Injury (FORE – SCI)というプログラムが開始され、それまでに報告されていた脊髄損傷モデル動物を用いた軸索再生研究の再評価がなされた。その結果、再現性が確認されたのは、12件中2件 (うち1件は報告されていたものよりも、弱い回復)のみであった (9)。これらの研究結果からも、中枢神経の軸索再生を実現することの難しさが伺える。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 末梢神経系における軸索再生  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
末梢神経は中枢神経に比べ、著明な軸索の再生が認められる。末梢神経では、細胞体が無傷であれば、軸索が切断されても再生が可能である。末梢神経系に存在するグリア細胞であるシュワン細胞は、損傷の刺激で増殖・活性化し、神経再生を促す。&amp;lt;br&amp;gt;末梢神経の軸索が切断されると、損傷部位より遠位の軸索は、ワーラー変性と呼ばれる過程により断片化し、ミクログリアなどの貪食細胞により除去される。この際、シュワン細胞は柱状に配列し、Büngner’s bandと呼ばれる構造を形成する。Büngner’s bandは、再生軸索の足場を確保するとともに、神経栄養因子を供給して、再生軸索の伸長を助ける。細胞体側の残存した軸索は (やや退縮するが)、成長円錐を形成し、Büngner’s bandの中を伸長する。&amp;lt;br&amp;gt; 末梢神経の再生に関しても、cAMPの細胞内濃度の上昇が重要である。上記の通り、神経栄養因子はcAMPの分解を抑制し、細胞内cAMP濃度を上昇させる。神経栄養因子とdb-cAMPの両方の投与により、脊髄損傷後の感覚神経軸索の再生が促される。損傷前に感覚神経の細胞体が存在する脊髄後根神経節にdb-cAMPを投与しておき、損傷後に神経栄養因子neurotrophin-3 (NT-3)の投与を行うと、損傷1-3ヶ月後に損傷領域を超えて感覚神経の再生が認められる。損傷領域を超えての軸索再生はdb-cAMP、NT-3それぞれ単独投与では認められないことから、脊髄損傷後の軸索再生に必要な細胞内cAMP濃度上昇を促すためには、cAMPの投与と分解の抑制の両方が必要である (10, 11)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献  ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references /&amp;gt; &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;br&amp;gt; (執筆担当者: 藤田幸、山下俊英、担当編集委員: 村上冨士夫)&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:2._%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F%E9%98%BB%E5%AE%B3%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%AB%E4%BC%9D%E9%81%94%E6%A9%9F%E6%A7%8B.png&amp;diff=2883</id>
		<title>ファイル:2. 軸索再生阻害のシグナル伝達機構.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:2._%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F%E9%98%BB%E5%AE%B3%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%AB%E4%BC%9D%E9%81%94%E6%A9%9F%E6%A7%8B.png&amp;diff=2883"/>
		<updated>2012-02-22T03:23:49Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._%E3%83%9F%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E7%94%B1%E6%9D%A5%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%9B%A0%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2882</id>
		<title>ファイル:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._%E3%83%9F%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E7%94%B1%E6%9D%A5%E8%BB%B8%E7%B4%A2%E5%86%8D%E7%94%9F%E9%98%BB%E5%AE%B3%E5%9B%A0%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2882"/>
		<updated>2012-02-22T03:23:35Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2880</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2880"/>
		<updated>2012-02-22T02:44:48Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;英語名: p75&amp;lt;br&amp;gt; p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11114882 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|RTENOTITLE]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|RTENOTITLE]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 神経栄養因子との結合 ==&lt;br /&gt;
p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 3022937 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 機能 ==&lt;br /&gt;
Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死の誘導 ===&lt;br /&gt;
p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8878481 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8774880 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10485890 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9852160 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;,&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10894779 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&lt;br /&gt;
神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16939974 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15056278 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御 ===&lt;br /&gt;
p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8128229 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11978834 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10595511 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12682012 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10234043 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 動物モデル ==&lt;br /&gt;
Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1317267 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11559852 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連 ==&lt;br /&gt;
p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1309947 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11771768 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献 ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
（執筆者：藤田幸、山下俊英、担当編集委員：村上冨士夫）&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2879</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2879"/>
		<updated>2012-02-22T02:37:56Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11114882 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|RTENOTITLE]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|RTENOTITLE]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 神経栄養因子との結合 ==&lt;br /&gt;
p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 3022937 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 機能 ==&lt;br /&gt;
Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死の誘導 ===&lt;br /&gt;
p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8878481 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8774880 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10485890 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9852160 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;,&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10894779 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&lt;br /&gt;
神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16939974 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15056278 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御 ===&lt;br /&gt;
p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8128229 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11978834 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10595511 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12682012 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10234043 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 動物モデル ==&lt;br /&gt;
Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1317267 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11559852 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連 ==&lt;br /&gt;
p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1309947 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11771768 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献 ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2878</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2878"/>
		<updated>2012-02-22T02:30:02Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11114882 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|RTENOTITLE]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|RTENOTITLE]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 神経栄養因子との結合 ==&lt;br /&gt;
p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 3022937 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11729324 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 機能 ==&lt;br /&gt;
Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死の誘導 ===&lt;br /&gt;
p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8878481 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8774880 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10485890 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 9852160 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;,&amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10894779 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する &amp;lt;ref name=ref3 /&amp;gt;。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&lt;br /&gt;
神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 16939974 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15056278 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御 ===&lt;br /&gt;
p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 8128229 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11978834 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10595511 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12682012 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 10234043 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 12692556 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 動物モデル ==&lt;br /&gt;
Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1317267 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11559852 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連 ==&lt;br /&gt;
p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 15721744 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 1309947 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している &amp;lt;ref&amp;gt;&amp;lt;pubmed&amp;gt; 11771768 &amp;lt;/pubmed&amp;gt;&amp;lt;/ref&amp;gt;。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 参考文献 ==&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&amp;lt;references/&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2877</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2877"/>
		<updated>2012-02-22T02:04:14Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する (1)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1. p75とTrk受容体の構造.png|RTENOTITLE]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png|RTENOTITLE]] &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 神経栄養因子との結合 ==&lt;br /&gt;
p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された (2)。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である (3)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 機能 ==&lt;br /&gt;
Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 細胞死の誘導 ===&lt;br /&gt;
p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される (4)。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である (5)。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている (6)。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される (7, 8)。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する (3)。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&lt;br /&gt;
神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す (9)。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている (10)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
=== 軸索伸長の制御 ===&lt;br /&gt;
p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている (11)。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている (12)。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている (13)。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える (14)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている (15)。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている (16)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 動物モデル ==&lt;br /&gt;
Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した (17)。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した (18)。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
== 疾患との関連 ==&lt;br /&gt;
p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する (19)。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている (20)。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している (21)。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2875</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2875"/>
		<updated>2012-02-22T01:18:38Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt;&amp;amp;nbsp;M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する (1)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
[[Image:1._p75とTrk受容体の構造.png]]&amp;amp;nbsp; &amp;amp;nbsp;[[Image:2._神経栄養因子と受容体の構造.png]]&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経栄養因子との結合==&amp;lt;br&amp;gt; p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された (2)。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-9&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;lt;sup&amp;gt;-11&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-10&amp;lt;/sup&amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;lt;sup&amp;gt;-8&amp;lt;/sup&amp;gt; M)である (3)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==機能==&amp;lt;br&amp;gt; Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;===細胞死の誘導===&amp;lt;br&amp;gt; p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される (4)。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である (5)。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている (6)。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される (7, 8)。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する (3)。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す (9)。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている (10)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===軸索伸長の制御===&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている (11)。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている (12)。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている (13)。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える (14)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている (15)。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている (16)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==動物モデル==&amp;lt;br&amp;gt; Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した (17)。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した (18)。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==疾患との関連==&amp;lt;br&amp;gt; p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する (19)。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている (20)。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している (21)。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:2._%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%A0%84%E9%A4%8A%E5%9B%A0%E5%AD%90%E3%81%A8%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2874</id>
		<title>ファイル:2. 神経栄養因子と受容体の構造.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:2._%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%A0%84%E9%A4%8A%E5%9B%A0%E5%AD%90%E3%81%A8%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2874"/>
		<updated>2012-02-22T01:13:30Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2873</id>
		<title>ファイル:1. p75とTrk受容体の構造.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2873"/>
		<updated>2012-02-22T01:12:34Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: 「ファイル:1. p75とTrk受容体の構造.png」の新しい版をアップロードしました&lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2872</id>
		<title>ファイル:1. p75とTrk受容体の構造.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2872"/>
		<updated>2012-02-22T01:11:26Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: 「ファイル:1. p75とTrk受容体の構造.png」の新しい版をアップロードしました: 2012年2月22日 (水)01:02の版へ差し戻し&lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2871</id>
		<title>ファイル:1. p75とTrk受容体の構造.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2871"/>
		<updated>2012-02-22T01:11:05Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: 「ファイル:1. p75とTrk受容体の構造.png」の新しい版をアップロードしました&lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2869</id>
		<title>ファイル:1. p75とTrk受容体の構造.png</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:1._p75%E3%81%A8Trk%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0.png&amp;diff=2869"/>
		<updated>2012-02-22T01:02:24Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2868</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2868"/>
		<updated>2012-02-22T00:47:01Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: &lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-9&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10-11 M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する (1)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経栄養因子との結合==&amp;lt;br&amp;gt; p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された (2)。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-9&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-11&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-10&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-8&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)である (3)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==機能==&amp;lt;br&amp;gt; Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;===細胞死の誘導===&amp;lt;br&amp;gt; p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される (4)。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である (5)。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている (6)。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される (7, 8)。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する (3)。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す (9)。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている (10)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===軸索伸長の制御===&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている (11)。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている (12)。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている (13)。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える (14)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている (15)。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている (16)。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==動物モデル==&amp;lt;br&amp;gt; Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した (17)。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した (18)。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。 &lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==疾患との関連==&amp;lt;br&amp;gt; p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する (19)。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている (20)。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している (21)。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
	<entry>
		<id>https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2867</id>
		<title>低親和性神経成長因子受容体</title>
		<link rel="alternate" type="text/html" href="https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93&amp;diff=2867"/>
		<updated>2012-02-22T00:45:42Z</updated>

		<summary type="html">&lt;p&gt;Yukifujita: ページの作成：「p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファ...」&lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;div&gt;p75は、神経栄養因子 (neurotrophin)に対する、分子量75 kDaの一回膜貫通型受容体であり、tumour necrosis factor (TNF) receptorスーパーファミリーに属する (図1)。哺乳類において、単量体で神経栄養因子nerve growth factor (NGF)、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)、neurotrophin-3 (NT-3)、neurotrophin-4/5 (NT-4/5)と低親和性(Kd = 10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-9&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合し、Trk (tropomyosin receptor kinases)受容体とのヘテロ二量体の形成により、高親和性(Kd = 10-11 M)に結合するようになると考えられている。p75は神経栄養因子との結合により、細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、多彩な機能を示す。また、神経栄養因子前駆体と結合し、細胞死を誘導する (1)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==神経栄養因子との結合==&amp;lt;br&amp;gt; p75は、Johnsonらにより、神経栄養因子NGFの受容体として配列が同定された (2)。神経栄養因子とは、神経系において細胞増殖や分化の調節といった神経栄養作用を示す、構造や遺伝子配列の類似した液性因子である。哺乳類には、NGF、BDNF、NT-3、NT-4/5の4種類の神経栄養因子が存在し、Trkとp75の2種類の受容体を介して、神経系の細胞生存、細胞死、増殖、分化、軸索伸長といった多彩な作用を発揮する。Trk受容体にはTrkA、TrkB、TrkCがあり、各々の神経栄養因子は、特異的なTrk受容体に結合する。p75は全ての神経栄養因子と低親和性 (Kd = 10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-9&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合する (図2)。多くの神経系の細胞において、p75はTrk受容体と共発現しており、リガンド依存性にも、非依存性にもTrk受容体と結合する。p75はTrk受容体とのヘテロ二量体の形成により、神経栄養因子と高親和性(Kd = 10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-11&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合するようになると考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75は、細胞外に神経栄養因子との結合に関与する4つのcysteine-rich repeatを有し、細胞内にJuxtamembrane domainと6つのα-helical domainからなるDeath domainを有する (図1)。TrkAとNGFは対照的な2:2の結合が知られていたが、p75とNGFは1:2で結合する。これは、p75との結合により、NGF二量体のうち、p75との非結合部位で立体構造変化が起こり、２つ目のp75との結合が阻害されるためである。p75の単量体がアポトーシスを誘導し、二量体化するとアポトーシス誘導作用が阻害されることが報告されているが、一つのモデルとして、神経栄養因子によるp75二量体の解離が、p75の活性化を引き起こすという説明がなされている。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子は前駆体から合成される。神経栄養因子前駆体が、トランスゴルジネットワークで転換酵素による切断を受けて、C末端から活性型神経栄養因子を生じる。神経栄養因子前駆体は、細胞外に分泌される神経栄養因子のうち40~60%を占めることから、それ自体が生理作用を有すると考えられており、proNGFが交感神経細胞やオリゴデンドロサイトなどのp75を発現する細胞において、細胞死を誘導することが示された。p75は神経栄養因子前駆体と高親和性 (Kd = ~2x10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-10&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)に結合し、細胞死を誘導する。一方、Trk受容体は神経栄養因子前駆体に対して、低親和性 (Kd = ~2x10&amp;amp;lt;sup&amp;amp;gt;-8&amp;amp;lt;/sup&amp;amp;gt; M)である (3)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==機能==&amp;lt;br&amp;gt; Trk受容体は細胞生存や軸索伸長など細胞に対して正の機能を調節するのに対し、p75は細胞死や細胞生存の調節、軸索伸長の制御など、正と負両方の調節を行う。他にも、シュワン細胞の遊走、ミエリン形成、シナプス形成の制御や、感覚神経機能、カルシウム流入の調節などの機能を示す。p75の下流ではJNK、p53、NF-κB、TRAFs、SC-1、Rho、Racなどの分子が、多様な機能の制御に関わっている。&amp;lt;br&amp;gt;===細胞死の誘導===&amp;lt;br&amp;gt; p75は細胞内にDeath domainを有することから、細胞死を誘導する。当初、p75の強制発現により、細胞死が誘導され、NGF投与により抑制されることが示された。研究が進み、p75は神経栄養因子との結合によっても、細胞死を誘導することが示された。培養オリゴデンドロサイトはp75を発現しており、培養液中にNGFを添加すると細胞死が誘導される (4)。in vivoの実験において、最初にp75を介したリガンド依存性の細胞死が示されたのは、発生期の鳥類網膜神経細胞である (5)。中和抗体を用いてNGFやp75の活性を阻害すると、プログラム細胞死が抑制されたことから、内在性のNGFが網膜神経細胞死におけるプログラム細胞死を誘導することが示された。細胞死誘導機構として、p75の下流でJNK/p53/Bax経路の活性化が報告されている。NGFだけでなく、BDNFもまた、p75を介して神経細胞死を誘導する。交感神経細胞の培養系では、低濃度のNGF、KClで細胞生存が維持されるが、BDNFにより細胞死が誘導される(この細胞では、BDNFによるTrk受容体の活性化が誘導されない)。bdnf-/-マウス、p75-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞死が抑制されることが示された。また、BDNF-/-マウスの交感神経細胞は、WTに比べ、細胞数が増加していることが示された。これらの結果から、内在性のBDNFも、p75を介した神経細胞死を誘導することが明らかになった。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流では、様々なシグナル伝達経路が活性化される。代表的なものに、JNK経路がある。JNKの下流で、c-junのリン酸化、p53、Bad、Bimの活性化、ミトコンドリアへのBaxの移行とcytochrome cの放出、caspaseの活性化を介して神経細胞死が誘導される。さらに、JNKはFas ligand の発現を誘導し、Fas受容体の活性化を介して神経細胞死を誘導する。p75自体は触媒活性を持たないが、様々なアダプタータンパク質と結合し、下流シグナルを活性化する。p75のアダプタータンパク質であるneurotrophin receptor interacting factor (NRIF)、neurotrophin associated cell death executor (NADE)、neurotrophin receptor interacting melanoma-associated antigen (MAGE) homolog (NRAGE)、TNF receptor associated factors (TRAFs)は、単独で或いは協調して、JNK経路を活性化することで、p75依存性の細胞死を促進する。NRIFは組織全体に発現するzinc fingerタンパク質である。NRIF-/-マウスでは、網膜神経細胞におけるプログラム細胞死が抑制される。細胞死抑制の程度がp75-/-マウスやNGF-/-マウスと同程度であることから、p75がNRIFを介して細胞死を誘導することが推察される。また、p75の活性化は、E3ユビキチンリガーゼであるTRAF6によるNRIF K63のユビキチン化を引き起こし、NRIFの核内移行を可能にする。加えて、NRIFの核内移行には、γ-secretaseによるp75 ICDの切断が必要である。NRIFとTRAF6の相互作用を抑制すると、NRIFの核内移行や、細胞死が抑制される。TRAF6やNRIFを欠損した交感神経細胞では、JNKの活性化が抑制される。NADEはNGF刺激によるp75の活性化を介したアポトーシスの誘導に関与する。内在性にp75を発現するPC12細胞やnnr5細胞において、NADEはNGF存在下でp75と結合し、細胞死を誘導する。BDNF、NT-3、NT-4/5刺激ではp75/NADEによる細胞死は誘導されない。NADEのみを強制発現しても細胞死は誘導されない。NRAGEはMAGEファミリーに属するタンパク質で、交感神経前駆細胞において、NGFによる細胞死シグナルを伝達する。NRAGEを強制発現することで、細胞増殖が抑制される。Schwann cell factor 1 (SC1)はzinc fingerタンパク質で、細胞周期の進行を抑制する。NGF刺激でp75が活性化されると、SC1は細胞質から核内に移行し、細胞増殖を抑制する。COS-7細胞の核内にSC1を発現させるとBrdUの取り込みが減少することが示されている (6)。低分子量Gタンパク質であるRhoファミリー分子も、p75の下流で細胞死の誘導に関与するという報告がある。PC12細胞や交感神経細胞では、Cdc42の活性化がJNKの活性化に必要である。オリゴデンドロサイトでは、Racの活性化がp75を介した細胞死に必要である。&amp;lt;br&amp;gt; JNK経路の活性化以外によっても、p75を介した細胞死が誘導される。内在性にp75を発現する交感神経細胞において、NGF除去により、p75の活性化を介した細胞死が誘導される (7, 8)。この系では、p53ファミリーに属するp73が主要な役割を果たすと考えられている。発生期の神経細胞ではp73のtruncated isoform(deltaN-p73)が発現しているが、NGF除去により細胞死が誘導されるときには、その発現が減少していることが示された。NGF除去やp53強制発現により、細胞死が誘導されるが、このとき、deltaN-p73を発現させることで細胞死が抑制される。また、p73の全てのisoformを欠損したp73-/-マウスでは、発生期における交感神経の細胞死が有為に増加する。以上から、deltaN-p73が発生期におけるp75を介した細胞死を抑制することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子前駆体もp75と結合して細胞死を誘導する。神経栄養因子前駆体は、成熟神経栄養因子よりも低濃度でp75に結合し、細胞死を誘導する (3)。一方、Trk受容体に対する神経栄養因子の前駆体の親和性は、成熟神経栄養因子ほど高くない。神経栄養因子前駆体は、sortilinを介して、p75と結合する。sortilinは、分子量約95 kDaで、Vps10-domainを有する。sortilinは脳、脊髄、筋など様々な組織で発現している。神経栄養因子前駆体は、p75を介してアポトーシスを誘導するが、p75を発現する全ての細胞が神経栄養因子前駆体に反応するわけではない。sortilinがp75と共受容体を形成することが、神経栄養因子前駆体によるアポトーシスの誘導に必要である。sortilinとp75の両者を発現する上頸神経節神経細胞や血管平滑筋細胞(SM-11)では、proNGFの投与で細胞死が誘導される。&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経栄養因子以外のリガンドとも結合する。神経毒性を示すプリオンペプチドPrPやbeta-amyloidと結合する。これらのペプチドはp75との結合を介して、細胞死を誘導する。また、p75は、狂犬病ウイルスのエンベロープ上の糖タンパク質と結合し、ウイルス受容体としても働く。&amp;lt;br&amp;gt; 全長のp75タンパク質とともに、少量ではあるが、4つのcystein rich repeatのうち3つを欠いたp75 short isoform (s-p75)も存在する。s-p75は、神経栄養因子と結合しないが、Trk受容体や狂犬病ウイルス糖タンパク質との結合能は保持されている。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===細胞生存===&amp;lt;br&amp;gt; 神経栄養因子の結合により、p75の下流で活性化される分子として、NF-κBも報告されている。p75を介したNF-κBの活性化は、神経細胞生存を促す。NGFの結合により、p75とそのアダプタータンパク質であるTraf 6が結合する。Interleukin-1 receptor-associated kinase (IRAK)は、通常細胞質に局在するが、NGF刺激により、MyD88と結合し、受容体複合体にリクルートされる。MyD88は受容体複合体から解離し、IRAKはリン酸化され、活性化される。そして、atypical protein kinase C (aPKC)、p62がリクルートされる。さらに、aPKCの基質であるIκB kinase (IKK)が活性化され、IκBがリン酸化を受けて分解され、NF-κBが核内で転写活性を示す (9)。一方で、NGF刺激により、TNF存在下におけるNF-κBの活性は増強するが、生理的な条件下では、NGFの結合によりNF-κBの活性化は誘導されないとする報告も存在し、議論の余地が残っている。&amp;lt;br&amp;gt; また、p75がTrk受容体を正に制御することが報告されている。内在性にTrkAとp75を発現しているPC12細胞において、NGF存在下、p75依存性にTrkのアダプタータンパク質であるShcのリン酸化が亢進することが示された。このとき、Trkのリン酸化その下流シグナルを伝達するAktのリン酸化が亢進していることから、p75はShcと結合し、Trk経路のシグナルを増強すると考えられている (10)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
===軸索伸長の制御===&amp;lt;br&amp;gt; p75は神経細胞死、細胞生存以外にも軸索伸長の制御を担うことが知られている。p75exonIII-/-マウスでは、交感神経と感覚神経の投射に異常が認められている (11)。野生型の成体マウスでは、上頸神経節から松下体への交感神経が投射しているが、p75exonIII-/-マウスでは、交感神経の投射が阻害されている。汗腺への交感神経の投射も阻害されている。これは、発生期における軸索伸長の異常が原因であると推察されている。また、このマウスでは、視床から大脳皮質への投射が障害されていることも示されている (12)。この投射経路は、発生期にsubplateの軸索を足場として利用すると考えられているが、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの成長円錐が異常な形態(フィロポディアの減少)を示している。また、p75exonIII-/-マウスでは、subplateの軸索の一部が異常な投射を示している。これらの結果から、p75はin vivoで軸索の投射や伸長を制御することが示唆される。&amp;lt;br&amp;gt; 内在性にp75を発現しているが、TrkAを発現していないニワトリ胚の繊毛神経細胞において、NGF刺激により軸索伸長が促進される。この分子機構として、p75によるRhoの活性制御が示されている。低分子量Gタンパク質の一種であるRhoファミリーは、アクチン骨格系を制御する因子で、RhoA、Rac、Cdc42などが含まれる。活性型であるGTP結合型RhoAは軸索伸長を抑制する。p75はRhoAと結合し、RhoAの活性を誘導するが、NGFがp75に結合すると、RhoAの活性が抑制され、神経突起の伸展が促進されることが示されている (13)。p75によるRhoAの不活性化には、cAMP-PKAシグナルが関与している。神経栄養因子がp75に結合すると、細胞内cAMP濃度が上昇し、cAMP-dependent protein kinase (PKA)が活性化される。p75はPKAによるリン酸化を受けて、RhoAを含む様々な分子が集積している脂質ラフトに移行し、下流へのシグナル伝える (14)。&amp;lt;br&amp;gt; 一方で、p75はミエリンによる軸索伸長阻害にも関与することが報告されている。p75-/-マウスでは、通常は軸索の伸長が制限されるミエリンに富んだ領域であっても、異常な軸索伸長が観察されている (15)。ミエリンに含まれる軸索伸長阻害因子として、myelin associated glycoprotein (MAG)、Nogo、oligodendrocyte glycoprotein (OMgp) などが存在する。これらの因子は構造は異なれど、全てNogo受容体 (NgR)に結合することが知られている。NgRはGPIアンカー型タンパク質で細胞内ドメインを持たない。そこで、p75がNgRと結合し、これらのミエリン由来軸索再生阻害因子のシグナルを細胞内に伝達する役割を担うことが明らかになった。この下流の分子機構には、p75を介したRhoの活性化が関与している。細胞内でRhoの活性はRho guanine nucleotide dissociation inhibitor (Rho-GDI)との結合により抑制されている。p75はRhoとRho-GDIの結合を解離することでRhoの活性化を誘導し、軸索伸長を阻害することが示されている (16)。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==動物モデル==&amp;lt;br&amp;gt; Leeらはジーンターゲッティングによりp75のexon3を欠損したマウスを作成した (17)。このマウスでは、全長のp75の発現は欠損しているが、p75の細胞外ドメインを欠いたshort isoform (s-p75)の発現が残っている。s-p75はNGFと結合しないが、TrkAと結合しうる。表現型として、生存率や繁殖に異常は認められないが、潰瘍などの皮膚の障害を生じることが知られている。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドやサブスタンスPを発現する末梢性感覚神経の障害を伴い、熱刺激に対する反応性が弱いことが報告されている。&amp;lt;br&amp;gt; 一方、von Schackらは、p75のexon4を欠損したマウスを作成した (18)。このマウスは、当初s-p75とFL-p75両方を欠損したものと考えられていたが、後に細胞膜貫通領域と細胞内ドメインを含む遺伝子産物が残存していることが判明した。この断片化されたタンパク質は、アポトーシスを誘導することが後に示された。それ故、exon4欠損マウスでは、血管障害などの原因で約40%のマウスが死亡する。また、これ以前にもp75の細胞内ドメインを発現するトランスジェニックマウスでは、交感神経や末梢感覚神経の細胞数の減少が認められている。これは、Trkの不活性化ではなく、p75の細胞内ドメイン自体が細胞死誘導経路の活性化因子として働くためと考えられている。&amp;lt;br&amp;gt; p75の細胞内ドメインを過剰発現するマウスでは、大脳皮質の細胞数の減少と、交感神経、感覚神経の細胞数の減少が確認されている。このマウスにおいて、Trk受容体の発現や活性状態には変化が無いのにもかかわらず、細胞数が減少することから、p75の細胞内ドメインが細胞死の誘導を決定する要因であると示唆される。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
==疾患との関連==&amp;lt;br&amp;gt; p75の発現は胎生期に限局しており、生後は発現が減少する。しかし、成体でも損傷や虚血、てんかん発作後などの病理的な条件下では発現が上昇する (19)。&amp;lt;br&amp;gt; アルツハイマー病はタウタンパク質の異常リン酸化や、amyloid beta (Aβ) の凝集を特徴とする疾患である。アルツハイマー病の大脳皮質神経細胞では、p75の発現が確認されている (20)。Aβ がp75と結合すると、JNK経路が活性化され、アポトーシスが誘導される。内在性にp75を発現している神経堤由来のメラニン細胞は、Aβの存在下、アポトーシスを起こす。&amp;lt;br&amp;gt; amyotrophic lateral sclerosis (ALS)患者では、頸髄運動神経でp75の発現上昇が報告されている。また、ALSモデルマウスであるSOD1変異マウスでは、腰髄運動神経におけるp75の発現が上昇している (21)。このマウスは、生後4ヶ月で死亡する。&amp;lt;br&amp;gt; pilocarpin投与によるてんかんモデル動物では、海馬、梨状葉、内嗅皮質において、p75の発現上昇と、これに関連した神経細胞死が確認されている。&amp;lt;br&amp;gt; 皮質脊髄路の神経細胞において、軸索切断3日後、p75の発現が上昇する。これは、細胞死が起こるタイミングと一致する。NT-3抗体の投与により細胞死が抑制されることから、内在性のNT-3によるp75の活性化が細胞死を誘導することが示されている。&amp;lt;br&amp;gt;&amp;lt;br&amp;gt;&lt;/div&gt;</summary>
		<author><name>Yukifujita</name></author>
	</entry>
</feed>