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脳科学辞典 - 利用者の投稿記録 [ja]
2024-03-28T12:22:26Z
利用者の投稿記録
MediaWiki 1.39.6
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&diff=17456
検索
2013-02-01T04:59:45Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:retrieval <br />
<br />
[[記憶]]([[符号化]]、encoding)された情報の中から目的とする情報を探して取り出すこと。その結果が[[想起]]であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
知っている人の名前を思い出せないことがあるように、[[学習]]と保持は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がある。記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。学習は想起に最も大きな影響を持つが、記憶は学習した内容がそのまま再生されるのではなく、学習した情報を元に想起時に作り出されるもので、検索そして想起により再構築されるものであり、構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br>Remembering. A study in experimental and social psychology.<br>''Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br>A spreading activation theory of semantic processing.<br>''Psychol Rev'', 82, 407-428.:1975</ref>。<br />
<br />
== 活性化モデル ==<br />
<br />
activation model<br />
<br />
検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 また、短期記憶の中の項目数が増えるに従って検索時間が増加する<ref><pubmed> 5939936 </pubmed></ref>ことは、項目の増加により各項目の活性化が減少することによると仮定されている<ref>'''Monsell, S'''<br>Recency, immediate recognition memory, and reaction time.<br>''Cogn Psychol,'' 10, 465–501.:1979</ref>。<br />
<br />
== 検索の制御 ==<br />
<br />
control processes in retrieval<br />
<br />
意図的・方略的な想起と自動的・無意識な想起の乖離があると考えられている<ref>'''Jacoby, L. L'''<br>A process dissociation framework: Separating automatic from intention uses of memory.<br>''J Mem Lang,'' 30, 513–541.:1991</ref>が、検索は意図的、能動的、合目的であると言える。また、検索努力retrieval effortと検索成功retrieval successの乖離も示唆されている<ref><pubmed> 9597657 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== モニタリング == <br />
<br />
monitoring<br />
<br />
検索した記憶の情報源sourceや新近性recencyなどの詳細、さらに記憶の確からしさconfidence等を評価することを検索(後)モニタリングと呼ぶ。想起内容についての評価、判断でありメタ認知でもある。学習が不十分な場合や、混同しやすい情報がある場合等の検索にはモニタリングを伴うため、検索処理と併せて扱われることが多い。<br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue <br />
<br />
膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。[[符号化特定性原理]]<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br>Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory.<br>''Psychol Rev,'' 80, 352–373.:1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動パターンが近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 干渉 ==<br />
<br />
interference<br />
<br />
前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br>Creating false memories: Remembering words not presented in lists. <br>''J Exp Psychol Learn Mem Cogn'', 21, 803–814.:1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶[[保持]]に効果的である<ref><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を[[検索誘導性忘却]]という<ref><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 忘却 ==<br />
<br />
forgetting<br />
<br />
保持されている記憶が想起できないのは検索失敗であるが、保持・固定が不十分であると、記憶が減衰し忘却される。発症以前の出来事が想起できない逆向健忘症において、発症に時間的に近い記憶は忘却され回復しないが、発症から離れた古い記憶は想起できる場合が多い<ref><pubmed> 12244076 </pubmed></ref>。<br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は[[前頭]]と[[頭頂]]の外側部である<ref><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えられるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されており<ref><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>。検索成功に関わる脳部位としては、前頭葉内側部、頭頂葉後部、頭頂葉内側部が示唆されている<ref><pubmed> 19835893 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=17429
新近性判断
2013-01-31T07:56:56Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:recency judgment<br />
<br />
時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継時的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。<br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
再認記憶課題において、複数の刺激が既知刺激であることを正確に判断できるだけでなく、さらにそれらの間の呈示順序判断ができることが、詳細な想起ができているとみなされる。現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて新近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではない<ref>'''Friedman, W.J.'''<br>''Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.'':1993</ref>。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている<ref name=ref2 />。場所は良く記憶される一方、時間は別の出来事との相対的関係、新近性判断により評価されることが多い。時間経過により[[記憶]]“強度”が低下し、その”強度”に基づいて新近性判断がされるという仮説は否定されている<ref name=ref2><pubmed> 16524002 </pubmed></ref>。<br />
<br />
== 系列位置効果 ==<br />
<br />
Serial position effects<br />
<br />
刺激系列中の初期または最後に呈示された刺激と、中間に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。これが[[短期記憶]]における系列位置効果である。これらには、先に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とが関係している。順向干渉がないことにより初頭効果が、逆向干渉がないことにより新近効果がある。以前の経験からの影響を制御することで正しい新近性判断が可能となるので、順向干渉を検討する手段として新近性判断が用いられる。ただし、新近性判断に影響するのは干渉だけでなく、刺激の弁別性も大きいと考えられる。<br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究から<ref><pubmed> 12417679 </pubmed></ref>も[[損傷研究]]<ref><pubmed> 9460723 </pubmed></ref>からも知られており、系列位置や前後関係など、より情報を特定する必要がある。情報源sourceや詳細の想起と同様に、[[前頭葉]]-[[頭頂葉]]のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに[[海馬]]が関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&diff=17428
検索
2013-01-31T07:54:25Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:retrieval <br />
<br />
[[記憶]]([[符号化]]、encoding)された情報の中から目的とする情報を探して取り出すこと。その結果が[[想起]]であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
知っている人の名前を思い出せないことがあるように、[[学習]]と保持は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がある。記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。記憶は学習した内容がそのまま再生されるのではなく、学習した情報を元に想起時に作り出されるもので、検索そして想起により再構築されるものであり、構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br>Remembering. A study in experimental and social psychology.<br>''Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br>A spreading activation theory of semantic processing.<br>''Psychol Rev'', 82, 407-428.:1975</ref>。<br />
<br />
== 活性化モデル ==<br />
<br />
activation model<br />
<br />
検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 また、短期記憶の中の項目数が増えるに従って検索時間が増加する<ref><pubmed> 5939936 </pubmed></ref>ことは、項目の増加により各項目の活性化が減少することによると仮定されている<ref>'''Monsell, S'''<br>Recency, immediate recognition memory, and reaction time.<br>''Cogn Psychol,'' 10, 465–501.:1979</ref>。<br />
<br />
== 検索の制御 ==<br />
<br />
control processes in retrieval<br />
<br />
意図的・方略的な想起と自動的・無意識な想起の乖離があると考えられている<ref>'''Jacoby, L. L'''<br>A process dissociation framework: Separating automatic from intention uses of memory.<br>''J Mem Lang,'' 30, 513–541.:1991</ref>が、検索は意図的、能動的、合目的であると言える。また、検索努力retrieval effortと検索成功retrieval successの乖離も示唆されている<ref><pubmed> 9597657 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== モニタリング == <br />
<br />
monitoring<br />
<br />
検索した記憶の情報源sourceや新近性recencyなどの詳細、さらに記憶の確からしさconfidence等を評価することを検索(後)モニタリングと呼ぶ。想起内容についての評価、判断でありメタ認知でもある。学習が不十分な場合や、混同しやすい情報がある場合等の検索にはモニタリングを伴うため、検索処理と併せて扱われることが多い。<br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue <br />
<br />
膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。[[符号化特定性原理]]<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br>Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory.<br>''Psychol Rev,'' 80, 352–373.:1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動パターンが近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 干渉 ==<br />
<br />
interference<br />
<br />
前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br>Creating false memories: Remembering words not presented in lists. <br>''J Exp Psychol Learn Mem Cogn'', 21, 803–814.:1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶[[保持]]に効果的である<ref><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を[[検索誘導性忘却]]という<ref><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 忘却 ==<br />
<br />
forgetting<br />
<br />
保持されている記憶が想起できないのは検索失敗であるが、保持・固定が不十分であると、記憶が減衰し忘却される。発症以前の出来事が想起できない逆向健忘症において、発症に時間的に近い記憶は忘却され回復しないが、発症から離れた古い記憶は想起できる場合が多い<ref><pubmed> 12244076 </pubmed></ref>。<br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は[[前頭]]と[[頭頂]]の外側部である<ref><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えられるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されており<ref><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>。検索成功に関わる脳部位としては、前頭葉内側部、頭頂葉後部、頭頂葉内側部が示唆されている<ref><pubmed> 19835893 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
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確信度
2013-01-31T07:52:31Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が[[想起]]できそうかどうかという[[展望的判断]]と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。確信度はその判断を含む。想起についての判断、想起モニタリングであり、[[メタ認知]]である。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断(既知刺激か新奇刺激か)は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5、6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない<ref><pubmed> 9673991 </pubmed></ref>。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。個人間の確信度の相関は低く<ref>'''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C.'''<br>Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?<br>''J App Psychol'':1981, 66, 79-89.</ref>、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。早い判断ができる場合には遅い判断の場合よりも確信度が高くなる傾向があり、記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度の高さは相関関係にある<ref><pubmed> 8255951 </pubmed></ref>。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する<ref>'''Vesonder, G. T., & Voss, J. F.'''<br>On the ability to predict one's own responses while learning.<br>''J Mem Lang'':1985, 24, 363-376.</ref>、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響を与える要因は、[[学習]]、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる<ref><pubmed> 10780019 </pubmed></ref>。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させない<ref>'''Koriat, A.'''<br>Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning.<br>''J Exp Psychol Gen'':1997, 126, 349-370.</ref>。また、確信度が高い場合でもその判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている<ref>'''Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D.'''<br>The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients.<br>''J Mem Lang'':1996'', 35, 319-334.''</ref>。前頭葉損傷による錯話confabulationでは、誤った想起内容に対して高い確信度判断をしている。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
[[前頭葉]]内側の損傷患者において、想起した情報に対する確信度判断は概ね正確であったが、展望的確信度判断は不正確になった<ref><pubmed> 14998710 </pubmed></ref>。脳画像研究では、再認記憶課題において[[側頭葉]]内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果<ref><pubmed> 16303318 </pubmed></ref>と、確信度とは無関係に実際の既知刺激と新奇刺激とを区別する<ref><pubmed> 19706549 </pubmed></ref>、という報告とがある。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E5%BA%A6&diff=17363
確信度
2013-01-28T09:16:00Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が[[想起]]できそうかどうかという[[展望的判断]]と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。確信度はその判断を含む。想起についての判断、想起モニタリングであり、[[メタ認知]]である。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断(既知刺激か新奇刺激か)は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5、6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない<ref><pubmed> 9673991 </pubmed></ref>。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。個人間の確信度の相関は低く<ref>'''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C.'''<br>Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?<br>''J App Psychol'':1981, 66, 79-89.</ref>、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方。早い判断ができる場合には遅い判断の場合よりも確信度が高くなる傾向がある。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある<ref><pubmed> 8255951 </pubmed></ref>。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する<ref>'''Vesonder, G. T., & Voss, J. F.'''<br>On the ability to predict one's own responses while learning.<br>''J Mem Lang'':1985, 24, 363-376.</ref>、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響を与える要因は、[[学習]]、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる<ref><pubmed> 10780019 </pubmed></ref>。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させない<ref>'''Koriat, A.'''<br>Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning.<br>''J Exp Psychol Gen'':1997, 126, 349-370.</ref>。また、確信度が高い場合でもその判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている<ref>'''Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D.'''<br>The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients.<br>''J Mem Lang'':1996'', 35, 319-334.''</ref>。前頭葉損傷による錯話confabulationは、誤った想起内容に対して高い確信度判断をしている。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
[[前頭葉]]内側の損傷患者において、想起した情報に対する確信度判断は概ね正確であったが、展望的確信度判断は不正確になった<ref><pubmed> 14998710 </pubmed></ref>。脳画像研究では、再認記憶課題において[[側頭葉]]内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果<ref><pubmed> 16303318 </pubmed></ref>と、確信度とは無関係に実際の既知刺激と新奇刺激とを区別する<ref><pubmed> 19706549 </pubmed></ref>、という報告とがある。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
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<references /><br />
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(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&diff=17362
検索
2013-01-28T09:01:23Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:retrieval <br />
<br />
[[記憶]]([[符号化]]、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が[[想起]]であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。[[学習]]、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。記憶は学習した内容がそのまま再生されるのではなく、学習した情報を元に想起時に作り出されるものである。つまり記憶は検索そして想起により再構築されるものであり、構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br>Remembering. A study in experimental and social psychology.<br>''Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br>A spreading activation theory of semantic processing.<br>''Psychol Rev'', 82, 407-428.:1975</ref>。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 検索の制御 ==<br />
<br />
control processes in retrieval<br />
<br />
意図的・方略的な想起と自動的・無意識な想起の乖離があると考えられている<ref>'''Jacoby, L. L'''<br>A process dissociation framework: Separating automatic from intention uses of memory.<br>''J Mem Lang,'' 30, 513–541.:1991</ref>。また、検索努力retrieval effortと検索成功retrieval successの乖離も示唆されている<ref><pubmed> 9597657 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue <br />
<br />
膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。[[符号化特定性原理]]<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br>Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory.<br>''Psychol Rev,'' 80, 352–373.:1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動パターンが近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 干渉 ==<br />
<br />
interference<br />
<br />
前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br>Creating false memories: Remembering words not presented in lists. <br>''J Exp Psychol Learn Mem Cogn'', 21, 803–814.:1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶[[保持]]に効果的である<ref><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を[[検索誘導性忘却]]という<ref><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は[[前頭]]と[[頭頂]]の外側部である<ref><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えられるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されており<ref><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>。検索成功に関わる脳部位としては、前頭葉内側部、頭頂葉後部、頭頂葉内側部が示唆されている<ref><pubmed> 19835893 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=17356
新近性判断
2013-01-28T06:08:41Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:recency judgment<br />
<br />
時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継時的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて新近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている<ref>'''Friedman, W.J.'''<br>''Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.'':1993</ref>。時間経過により[[記憶]]“強度”が低下し、その”強度”に基づいて新近性判断がされるという仮説は否定されている<ref name=ref2><pubmed> 16524002 </pubmed></ref>。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている<ref name=ref2 />。<br />
<br />
== 系列位置効果 ==<br />
<br />
Serial position effects<br />
<br />
刺激系列中の初期または最後に呈示された刺激と、中間に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。これが[[短期記憶]]における系列位置効果である。これらには、先に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とが関係している。順向干渉がないことにより初頭効果が、逆向干渉がないことにより新近効果がある。以前の経験からの影響を制御することで正しい新近性判断が可能となるので、順向干渉を検討する手段として新近性判断が用いられる。ただし、新近性判断に影響するのは干渉だけでなく、刺激の弁別性も大きいと考えられる。<br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究から<ref><pubmed> 12417679 </pubmed></ref>も[[損傷研究]]<ref><pubmed> 9460723 </pubmed></ref>からも知られており、系列位置や前後関係など、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、[[前頭葉]]-[[頭頂葉]]のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに[[海馬]]が関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=17355
新近性判断
2013-01-28T06:06:15Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:recency judgment<br />
<br />
時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継時的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて新近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている<ref>'''Friedman, W.J.'''<br>''Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.'':1993</ref>。時間経過により[[記憶]]“強度”が低下し、その”強度”に基づいて新近性判断がされるという仮説は否定されている<ref name=ref2><pubmed> 16524002 </pubmed></ref>。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている<ref name=ref2 />。<br />
<br />
== 系列位置効果 ==<br />
<br />
Serial position effects<br />
<br />
刺激系列中の初期または最後に呈示された刺激と、中間に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。これが[[短期記憶]]における系列位置効果である。これらには、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とが関係している。順向干渉がないことにより初頭効果が、逆向干渉がないことにより新近効果がある。以前の経験からの影響を制御することで正しい新近性判断が可能となるので、順向干渉を検討する手段として新近性判断が用いられる。ただし、新近性判断に影響するのは干渉だけでなく、刺激の弁別性も大きいと考えられる。<br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究から<ref><pubmed> 12417679 </pubmed></ref>も[[損傷研究]]<ref><pubmed> 9460723 </pubmed></ref>からも知られており、系列位置や前後関係など、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、[[前頭葉]]-[[頭頂葉]]のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに[[海馬]]が関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&diff=17353
検索
2013-01-28T05:13:39Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:retrieval <br />
<br />
[[記憶]]([[符号化]]、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が[[想起]]であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。[[学習]]、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。記憶は学習した内容がそのまま再生されるのではなく、学習した情報を元に想起時に作り出されるものである。つまり記憶は検索そして想起により再構築されるものであり、構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br>Remembering. A study in experimental and social psychology.<br>''Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br>A spreading activation theory of semantic processing.<br>''Psychol Rev'', 82, 407-428.:1975</ref>。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue <br />
<br />
膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。[[符号化特定性原理]]<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br>Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory.<br>''Psychol Rev,'' 80, 352–373.:1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動パターンが近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 干渉 ==<br />
<br />
interference<br />
<br />
前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br>Creating false memories: Remembering words not presented in lists. <br>''J Exp Psychol Learn Mem Cogn'', 21, 803–814.:1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶[[保持]]に効果的である<ref><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を[[検索誘導性忘却]]という<ref><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は[[前頭]]と[[頭頂]]の外側部である<ref><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えられるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されており<ref><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>、検索成功に関係している。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E5%BA%A6&diff=17352
確信度
2013-01-28T05:04:14Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が[[想起]]できそうかどうかという[[展望的判断]]と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。確信度はその判断を含む。想起についての判断であり、[[メタ認知]]である。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断(既知刺激か新奇刺激か)は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5、6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない<ref><pubmed> 9673991 </pubmed></ref>。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。個人間の確信度の相関は低く<ref>'''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C.'''<br>Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?<br>''J App Psychol'':1981, 66, 79-89.</ref>、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方。早い判断ができる場合には遅い判断の場合よりも確信度が高くなる傾向がある。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある<ref><pubmed> 8255951 </pubmed></ref>。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する<ref>'''Vesonder, G. T., & Voss, J. F.'''<br>On the ability to predict one's own responses while learning.<br>''J Mem Lang'':1985, 24, 363-376.</ref>、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響を与える要因は、[[学習]]、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる<ref><pubmed> 10780019 </pubmed></ref>。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させない<ref>'''Koriat, A.'''<br>Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning.<br>''J Exp Psychol Gen'':1997, 126, 349-370.</ref>。また、確信度が高い場合でもその判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている<ref>'''Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D.'''<br>The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients.<br>''J Mem Lang'':1996'', 35, 319-334.''</ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
[[前頭葉]]内側の損傷患者において、想起した情報に対する確信度判断は概ね正確であったが、展望的確信度判断は不正確になった<ref><pubmed> 14998710 </pubmed></ref>。脳画像研究では、再認記憶課題において[[側頭葉]]内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果<ref><pubmed> 16303318 </pubmed></ref>と、確信度とは無関係に実際の既知刺激と新奇刺激とを区別する<ref><pubmed> 19706549 </pubmed></ref>、という報告とがある。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E5%BA%A6&diff=17351
確信度
2013-01-28T03:47:59Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が[[想起]]できそうかどうかという[[展望的判断]]と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。確信度はその判断を含む。想起についての判断であり、[[メタ認知]]である。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断(既知刺激か新奇刺激か)は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5、6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない<ref><pubmed> 9673991 </pubmed></ref>。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。個人間の確信度の相関は低く<ref>'''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C.'''<br>Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?<br>''J App Psychol'':1981, 66, 79-89.</ref>、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方。早い判断ができる場合には遅い判断の場合よりも確信度が高くなる傾向がある。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある<ref><pubmed> 8255951 </pubmed></ref>。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する<ref>'''Vesonder, G. T., & Voss, J. F.'''<br>On the ability to predict one's own responses while learning.<br>''J Mem Lang'':1985, 24, 363-376.</ref>、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響を与える要因は、[[学習]]、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる<ref><pubmed> 10780019 </pubmed></ref>。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させない<ref>'''Koriat, A.'''<br>Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning.<br>''J Exp Psychol Gen'':1997, 126, 349-370.</ref>。また、確信度が高い場合でもその判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている<ref>'''Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D.'''<br>The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients.<br>''J Mem Lang'':1996'', 35, 319-334.''</ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
[[前頭葉]]内側の損傷患者において、想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった<ref><pubmed> 14998710 </pubmed></ref>。脳画像研究では、再認記憶課題において[[側頭葉]]内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果<ref><pubmed> 16303318 </pubmed></ref>と、確信度とは無関係に実際の既知刺激と新奇刺激とを区別する<ref><pubmed> 19706549 </pubmed></ref>、という報告とがある。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E5%BA%A6&diff=17350
確信度
2013-01-28T03:43:08Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が[[想起]]できそうかどうかという[[展望的判断]]と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。確信度はその判断を含む。想起についての判断であり、[[メタ認知]]である。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断(学習時と同一刺激か、新奇刺激か)は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5、6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない<ref><pubmed> 9673991 </pubmed></ref>。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。個人間の確信度の相関は低く<ref>'''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C.'''<br>Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?<br>''J App Psychol'':1981, 66, 79-89.</ref>、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方。早い判断ができる場合には遅い判断の場合よりも確信度が高くなる傾向がある。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある<ref><pubmed> 8255951 </pubmed></ref>。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する<ref>'''Vesonder, G. T., & Voss, J. F.'''<br>On the ability to predict one's own responses while learning.<br>''J Mem Lang'':1985, 24, 363-376.</ref>、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響を与える要因は、[[学習]]、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる<ref><pubmed> 10780019 </pubmed></ref>。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させない<ref>'''Koriat, A.'''<br>Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning.<br>''J Exp Psychol Gen'':1997, 126, 349-370.</ref>。また、確信度が高い場合でもその判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている<ref>'''Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D.'''<br>The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients.<br>''J Mem Lang'':1996'', 35, 319-334.''</ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
[[前頭葉]]内側の損傷患者において、想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった<ref><pubmed> 14998710 </pubmed></ref>。脳画像研究では、再認記憶課題において[[側頭葉]]内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果<ref><pubmed> 16303318 </pubmed></ref>と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する<ref><pubmed> 19706549 </pubmed></ref>、という報告とがある。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&diff=17349
検索
2013-01-28T03:20:40Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:retrieval <br />
<br />
[[記憶]]([[符号化]]、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が[[想起]]であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。[[学習]]、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。記憶は学習した内容がそのまま再生されるのではなく、学習した情報を元に想起時に作り出されるものである。つまり記憶は検索、そして想起により情報を組み合わせて構築されるものであり、構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br>Remembering. A study in experimental and social psychology.<br>''Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br>A spreading activation theory of semantic processing.<br>''Psychol Rev'', 82, 407-428.:1975</ref>。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue <br />
<br />
膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。[[符号化特定性原理]]<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br>Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory.<br>''Psychol Rev,'' 80, 352–373.:1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動パターンが近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 干渉 ==<br />
<br />
前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br>Creating false memories: Remembering words not presented in lists. <br>''J Exp Psychol Learn Mem Cogn'', 21, 803–814.:1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶[[保持]]に効果的である<ref><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を[[検索誘導性忘却]]という<ref><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は[[前頭]]と[[頭頂]]の外側部である<ref><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えられるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されており<ref><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>、検索成功に関係している。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=17348
新近性判断
2013-01-28T03:18:02Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:recency judgment<br />
<br />
時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継時的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて新近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている<ref>'''Friedman, W.J.'''<br>''Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.'':1993</ref>。時間経過により[[記憶]]“強度”が低下し、その”強度”に基づいて新近性判断がされるという仮説は否定されている<ref name=ref2><pubmed> 16524002 </pubmed></ref>。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている<ref name=ref2 />。<br />
<br />
== 記憶干渉 ==<br />
<br />
刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。これが[[短期記憶]]における系列位置効果である。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。以前の経験からの影響を制御することで正しい新近性判断が可能となるので、順向干渉を検討する手段として新近性判断が用いられる。ただし、新近性判断に影響するのは記憶干渉だけでなく、刺激の弁別性も大きいと考えられる。<br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究から<ref><pubmed> 12417679 </pubmed></ref>も[[損傷研究]]<ref><pubmed> 9460723 </pubmed></ref>からも知られており、系列位置や前後関係など、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、[[前頭葉]]-[[頭頂葉]]のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに[[海馬]]が関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&diff=17347
検索
2013-01-28T03:11:36Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:retrieval <br />
<br />
[[記憶]]([[符号化]]、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が[[想起]]であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。[[学習]]、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。記憶は学習した内容がそのまま再生されるのではなく、学習した情報を元に想起時に作り出されるものである。つまり記憶は検索、そして想起により情報を組み合わせて構築されるものであり、構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br>Remembering. A study in experimental and social psychology.<br>''Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br>A spreading activation theory of semantic processing.<br>''Psychol Rev'', 82, 407-428.:1975</ref>。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue <br />
<br />
膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。[[符号化特定性原理]]<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br>Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory.<br>''Psychol Rev,'' 80, 352–373.:1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動パターンが近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 記憶干渉 ==<br />
<br />
前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br>Creating false memories: Remembering words not presented in lists. <br>''J Exp Psychol Learn Mem Cogn'', 21, 803–814.:1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶[[保持]]に効果的である<ref><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を[[検索誘導性忘却]]という<ref><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は[[前頭]]と[[頭頂]]の外側部である<ref><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えられるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されており<ref><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>、検索成功に関係している。<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references/><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男 担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16759
体性感覚
2012-12-26T04:48:02Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味する。後者は[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]とも呼ばれ、[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置の情報が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
触覚や振動覚に関わる受容細胞構造が明確なものと、主に温度感覚や痛覚に関わる自由神経終末がある。<br>適刺激による分類、順応による分類がある。皮膚感覚受容器の興奮を伝える末梢神経は後根神経節にある偽単極型神経細胞の軸索である。<br>末梢神経には有髄と無髄があり、有髄神経では太いほど伝導速度が速い。<br>三叉神経伝導路は顔や口腔の感覚(痛みを含む)を伝える。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激に対する応答のなれ(順応)の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RA1, rapidly adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SA1, slowly adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacinian corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RA2)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SA2)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 <ref>''Strughold, H., & Porz, R.''<br>Density of cold spots on the skin of the human body.<br>Zeitschrift für Biologie, 91, 563-571:1931</ref>)。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、Aδ線維とC線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16728
体性感覚
2012-12-25T09:23:52Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
触覚や振動覚に関わる受容細胞構造が明確なものと、主に温度感覚や痛覚に関わる自由神経終末がある。<br>適刺激による分類、順応による分類がある。皮膚感覚受容器の興奮を伝える末梢神経は後根神経節にある偽単極型神経細胞の軸索である。<br>末梢神経には有髄と無髄があり、有髄神経では太いほど伝導速度が速い。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激に対する応答のなれ(順応)の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RA1, rapidly adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SA1, slowly adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacinian corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RA2)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SA2)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 <ref>''Strughold, H., & Porz, R.''<br>Density of cold spots on the skin of the human body.<br>Zeitschrift für Biologie, 91, 563-571:1931</ref>)。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、Aδ線維とC線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16727
体性感覚
2012-12-25T09:19:44Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
触覚や振動覚に関わる受容細胞構造が明確なものと、主に温度感覚や痛覚に関わる自由神経終末がある。適刺激による分類、順応による分類がある。皮膚感覚受容器の興奮を伝える末梢神経は後根神経節にある偽単極型神経細胞の軸索である。末梢神経には有髄と無髄があり、有髄神経では太いほど伝導速度が速い。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激への順応の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、刺激に対する応答のなれ(順応)が速い(RA1, rapidly adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SA1, slowly adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacinian corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RA2)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SA2)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 <ref>''Strughold, H., & Porz, R.''<br>Density of cold spots on the skin of the human body.<br>Zeitschrift für Biologie, 91, 563-571:1931</ref>)。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、Aδ線維とC線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16726
体性感覚
2012-12-25T09:01:41Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
触覚や振動覚に関わる受容細胞構造が明確なものと、主に温度感覚や痛覚に関わる自由神経終末がある。適刺激による分類、順応による分類がある。皮膚感覚受容器の興奮を伝える末梢神経は後根神経節にある偽単極型神経細胞の軸索である。末梢神経には有髄と無髄があり、有髄神経では太いほど伝導速度が速い。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激への順応の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RA1, rapidly adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SA1, slowly adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacini corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RA2)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SA2)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 <ref>''Strughold, H., & Porz, R.''<br>Density of cold spots on the skin of the human body.<br>Zeitschrift für Biologie, 91, 563-571:1931</ref>)。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、Aδ線維とC線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16725
体性感覚
2012-12-25T08:22:27Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
自由神経終末であり、後根神経節や脳神経節に存在する。適刺激による分類、形態による分類、順応による分類がある。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激への順応の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RA1, rapidly adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SA1, slowly adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacini corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RA2)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SA2)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 <ref>''Strughold, H., & Porz, R.''<br>Density of cold sports on the skin of the human body.<br>Zeitschrift für Biologie, 91, 563-571:1931</ref>)。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、C線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16724
体性感覚
2012-12-25T08:20:53Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
自由神経終末であり、後根神経節や脳神経節に存在する。適刺激による分類、形態による分類、順応による分類がある。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激への順応の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RA1, rapidly adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SA1, slowly adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacini corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RA2)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SA2)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 <ref>''Strughold, H., & Porz, R.''Density of cold sports on the skin of the human body. Zeitschrift für Biologie, 91, 563-571:1931</ref>)。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、C線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16723
体性感覚
2012-12-25T08:04:02Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
自由神経終末であり、後根神経節や脳神経節に存在する。適刺激による分類、形態による分類、順応による分類がある。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激への順応の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RA1, rapidly adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SA1, slowly adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacini corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RA2)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SA2)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 )。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、C線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16722
体性感覚
2012-12-25T07:56:47Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
自由神経終末であり、後根神経節や脳神経節に存在する。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激への順応の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacini corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RAII)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 )。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、C線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘(錘内筋線維と感覚性・運動性神経)]])、腱([[ゴルジ腱器官(筋と腱の接合部と腱の中にある線維束)]])、関節(関節受容器)にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である<ref><pubmed> 9762952 </pubmed></ref>。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる<ref><pubmed> 22805909 </pubmed></ref>、。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=16714
体性感覚
2012-12-25T06:58:51Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。皮膚感覚が皮膚表面における感覚であるのに対し、深部感覚とは身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
自由神経終末であり、後根神経節や脳神経節に存在する。<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
[[image:Gray936.png|thumb|200px|'''図1.マイスナー小体''']]<br />
[[image:Gray935.png|thumb|200px|'''図2.パチニ小体''']]<br />
[[image:Gray937.png|thumb|200px|'''図3.ルフィニ終末''']]<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
体性感覚における機械受容器は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの皮膚、筋、腱、関節の変化を検出する細胞である。[[受容野]]の広さと刺激への順応の速さが異なる4種類の細胞がある。<br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
Meissner corpuscle<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が速い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する(図1)。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
Merkel cells<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
Pacini corpuscle<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が速い(RAII)(図2)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
Ruffini endings<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない(図3)。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、たとえば口唇は足裏の6倍の密度である。また刺激される範囲が広いほど温感が強くなることから、一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い(前腕の温点と冷点の密度はそれぞれ約0.24/cm2、7/cm2 )。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、C線維によって伝えられ、化学刺激等で引き起こされる。ヒスタミンはかゆみを誘発する。 <br />
<br />
<br />
==深部感覚受容器 ==<br />
<br />
筋([[筋紡錘]])、腱([[ゴルジ腱器官]])、関節にあり、それぞれの伸縮により刺激され、[[3a野]]に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、[[運動錯覚]]を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達した体性感覚情報は、そこで中継された後、[[一次感覚野]]や島皮質へ伝えられる。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|200px|'''図4.ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の[[3、1、2野]]にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、[[43野]]に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図4においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に[[5野]]、後下方に[[7野]]がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、[[2野]]からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references /><br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=15976
新近性判断
2012-12-04T07:11:20Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>recency judgment 時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継次的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 記憶干渉 <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて親近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている<ref>'''Friedman, W.J.'''<br><br>''Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.'':1993</ref>。時間経過により記憶”強度”が低下し、その”強度”に基づいて親近性判断がされるという仮説は否定されている<ref name=ref2><pubmed> 16524002 </pubmed></ref>。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている<ref name=ref2/>。刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。 <br />
<br />
== 記憶干渉 ==<br />
<br />
刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。これが短期記憶における系列位置効果である。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。以前の経験からの影響を制御することで正しい親近性判断が可能となるので、順向干渉を検討する手段として親近性判断が用いられる。ただし、親近性判断に影響するのは記憶干渉だけでなく、刺激の弁別性も大きいと考えられる。<br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究から<ref ><pubmed> 12417679 </pubmed></ref>も損傷研究<ref ><pubmed> 9460723 </pubmed></ref>からも知られており、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、前頭-頭頂のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに海馬が関わっていると考えられている。<br />
<br />
<references/></div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=15973
体性感覚
2012-12-04T05:21:07Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>英語名:somatosensation 独:Tastsinn 仏:somesthésie <br />
<br />
体性感覚とは[[触覚]]、[[温度感覚]]、[[痛覚]]の[[皮膚感覚]]と、筋や腱、関節などに起こる[[深部感覚]]から成り、[[内臓感覚]]は含まない。深部感覚とは皮膚表面の感覚に対する身体内部の感覚を意味し、[[固有感覚]]または[[自己受容感覚]]と呼ばれる。[[筋受容器]]からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
=== 機械受容器 ===<br />
<br />
mechanoreceptor <br />
<br />
外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの組織の変化を検出し、[[受容野]]の広さと刺激への順応の早さが異なる4種類の細胞がある。<br> <br />
<br />
==== マイスナー小体 ====<br />
<br />
機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が早い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する。 <br />
<br />
==== メルケル盤 ====<br />
<br />
表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。 <br />
<br />
==== パチニ小体 ====<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が早い(RAII)。 <br />
<br />
==== ルフィニ終末 ====<br />
<br />
表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない。 <br />
<br />
=== 温度感覚器 ===<br />
<br />
身体部位によって密度が異なり、また一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である[[冷点]]は[[温点]]よりも圧倒的に多い。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。[[冷受容器]](冷線維)と[[温受容器]](温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には[[痛覚]]が生じる。 <br />
<br />
=== 侵害受容器 ===<br />
<br />
[[末梢神経]]の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みは[[Aδ線維]]と[[C線維]]によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。[[島皮質]]後部が痛みの中枢と見なされている。 <br />
<br />
=== かゆみ ===<br />
<br />
痛覚と共通する点が多く、化学刺激(ヒスタミン)等で引き起こされる。 <br />
<br />
<br />
=== 深部感覚受容器 ===<br />
<br />
筋(筋紡錘)、腱(ゴルジ腱器官)、関節にあり、それぞれの伸縮により刺激され、3a野に投射される。身体の運動や位置の変化についての情報を伝える。筋への振動刺激は、運動錯覚を引き起こすことができる。<br />
<br />
==中枢機構==<br />
=== 上行系 ===<br />
<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は[[脊髄]]の[[後索]]から[[内側毛帯]]を通り[[視床]][[腹側後外側核]]に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は[[脊髄後角]]から[[脊髄網様体路]]および[[脊髄視床路]]を通り、視床腹側後外側核や[[視床髄板内核群]]に到達する。<br />
<br />
===視床===<br />
末梢から脊髄を通して体性感覚入力は視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達する。そこで中継され[[一次感覚野]]や島皮質へ投射される。<br />
<br />
[[ファイル:Somatosensory cortex ja.png|thumb|right|250px|'''図 ホムンクルス''']]<br />
<br />
===体性感覚皮質===<br />
[[大脳皮質]]の[[頭頂葉]]に体性感覚野がある。第一[[体性感覚野]](primary somatosensory area, SI)は中心後回、[[ブロードマンの脳地図]]の3,1,2野にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、43野に当たる。<br />
<br />
SI、SIIそれぞれに[[体部位再現]]がある。体部位再現(somatotopy)とは、脳の機能局在が身体部に対してもあり、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが[[幻肢]]である。<br />
<br />
中心後回の後部に[[上頭頂小葉]]があり、前方に5野、後下方に7野がある。5野は[[体性感覚連合野]]と呼ばれることもあり、2野からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は[[視覚]]が主であるが、[[聴覚]]、体性感覚、[[前庭感覚]]の連合野であり、[[空間知覚]]に関わる。<br />
<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの[[情動]]的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
== 関連項目 ==<br />
*[[体性感覚野]]<br />
*[[バレル皮質]]<br />
(他にございましたらご指摘ください。)<br />
<br />
== 参考文献 ==<br />
<br />
<references />(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
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検索
2012-05-07T04:48:34Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>retrieval <br />
<br />
記憶(符号化、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が想起であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 検索手がかり <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。学習、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。 検索、そして想起は構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br> Remembering. A study in experimental and social psychology. Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。記憶は再生されるのではなく、学習した情報を元に作り出される。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br><br>'''A spreading activation theory of semantic processing. Psychol Rev, 82, 407-428.'':1975</ref>。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref ><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br><br>''Creating false memories: Remembering words not presented in lists. J Exp Psychol Learn Mem Cogn, 21, 803–814.'':1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。 検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶保持に効果的である6 <ref ><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を検索誘導性忘却という<ref ><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue 膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。符号化特定性原理<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br><br>'''Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory. Psychol Rev, 80, 352–373.':1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動が近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref ><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は前頭と頭頂の外側部である<ref ><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えれるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されている<ref ><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>。<br />
<br />
<references/></div>
Teruohashimoto
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検索
2012-05-07T04:48:03Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>retrieval <br />
<br />
記憶(符号化、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が想起であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 検索手がかり <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態<ref>''' Tulving E, & Pearlstone Z.'''<br>Availability versus accesibility of information in memory for words.'':1966</ref>があることは、検索の重要性を示している。学習、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。 検索、そして想起は構成的である<ref>'''Bartlett, F.C.'''<br> Remembering. A study in experimental and social psychology. Cambridge: Cambridge University Press.'':1932</ref>。記憶は再生されるのではなく、学習した情報を元に作り出される。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ<ref>''' Collins, A. M., & Loftus, E. F.'''<br><br>'''A spreading activation theory of semantic processing. Psychol Rev, 82, 407-428.'':1975</ref>。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている<ref ><pubmed> 8346330 </pubmed></ref>。 前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる<ref>'''Roediger, H. L., III, & McDermott, K. B.'''<br><br>''Creating false memories: Remembering words not presented in lists. J Exp Psychol Learn Mem Cogn, 21, 803–814.'':1995</ref>。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。 検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶保持に効果的である6 <ref ><pubmed> 18276894 </pubmed></ref>。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を検索誘導性忘却という<ref ><pubmed> 7931095 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue 膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。符号化特定性原理<ref>'''Tulving, E., & Thomson, D. M.'''<br><br>'''Encoding specificity and retrieval processes in episodic memory. Psychol Rev, 80, 352–373.':1973</ref>では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動が近いほど検索が成功しやすいという報告もある<ref ><pubmed> 16373577 </pubmed></ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は前頭と頭頂の外側部である<ref ><pubmed> 12217177 </pubmed></ref>。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えれるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されている<ref ><pubmed> 18641668 </pubmed></ref>。</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=7264
新近性判断
2012-05-07T03:24:45Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>recency judgment 時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継次的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 神経基盤 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて親近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている<ref>'''Friedman, W.J.'''<br><br>''Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.'':1993</ref>。時間経過により記憶”強度”が低下し、その”強度”に基づいて親近性判断がされるという仮説は否定されている<ref name=ref2><pubmed> 16524002 </pubmed></ref>。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている<ref name=ref2/>。刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究から<ref ><pubmed> 12417679 </pubmed></ref>も損傷研究<ref ><pubmed> 9460723 </pubmed></ref>からも知られており、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、前頭-頭頂のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに海馬が関わっていると考えられている。<br />
<br />
<references/></div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=7263
新近性判断
2012-05-07T03:24:00Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>recency judgment 時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継次的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 神経基盤 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて親近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている<ref>'''Friedman, W.J.'''<br><br>''Memory for the time of past events. Psychol Bull, 113, 44-66.'':1993</ref>。時間経過により記憶”強度”が低下し、その”強度”に基づいて親近性判断がされるという仮説は否定されている<ref name=ref2><pubmed> 16524002 </pubmed></ref>。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている<ref name=ref2/>。刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究から<ref ><pubmed> 12417679 </pubmed></ref>も損傷研究<ref ><pubmed> 9460723 </pubmed></ref>からも知られており、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、前頭-頭頂のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに海馬が関わっていると考えられている。</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=4164
新近性判断
2012-03-27T05:36:45Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>recency judgment 時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継次的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 神経基盤 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて親近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている[1]。時間経過により記憶”強度”が低下し、その”強度”に基づいて親近性判断がされるという仮説は否定されている[2]。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている[2]。刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究[3]からも損傷研究[4]からも知られており、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、前頭-頭頂のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに海馬が関わっていると考えられている。</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E6%96%B0%E8%BF%91%E6%80%A7%E5%88%A4%E6%96%AD&diff=4163
新近性判断
2012-03-27T05:36:28Z
<p>Teruohashimoto: ページの作成:「recency judgment 時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定...」</p>
<hr />
<div>recency judgment<br />
時間順序判断をする際に、より現在に近いほうを判断することを指す。刺激系列の中から後に経験した刺激を同定する、もしくは継次的に呈示された複数の刺激系列の中から後の刺激系列中の刺激を同定することである。<br />
<br />
目次<br />
1 概要<br />
2 神経基盤<br />
<br />
==概要==<br />
現在からの遠さ、系列内の位置、相対的時間(前後関係)などに基づいて親近性判断がなされ、時間が記憶されているわけではないと考えられている[1]。時間経過により記憶”強度”が低下し、その”強度”に基づいて親近性判断がされるという仮説は否定されている[2]。また、系列内の順序判断と系列間の順序判断には別のメカニズムが働くことが示唆されている[2]。刺激系列中の初期に呈示された刺激と最後に呈示された刺激の想起成績を比較すると、初期のほうがより想起できる初頭効果と、最後のほうがより想起できる新近効果(想起テストにより近い)がある。また、初期に学習した刺激が後の学習した刺激に対して妨害的に働く順向干渉と、後に学習した刺激がそれ以前に学習した刺激に対して妨害的に働く逆向干渉とがある。<br />
<br />
<br />
==神経基盤==<br />
単なる再認とは異なることが脳画像研究[3]からも損傷研究[4]からも知られており、より情報を特定する必要がある。情報源(ソース)や詳細の想起と同様に、前頭-頭頂のネットワークが関係している。また、刺激と結びついた時間順序情報を想起するのに海馬が関わっていると考えられている。</div>
Teruohashimoto
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検索
2012-03-27T05:35:39Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>retrieval <br />
<br />
記憶(符号化、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が想起であるが、検索と想起を区別しない場合もある。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 検索手がかり <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態がある[1]ことは、検索の重要性を示している。学習、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。 検索、そして想起は構成的である [2]。記憶は再生されるのではなく、学習した情報を元に作り出される。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ[3]。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている[4]。 前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる[5]。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。 検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶保持に効果的である[6]。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を検索誘導性忘却という [7]。 <br />
<br />
== 検索手がかり ==<br />
<br />
retrieval cue 膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。符号化特定性原理[8]では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動が近いほど検索が成功しやすいという報告もある[9]。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は前頭と頭頂の外側部である[10]。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えれるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されている[11]。</div>
Teruohashimoto
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検索
2012-03-27T05:35:06Z
<p>Teruohashimoto: ページの作成:「retrieval 記憶(符号化、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が想起であるが、検索と想起を区別しない場合もある...」</p>
<hr />
<div>retrieval<br />
<br />
記憶(符号化、encoding)された情報を探して取り出すこと。その結果が想起であるが、検索と想起を区別しない場合もある。<br />
<br />
目次<br />
1 概要<br />
2 検索手がかり<br />
3 神経基盤<br />
<br />
==概要==<br />
記憶が失われたのではなく利用可能であるが、アクセスできない状態がある[1]ことは、検索の重要性を示している。学習、符号化は出来ていても、検索が成功する場合と失敗する場合がありえる。<br />
検索、そして想起は構成的である [2]。記憶は再生されるのではなく、学習した情報を元に作り出される。よって、検索はtop-downの制御を受け、誘導されやすい性質を持つ[3]。また、検索により記憶が活性化状態となり、それが伝播・拡散していくことが仮定されている[4]。<br />
前に学習した記憶の検索が、後に学習した記憶の検索に対して妨害的に働く干渉と、後の学習がそれ以前の学習に対して妨害的に働く干渉とがある。複数の学習に共通または対立する情報が含まれる場合、それらの検索に干渉が起きると考えられる[5]。また、干渉は遅延によっても影響を受ける。<br />
検索、想起を繰り返すことは学習を繰り返すことよりも記憶保持に効果的である[6]。ただし検索の干渉があり、例えばA-B、A-Cの連合を学習した後、A-Bのみ検索、想起を繰り返すと、A-Cの想起が困難になる現象を検索誘導性忘却という [7]。<br />
<br />
==検索手がかり==<br />
retrieval cue<br />
膨大な記憶情報のなかから目標とする情報を探し出すためには,目標とする情報と関連する情報を手がかりとして有効に利用することが重要である。適切な手がかりを用いることにより,記憶検索は促進される。符号化特定性原理[8]では、記銘時の符号化の文脈的状況と一致する手がかりほど有効とされる。記銘時の脳活動と検索時の脳活動が近いほど検索が成功しやすいという報告もある[9]。<br />
<br />
==神経基盤==<br />
脳画像研究において、検索に関わる部位は前頭と頭頂の外側部である[10]。側頭内側部は記銘と検索・想起の両方、さらに検索が成功でも失敗でも関わっていること等が考えれるため、その活動が検出されにくいのかもしれない。検索及び検索後モニタリングには、前頭葉背外側部と頭頂葉後部が関わっており、注意のメカニズムと関連が示唆されている[11]。</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=4159
体性感覚
2012-03-27T03:06:57Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>somatosensory <br />
<br />
体性感覚とは触覚、温度感覚、痛覚の皮膚感覚と、筋や腱、関節などに起こる深部感覚から成り、内臓感覚は含まない。深部感覚とは皮膚表面の感覚に対する身体内部の感覚を意味し、固有感覚または自己受容感覚と呼ばれる。筋受容器からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 皮膚感覚受容器 <br />
<br />
2 体部位再現 <br />
<br />
3 体性感覚皮質 <br />
<br />
== 皮膚感覚受容器 ==<br />
<br />
機械受容器(mechanoreceptor)は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの組織の変化を検出し、受容野の広さと刺激への順応の早さが異なる4種類の細胞がある。マイスナー小体は機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が早い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する。メルケル盤は表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。パチニ小体は表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が早い(RAII)。ルフィニ終末も表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない。 温度感覚器は身体部位によって密度が異なり、また一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である冷点は温点よりも圧倒的に多い。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。冷受容器(冷線維)と温受容器(温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には痛覚が生じる。 侵害受容器は末梢神経の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みはAδ線維とC線維によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。島皮質後部が痛みの中枢と見なされている。かゆみは痛覚と共通する点が多く、化学刺激(ヒスタミン)等で引き起こされる。 深部感覚器と機械受容器の信号は脊髄の後索から内側毛帯を通り視床腹側後外側核に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は脊髄後角から脊髄網様体路および脊髄視床路を通り、視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達する。視床核を中継し、SIや島皮質へ投射される。 <br />
<br />
== 体部位再現 ==<br />
<br />
体部位再現(somatotopy)とは、脳の機能局在が身体部に対してもあり、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが幻肢である。 <br />
<br />
== 体性感覚皮質 ==<br />
<br />
大脳皮質の頭頂葉に体性感覚野がある。第一体性感覚野(primary somatosensory area, SI)は中心後回、ブロードマンの脳地図の3,1,2野にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、43野に当たる。SI、SIIそれぞれに体部位再現がある。また、視床は末梢から脊髄を通して体性感覚入力を受け、皮体性感覚野等に投射する。中心後回の後部に上頭頂小葉があり、前方に5野、後下方に7野がある。5野は体性感覚連合野と呼ばれることもあり、2野からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は視覚が主であるが、聴覚、体性感覚、前庭感覚の連合野であり、空間知覚に関わる。 島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの情動的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。 <br />
<br />
<references />(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=4158
体性感覚
2012-03-27T03:04:21Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>somatosensory<br />
<br />
体性感覚とは触覚、温度感覚、痛覚の皮膚感覚と、筋や腱、関節などに起こる深部感覚から成り、内臓感覚は含まない。深部感覚とは皮膚表面の感覚に対する身体内部の感覚を意味し、固有感覚または自己受容感覚と呼ばれる。筋受容器からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。<br />
<br />
目次<br />
1 皮膚感覚受容器<br />
2 体部位再現<br />
3 体性感覚皮質<br />
<br />
==皮膚感覚受容器==<br />
機械受容器(mechanoreceptor)は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの組織の変化を検出し、受容野の広さと刺激への順応の早さが異なる4種類の細胞がある。マイスナー小体は機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が早い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する。メルケル盤は表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。パチニ小体は表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が早い(RAII)。ルフィニ終末も表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない。<br />
温度感覚器は身体部位によって密度が異なり、また一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である冷点は温点よりも圧倒的に多い。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。冷受容器(冷線維)と温受容器(温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には痛覚が生じる。<br />
侵害受容器は末梢神経の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みはAδ線維とC線維によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。島皮質後部が痛みの中枢と見なされている。かゆみは痛覚と共通する点が多く、化学刺激(ヒスタミン)等で引き起こされる。<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は脊髄の後索から内側毛帯を通り視床腹側後外側核に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は脊髄後角から脊髄網様体路および脊髄視床路を通り、視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達する。視床核を中継し、SIや島皮質へ投射される。<br />
<br />
==体部位再現==<br />
体部位再現(somatotopy)とは、脳の機能局在が身体部に対してもあり、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが幻肢である。<br />
<br />
==体性感覚皮質==<br />
大脳皮質の頭頂葉に体性感覚野がある。第一体性感覚野(primary somatosensory area, SI)は中心後回、ブロードマンの脳地図の3,1,2野にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、43野に当たる。SI、SIIそれぞれに体部位再現がある。また、視床は末梢から脊髄を通して体性感覚入力を受け、皮体性感覚野等に投射する。中心後回の後部に上頭頂小葉があり、前方に5野、後下方に7野がある。5野は体性感覚連合野と呼ばれることもあり、2野からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は視覚が主であるが、聴覚、体性感覚、前庭感覚の連合野であり、空間知覚に関わる。<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの情動的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
<references /><br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E4%BD%93%E6%80%A7%E6%84%9F%E8%A6%9A&diff=4157
体性感覚
2012-03-27T03:02:33Z
<p>Teruohashimoto: ページの作成:「somatosensory 体性感覚とは触覚、温度感覚、痛覚の皮膚感覚と、筋や腱、関節などに起こる深部感覚から成り、内臓感覚は含まな...」</p>
<hr />
<div>somatosensory<br />
<br />
体性感覚とは触覚、温度感覚、痛覚の皮膚感覚と、筋や腱、関節などに起こる深部感覚から成り、内臓感覚は含まない。深部感覚とは皮膚表面の感覚に対する身体内部の感覚を意味し、固有感覚または自己受容感覚と呼ばれる。筋受容器からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。<br />
<br />
目次<br />
1 皮膚感覚受容器<br />
2 体部位再現<br />
3 体性感覚皮質<br />
<br />
==皮膚感覚受容器==<br />
機械受容器(mechanoreceptor)は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの組織の変化を検出し、受容野の広さと刺激への順応の早さが異なる4種類の細胞がある。マイスナー小体は機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が早い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する。メルケル盤は表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。パチニ小体は表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が早い(RAII)。ルフィニ終末も表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない。<br />
温度感覚器は身体部位によって密度が異なり、また一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である冷点は温点よりも圧倒的に多い。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。冷受容器(冷線維)と温受容器(温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には痛覚が生じる。<br />
侵害受容器は末梢神経の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みはAδ線維とC線維によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。島皮質後部が痛みの中枢と見なされている。かゆみは痛覚と共通する点が多く、化学刺激(ヒスタミン)等で引き起こされる。<br />
深部感覚器と機械受容器の信号は脊髄の後索から内側毛帯を通り視床腹側後外側核に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は脊髄後角から脊髄網様体路および脊髄視床路を通り、視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達する。視床核を中継し、SIや島皮質へ投射される。<br />
<br />
==体部位再現==<br />
体部位再現(somatotopy)とは、脳の機能局在が身体部に対してもあり、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが幻肢である。<br />
<br />
==体性感覚皮質==<br />
大脳皮質の頭頂葉に体性感覚野がある。第一体性感覚野(primary somatosensory area, SI)は中心後回、ブロードマンの脳地図の3,1,2野にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、43野に当たる。SI、SIIそれぞれに体部位再現がある。また、視床は末梢から脊髄を通して体性感覚入力を受け、皮体性感覚野等に投射する。中心後回の後部に上頭頂小葉があり、前方に5野、後下方に7野がある。5野は体性感覚連合野と呼ばれることもあり、2野からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は視覚が主であるが、聴覚、体性感覚、前庭感覚の連合野であり、空間知覚に関わる。<br />
島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの情動的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。<br />
<br />
<references /><br />
(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)</div>
Teruohashimoto
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確信度
2012-03-27T02:50:13Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 正確さ <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
<br><br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。 再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない<ref><pubmed> 9673991 </pubmed></ref>。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。 個人間の確信度の相関は低く<ref>''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C.''<br>Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?<br>''J App Psychol'':1981<br>''66, 79-89.''</ref>、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある<ref><pubmed> 8255951 </pubmed></ref>。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する<ref>''Vesonder, G. T., & Voss, J. F.''<br>On the ability to predict one's own responses while learning.<br>''J Mem Lang'':1985<br>''24, 363-376.''</ref>、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる<ref><pubmed> 10780019 </pubmed></ref>。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある<ref><pubmed>''Koriat, A.''<br>Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning.<br>''J Exp Psychol Gen'':1997<br>''126, 349-370.''</ref>。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている<ref><pubmed>''Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D.''<br>The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients.<br>''J Mem Lang'':1996<br>''35, 319-334.''</ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
前頭葉内側の損傷患者において、想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった<ref><pubmed> 14998710 </pubmed></ref>。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果<ref><pubmed> 16303318 </pubmed></ref>と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する<ref><pubmed> 19706549 </pubmed></ref>、という報告とがある。 <br />
<br />
<references /><br />
<br />
(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E5%BA%A6&diff=4155
確信度
2012-03-27T02:46:54Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 正確さ <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
<br><br />
<br />
== 概要 ==<br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。 再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない<ref><pubmed> 9673991 </pubmed></ref>。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。 個人間の確信度の相関は低く<ref>''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C.''<br>Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?<br>''J App Psychol'':1981<br>''66, 79-89.''</ref>、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある<ref><pubmed> 8255951 </pubmed></ref>。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する<ref>''Vesonder, G. T., & Voss, J. F.''<br>On the ability to predict one's own responses while learning.<br>''J Mem Lang'':1985<br>''24, 363-376.''</ref>、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる<ref><pubmed> 10780019 </pubmed></ref>。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある<ref><pubmed>''Koriat, A.''<br>Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning.<br>''J Exp Psychol Gen'':1997<br>''126, 349-370.''</ref>。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている<ref><pubmed>''Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D.''<br>The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients.<br>''J Mem Lang'':1996<br>''35, 319-334.''</ref>。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった<ref><pubmed> 14998710 </pubmed></ref>。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果<ref><pubmed> 16303318 </pubmed></ref>と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する<ref><pubmed> 19706549 </pubmed></ref>、という報告とがある。 <br />
<br />
<references /><br />
<br />
(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
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確信度
2012-03-27T02:35:05Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 正確さ <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
<br />
<br />
==概要== <br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない<ref><pubmed> 19159148 </pubmed></ref>。 再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない。 個人間の確信度の相関は低く、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある[4]。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する[5]、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる[6]。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある[7]。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている[8]。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった[9]。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果[10]と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する[11]、という報告とがある。 <br />
<br />
<references /><br />
<br />
(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E5%BA%A6&diff=4153
確信度
2012-03-27T02:32:24Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>confidence <br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。 <br />
<br />
目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 正確さ <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
<br />
<br />
<br />
==概要== <br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない。 再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない。 個人間の確信度の相関は低く、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある[4]。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する[5]、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる[6]。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある[7]。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている[8]。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった[9]。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果[10]と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する[11]、という報告とがある。 <br />
<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
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確信度
2012-03-27T02:07:10Z
<p>Teruohashimoto: </p>
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<div>confidence <br />
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手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。 <br />
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目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 正確さ <br />
<br />
3 神経基盤 <br />
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&nbsp; <br />
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==概要== <br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 19159148 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。 再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 9673991 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 19159148 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。 個人間の確信度の相関は低く&lt;ref&gt;''Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., &amp; Rumpel, C.''''&lt;br&gt;Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations?&lt;br&gt;''J App Psychol'':1981&lt;br&gt;''66, 79-89.''&lt;/ref&gt;、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 19159148 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある[4]。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
== 正確さ ==<br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する[5]、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる[6]。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある[7]。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている[8]。 <br />
<br />
== 神経基盤 ==<br />
<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった[9]。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果[10]と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する[11]、という報告とがある。 <br />
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&lt;references /&gt; <br />
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&nbsp; <br />
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(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
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確信度
2012-03-27T01:37:00Z
<p>Teruohashimoto: </p>
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<div>confidence <br />
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手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。 <br />
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目次 <br />
<br />
1 概要 <br />
<br />
2 正確さ<br />
<br />
3 神経基盤 <br />
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&nbsp;<br />
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==概要== <br />
<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 19159148 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。 再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない[2]。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 19159148 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。 個人間の確信度の相関は低く[3]、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する&lt;ref&gt;&lt;pubmed&gt; 19159148 &lt;/pubmed&gt;&lt;/ref&gt;。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある[4]。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。 <br />
<br />
==正確さ== <br />
<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する[5]、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる[6]。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある[7]。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている[8]。 <br />
<br />
==神経基盤==<br />
<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった[9]。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果[10]と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する[11]、という報告とがある。 <br />
<br />
<br />
<br />
&lt;references/&gt;<br />
<br />
&nbsp;<br />
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(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
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確信度
2012-03-27T01:25:15Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>confidence<br />
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手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。<br />
<br />
目次<br />
1 概要<br />
2 正確さ<br />
3 神経基盤<br />
<br />
==概要==<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない[1]。<br />
再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない[2]。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない[1]。<br />
個人間の確信度の相関は低く[3]、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する[1]。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある[4]。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。<br />
<br />
==正確さ==<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する[5]、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる[6]。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある[7]。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている[8]。<br />
<br />
==神経基盤==<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった[9]。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果[10]と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する[11]、という報告とがある。<br />
<br />
参考文献<br />
<br />
1 Ratcliff, R., & Starns, J. J. (2009). Modeling confidence and response time in recognition memory. Psychol Rev, 116, 59-83.<br />
2 Yonelinas, A. P., Kroll, N. E., Dobbins, I., Lazzara, M., & Knight, R. T. (1998). Recollection and familiarity deficits in amnesia: convergence of remember-know, process dissociation, and receiver operating characteristic data. Neuropsychology, 12, 323-339.<br />
3 Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C. (1981). Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations? J App Psychol, 66, 79-89. <br />
4 Koriat, A. (1993). How do we know that we know? The accessibility model of the feeling of knowing. Psychol Rev, 100, 609-639.<br />
5 Vesonder, G. T., & Voss, J. F. (1985). On the ability to predict one's own responses while learning. J Mem Lang, 24, 363-376.<br />
6 Busey, T. A., Tunnicliff, J., Loftus, G. R., & Loftus, E. F. (2000). Accounts of the confidence-accuracy relation in recognition memory. Psychon Bull Rev, 7, 26-48.<br />
7 Koriat, A. (1997). Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning. J Exp Psychol Gen, 126, 349-370.<br />
8 Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D. (1996). The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients. J Mem Lang, 35, 319-<br />
9 Schnyer, D. M., Verfaellie, M., Alexander, M. P., LaFleche, G., Nicholls, L., & Kaszniak, A. W. (2004). A role for right medial prefontal cortex in accurate feeling-of-knowing judgements: evidence from patients with lesions to frontal cortex. Neuropsychologia, 42, 957-966.<br />
10 Chua, E. F., Schacter, D. L., Rand-Giovannetti, E., & Sperling, R. A. (2006). Understanding metamemory: neural correlates of the cognitive process and subjective level of confidence in recognition memory. Neuroimage, 29, 1150-1160.<br />
11 Kirwan, C. B., Shrager, Y., & Squire, L. R. (2009). Medial temporal lobe activity can distinguish between old and new stimuli independently of overt behavioral choice. Proc Natl Acad Sci U S A, 106, 14617-14621.<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
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確信度
2012-03-27T01:22:14Z
<p>Teruohashimoto: </p>
<hr />
<div>confidence<br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。<br />
<br />
目次<br />
1 概要<br />
2 正確さ<br />
3 神経基盤<br />
<br />
概要<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない[1]。<br />
再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない[2]。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない[1]。<br />
個人間の確信度の相関は低く[3]、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する[1]。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある[4]。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。<br />
<br />
正確さ<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する[5]、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる[6]。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある[7]。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている[8]。<br />
<br />
神経基盤<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった[9]。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果[10]と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する[11]、という報告とがある。<br />
<br />
参考文献<br />
<br />
1 Ratcliff, R., & Starns, J. J. (2009). Modeling confidence and response time in recognition memory. Psychol Rev, 116, 59-83.<br />
2 Yonelinas, A. P., Kroll, N. E., Dobbins, I., Lazzara, M., & Knight, R. T. (1998). Recollection and familiarity deficits in amnesia: convergence of remember-know, process dissociation, and receiver operating characteristic data. Neuropsychology, 12, 323-339.<br />
3 Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C. (1981). Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations? J App Psychol, 66, 79-89. <br />
4 Koriat, A. (1993). How do we know that we know? The accessibility model of the feeling of knowing. Psychol Rev, 100, 609-639.<br />
5 Vesonder, G. T., & Voss, J. F. (1985). On the ability to predict one's own responses while learning. J Mem Lang, 24, 363-376.<br />
6 Busey, T. A., Tunnicliff, J., Loftus, G. R., & Loftus, E. F. (2000). Accounts of the confidence-accuracy relation in recognition memory. Psychon Bull Rev, 7, 26-48.<br />
7 Koriat, A. (1997). Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning. J Exp Psychol Gen, 126, 349-370.<br />
8 Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D. (1996). The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients. J Mem Lang, 35, 319-<br />
9 Schnyer, D. M., Verfaellie, M., Alexander, M. P., LaFleche, G., Nicholls, L., & Kaszniak, A. W. (2004). A role for right medial prefontal cortex in accurate feeling-of-knowing judgements: evidence from patients with lesions to frontal cortex. Neuropsychologia, 42, 957-966.<br />
10 Chua, E. F., Schacter, D. L., Rand-Giovannetti, E., & Sperling, R. A. (2006). Understanding metamemory: neural correlates of the cognitive process and subjective level of confidence in recognition memory. Neuroimage, 29, 1150-1160.<br />
11 Kirwan, C. B., Shrager, Y., & Squire, L. R. (2009). Medial temporal lobe activity can distinguish between old and new stimuli independently of overt behavioral choice. Proc Natl Acad Sci U S A, 106, 14617-14621.<br />
<br />
(執筆者:橋本照男、担当編集委員:入來篤史)</div>
Teruohashimoto
https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E7%A2%BA%E4%BF%A1%E5%BA%A6&diff=4147
確信度
2012-03-27T01:19:39Z
<p>Teruohashimoto: ページの作成:「confidence 手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判...」</p>
<hr />
<div>confidence<br />
<br />
手がかりを元に特定の情報が想起できそうかどうかという展望的判断と、想起した情報が確かであるかどうかという判断がある。展望的判断は学習時に行う確信度判断を指す場合が多い。想起についての判断であり、メタ認知である。<br />
<br />
目次<br />
1 概要<br />
2 正確さ<br />
3 神経基盤<br />
<br />
概要<br />
例えば確信度評定を4段階で行う場合、評定段階を分ける3つの基準が用いられることになる。再認におけるOLD/NEW判断は、2段階の確信度評定として捉えることもできる。実用的な評定基準数は5,6程度と考えられ、評定段階を多く増やしても確信度評定が厳密になるわけではない[1]。<br />
再認がrecollection(リコレクション)とfamiliarity(ファミリアリティ)の2つの処理過程から成るとする立場において、確信度はfamiliarityと同義に扱われるが、確信度が最大のOLD判断がrecollectionと同義というわけではない[2]。また、OLD判断における確信度と、NEW判断における確信度は別処理であるとも考えられ、再認判断全般から一様な確信度が得られるわけではないのかもしれない[1]。<br />
個人間の確信度の相関は低く[3]、高い(強い)確信度判断をしやすい人と、滅多に高い確信度判断をしない慎重な人がいるが、これは判断基準の問題であり、判断基準が慎重な場合は高い確信度判断が少なくなる。この判断基準は教示や要求される判断速度等によっても変化する[1]。判断に制限時間がある場合には正確さが低下することがある一方、自発的に早い判断ができるほうが確信度は高くなる。記憶へのアクセスのしやすさ(accessibility)と確信度は相関関係にある[4]。確信度が高いから早い判断が可能なのかもしれないし、早い判断ができたことが高い確信度につながるのかもしれない。<br />
<br />
正確さ<br />
展望的確信度判断は想起成績と相関する[5]、つまり想起できそうかという判断は、正しいことが多いとされる。一方、想起した情報に対する確信度と正確さの相関に影響が与える要因は、学習、学習と想起の状況、モニタリング等にあるとされる[6]。学習を繰り返すことは後の確信度を高く見積もることにつながるが、学習時間が長いことは後の確信度をあまり上昇させないことなどの報告がある[7]。また、高い確信度判断が誤っている事態は容易に起きることが知られている[8]。<br />
<br />
神経基盤<br />
前頭葉内側の損傷で想起した情報に対する確信度は良好であったが、展望的確信度判断は不正確になった[9]。脳画像研究では、再認記憶課題において側頭内側部の活動が、確信度の高低で差があるという結果[10]と、確信度のような主観的判断とは独立に既知刺激と新奇刺激とを区別する[11]、という報告とがある。<br />
<br />
参考文献<br />
<br />
1 Ratcliff, R., & Starns, J. J. (2009). Modeling confidence and response time in recognition memory. Psychol Rev, 116, 59-83.<br />
2 Yonelinas, A. P., Kroll, N. E., Dobbins, I., Lazzara, M., & Knight, R. T. (1998). Recollection and familiarity deficits in amnesia: convergence of remember-know, process dissociation, and receiver operating characteristic data. Neuropsychology, 12, 323-339.<br />
3 Lindsay, R. C. L., Wells, G. L., & Rumpel, C. (1981). Can people detect eyewitness identification accuracy within and across situations? J App Psychol, 66, 79-89. <br />
4 Koriat, A. (1993). How do we know that we know? The accessibility model of the feeling of knowing. Psychol Rev, 100, 609-639.<br />
5 Vesonder, G. T., & Voss, J. F. (1985). On the ability to predict one's own responses while learning. J Mem Lang, 24, 363-376.<br />
6 Busey, T. A., Tunnicliff, J., Loftus, G. R., & Loftus, E. F. (2000). Accounts of the confidence-accuracy relation in recognition memory. Psychon Bull Rev, 7, 26-48.<br />
7 Koriat, A. (1997). Monitoring one's own knowledge during study: A cue-utilization approach to judgments of learning. J Exp Psychol Gen, 126, 349-370.<br />
8 Schacter, D., Verfaellie, M., & Pradere, D. (1996). The neuropsychology of memory illusions: false recall and recognition in amnesic patients. J Mem Lang, 35, 319-<br />
9 Schnyer, D. M., Verfaellie, M., Alexander, M. P., LaFleche, G., Nicholls, L., & Kaszniak, A. W. (2004). A role for right medial prefontal cortex in accurate feeling-of-knowing judgements: evidence from patients with lesions to frontal cortex. Neuropsychologia, 42, 957-966.<br />
10 Chua, E. F., Schacter, D. L., Rand-Giovannetti, E., & Sperling, R. A. (2006). Understanding metamemory: neural correlates of the cognitive process and subjective level of confidence in recognition memory. Neuroimage, 29, 1150-1160.<br />
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Teruohashimoto