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<div align="right"> <font size="+1">[http://researchmap.jp/takatanorio 高田 則雄]</font><br> ''慶應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室''<br> DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年3月15日 原稿完成日:2019年2月19日<br> 担当編集委員:[https://researchmap.jp/masahikowatanabeo 渡辺 雅彦] (北海道大学大学院医学研究院 解剖学分野 解剖発生学教室)<br> </div> {{Infobox Brain| Name = マイネルト基底核 | Latin = nucleus basalis meynerti | GraySubject = 189 | GrayPage = 813 | Image = Substantia_innominata_MRI.PNG| Image2 = Acetylcholine Pathway.png| IsPartOf = | Components = | Artery = | Vein = | Acronym = | BrainInfoType = hier | BrainInfoNumber = 257 | MeshName = Basal+nucleus+of+Meynert | MeshNumber = A08.186.211.730.885.105.880.100 | DorlandsPre = n_11 | DorlandsSuf = 12580484 | }} 羅:nucleus basalis meynerti 英:Nucleus basalis of Meynert 独:Nucleus basalis Meynert 仏:Noyau basal de Meynert 英略称:NBM 同義語:マイネルト核 {{box|text= マイネルト基底核は前脳底部に存在する神経核であり、そのコリン作動性神経細胞は淡蒼球と内包との境界に散在する<ref><pubmed> 8006218 </pubmed></ref> <ref><pubmed>19377503</pubmed></ref>。求心性の軸索を大脳皮質の広範囲へ投射する<ref name = PG1987><pubmed> 3300852 </pubmed></ref>。マイネルト基底核はコリン作動性の神経核として知られてきたが、アセチルコリン(acetylcholine, ACh)を含む神経細胞だけでなく、GABAあるいはグルタミン酸を含む神経細胞も存在する<ref><pubmed> 18279318 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 9075237 </pubmed></ref>。関与する機能には、脳波制御<ref><pubmed>14650916</pubmed></ref>、皮質可塑性<ref><pubmed> 11000421 </pubmed></ref>、脳血流制御<ref><pubmed>15135901</pubmed></ref>などが知られている。 }} ==構造== ===位置=== [[前脳]]基底部に存在する[[コリン]]作動性神経核は吻部から尾部へ向かって順に[[Ch1]]([[内側中隔核]])、[[Ch2]]([[Broca対角帯垂直亜核]])、[[Ch3]]([[Broca対角帯水平亜核]])、[[Ch4]]([[無名質-基底核複合体]])と命名されている<ref><[[pubmed]]>6320048</pubmed></ref> <ref><pubmed>16344145 </pubmed></ref>。マイネルト基底核はCh4を構成し、[[淡蒼球]]と[[内包]]との境界に位置する。なおCh4にはマイネルト基底核の他に[[無名質]]なども含まれる。[[ラット]]の場合、無名質はマイネルト基底核よりも吻側で、[[前交連]]の腹側に存在する<ref><pubmed>6320048</pubmed></ref>。 ===細胞構築=== マイネルト基底核を構成するコリン作動性神経細胞の細胞体は中型から大型(直径18~43 μm)であり、形状は楕円形あるいは紡錘形である<ref name=gp1994>''' Larry L. Butcher'''<br>, 36 Cholinergic Neurons and Networks, George Paxinos editor, The Rat Nervous System Second Edition<br>''Academic Press'':1994</ref>。[[樹状突起]]は多極性である<ref name=gp1994 />。ラットでは左右の[[脳半球]]それぞれのCh4に7000から9000個のコリン作動性神経細胞が存在する<ref name = LD2004><pubmed> 14650905 </pubmed></ref>。ラットを用いた研究によると、[[前頭前皮質]]へ投射するマイネルト基底核の神経細胞の内19%がコリン作動性であり、52%が[[GABA]]作動性、15%が[[グルタミン酸]]作動性である<ref><pubmed> 18279318</pubmed></ref>。 ===出力=== マイネルト基底核の神経細胞は[[大脳皮質]]全域および[[扁桃体]]へ投射する<ref name =PG1987 />。大脳皮質へのコリン作動性投射の多くは[[無髄線維]]である<ref>'''Wainer BH, Mesulam M-M'''<br> Ascending cholinergic pathways in the rat brain. In: Steriade M, Biesold D, editors. Brain cholinergic systems<br>''Oxford University Press'':1990, p.65-119.</ref>。大脳皮質におけるコリン作動性入力の7~8割はマイネルト基底核からの投射であり<ref>'''Sharon L. Juliano, S. Essie Jacobs'''<br> Thre Rore of [[Acetylcholine]] in Barrel Cortex<br>''Plenum Press'':1995</ref><ref><pubmed> 6265265 </pubmed></ref><ref name=gp1994 />、残りの2~3割は大脳皮質に散在する双[[極性]][[介在神経細胞]](GABAおよび[[VIP]]を含む<ref><pubmed> 9200749 </pubmed></ref>)からと考えられている。 マイネルト基底核からのコリン作動性軸索は大脳皮質の全層に投射している<ref name = md2000><pubmed>11064369</pubmed></ref>。このコリン作動性軸索の単位体積当たりの長さをラットの大脳皮質の層毎に比較すると、[[前頭葉]]では差が見られない(12.6~13.5 m/mm<sup>3</sup>)が[[頭頂葉]]や[[後頭葉]]では差がある<ref name=md2000 />。例えば頭頂葉の第一層では投射線維の長さが12.8 m/mm<sup>3</sup>に対して、第2/3層や第4層では7.3~8.1 m/mm<sup>3</sup>と短い<ref name=md2000 />。投射線維の長さを大脳皮質の領域間で比較すると前頭皮質(13.0 m/mm<sup>3</sup>)は頭頂葉(9.9 m/mm<sup>3</sup>)や後頭葉(11.0 m/mm<sup>3</sup>)よりも長い<ref name=md2000 />。これらのコリン作動性軸索投射には軸索長さ10 μm当たり4つ程度の[[軸索瘤]](平均直径0.57 μm)が存在する<ref name=md2000 /> <ref name = LD2004 />。軸索瘤の内16%はシナプス性結合を形成し、残りの84%は非シナプス性(non-synaptic)に拡散伝達(diffuse transmission)を行う<ref name = LD2004 />。コリン作動性のシナプス数は大脳皮質に存在する[[シナプス]]1500個当り1つと想定されている<ref name = LD2004 />。なお、マイネルト基底核の軸索投射は大脳皮質の神経細胞だけでなく血管にも直接投射すると示唆されている<ref name = PG1987 />。 ===入力=== マイネルト基底核の神経細胞(コリン作動性およびGABA作動性)へは[[脳幹網様体賦活系]]からの軸索投射がある。この投射は視床下部の[[内側前脳束]]を上行しており、種々の伝達物質([[ドーパミン]]、アセチルコリン、[[セロトニン]]、[[ノルアドレナリン]]、グルタミン酸)を含む神経線維によって構成されている<ref name=as2006>'''有田秀穂'''<br>脳内物質のシステム神経生理学<br>''中外医学社'':2006</ref>。これらの内でマイネルト基底核のコリン作動性神経細胞へ直接投射しているのは[[青斑核]]のノルアドレナリン神経と[[背側縫線核]]のセロトニン神経、[[網様体]]のグルタミン酸神経である<ref name = BJ1999>'''Jones BE, Muhlethaler M'''<br> Cholinergic and GABAergic neurons of the basal forebrain : role in cortical activation. In: Lydic R, Baghdoyan HA, editors. Handbook of behavioral state control<br>’’London CRC Press’’:1999, p.213-233.</ref>。マイネルト基底核のコリン作動性神経細胞に対してグルタミン酸とノルアドレナリンは興奮性に作用し、セロトニンは抑制性に作用する<ref name=as2006 />。GABA作動性神経細胞はノルアドレナリンやアセチルコリンに対する応答性の違いからいくつかに分類されている<ref name = BJ1999 />。多くのGABA神経細胞はノルアドレナリンによって興奮するが、抑制されるものも存在する<ref name = BJ1999 />。 ==生理機能== ===脳波制御=== 電気刺激などによってマイネルト基底核を活性化させると大脳皮質において細胞外アセチルコリン濃度が増す<ref><pubmed>2565563</pubmed></ref>と共に、大脳皮質[[脳波]]の[[徐波]]成分([[デルタ波]])が減少し、[[速波]]成分([[シータ波]]と[[ガンマ波]])が増える<ref name = BJ2003><pubmed>12700104</pubmed></ref>。この脳波の変化は[[ムスカリン性アセチルコリン受容体]]への[[拮抗薬]]によって抑制される<ref><pubmed>1361197</pubmed></ref>。なお、マイネルト基底核のコリン作動性神経細胞は、[[覚醒]]時や[[REM睡眠]]時に[[発火]]活動が亢進しているが<ref name = BJ2003 />、非コリン作動性神経細胞の活動には一定の傾向は見られていない<ref name = BJ2003 />。 ===皮質可塑性=== 音刺激や[[洞毛|ヒゲ]]刺激などの[[末梢感覚]]への刺激と、マイネルト基底核への電気刺激とを同時に繰り返し与えると、その末梢刺激に対する大脳皮質の神経細胞応答が増大する<ref><pubmed>9497289</pubmed></ref> <ref><pubmed>3384031</pubmed></ref>。具体的には、末梢刺激に対して大脳皮質神経細胞での[[抑制性シナプス後電流]](IPSC)が減少すると共に、[[興奮性シナプス後電流]](EPSP)が増大する<ref><pubmed>18004384</pubmed></ref>。その他、マイネルト基底核による皮質可塑性の発現には大脳皮質[[グリア細胞]]の細胞内[[カルシウム|Ca<sup>2+</sup>]]濃度上昇が必要との報告もある<ref><pubmed>22159127</pubmed></ref>。これらの[[シナプス可塑性]]の誘導には、大脳皮質における[[ムスカリン受容体]]の活性化が必要である。なお記憶障害を主症状とする[[アルツハイマー病]]患者の脳ではマイネルト基底核の神経細胞が脱落する<ref><pubmed>7058341</pubmed></ref>。 ===血流制御=== 電気刺激やグルタミン酸の局所投与によってマイネルト基底核を活性化させると大脳皮質の血流が増大する<ref><pubmed>2565562</pubmed></ref> <ref><pubmed>14650915</pubmed></ref>。マイネルト基底核が大脳皮質へ放出したアセチルコリンがムスカリン性受容体を介して神経細胞やグリア細胞、脳血管へ作用することで血流が増大すると考えられている<ref><pubmed>22293985</pubmed></ref>。ただしアストロサイトの細胞体におけるカルシウム上昇は、マイネルト基底核の活性化による大脳皮質血流上昇には関与しないことが、イノシトール三リン酸受容体2型をノックアウトした遺伝子改変マウスを用いた研究によって示されている<ref><pubmed>23785506</pubmed></ref><ref><pubmed>23658179</pubmed></ref>。 ==関連語== *[[アセチルコリン]] *[[前脳基底部]] *[[脚橋被蓋核]] *[[アルツハイマー病]] ==参考文献== <references />
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