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[[Image:サザンブロット図1.jpg|thumb|right|300px|'''図1 相補性のある2本のDNA鎖は一対の2本鎖を形成する。''']] 英語名:Southern blot [[wikipedia:ja:遺伝的相補性|相補性]]のある2本の[[wikipedia:ja:DNA1|DNA1]]本鎖は一対の2本鎖を形成するというDNAの性質(図1)を利用して、ある特定の[[wikipedia:ja:塩基配列|塩基配列]]を有するDNA断片を検出する方法である。E. M. Southernが考案した<ref><pubmed> 1195397 </pubmed></ref>ためにこの名が付けられた。 == 手順 == [[Image:サザンブロット図2修正.jpg|thumb|right|300px|'''図2.サザンブロットの手順''']] 本法の手順を図2に示す。 #制限酵素によるDNAの配列選択的切断処理<br> この際にメチル化感受性制限酵素と非[[wikipedia:ja:DNAメチル化|メチル化]]感受性[[wikipedia:ja:制限酵素|制限酵素]]を組み合わせて使用することで後述に示すDNAメチル化状態の解析が出来る。 #[[wikipedia:ja:アガロースゲル|アガロースゲル]][[wikipedia:ja:電気泳動|電気泳動]] #ゲル内DNAの変性<br> 電気泳動により分離されたDNAをアガロースゲル内で1本鎖にする(変性)ために電気泳動後のアガロースゲルをNaOHなどの塩基性溶液で処理をする。 #メンブランへの転写<br> アガロースゲル内のDNAを泳動パターンを維持したままを[[wikipedia:ja:毛細管現象|毛細管現象]]を利用して[[wikipedia:ja:ナイロン|ナイロン]]製や[[wikipedia:ja:ニトロセルロース|ニトロセルロース]]製のメンブランへ転写する。この作業には数時間から一晩要するため、近年は電気的に転写するエレクトロブロット、吸引によるバキュームブロットなど短時間で転写できる装置も市販されている。 #プローブとの反応<br> 特定の塩基配列を検出するための標識(ラベリング)された[[wikipedia:ja:核酸|核酸]]をプローブと呼び、標識には[[wikipedia:ja:放射性同位体|放射性同位体]]の他、[[wikipedia:ja:アルカリフォスファターゼ|アルカリフォスファターゼ]]などの酵素が利用される。プローブに用いる核酸はDNA, RNAいずれも使用でき、それぞれDNAプローブ、RNAプローブと呼ばれる。RNAプローブはDNAプローブに比してメンブラン上のDNAとの結合力が高いが扱いにくいためDNAプローブが頻用される。ただしDNAプローブは使用前に1本鎖にする必要がある。 これらのプローブをDNAを転写したメンブラン上で反応させることで相補的な配列をもつDNAとプローブが2本鎖を形成する。 なお、このときに塩濃度を高くすることでプローブの配列と一致しないまでも相同性の高い配列を持つDNAは2本鎖を形成する。これを利用すれば異なる動物種間の遺伝子、あるいは相同遺伝子を検出することが出来る場合もある。 #メンブランの洗浄<br> メンブラン上のDNAに結合しなかったプローブを洗浄する。この際にも洗浄液の塩濃度を高くすることでプローブと多少配列が異なるDNA間の2本鎖は結合したままにすることが出来る。 #検出<br> プローブ標識に放射性同位体を用いた場合はX線フィルムをを用いた[[wikipedia:ja:オートラジオグラフィー|オートラジオグラフィー]]でプローブの位置を検出する。また、プローブをアルカリホスファターゼ標識した場合は発光基質を反応させその[[wikipedia:ja:発光|発光]]をフィルムで検出するほか、[[wikipedia:ja:CCDカメラ|CCDカメラ]]などの検出器なども用いられる。 == ノーザンブロットとの相違点 == 基本原理、手順ともに両者に大きな相違はないが、[[ノーザンブロット]]は検出する対象がDNAではなくRNAであること、さらにRNAは1本鎖であるために泳動後のアガロースゲルを塩基性 溶液で処理する必要がないことである。なお、サザンブロットは考案者の名前から命名されているため、英文では大文字から表記される (Southern blot)が、ノーザンブロットはサザンブロットに対する「洒落」で命名されているため小文字から表記 (northern blot)される。これは[[wikipedia:ja:抗体|抗体]]を用いて[[wikipedia:ja:SDS-PAGE|SDS-PAGE]]後のタンパク質を検出する[[ウェスタンブロット]] (western blot)においても同様である。 [[Image:サザンブロット図3修正.jpg|thumb|right|300px|'''図3.サザンブロットにより遺伝子変異の検出例''']] [[Image:サザンブロット図4.jpg|thumb|right|300px|'''図4.サザンブロットによるDNAメチル化状態の解析例''']] == 使用例 == === 遺伝子変異の検出 === サザンブロットにより検出されるバンドの大きさの変化で遺伝子の変異を検出することが出来る。例えば[[遺伝子改変動物]]を[[ジーンターゲティング法]]で作製した場合には、そのバンドの大きさで遺伝子型(野生型、ヘテロ、ホモ)の判別に用いられる(図3)。 === DNAメチル化状態の解析 === [[wikipedia:ja:ゲノム|ゲノム]]DNAメチル化は遺伝子発現における調節因子であるため、その解析は遺伝子発現制御の分野では重要である。 制限酵素[[wikipedia:List_of_restriction_enzyme_cutting_sites:_G-K#H|HpaII]]と[[wikipedia:List_of_restriction_enzyme_cutting_sites:_L-N#M|MspI]]は同じ5'- CCGG - 3'を認識し切断するが、メチル化感受性制限酵素であるHpaIIは2番目のCがメチル化された配列 (5'- CmCGG - 3')は切断することが出来ない。一方MspIはメチル化状態にかかわらず切断することが出来る。そこで、これらの制限酵素を利用したサザンブロットで特定のCpG配列のメチル化状態を調べることが出来る(図4)。 == 関連項目 == *[[ノザンブロット]] == 参考文献 == <references /> (執筆者:平林敬浩、八木健 担当編集委員:岡野栄之)
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