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<div align="right"> <font size="+1">[http://researchmap.jp/ayaekinoshita 木下 彩栄]</font><br> ''京都大学 大学院医学研究科 人間健康科学系専攻''<br> DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年9月28日 原稿完成日:2013年11月12日<br> 担当編集委員:[http://researchmap.jp/ryosuketakahashi 高橋 良輔](京都大学 大学院医学研究科)<br> </div> 英語名:retrograde amnesia 独:retrograde Amnesie 仏:amnésie retrograde 同義語:逆向性健忘 {{box|text= 逆行性健忘 (retrograde amnesia) とは、発症以前の、過去の出来事に関する記憶を思い出すことの障害である。ここでいう出来事とは本人の生活史上の経験であっても、本人が生活してきた時代における社会的な事実であってもよい。すなわち、発症以前に本人が経験し、覚えているはずの出来事を思い出すことができない状態である。しかしながら、どの程度の期間の逆行性健忘があるかの評価は必ずしも容易ではない。というのも、その個人の過去の記憶を正確に証明することは困難であり、世俗的な事象を対象に過去の記憶を確認しようとしても、個人の関心の度合いが異なるためである。 }} == 特徴 == 逆行性健忘により発症から遡ってみられる健忘の期間は、多くの場合、数か月から数年に及ぶが、数十年に及ぶ症例も存在する。通常、発症時点に近い出来事ほど思い出しにくく、発症時点から遠い過去の出来事ほど思いだしやすい。これを時間勾配 (temporal gradient) というが、必ず時間勾配が認められるわけではなく、認められないこともある。逆行性健忘の回復過程では、発症時点で思い出せなかった過去の事象を、発症から時間が経過するにつれ想起できるようになってくる。このように健忘期間が徐々に短縮し、記憶が消滅している時点が発症時に近づいてゆくが、ある時点まで短縮したが、それ以上短縮せずに残存することも少なくない。また健忘期間の消長は病変の性質にもよる。外傷性脳損傷などでは、しばしば逆行性健忘が発現するとともに、その後に健忘期間の短縮もみられる。それとは逆に、[[アルツハイマー病]]など進行性の[[神経変性疾患]]では、健忘期間が延長して行き、これは病態の進展を示唆している。 健忘症では、通常、逆行性健忘と[[前行性健忘]]の両方がみられるが、前行性健忘が主体で逆行性健忘が軽微なものや、逆に前行性健忘に比べ、逆行性健忘が著しいもの (disproportionate retrograde amnesia) など様々な組み合わせがある。特に、前行性には健忘がないか、ごく軽微であるにもかかわらず、顕著な逆行性健忘を呈する病態を、孤立性逆行性健忘 (isolated retrograde amnesia, focal retrograde amnesia あるいはpure retrograde amnesia) と呼び、記憶の神経基盤に関する重要な手がかりを提供するものとして注目されてきた。多くの場合、発症早期には前行性健忘と逆行性健忘が共存するが、速やかに前行性健忘は改善し、逆行性健忘が残存するというパターンをとる。 == 障害される記憶内容 == 障害されるのは本人の自伝的なエピソード記憶であるが、本人がそれまで生きてきた時代背景に関わる社会的な事実の記憶も障害される。これは知識として定着すれば、[[意味記憶]]となる。逆行性健忘では、この遠隔記憶内の障害のされ方は一様ではない。個々の症例でみれば、[[自伝的記憶]]が顕著に低下する例もあれば、社会的事件や自伝的記憶の中で意味記憶に近い成分が強く障害される場合もあり、多様である。一方、原則的に、[[手続き記憶]]について逆行性健忘は認められない。 == 神経基盤 == 逆行性健忘の機序は、それまで保持されていた記憶内容の破壊、あるいは記憶内容の再生障害と考えられる。病因として、脳外傷、[[脳炎]]、[[脳血管障害]]、[[てんかん]]、[[低酸素性脳症]]、[[一過性全健忘]]など多様である。責任病変として、比較的健忘期間が短いものは、[[内側側頭葉]]病変が重視され、より長期に健忘期間がみられるものは、内側よりむしろ[[側頭葉]]前方部が重視される。 内側側頭葉損傷による健忘症候群は、ScovilleとMilnerによる有名な症例[[H.M.]]の研究をはじめとする<ref name=ref1><pubmed>13406589</pubmed></ref>。H.M.は27歳時、難治性てんかんの治療を目的に両側内側側頭葉切除術を施行されたが、術後、重度の前行性健忘と約10年の逆行性健忘が生じた。また、低酸素脳症で両側[[海馬]]の[[CA1]]領域に限局した梗塞をきたした症例R.B.も、同様に重篤な前行性健忘と2~3年の逆行性健忘を生じた<ref name=ref2><pubmed>3760943</pubmed></ref>。これらの結果を踏まえ、内側側頭葉がエピソード記憶に重要であることは間違いなく、記銘と保持(固定化)、あるいは想起に関与することが示唆される。内側側頭葉の具体的構造物と記憶障害の関係について、Yonedaらは[[MRI]]による脳炎患者の側頭葉構造の体積測定から<ref name=ref3><pubmed>7995298</pubmed></ref>、Rempel-Clowerらは限局した側頭葉損傷の病理学的な比較検討から<ref name=ref4><pubmed>8756452</pubmed></ref>、前行性健忘には海馬体が、逆行性健忘には海馬傍回が重要であろうと報告している。しかし、その後の報告でも内側側頭葉損傷による健忘症患者の症状は決して一様ではなく、単純に[[海馬体]]と[[海馬傍回]]を区別して説明しうるかははっきりしない。おそらく、障害が内側側頭葉領域にとどまらず、側頭葉前方部などに及ぶことで逆行性健忘の期間が長くなる可能性はある。 これまでに逆行性健忘を説明するために提唱された理論として、[[Squire]]らの「[[記憶の固定化]]の2段階理論」<ref name=ref5><pubmed>7620304</pubmed></ref>のほか、Nadelらの「多重痕跡理論 (multiple trace theory) 」<ref name=ref6><pubmed>10985275</pubmed></ref>が挙げられる。Squireらの理論では、「海馬のシナプスが急速に変化することで、海馬システムが一時的な記憶の貯蔵庫として働く」急速な固定化の段階と、「海馬システムが新皮質にある記憶表象を繰り返し活性化させることで生じ、次第に皮質間の相互結合を強めることで、記憶が海馬システムから独立したものとなる」緩徐な固定化の段階が存在するというモデルを提唱している。一方、Nadelらは、新皮質同士の長期にわたる相互結合を仮定せずに、海馬を含む側頭葉内側部が新皮質と絶えず相互作用を営み、相互の情報内容を常に更新していくというモデルを想定した。すなわち、Squireらの理論では、海馬の役割が時間とともに減少するのに対して、Nadelらの理論では、記銘だけではなく想起においても海馬が関与するというものである。 これらのモデルはいずれも海馬を含む内側側頭葉の役割を中心に据えているが、逆行性健忘が数十年という長期に及ぶ孤立性逆行性健忘では、損傷部位を特定できないことも多い。損傷部位がはっきりしていて多いのは、[[側頭極]](側頭葉先端部)、[[嗅内野]]([[28野]])、海馬傍回を含む両側側頭葉の前方であるが、両側または一側[[前頭葉]]の背外側[[前頭前野]]または内側の[[帯状回]]前部、前頭葉底面を含む広範な前頭葉障害、あるいは[[視床]]病変での報告もある<ref name=ref7><pubmed>17015852</pubmed></ref> <ref name=ref8><pubmed>10426519</pubmed></ref> <ref name=ref9>'''Mangels JA, Gershberg FB, Shimamura AP, Knight RT'''<br>Impaired retrieval from remote memory in patients with frontal lobe damage.<br>''Neuropsychology'' 1996; 10: 32-41. </ref> <ref name=ref10><pubmed>11440756</pubmed></ref>。遠隔記憶の多様性を考えれば、そのさまざまな側面にかかわる種々の脳領域での病変が健忘を引き起こすと考えられ、逆行性健忘の責任病変が一定でないのはむしろ当然かもしれない。 == 機能性逆行性健忘 == 機能性逆行性健忘(functional retrograde amnesia)とは、過去の遠隔記憶が部分的(10年から数十年に及ぶ)あるいは完全に失われた状態で、明らかな器質性病変の見られないものをいう。孤立性逆行性健忘の中でも、逆行性健忘が全生活史に及ぶものは、全般性健忘 (generalized amnesia)であり 、わが国では全生活史健忘と呼ばれ、自分の名前、生い立ちから始まる自己の全生活史を思い出せない状態である。多くの場合は心因性と考えられるが、発症の引き金となる明らかな[[心的外傷]]や過度の[[ストレス]]がないこともあり、その場合、患者本人も気づいていないような心的ストレスが存在するのか否か、心因の特定が難しい。心因性か器質性かはっきりしない場合、機能性逆行性健忘と一括して論じられることもある。 == 関連項目 == *[[前行性健忘]] *[[エピソード記憶]] *[[海馬]] *[[内側側頭葉]] == 参考文献 == <references />
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