カプグラ症候群のソースを表示
←
カプグラ症候群
ナビゲーションに移動
検索に移動
あなたには「このページの編集」を行う権限がありません。理由は以下の通りです:
この操作は、次のグループに属する利用者のみが実行できます:
登録利用者
。
このページのソースの閲覧やコピーができます。
<div align="right"> <font size="+1">福島 貴子、針間 博彦</font><br> ''東京都立松沢病院精神科''<br> DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年12月10日 原稿完成日:2013年月日<br> 担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> </div> 英語名:Capgras syndrome 独:Capgras-Syndrom 仏:syndrome de Capgras 同義語:[[カプグラ妄想]] (Capgras delusion)、[[カプグラ現象]]、[[カプグラ症状]]、ソジーの錯覚 {{box|text= カプグラ症候群とは、近親者などが瓜二つの偽物と入れ替わったと確信する[[妄想]]であり、1923年にCapgras. J. とReboul-Lachoux. J.<ref name=ref8>'''Capgras, J. and Reboul-Lachaux, J.'''<br>L’illusions des sosies dans un délire systématisé chronique.<br>Bull. Soc. Clin. Méd. Ment. ii, 6-16.,1923.</ref>によって報告された。近年では、カプグラ症候群、[[フレゴリ症候群]]、[[相互変身妄想]]および[[自己分身症候群]]が妄想性人物誤認症候群の亜型としてまとめられている。カプグラ症候群は[[妄想型統合失調症]]に多いが、[[認知症]]や[[頭部外傷]]で見られることもある。成因論的には、1960年代までは対象の妄想的否認や感情的判断などと言った心因を重視する見解が支配的であったが、1970年代以降、器質因を重視する立場が出現し、[[知覚]]や[[相貌認知障害|相貌認知の障害]]として解釈しようとする立場が優勢となっている。[[大脳]]の右半球や[[前頭葉]]の病変との関連が指摘され、カプグラ症候群を[[認知心理学的]]に説明する仮説も提唱されている。}} == 概念 == カプグラ症候群とは、友人や配偶者、両親その他近親者などが、瓜二つの外見の別人に入れ替わってしまったと誤認する[[妄想]]である。誤認の対象は人物以外にも場所、物体、時間など様々なものがある。症状は一過性であることもあれば、繰り返し出現することもある。これは「症候群」という独立した臨床単位ではなく、多様な病態を背景にして出現する一症状にすぎないとする立場からは、カプグラ妄想(Capgras delusion)、カプグラ現象、カプグラ症状、ソジーの錯覚などと呼ばれる。1970年代以降、カプグラ症候群に関する報告が急速に増加し、かつて考えられたほど稀な病態ではないと考えられている。当初は女性に多いとされたが、1936年にMurray, J.R.<ref name=ref36>'''Murray, J.R.'''<br>A case of Capgras' syndrome in the male.<br>''J. Ment. Sci.'', 82 ; 63-66, 1936. S60</ref>が男性例を報告し、現在では性差について諸説がある。カプグラ症候群の病態や成因についてはいまだ見解が一致しておらず、この現象が妄想なのか[[認知障害]]なのか議論がある。 == 歴史 == カプグラ症候群は、1923年にCapgras. J. とReboul-Lachaux. J.<ref name=ref8 />によって最初に報告され、「[[ソジーの錯覚]]」と呼ばれた。症例は53歳の女性であり、その妄想は「自分が高貴な家の出身である」「悪の結社によって子供やパリ市民が地下に幽閉されている」ことの他に、「乳児期に死んだ彼女の子供、夫、彼女が結社を告発している警察庁の長官、彼女が入院している精神病院の医師や看護婦や患者、及び彼女自身に、それぞれ数人から数千人におよぶ瓜二つの外見をしたの替え玉(sosies) が存在する」と言う訴えが含まれた<ref name=ref43>'''立花光雄、榊原純'''<br>ソジーの錯覚(Capgras 症候群) 中安信夫編:稀で特異な精神症候群ないし状態像<br>''星和書店''、東京、p. 109-118,2004.</ref>。 ソジー (sosie) とは、[[wj:古代ローマ|古代ローマ]]の劇作家[[wj:プラウトゥス|Titus Maccius Plautus]]の戯曲「[[w:Amphitryon (play)|Amphitryon]]」の登場人物である。[[wj:アムピトリュオーン|Amphitryon]]の妻[[wj:アルクメーネー|Alcmene]]の篭絡を企む[[wj:ユピテル|Jupiter]]は、[[wj: メルクリウス|Mercure]]をAmphitryon 家の召使に変身させて送り込むが、この召使の名前がSosieである。17世紀後半、フランスの劇作家[[w:Molière|Molière]] がこのPlautusの戯曲を題材にして同名の作品を上演して以来、sosie は瓜二つの替え玉を意味する一般名詞になった<ref name=ref43 />。 1929年、Lévy-Valensi, J.<ref name=ref33>'''Lévy-Valensi, J.'''<br>L'illusion des sosies. <br>''Gaz. Hôp. Paris'', 55; 1001-1003, 1929</ref>はソジーの錯覚を「カプグラ症候群」と呼ぶことを提唱し、自己や近親者に関する事物、居住する街などに関わる誤認もカプグラ症候群に含めた<ref name=ref43 />。1930年、Vie, J.<ref name=ref45>'''Vié, J.'''<br>Un trouble de l'identification des personnes -L'illusion des sosies.<br>''Ann. Méd. Psychol.'', 88 ; 214-237, 1930.</ref>はCourbon, P. とFail, G.<ref name=ref14>'''Courbon, P., Fail, G.'''<br>L'illusion de Frégoli et schizophrénie.<br>''Bull. Soc. Clin. Méd. Ment.'', 15 ; 121-124.1927.</ref>が報告した[[フレゴリの錯覚]]をカプグラ症候群と合わせ、[[人物誤認]]というカテゴリーに一括した。 1986年、Christdoulou, G.N.は、[[妄想的人物誤認症候群]] (delusional misidentification syndromes) を提唱し、カプグラ症候群、フレゴリ症候群、[[相互変身症候群]]、[[自己分身症候群]]をその4つの亜型とした<ref name=ref12>'''Christodoulou, G.N.'''<br>The delusional misidentification syndromes. <br>''Bibl Psychiatr, Karger, Basel'', 1986.</ref><ref name=ref35>'''Munro, A.'''<br>Delusional Disorder: Paranoia and Related Illnesses.<br>P178-185. Cambridge, UK; New York: ''Cambridge University Press''; 1999.</ref>。 == 妄想性人物誤認症候群の4亜型 == ===カプグラ症候群=== 周囲の他者(通常、親しい関係にある人)が、本来の人物によく似た替え玉に置き換えられているという妄想的確信を持つ病態である<ref name=ref8 />。替え玉は本物そっくりだが、時に患者は本物とのわずかな「差異」(雰囲気や身体的特徴)を指摘する。すり替えられた対象は、動物や非生物であることもあり、自分自身を含む場合もある。配偶者、両親など自分が愛着を持つ人物が偽物であることが妄想の主題であり、本物の居場所や偽物の正体は二次的な問題となる<ref name=ref27>'''兼本浩祐'''<br>フレゴリの錯覚.稀で特異な精神症候群ないし状態像.中安信夫編:稀で特異な精神症候群ないし状態像<br>''星和書店''、東京、p. 129-136,2004.</ref>。一般的には、[[被害妄想]]や[[誇大妄想]]と関連して[[体系的妄想]]の一部を構成し、入れ替わった対象(偽物)に対して猜疑的、被害的であることが多い<ref name=ref39>'''大東祥孝、村井俊哉'''<br>精神神経疾患におけるカプグラ症状<br>''精神医学''、46 ; 338-352, 2004. </ref>。Vié (1930)<ref name=ref45 />は、患者が不在の差異を見いだす(既知の人を未知と誤認)ことから、カプグラ症候群を「陰性ソジー」(sosies négatifs)と呼んだ。Christodoulou, G.N.はこれを同定過小 (hypo-identification)という視点でとらえた<ref name=ref9><pubmed>871569</pubmed></ref> <ref name=ref10><pubmed>619004</pubmed></ref> <ref name=ref11><pubmed>7346898</pubmed></ref> <ref name=ref12 />。 ===フレゴリ症候群=== 妄想の焦点となる特定の者が、無害な外観を呈した周囲の人物に変装し、迫害を加えてくると確信している病態である。フレゴリの錯覚(illusion de Frégoli)、[[フレゴリ症状]](Fregoli symptom)とも呼ばれ<ref name=ref6><pubmed>3830335</pubmed></ref>、Courbon とFail<ref name=ref6 />が最初に報告した例は、[[統合失調症]]の27歳女性であった。彼女は、いつも劇場で目にしていた2 人の女優が、身近な人々の姿に変装して自分に言い寄り、性愛的な迫害を加えると訴えた。なお、フレゴリとは舞台での素早い変装で有名なイタリアの役者[[w:Leopoldo Fregoli|Leopoldo Fregoli]] (1867 – 1936) にちなんだものである。 無害な外見をとった様々の人物に変装した偽物の正体が主題とされ、仮面の背後に隠れている迫害者が、患者にとって愛着の対象であることがある。Vié(1930)<ref name=ref44><pubmed>8149127</pubmed></ref>は、患者が不在の類似性を見いだす(未知の人を既知と誤認)ことから、「陽性ソジー」(sosies positifs)と呼んだ。Christodoulouはこれを同定過多(hyper-identification)と言う視点でとらえた<ref name=ref9 /> <ref name=ref10 /> <ref name=ref11 /> <ref name=ref12 />。 ===相互変身症候群=== 周囲の身近な人々が相互に変身してしまうという[[妄想的確信]]である<ref name=ref15>'''Courbon P, Tusques J'''<br>Illusion d’intermetamorphose et de charme. <br>''Ann Méd-Psychol'', 90, 401-405, 1932. </ref>。自分の主たる関心を占める対象同士が、同一の人物の外見を保ちながら次々にお互いに入れ替わる。見かけの対象と本物の対象のいずれもが、患者にとって何らかの愛着ないしは迫害の対象であることが多い<ref name=ref27 />。 ===自己分身症候群=== 患者は、自分とそっくり同じの分身がいると確信する<ref name=ref10 />。これは普通、他の型の[[人物誤認症候群]]と共存し、単独で見られることは稀である。自己を対象とした[[替え玉妄想]]であることから、Christodoulouはこれを人物誤認症候群の第4の型とした。この場合、自分自身が替え玉であると訴えるカプグラ症候群との異同が問題となる<ref name=ref39 />。 ==成因論 == Capgras らが最初の報告の中で「[[知覚]]の錯覚ではなく感情判断の結果である」と述べて以来、カプグラ症候群は対象の[[妄想的否認]]や感情的判断の問題とされてきた<ref name=ref43 />。木村ら<ref name=ref29>'''木村敏、坂敬一、山村靖ほか'''<br>族否認症候群について<br>''精神経誌''、70 ; 1085-1109, 1968.</ref>は、カプグラ症候群を妄想主題と規定し、受動的な愛の要求の挫折が自己の来歴の妄想的改変と自己および他者の意味変更を余儀なくすると述べた。西田ら<ref name=ref37>'''西田博文、奥村幸夫'''<br>Capgras症状と継子妄想<br>精神経誌、81 : 649-665, 1979. </ref>は、乳幼児期の対人知覚様式への[[退行]]がカプグラ現象を成立させるとみなした。カプグラ症候群における誤認の対象が重要な人物に限定されるという対象の選択性は、疫学的にも支持され、既婚者の74.6%が配偶者を、未婚者の82.8% が両親を替玉とみなした<ref name=ref30><pubmed>3521582</pubmed></ref>。 1971年、Weston, M. J.<ref name=ref45 />は、頭部外傷後の[[せん妄]]状態においてカプグラ症候群が出現した症例を報告した。以降、カプグラ症候群における器質的要因の関与が主張されるようになった。[[脳器質性障害]]による人物や事物の同定障害に[[相貌失認]]<ref name=ref5>'''Bodamer, J.'''<br>Die Prosop-Agnosie (Die Agnosie des Physiognomieerkennens). <br>''Arch. Psychiat. Nervenkr.'', 179 ; 6-53, 1947.</ref>と[[重複錯誤記憶]]<ref name=ref40>'''Pick. A.'''<br>Zur Casuistik der Erinnerungstäuschungen. <br>''Arch. Psychiatr. Nervenkr.'', 6 ; 568-574, 1876. </ref>がある。カプグラ現象とこれらの障害との関連や、脳の機能的離断との関連が研究されていくにつれ、カプグラ現象の神経学的基盤に関する仮説が提唱されるようになった。1980年代には、重複記憶錯誤を妄想的人物誤認症候群に含める著者もいた。 1988年、Anderson<ref name=ref2><pubmed>3273156</pubmed></ref>は相貌失認とカプグラ現象という二つの病態において、顔の形態的知覚情報と感情的意味情報の統合不全において生じる葛藤が、二次的な妄想的合理化を生むという仮説を提示した。1990年、Ellis, H.D. とYoung, A.W.<ref name=ref18><pubmed>2224375</pubmed></ref>はBauer, R.M.<ref name=ref3>'''Bauer, R.M.'''<br>The cognitive psychophysiology of prosopagnosia. In<br>(ed.) , Ellis, H., Jeeves, M. et al. Aspects of Face Processing. <br>''Martinus Nijhoff, Dordrecht'', 1986. </ref>の相貌認知に係わる神経機構仮説を援用することによって、Andersonの仮説を説明した。国内においても、1980年代以降は器質的要因が注目され、[[老年期認知症]]や[[前頭葉]]・[[側頭葉]]病変などの脳器質性障害を基盤として生じる人物誤認現象が報告されている。 == カプグラ症候群がみられる疾患 == カプグラ症候群は妄想型統合失調症において最も頻度が多い<ref name=ref2 /> <ref name=ref9 />。また、[[統合失調感情障害]]や[[気分障害]]の症例も報告されている<ref name=ref20><pubmed>1780403</pubmed></ref> <ref name=ref30 />。これら[[内因性精神病]]の他、器質性疾患で認めたとする報告が1980年代後半から増加している。カプグラ症候群の報告例全体のうち、約25~40%程度において器質因の合併が認められた<ref name=ref42><pubmed>7846234</pubmed></ref>。たとえば、[[アルツハイマー型認知症]]<ref name=ref7><pubmed>2397366</pubmed></ref> <ref name=ref17><pubmed>7606286</pubmed></ref>、[[レヴィー小体型認知症]]<ref name=ref4>'''Baldwin, R.C., Snowden, J.S., and Mann, M.A.'''<br>Delusional misidentification in association with cortical Lewy body disease - A case report and overview of possible mechanisms.<br>''Int. J. Geriatr. Psychiat.'' 10, 893-898, 1995.</ref>、[[脳血管性認知症]]<ref name=ref44 />、[[頭部外傷]]<ref name=ref38>'''O'Connor, M., Walbridge, M., Sanderson, T. and Alexander, M.'''<br>A neuropsychological analysis of Capgras syndrome. <br>''Neuropsychiat., Neuropsychol. Behav. Neurol.'' 9(4), 265-271, 1996. </ref>、[[てんかん]]<ref name=ref11 />、[[脳血管障害]]<ref name=ref21><pubmed>8038951</pubmed></ref> <ref name=ref44 />、[[脳腫瘍]]<ref name=ref2 />、[[脳炎]]<ref name=ref41><pubmed>8780958</pubmed></ref>、[[wj:AIDS|AIDS]]<ref name=ref16><pubmed> 2131145</pubmed></ref>、[[wj:偽性副甲状腺機能低下症|偽性副甲状腺機能低下症]]<ref name=ref23><pubmed>4826852</pubmed></ref>、[[wj:ビタミンB12欠乏症|ビタミンB12欠乏症]]<ref name=ref47><pubmed>7013836</pubmed></ref>、[[wj:糖尿病|糖尿病]]、[[偏頭痛]]発作、[[ケタミン]]の使用などである。 また、明確な身体疾患がなくても、器質性を示唆する異常[[脳波]]などとの関連や、カプグラ症候群を伴う統合失調症患者は、伴わない群より前頭葉と側頭葉の萎縮が有意に強いことを指摘する報告もある<ref name=ref26><pubmed>2380157</pubmed></ref>。 == 関連病変部位 == 右半球損傷を指摘する研究<ref name=ref31><pubmed>7846239</pubmed></ref> <ref name=ref32><pubmed>6538650</pubmed></ref>が多いが、両側性ないし左側に病変が認められた症例<ref name=ref19>'''Feinberg, T.E. and Shapiro, R. M'''<br>Misidentification - reduplication and the right hemisphere. <br>''Neuropsychiat. Neuropsychol. Behav. Neurol.'' 2, 39-48, 1989. </ref> <ref name=ref25><pubmed>3718463</pubmed></ref>も報告されている。半球内では、前頭葉<ref name=ref19 /> <ref name=ref34><pubmed>3651660</pubmed></ref>と側頭葉<ref name=ref19 /> <ref name=ref34 />、および[[扁桃体]]<ref name=ref24><pubmed>9107057</pubmed></ref>の関与を指摘する報告が多い。アルツハイマー型痴呆でカプグラ症候群の見られる群では、右半球や右前頭葉の損傷が目立つ症例が多いという報告がある<ref name=ref6 />。 だが変性疾患、頭部外傷、[[多発性脳梗塞]]などの症例においては、広汎にわたる脳病変が想定されるため、カプグラ症候群が局在損傷に対応していると必ずしも結論することはできない。また、右半球や前頭葉などに限局的な損傷があっても、必ずしもカプグラ症候群が観察されるわけではない。 == 重複記憶錯誤との関連 == 1979年、Alexander, Stuss & Benson<ref name=ref1><pubmed>571979</pubmed></ref>は、カプグラ症候群が[[重複記憶錯誤]](Reduplicative Paramnesia)の一型であり、二つの症状の神経心理学的、脳病理学的基盤が同一であると主張した。重複記憶錯誤は「今いる場所ないし人物は確かに本物であるが、同じ場所ないし人物がもう一つないしそれ以上存在している」という確信で、一般的には器質性疾患において認められ、神経学的背景として右半球損傷、前頭葉損傷が指摘されている。カプグラ症候群を認める症例においても右半球や前頭葉の損傷が関連するとされているが、重複記憶錯誤ほど明確ではない。 重複記憶錯誤では、患者は非現実的で矛盾した内容を確信的に語るため、背景に何らかの思考障害や妄想性障害が想定されることがある。濱中<ref name=ref22>'''濱中淑彦'''<br>記憶錯誤・作話と妄想のあいだ <br>「幻覚と妄想の臨床」、P135-168、医学書院、東京、1992. M61)</ref>によれば、カプグラ症候群ではしばしば入れ替わった対象に対して猜疑的、被害的である一方、重複記憶錯誤では対象の重複に対しむしろ肯定的な態度を示し、[[多幸]]的ないし[[無関心]]な傾向がみられる場合が多い。また、カプグラ症候群では入れ替わりの対象は原則として人物であり、場所のみを対象とする報告がない一方で、重複記憶錯誤では人物の重複よりむしろ場所の重複が主であると言う差異がある。両者を同一の現象と見なすかどうかについては、未だ学派により意見の分かれるところである。 == 相貌失認との関連 == 1990年、EllisとYoung<ref name=ref18 />は、カプグラ症候群を相貌失認に妄想的加工が加わったものと解釈する「相貌失認の鏡像」仮説を提唱した。この仮説では、[[視覚皮質]]から[[下縦束]]を通り側頭葉へ至る「[[腹側経路]](意識的な相貌の認知に関与)」、及び視覚皮質から[[下頭頂小葉]]を経由して[[大脳辺縁系]]へと至る「[[背側経路]]([[無意識]]的な相貌の認知に関与)」という、相貌の情報処理に関わる二経路が仮定されている。相貌失認は背側経路が健全な腹側経路のみの障害、カプグラ症候群は腹側経路が健全な背側経路のみの障害として説明される。背側経路の損傷により、既知の相貌に対する無意識の親しみが感知されなくなるが、正常な腹側経路によって相貌そのものは正しく処理される。結果的に「この顔は知人の特徴を備えているが親近感が沸かない」といった葛藤が生じ、これを解決するため「瓜二つだが偽物である」という誤判断が生まれるとされる。HirsteinとRamachandran<ref name=ref24 />の症例は、頭部外傷後にカプグラ症候群を呈したが、人物誤認は対象を見た場合にのみ生じ、電話で話した場合には生じなかった。症状が視覚提示によってのみ出現している点は、上記の仮説と矛盾しない。 ==関連項目== *[[妄想]] *[[妄想性人物誤認症候群]] *[[フレゴリの錯覚]] *[[重複記憶錯誤]] *[[相貌失認]] ==参考文献 == <references />
このページで使用されているテンプレート:
テンプレート:Box
(
ソースを閲覧
)
カプグラ症候群
に戻る。
ナビゲーション メニュー
個人用ツール
ログイン
名前空間
ページ
日本語
表示
閲覧
履歴表示
その他
検索
案内
索引
脳科学辞典について
最近完成した項目
編集履歴
執筆にあたって
引用の仕方
著作権について
免責事項
問い合わせ
各学会編集のオンライン用語辞典
About us (in English)
Twitter (BrainScienceBot)
ツール
リンク元
関連ページの更新状況
特別ページ
ページ情報
他のプロジェクト