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<div align="right"> <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0104691 中村 太戯留]</font><br> ''東京工科大学''<br> <font size="+1">松井 智子</font><br> ''東京学芸大学''<br> DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年5月11日 原稿完成日:2015年xx月xx日<br> 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構生理学研究所 大脳皮質機能研究系)<br> </div> ==連想== 英語名:association 連想とは、[[ヒト]]が五感から得た情報から、関連した他の[[記憶]]を思い浮かべることである。例えば、「海」という言葉を聞いた際に、「砂浜」「マリンスポーツ」という言葉や、恋人と過ごした夏の思い出、潮の香りや裸足で歩く砂浜の感触などが連想される。具体的に何を連想するかは、個人ごとに異なり、それはそれまでの学習や経験によると考えられる。ただ、複数人の連想を調べた場合、共通して多く挙がる連想もあれば、少ない連想もある。 Damasio他(1996)<ref name=Damasio1996><pubmed>8606767</pubmed></ref>は、人物、動物、道具の写真を見てその名前を言うという課題(写真からその名称を連想する課題)を用いたイメージング研究を行い、左[[側頭葉]]の賦活を報告している。また、カテゴリごとに賦活する場所が異なっており、人物は[[側頭極]]([[38野]])、動物は下[[側頭回]]の前方([[20野]])、道具は下側頭回の後方(20野)の関与が認められた。このことから、名称に関する知識([[意味記憶]])は側頭葉に蓄えられている可能性が示唆されている。 一方、「海―砂浜」のように、語の組み合わせを覚える課題においては、[[海馬]]が賦活することが知られており、この賦活は2語<ref name=Henke1999><pubmed>10318979</pubmed></ref><ref name=Jackson2004><pubmed>14741683</pubmed></ref><ref name=Meltzer2005><pubmed>15627581</pubmed></ref><ref name=Prince2005><pubmed>15689557</pubmed></ref>、3語<ref name=Lepage2000><pubmed>10808138</pubmed></ref><ref name=Addis2006><pubmed>17023179</pubmed></ref>、2つの物<ref name=Kohler2005><pubmed>15999342</pubmed></ref>、顔と名前<ref name=Sperling2001><pubmed>11559958</pubmed></ref><ref name=Sperling2003><pubmed>14568509</pubmed></ref>においても同様である。一方、この連想を引き出す場合には、海馬に加えて、内側側頭葉、[[頭頂葉]]、[[前頭前野]]、そして[[後頭葉]]が賦活していた<ref name=Otten2001><pubmed>11709486</pubmed></ref>。また、感情が喚起される場合には、これらの活動がより強くなることが報告されている<ref name=Reisberg2005>'''Reisberg D, & Hertel P.'''<br>Memory and emotion.<br>''New York: Oxford University Press.'':2005</ref><ref name=Dolcos2004a><pubmed>15325353</pubmed></ref><ref name=Dolcos2004b><pubmed>15182723</pubmed></ref><ref name=Dolcos2005><pubmed>15703295</pubmed></ref>。内側側頭葉は[[エピソード記憶]]の保持に関与していることから<ref name=Nyberg1996><pubmed>8614466</pubmed></ref>、連想は最小単位のエピソード記憶と捉えることができるのかもしれない(エピソード記憶に関与する部位は諸説あり)。また、ネガティブな連想においては、記憶時と想起時の両方において、左中[[側頭回]]後方の賦活が報告されている<ref name=Onoda2009><pubmed>19428683</pubmed></ref>。この領域は、エピソード記憶よりも[[意味記憶]]の処理において賦活することが報告されていることから<ref name=Wiggs1999><pubmed>9920476</pubmed></ref>、意味的なモジュレーション<ref name=Mechelli2007><pubmed>16767767</pubmed></ref>をかけている可能性が考えられる。 このように、連想、すなわち語と語の組み合わせの記憶と[[想起]]には、海馬が重要な役割を果たしており、連想は内側側頭葉(海馬のすぐ外側に位置する)に保持されている可能性が示唆されている。位置的には、脳の内側から、海馬、内側側頭葉、そして外側側頭葉となっており、順に新規の記憶(記憶全般)、一回体験しただけの記憶(エピソード記憶)、そして繰り返し体験する記憶(意味記憶)となっている。意味記憶に語(概念)が保持されているとするならば、連想は複数の語の関連づけ(意味記憶へのポインターのようなもの)と捉えることができるのかもしれない。 ==比喩== 英:metaphor 比喩とは、[[ヒト]]の想像力をかきたてる方法の一つで、文字通りの意味ではない意味を想起させて、ヒトに何かを感じさせることである。文字通りの文は、「[[イヌ]]は動物だ」のような包含関係を表わすか、「イヌは吠える」のような属性を表わしている。比喩(隠喩)の場合、「香水は花束だ」といっても香水は花束には含まれないし、属性でもないため、意味的な逸脱が生じており、文字通りの意味ではない意味の想起が促されていると考えられる。すなわち、文字通りの文は通常の連想の範囲内であるのに対して、比喩文は通常の連想を破綻させ、新たな連想を想像し創造することを促す作用があると考えられる。 比喩(隠喩)論は、おおまかには、[[wj:相互作用論|相互作用論]]<ref name=Black1962>'''Black, M.'''<br>Models and metaphors<br>''Ithaca, N.Y.: Cornel University Press.'':1962</ref>、[[wj:潜在的隠喩論|潜在的隠喩論]]<ref name=Lakoff1980>'''Lakoff, G. and Johnson, M.'''<br>Metaphors we live by.<br>''Chicago: University of Chicago Press.'':1980</ref>、そして[[wj:使用論|使用論]]<ref name=Davidson1978>'''Davidson, D.'''<br>What metaphors mean.<br>''Critical Inquiry, 5.'':1978 (「隠喩は何を意味するのか」, 現代思想, 15(6))</ref>の3つに分けることができる。相互作用論は、「AはBだ」という表現には、Aという語からの連想と、Bという語からの連想から、共通する連想内容を見つけるようにヒトを仕向けるという役割があるという考え方である。潜在的隠喩論は、例えば、「心は容器だ」のような普段は意識されない潜在的な隠喩が、「心を満たす」「心が空になる」のような、容器から連想される内容を用いた「心」の言説を生み出しているという考え方である。そして、使用論は、頭の上への一撃のように、ヒトに何かを気づかせる、という役割が一番肝心とする考え方である。 Bottini他(1994)<ref name=Bottini1994><pubmed>7820563</pubmed></ref>では、(1)文中の非単語を見つけるという単語課題、(2)文の字義通りの解釈をする字義課題、そして(3)文の比喩的解釈をする比喩課題を設定した。そこで、(2)から(1)を引き算すると文を理解するときの脳活動(左脳の[[前頭前野]][8, 9, 10, 45/4[[7野]]]、[[側頭極]][38野]、中下[[側頭回]][20, 21, 2[[2野]]]、[[角回]][40野]、[[楔前部]][3[[1野]]]、[[膝下野]][2[[5野]]];右脳の膝下野[25野]、下[[前頭前野]][47野]、内側前頭前野[10/11野])、(3)から(2)を引き算すると比喩を理解するときの脳活動(右脳の前頭前野背外側部[4[[6野]]]、中側頭回[21野]、楔前部と背側[[後帯状皮質]][31野])が残る。これらから、文を字義通りに解釈する際には主に大脳の左半球が関与するのに対して、比喩的解釈をする際には右半球が関与する可能性が示唆された。 一方、Rapp他<ref name=Rapp2004><pubmed>15268917</pubmed></ref>は、左半球の関与を示す所見を発表し、その後、左半球の関与を示す報告が多く見られた。例えば、柴田他(2007)<ref name=Shibata2007><pubmed>17662699</pubmed></ref>では、(1)理解できない文を用いた課題、(2)文の字義通りの解釈をする字義課題、そして(3)文の比喩的解釈をする比喩課題を設定した。そして、(3)から(2)を引き算すると比喩を理解するときの脳活動(内側前頭前野[9, [[10野]]]、左下前頭回[45野]、左[[9野]]、左40野)が残る。考察として、内側前頭前野は意味関係の一貫性の推論、左下前頭回は意味的な逸脱の検出に関与している可能性が示唆された。 Bohrn他(2012)<ref name=Bohrn2012><pubmed>22824234</pubmed></ref>やRapp他(2012)<ref name=Rapp2012><pubmed>22759997</pubmed></ref>は、2000年以降に活発になった比喩に関するイメージング研究を20以上集めた[[メタ分析]]の結果を報告している。比喩から字義を引き算した結果、左半球有意(左下前頭回[45, 47, 46, [[13野]]]、左中側頭回[21, 37, 22野] 、左下側頭回[21野]、左内側前頭前野[9野]、左上前頭回[8野]、右下前頭回[45, 46野])という結果であった。考察として、左下前頭回は意味的逸脱の検出、左中下側頭回は意味関係の照合、左内側前頭前野[9, 10野]は意味関係の一貫性の推論をしている可能性が示唆された。右下前頭回に関して、柴田他(2012)<ref name=Shibata2012><pubmed>22534570</pubmed></ref>は、何らかの比喩理解プロセス(おそらくは特徴抽出や統合)に関与している可能性を示唆している。また、内山他(2012)<ref name=Uchiyama2012><pubmed>21333979</pubmed></ref>は、比喩文と皮肉文の直接比較をおこない、比喩文理解に特有の部位として皮質下領域の[[尾状核]]が賦活しており、様々な解釈の可能性が考えられる中で、字義通り以外の解釈の選択に関与している可能性を示唆している。また、中村他(2012)<ref name=Nakamura2012>'''Nakamura, T., Matsui, T., Utsumi, A., Yamazaki, M., Makita, K., Tanabe, H. C., & Sadato, N.'''<br>The Role of the Amygdala in the Process of Humor Appreciation.<br>''Proceedings of the 34th Annual Meeting of the Cognitive Science Society, 797-802.'':2012</ref>は、比喩的表現の面白さを判断する際には、左偏桃体が重要な役割を果たす可能性を示唆している。 このように、比喩理解においては、意味的逸脱の検出や意味関係の照合に関与する左半球、意味関係の一貫性の推論に関与する内側前頭前野、比喩特有の処理に関与する右半球や皮質下領域が、相互に連携しながら処理している可能性が示唆されている。 ==参考文献== <references/>
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