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<div align="right"> <font size="+1">*[http://researchmap.jp/manoyoko/ 間野 陽子]</font><br> ''京都大学文学研究科心理学研究室 日本学術振興会特別研究員(RPD)''<br> <font size="+1">[http://researchmap.jp/komeda/ 米田 英嗣]</font><br> ''京都大学白眉センター''<br> DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年8月3日 原稿完成日:201X年X月X日<br> 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構生理学研究所 [[大脳皮質]]機能研究系)<br>*:責任著者 </div> 英語名:changing perspectives 独:Perspektivenwechsel 仏:l'évolution des perspectives 同義語:他者視点取得 (perspective-taking) {{box|text= 視点転換は、自己中心視点および他者中心視点からなるものであり、物体の見え方などの物理レベルと、他者の意図や心的状態の推測に関わる社会レベルに分けられる。特に、社会レベルの視点転換では、他者視点取得(perspective-taking)が必要となり、他者の信念や意図を推測する際に必要な能力である「心の理論」や共感と強く関与することが知られている。}} ==視点転換== [[視点]]とは、対象を見るときの立脚点である (Wikipedia [[wj:視点|視点]]を参照)。視点転換とは、[[他者中心視点]]から[[自己中心視点]]、自己中心視点から他者中心視点に視点を切り替えることである。 物理レベルでは、例として、観察者が、テーブルの上に、コーヒーカップと雑誌が置いてあるのを見ている光景を思い浮かべた場合、自己中心視点から記述すると、「右前方1メートルのところにコーヒーカップがあり、左前方のほぼ同じ距離に雑誌が置いてある」と説明できる。一方で、他者中心視点 (環境中心視点)から記述すると、「テーブルの上に2つの物体があり、テーブルの中心より右側にコーヒーカップがあり、中心より左側に雑誌がある」と説明できる<ref>'''乾 敏郎'''<br>イメージ脳<br>''岩波書店'', 2009</ref>。 社会レベルでは、他者を受け入れて理解するための能力である[[他者視点取得]]と関連し、他者の経験の知覚に対する自己の反応や、他者を観察しているときに自分も同様の感情状態になる共感にとって必要な要素となる<ref><pubmed> 16157488 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11319565 </pubmed></ref>。社会的な視点転換に必要となる、第一人称視点(first-person perspective)と第三人称視点(third-person perspective)を調べるために、視覚的な仮想空間を設定したボール投げゲーム(ball-tossing game)課題が用いられることがある<ref><pubmed> 16839298 </pubmed></ref>。この課題では、仮想空間にAとBのアバターが2人存在し、実験参加者自身を含めた3者でボールを投げあうゲームを行わせる。この場合は、実験参加者自身がボールを受け取ったり(passive task)、投げたり(active task)することが第一人称視点での行動となる。一方で、仮想空間にAとBとCのアバターが3人存在し、実験参加者は例えばCのアバターの視点に立ってボールを投げあうゲームを行わせた場合、Cのアバターがボールを受け取ったり、投げたりすることを実験参加者が見ることで第三人称視点で認識することとなる。 社会生活を円滑に送るためには、相手の気持ちを推察する際に必要な他者の感情認知と、他者と自己とが異なることを理解する際に必要な自己認知が重要である。他者の感情認知には、相手の立場に立って考えるという他者視点取得および「[[心の理論]]」の能力が必要である<ref>'''板倉 昭二'''<br>「他者の心:メンタライジングを中心に」<br>大津 由紀雄・波多野 誼余夫 (編)『認知科学への招待』<br>''研究社'', 2004</ref>。「心の理論」を測定するための誤信念課題(代表例として、「サリーとアン課題 (Sally–Anne test)<ref><pubmed> 2934210 </pubmed></ref>」)を解く際には、視点変換をすることが必要である<ref><pubmed> 16701204 </pubmed></ref>。また、物語を理解する際に登場人物の視点に立つことにより登場人物の時間的・空間的な移動を擬似的に体験する際、登場人物の心の動きを理解する際にも視点転換が必要になる<ref><pubmed> 9522683 </pubmed></ref><ref><pubmed> 17263078 </pubmed></ref>。 == 神経基盤 == 物理レベルでの視点転換には、[[前頭眼野]] (Frontal Eye Field)と[[側頭頭頂接合部]] (TPJ: Temporal Parietal Junction)が関与する<ref>'''乾 敏郎'''<br>視点と参照枠<br>乾 敏郎・吉川 左紀子・川口 潤 (編) よくわかる認知科学<br>''ミネルヴァ書房'', 2010</ref>。 社会レベルでの視点転換には、[[内側前頭前野]] (medial prefrontal cortex)、[[楔前部]](precuneus)、側頭頭頂接合部が関与する<ref><pubmed> 23999082 </pubmed></ref><ref><pubmed> 25496670 </pubmed></ref>。内側前頭前野は、例えば、視覚的なボール投げゲームを理解する際に、第一人称視点である自己の視点に関与することが知られている<ref><pubmed> 16839298 </pubmed></ref>。一方、 側頭頭頂接合部および楔前部は、ボール投げゲームを理解する際に、第三人称視点である他者の視点に関与する<ref><pubmed> 16839298 </pubmed></ref>。さらに、物語を理解する際には、登場人物の視点に立つことによって、物語内の空間的な情報を処理し<ref><pubmed> 19135072 </pubmed></ref>、誤信念課題によって測定される他者の信念を理解することに関与する<ref><pubmed> 25042446 </pubmed></ref>ことが明らかとなっている。 心の理論に関与する内側前頭前野、楔前部(後部帯状回)、側頭頭頂接合部<ref><pubmed> 12689373 </pubmed></ref><ref><pubmed> 16701204 </pubmed></ref>であることから、社会レベルでの視点転換の神経基盤と多くの部分が重なっている。 近年では、視点転換にとって重要な脳領域である側頭頭頂接合部は、自己の理解と他者の理解を切り替えるために重要な役割を果たす領域としても知られている<ref><pubmed> 23122848 </pubmed></ref><ref><pubmed> 19517530 </pubmed></ref>。 == 関連項目 == * [[頭頂連合野]] * [[心の理論]] == 外部リンク == * Wikipedia [[wj:視点|視点]] * Wikipedia [[wj:側頭頭頂接合部|側頭頭頂接合部]] * Wikipedia [[w:楔前部|楔前部]] == 参考文献 == <references/>
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