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グルタミン酸受容体相互作用タンパク質 GRIP(Glutamate Receptor Interacting Protein) 緑川良介、髙宮考悟 宮崎大学医学部 機能制御学講座 統合生理学分野 {{box|text= GRIPは、多PDZドメインを有する足場タンパク質群であり、AMPA型グルタミン酸受容体の局在や輸送を制御することで興奮性シナプスの機能と可塑性に寄与する。哺乳類ではGRIP1とGRIP2の2つの相同タンパク質が知られる。}} == イントロダクション == GRIP1は、1997年にDongらによって初めて同定されたAMPA受容体結合タンパク質であり<ref name=Dong1997><pubmed>9069286</pubmed></ref> (Dong et al., 1997)、その後の研究でGRIP1と高い相同性を有するGRIP2がクローニングされた<ref name=Dong1999><pubmed>10436050</pubmed></ref> (Dong et al., 1999)。またGRIP2遺伝子座由来のスプライシングバリアントとしてABP (AMPA receptor-binding protein) が報告された<ref name=Wyszynski1999><pubmed>10414981</pubmed></ref>(Wyszynski et al., 1999)※。現在では、これらはGRIPファミリーに属する多PDZドメイン足場タンパク質群として理解されている。GRIPは、シナプス後膜においてAMPA受容体の局在や安定化に寄与し、記憶・学習を支える長期増強(LTP)や長期抑圧(LTD)といった可塑性機構に関与する。また、PICK1や他のPDZタンパク質と相互作用しながら、受容体のトラフィッキングや分解、リサイクリングの制御にも関わる。GRIPファミリーは、PDZドメインを介してシナプス受容体複合体を組織化する代表的な足場タンパク質として広く研究されている。 ※ABPはGRIP2のスプライシングバリアントの一部を指す歴史的名称であり、文献によってはABP/GRIP2と併記、もしくはGRIP2をABP (ABP-L)と呼称することもある。 == 構造 == GRIP1, GRIP2はいずれも7つのPDZドメインを持つ(図1参照)。これらのドメインを介して他のシナプス構成因子や足場タンパクとの複合体を形成する。現在までのところ、GRIP全長のX線結晶構造は未報告である。一方、PDZドメイン断片(例:PDZ12タンデム)については結晶構造解析の報告があるが、GRIP PDZドメインとGluA2/3 C末端との高解像度X線結晶構造は報告されていない == サブファミリー == GRIPには主に以下の2つのサブタイプが存在する: GRIP1:最も広く研究されているサブタイプで、AMPARの輸送と固定に特に重要な働きを持つ。さらに計5つのスプライシングバリアント(GRIP1a-e)の存在が報告される<ref name=Yamazaki2001><pubmed>11335060</pubmed></ref> <ref name=Charych2004><pubmed>15226318</pubmed></ref> <ref name=Charych2006><pubmed>16539648</pubmed></ref>(Yamazaki et al., 2001)( Charych et al., 2004)( Charych 2006)。 GRIP2/ABP:GRIP1と高い相同性を持ち、類似の機能を果たすと考えられている。スプライシングバリアントとしてABP-L, pABP-L, ABP-Sの存在が報告される<ref name=Wyszynski1999><pubmed>10414981</pubmed></ref> <ref name=DeSouza2002><pubmed>11978826</pubmed></ref>(Wyszynski et al., 1999) (Desouza et al., 2002)。 == 発現 == === 組織分布 === GRIPは中枢神経系において広く発現しており、特に海馬、大脳皮質、嗅球で高い発現がみられる<ref name=Dong1999 /><ref name=Wyszynski1999 /> (Dong et al., 1999) (Wyszynski et al., 1998)。細胞レベルでは、(GRIP1は)大脳皮質の錐体細胞、海馬CA1錐体細胞、小脳のプルキンエ細胞において高い発現が確認されている。 === 細胞内分布 === 細胞内では、主に細胞体-樹状突起、シナプス後膜近傍の樹状突起スパインに局在し、AMPARと共局在する<ref name=Dong1999 /><ref name=Wyszynski1999 /> (Dong et al., 1999)(Wyszynski et al., 1999)。 特に樹状突起スパインにおいては、N末端にパルミトイル化配列をもつGRIP1bおよびpABP-Lが、パルミトイル化を介して高い割合で局在すると考えられている<ref name=DeSouza2002><pubmed>11978826</pubmed></ref>(Desouza et al., 2002)。 == 結合タンパク質 == これまでに報告されているGRIP結合タンパクの多くはPDZドメインを介して結合する。GRIPが認識するリガンドの多くはclassⅡ型(–X–Φ–X–Φ)に分類されるC末端配列を有するが、非典型的配列を認識するケースも報告されている※。 ※PDZの項目参照。PDZドメインは一般に結合タンパクのC末端配列を介して相互作用し、その配列に基づいてclassⅠ~Ⅲに分類される。classⅡはC末端配列が–X–Φ–X–Φ(Xは任意のアミノ酸、Φは疎水性アミノ酸)であるタンパクと結合する傾向を示す。 === GRIP1結合タンパク === これまでに報告されている、GRIP1の各PDZドメインに結合する代表的なタンパクを以下に示す: PDZ ドメイン 結合タンパク 結合タンパクのC末端配列 参考文献 PDZ1-3 Fras1 G-T-E-V <ref name=Takamiya2004><pubmed>14730302</pubmed></ref>et al., 2004 PDZ4-5 GluA2, GluA3 (short form) S-V-K-I <ref name=Dong1997 />Dong et al., 1997 PDZ6 EphB2 S-V-E-V <ref name=Torres1998><pubmed>9883737</pubmed></ref>Torres et al., 1998 PDZ6 EphA7 G-I-Q-V <ref name=Torres1998 />Torres et al., 1998 PDZ6 EphrinB1 Y-Y-K-V <ref name=Bruckner1999><pubmed>10197531</pubmed></ref>Brückner K et al., 1999 PDZ6 Liprin-α T-Y-S-C <ref name=Wyszynski2002><pubmed>11931740</pubmed></ref>Wyszynski et al., 2002 PDZ7 GRASP-1 NG2 Q-Y-W-V <ref name=Feng2002><pubmed>12196542</pubmed></ref>Feng et al., 2002 <ref name=Stegmuller2003><pubmed>12458226</pubmed></ref>Stegmüller et al., 2003 <ref name=Sheng2001><pubmed>11283303</pubmed></ref>Sheng et al., 2001を参考に再構成 === GRIP2結合タンパク === GluA2/3<ref name=Dong1999 /> (Dong et al., 1999)、 ephrinB<ref name=Bruckner1999 /> (Brückner et al., 1999) 系タンパク、GRASP-1<ref name=Ye2000><pubmed>10896157</pubmed></ref>(Ye et al., 2000)、<ref name=Stegmuller2003 />NG2(Stegmüller et al., 2003)等との相互作用が報告されており、GRIP1 のホモログとして類似の足場機能を担うと考えられている。ただし、これらのタンパクとの相互作用に関して、GRIP1との機能分担の詳細は明らかにされていない。 == 機能 == === タンパク質機能 === ==== Gシナプス後膜へのAMPA受容体の輸送及びアンカリング==== GRIP1はGluA2/3のC末端PDZ結合配列への結合を介し、他のGRIP結合タンパクと協調してAMPA受容体の輸送およびシナプス後膜局在を制御する(図2): (a) MAP1Bとの相互作用は微小管依存的なAMPA受容体輸送の調節に関与する<ref name=Palenzuela2017><pubmed>28904092</pubmed></ref> (Palenzuela et al., 2017)。 (b) Kinesin-1(KIF5)との直接結合はAMPA受容体の樹状突起方向への選択的輸送に寄与する<ref name=Setou2002><pubmed>11986669</pubmed></ref> (Setou et al., 2002)。 (c) GRIP1のThr956リン酸化はGluA2との結合を低下させ、AMPA受容体の動的再分布に関与する<ref name=Geiger2014><pubmed>24576423</pubmed></ref> (Geiger et al., 2014)。 (d) GRIP1はLiprin-αとの結合等を介し、AMPA受容体のシナプス後膜での安定化に寄与する<ref name=Wyszynski2002 /> (Wyszinski et al., 2002)。 (e,f) ephrinB2およびephrinB3はGRIP1とPDZ依存的に結合し、AMPA受容体の表面安定化に関与する。ephrinB2は主にスパインに、ephrinB3は樹状突起シャフトに多く分布することから、それぞれの部位でAMPA受容体安定化を担う可能性が示唆されている <ref name=Bruckner1999 /><ref name=Essmann2008><pubmed>19160501</pubmed></ref><ref name=Aoto2007><pubmed>17626212</pubmed></ref> (Brückner et al., 1999; Essmann et al., 2008; Aoto et al., 2007)。 ==== GRIP–PICK1競合によるAMPA受容体の内在化制御とシナプス可塑性 ==== GRIPは同じくPDZドメインをもつPICK1との競合的相互作用により、AMPA受容体の内在化およびリサイクリングへの分子スイッチとして機能する。これによりLTDを代表とするシナプス可塑性機構の制御を担っている<ref name=Chung2000><pubmed>11007883</pubmed></ref><ref name=Perez2001><pubmed>11466413</pubmed></ref><ref name=Lu2005><pubmed>16055064</pubmed></ref><ref name=Steinberg2006><pubmed>16543133</pubmed></ref><ref name=Takamiya2008><pubmed>18509036</pubmed></ref><ref name=Mao2010><pubmed>20956289</pubmed></ref>(Chung et al., 2000; Perez et al., 2001; Lu et al., 2005; Steinberg et al., 2006; Takamiya et al., 2008; Mao et al., 2010 )。小脳プルキンエ細胞におけるGRIPおよびPICK1を介したLTD分子機構を図3に示す: 定常時には、GRIPを足場としてAMPA受容体は樹状突起スパインに安定化されている。 ↓ LTD誘発刺激によりmGluR1活性化および電位依存性カルシウムチャンネル(VDCC)からのCa²⁺流入を介して細胞内Ca²⁺濃度が上昇し、PKCαが活性化される。 ↓ PICK1は活性型PKCαと結合し、活性型PKCαをGluA2近傍へリクルートする。 ↓ PKCαはGluA2のSer880をリン酸化し、これによりGRIPとの結合が低下する。 ↓ リン酸化GluA2はPICK1と結合し、クラスリン依存性エンドサイトーシスを介して細胞内へ取り込まれる。 ↓ その結果、スパインにおけるAMPA受容体発現が減少し、LTDが発現する。また、エンドサイトーシス後のAMPA受容体のリサイクリング過程には、GRIP1がExocyst構成因子Sec8と相互作用し、リサイクリングエンドソームを介した受容体再輸送に関与することが報告されている<ref name=Mao2010 />(Mao et al., 2010)。 ==== 上皮細胞におけるFras1輸送の制御 ==== GRIP1はPDZ1–3タンデムドメインを介してFras1のC末端配列に結合し、Fras1の基底膜側への輸送および分泌を制御する。分泌されたFras1はFrem1やFrem2などと巨大な細胞外マトリクス複合体を形成し、特に胚発生期における表皮と真皮の接着を安定化する<ref name=Takamiya2004 />(Takamiya et al., 2004)。このことから、GRIP1は神経系における受容体輸送のみならず、上皮組織の形態形成にも重要な役割を果たすことが示されている。その他GRIP1ノックアウトマウスの解析から、腎臓の形成初期にも重要な働きを担っていることが示されている。 === 個体機能 === GRIPファミリーは小脳プルキンエ細胞におけるLTD発現に必須であることが示されており<ref name=Takamiya2008 />(Takamiya et al., 2008)、さらにGRIP1条件付きノックアウトマウスでは海馬シナプス可塑性異常とともに学習・記憶障害が認められる<ref name=Tan2020><pubmed>32948689</pubmed></ref>(Tan et al., 2020)。これらの知見は、GRIPが個体レベルの神経機能に重要な役割を果たすことを示している。 == 疾患との関わり == GRIP1の機能獲得型変異が自閉スペクトラム症(ASD)患者で報告されており、AMPAR輸送異常を介した神経発達障害への関与が示唆されている<ref name=Mejias2011><pubmed>21383172</pubmed></ref>(Mejias et al., 2011)。さらに、GRIP1欠損マウスではFras1の基底膜側への輸送障害により表皮と真皮の接着が維持できず、Frasier症候群様の表現型を示すことが報告されている<ref name=Takamiya2004 />(Takamiya et al., 2004)。ヒトにおいてもGRIP1変異がFrasier症候群の原因となることが示されており、GRIP1はその原因遺伝子の一つとされている。 == 参考文献 ==
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