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英語名:current source density estimaiton, CSD estimation, CSD analysis, CSD method 電流源密度推定法とは、脳内の多点から細胞外記録された局所場電位(local field potential, LFP)信号を用いて、脳内の電流源の分布を推定する手法である。細胞外空間における電流源は、神経細胞の膜電流に由来して発生する。膜電流の変化を引き起こす生理学過程は多数考えられるが、後述のように、それらのうちLFP信号に反映されるのは、主に興奮性シナプス後電位(excitatory post-synaptic potential, EPSP)により誘起される膜電流である。よって、本稿に記述する手法により推定される電流源分布は、主に興奮性シナプス活動の空間分布を反映すると考えられている。 == 原理 == まず、細胞外記録により測定される電位(細胞外電位)がどのような過程から生じるのかを考察する。 細胞外空間の電気伝導度は等方的であると仮定する。 生理学的な条件化では、神経活動に由来する電磁場の変化は十分ゆっくり(目安として、主要な変化の時間スケールが1kHz未満)であるため、細胞外電位への容量性・誘導性の寄与は無視できる。 この場合細胞外電位の空間分布は、以下の式に表されるように、空間内に存在する電流源の強さと位置のみにより決定される<ref>'''P L Nunez, R Srinivasan'''<br>Electric Fields of the Brain : The Neurophysics of EEG<br>Oxford University Press (New York): 2006</ref>。 <math>\Phi(\mathbf{r}) = \frac{1}{4 \pi \sigma} \int \frac{I(\mathbf{r'})}{|\mathbf{r}-\mathbf{r'}|} d\mathbf{v'} \ \cdots \ \mbox{(1)}</math> ここで<math>\Phi(\mathbf{r})</math>と<math>I(\mathbf{r})</math>はそれぞれ位置<math>\mathbf{r}</math>における電位と電流源密度、<span class="texhtml">σ</span>は細胞外空間の電気伝導度であり、積分は細胞外空間全体にわたる。式(1)は電流源密度分布と電位分布の1対1対応関係を記述しており、電流源の密度分布が既知であれば、電位の空間分布はこの式より容易に計算できる。 しかしながら、それとは逆に、既知の電位分布から未知の電流源密度分布を求めたい場合、この式は容易な計算方法を与えない。 この場合、式(1)が以下のポワソン方程式の解となっていることを利用する。 <math>\Delta \Phi(\mathbf{r}) = - \frac{I(\mathbf{r})}{\sigma} \ \cdots \ \mbox{(2)}</math> 式(1)が式(2)の解となっていることは、直接代入により確認できる。 式(2)が意味するのは、(式(1)に従って発生した)電位の空間分布が与えられれば、その原因である電流源の密度分布は、与えられた電位の空間分布に微分操作(空間二階微分)を施すことで得られるということである。 この原理に基づき、実験的に測定されたLFP信号の空間分布から、神経活動に由来する電流源の分布を推定する手法が電流源密度推定法である。 細胞外記録されるLFP信号の発生原因となる電流源の実体は、神経細胞の膜を透過して細胞外空間へ流出、もしくは逆向きに細胞内へ流入する膜電流である。 細胞外空間からは、前者は電流の湧き出し(current source)、後者は吸い込み(current sink)として観測される。 (ここで、湧き出しは細胞内から細胞外への電流、すなわち過分極過程に、吸い込みはその逆向き、脱分極過程に対応する。) ケーブル理論に従えば、膜電流<span class="texhtml">''I''<sub>''m''</sub></span>と膜電位<span class="texhtml">''V''<sub>''m''</sub></span>の間には以下の関係が成り立つ。 <math>I_m = \frac{V_m}{r_m} + c_m \frac{\partial V_m}{\partial t} \ \cdots \ (3)</math> (<span class="texhtml">''r''<sub>''m''</sub></span>: 膜抵抗; <span class="texhtml">''c''<sub>''m''</sub></span>: 膜容量) すなわち、膜電流は膜電位の瞬間的な値(抵抗性成分:右辺第1項)と変化率(容量性成分:右辺第2項)によって決まる。 神経細胞においては、シナプス後電位と活動電位が膜電位変化の主要な原因であるが、 それぞれが生起する膜電位変化のサイズ・変化率は異なるため、それらが式(3)に従って誘起する膜電流の大きさは様々である。 また、実際にLFP信号として測定されるのは電極近傍に存在する多数の神経細胞からの総体的な寄与であるため、各成分の時間的・空間的な配置に従って、LFP信号に対するそれらの寄与の強めあい・打ち消しあいが生じうる。 これらの要因を考慮に入れたMitzdorfによる推定では、活動電位に由来する膜電流はLFP信号にほとんど反映されず、また、シナプス後電位に関しては、興奮性・抑制性のシナプスからの寄与の割合はおよそ5:1であるとされている<ref name=mitzdorf><pubmed>3880898</pubmed></ref>。 このため、LFP信号を用いた電流源密度推定法で推定される電流源分布は、主に興奮性シナプス活動の空間分布を反映していると考えてよい。 == 応用 == [[Image:CSD.png|thumb|right|600x411px|(Mitzdorf (1985) より改変)]] LFP信号の3次元空間分布を測定することは実験的に困難であるため、実際の応用では、1次元(線上)もしくは2次元(平面上)のLFP信号分布を用いて電流源を推定することがほとんどである。 この場合、測定されていない空間方向の電流源分布については、測定対象の解剖学的特性を考慮に入れた上で適切な仮定を設ける必要がある。 以下では、最も応用例の多い、LFP信号の1次元空間分布から電流源分布を推定する場合について詳述する。 大脳皮質や海馬皮質では、神経組織が層状の解剖学的構造を持つことが知られている。 ここで、層を貫く向きにz軸を、層と平行な面上にx軸とy軸を持つ座標系を導入する。 この座標系では式(2)は <math>\left( \frac{\partial^2}{\partial x^2} + \frac{\partial^2}{\partial y^2} + \frac{\partial^2}{\partial z^2} \right) \Phi = - \frac{I(x,y,z)}{\sigma} \ \cdots \ (4)</math> で表されるが、zの各値に対応するx-y平面上での解剖学的一様性を考慮し、電位も同様にx-y平面上で一様であると仮定すると、式(4)は <math>\frac{\partial^2 \Phi}{\partial z^2} = - \frac{I(z)}{\sigma} \ \cdots \ (5)</math> に簡単化される。 現実的には、例えば初期感覚皮質では層構造に直交するコラム構造の存在が知られており、x-y平面上の電位の一様性はかなり大胆な仮定であると言わざるを得ないが、実際の応用では最低次の近似として広く受け入れられている。 また、式(5)ではz座標は連続値を取るが、実際の電位測定では、例えば皮質表面に垂直に挿入された線状電極アレイ(linear electrode array)を用いて、z軸方向の離散的な点における電位の値が測定される。 それら測定値から各点における電位のz軸方向二階微分を推定し、それを式(5)に代入して電流源密度の推定値を得る<ref><pubmed>165272</pubmed></ref>。 活動電位やシナプス電位等の電気的活動が生じている最中であっても、個々の神経細胞は電気的に中性であり、細胞全体の電荷量は常にバランスしている。 これはすなわち、例えば興奮性シナプス後端で電荷の流入がある場合、それに見合う量の電荷の流出が、同一細胞の別の場所で起こっていることを意味する。 このため、電流源の1次元空間分布推定の結果として、特定の位置で電流の吸い込み(もしくは湧き出し)のみが単独で得られることはなく、それ以外の位置で湧き出し(もしくは吸い込み)も同時に見られることになる。 このようにして得られる湧き出し・吸い込みの空間分布から、その背後にある生理学的実態を推測するには、対象の解剖学的構造に関する知識を援用する必要がある。 例として、図にMitzdorfによるネコ初期視覚皮質における電流源密度推定を挙げる<ref name=mitzdorf></ref>。 ここでは、視床から皮質への投射の終端の位置や、皮質の垂体細胞の樹状突起形状等の解剖学的知識を元に、LFP信号から推定された電流の湧き出し・吸い込みがどのような生理学的過程に対応するかを詳細に議論している。 == 発展 == 電流源密度推定の数学的手法としては、長らく式(2)に基づくLFP信号の空間二階微分が用いられてきたが、2006年、Pettersenらが第2の手法として、式(1)を離散化した線型方程式系を逆行列を用いて解くという、Inverse CSD法を提唱した<ref><pubmed>16436298</pubmed></ref>。この手法では、電流源の分布に関する仮定をパラメータとして明示的に指定することにより、より精度の高い電流源密度推定が可能になっている。Potworowskiらはこれをさらに拡張し、LFP信号の測定点の制限(従来の手法では等間隔グリッド上でのLFP測定が要請される)や電流源分布の仮定に関して、より自由度の高いKernal CSD法を提唱している<ref><pubmed>22091662</pubmed></ref>。 == 参考文献 == <references/> (執筆者:伊藤淳司、担当編集委員:藤田一郎)
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