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リピート伸長病
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<div align="right"> <font size="+1">[https://researchmap.jp/shingokoide 小出 眞悟]、[https://researchmap.jp/tom-ishihara 石原 智彦]</font><br> ''新潟大学脳研究所 脳神経内科''<br> DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2026年11月5日 原稿完成日:2026年11月7日<br> 担当編集委員:[https://researchmap.jp/hideakimatsui 松井 秀彰](新潟大学 脳研究所)<br> </div> 英:Repeat expansion disorders、独:Repeat-Expansionserkrankungen、仏:maladies à expansion de répétitions<br> 同義語:リピート病<br> 類義語:トリプレット病、トリプレットリピート病 {{box|text= リピート伸長病は、ゲノム上の反復配列のリピート数が病的に増加することで生じる遺伝性疾患群である。疾患ごとに神経筋疾患を中心とした多彩な臨床像を呈する。3塩基の反復によるトリプレット病として発見され、その後、多様な長さの反復単位をもつ疾患が同定されている。リピート数とその不安定性は発症年齢や重症度、表現促進現象に関わる。病因となるリピート伸長はコード領域だけではなく非コード領域にも認められ、病態には遺伝子の転写抑制、RNA毒性、異常タンパク質の産生などが関与すると考えられている。診断にはリピート伸長の有無やリピート数を評価する遺伝学的検査が用いられる。原因遺伝子やRNAを標的とする治療法の開発が進められている。}} == 概念と歴史 == [[ゲノム]]上には、特定の[[塩基配列]]([[反復単位]])が連続して繰り返される[[反復配列]]([[タンデムリピート]])が存在する。リピート伸長病は、特定の[[遺伝子座]]において、そのリピート数が疾患ごとに異なる病的閾値を超えて増加することを原因とする遺伝性疾患群である<ref name="ref01"><pubmed>33811808</pubmed></ref>。 リピート伸長が疾患の原因となることは、1991年に、[[脆弱X症候群]]における[[FMR1]]遺伝子のCGGリピート伸長<ref name="ref02"><pubmed>1710175</pubmed></ref>と、[[球脊髄性筋萎縮症]]における[[アンドロゲン受容体|アンドロゲンレセプター]]遺伝子([[AR]])のCAGリピート伸長<ref name="ref03"><pubmed>2062380</pubmed></ref>が報告されたことにより明らかとなった。これを契機に様々な遺伝性疾患でリピート伸長の探索が進められた。 常染色体顕性(優性)遺伝性の[[脊髄小脳変性症]]では、リピート伸長の発見以前から、[[Machado-Joseph病]](MJD)(後の[[脊髄小脳失調症3型]])や[[歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症]](dentatorubral-pallidoluysian atrophy; DRPLA)など、臨床病理学的に異なる疾患概念が形成されていた<ref name="ref04"><pubmed>566869</pubmed></ref><ref name="ref05"><pubmed>6808417</pubmed></ref>。その後、1990年代にはこれらの中から[[脊髄小脳失調症1型]]<ref name="ref06"><pubmed>8358429</pubmed></ref>、[[脊髄小脳失調症2型|2型]]<ref name="ref07"><pubmed>8896557</pubmed></ref><ref name="ref08"><pubmed>8896556</pubmed></ref><ref name="ref09"><pubmed>8896555</pubmed></ref>、3型<ref name="ref10"><pubmed>7874163</pubmed></ref>、[[脊髄小脳失調症6型|6型]]<ref name="ref11"><pubmed>8988170</pubmed></ref>や歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症<ref name="ref12"><pubmed>8136840</pubmed></ref>など、異なる原因遺伝子をもつ多くの病型でCAGリピート伸長が共通して見いだされた。これらの[[常染色体顕性遺伝]]性脊髄小脳変性症に、球脊髄性筋萎縮症、[[ハンチントン病]]を加えた疾患群は、[[コード領域]]のCAGリピート伸長により、変異[[アレル]]にコードされた[[タンパク質]]中の[[ポリグルタミン]]鎖が異常に伸長することから、[[ポリグルタミン病]]と総称される<ref name="ref13"><pubmed>30089230</pubmed></ref>。こうした疾患でリピート伸長が原因として同定されたことを契機に、3塩基を単位とするリピート伸長による疾患は[[トリプレット病]]([[トリプレットリピート病]])として認識されるようになった。 一方で、リピート伸長はタンパク質へ[[翻訳]]されない[[非コード領域]]にも認められる。前述の脆弱X症候群で伸長するCGGリピートは、[[FMR1]]遺伝子の[[5'非翻訳領域]](five prime untranslated region; 5′ UTR)に位置する。また、[[筋強直性ジストロフィー1型]]では、[[DMPK]]遺伝子の[[3'非翻訳領域]](three prime untranslated region; 3′ UTR)におけるCTGリピート伸長<ref name="ref14"><pubmed>1310900</pubmed></ref>が、[[フリードライヒ失調症]]では[[FXN]]遺伝子の第1[[イントロン]]におけるGAAリピート伸長<ref name="ref15"><pubmed>8596916</pubmed></ref>が原因となる。これらの発見により、リピート伸長による病態は、異常タンパク質の産生だけでは説明できないことが明らかとなった。 また、3塩基以外を反復単位とするリピート伸長による疾患も明らかとなり、トリプレット病からリピート伸長病へと疾患概念が拡張してきた。例えば、2001年には[[筋強直性ジストロフィー2型]]で[[CNBP]]遺伝子の4塩基のCCTGリピート伸長<ref name="ref16"><pubmed>11486088</pubmed></ref>が、2011年には[[筋萎縮性側索硬化症]]および[[前頭側頭型認知症]]の一部で[[C9orf72]]遺伝子の6塩基のGGGGCCリピート伸長<ref name="ref17"><pubmed>21944778</pubmed></ref>が報告された。 リピート伸長の検出には、分子遺伝学的手法の発展が大きく寄与している。1990年代には、[[ポリメラーゼ連鎖反応]](polymerase chain reaction; PCR)法などを用いた解析により、リピート伸長を原因とする疾患が相次いで同定された。近年では、さらにゲノム解析技術の進展により、従来の手法では検出が困難であったリピート伸長も明らかになっている。例えば[[ロングリードシークエンシング]]によって同定された、[[神経核内封入体病]](neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)における[[NOTCH2NLC]]遺伝子のCGGリピート伸長<ref name="ref18"><pubmed>31332381</pubmed></ref><ref name="ref19"><pubmed>39505310</pubmed></ref>や、[[全ゲノム解析]]によって発見された[[脊髄小脳失調症27B型]](SCA27B)における[[FGF14]]遺伝子のGAAリピート伸長<ref name="ref20"><pubmed>36516086</pubmed></ref>などが挙げられる。 [[ファイル:Ishihara_repeat_expansion_disease_Fig1.png|thumb|'''図1.リピート伸長病の原因遺伝子における反復配列の位置と配列の多様性'''<br>代表的な6遺伝子について、リピート伸長部位周辺の構造と反復配列を示す。FMR1遺伝子のCGGリピートは5'非翻訳領域(5'UTR)、AR遺伝子のCAGリピートはコード領域、FXN遺伝子のGAAリピートとCNBP遺伝子のCCTGリピートはイントロン、DMPK遺伝子のCTGリピートは3'非翻訳領域(3'UTR)に位置する。C9orf72遺伝子のGGGGCCリピートは、転写産物によってイントロンまたはプロモーター領域に位置する。]] == 遺伝学的特徴 == リピート伸長病では、原因となる反復配列のリピート数が病態や臨床像に関与する。リピート数には正常アレルでも[[多型]]があり、正常アレルと病的アレルの間に中間域(中間アレル)が認められる疾患もある。ただし、中間域の範囲や臨床的意義は遺伝子座によって異なる<ref name="ref21"><pubmed>39996131</pubmed></ref>。病的意義を持つリピート数の範囲は遺伝子座ごとに異なり、十数回から数千回以上に及ぶ。多くのリピート伸長病では、リピート数が多いほど若年で発症する傾向がある。 リピート配列の特徴の一つに、世代間伝達の際などにリピート数が変動しやすい[[リピート不安定性]]がある。一部のリピート伸長病では、親から子に世代を経るにつれて発症年齢が早まり、ときに重症化することがあり、これを[[表現促進現象]]という。[[筋強直性ジストロフィー]]などでは、表現促進現象はリピート伸長の発見以前から知られていた<ref name="ref22"><pubmed>2731029</pubmed></ref>が、その後、世代間でのリピート数の増加がその主な分子的基盤であることが明らかになった<ref name="ref23"><pubmed>1546325</pubmed></ref>。 世代間のリピート不安定性には、伝達する親の性別や反復配列の構成などが影響する。筋強直性ジストロフィー1型では、重症の先天型はほとんどが母親から受け継いだ場合に認められる<ref name="ref24"><pubmed>8464127</pubmed></ref>。一方、ハンチントン病や歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症では、父親から受け継ぐ際にCAGリピート数が増加しやすく、顕著な表現促進につながる<ref name="ref25"><pubmed>7668287</pubmed></ref><ref name="ref26"><pubmed>7824105</pubmed></ref>。また、反復配列の途中に通常の反復単位とは異なる配列が含まれることがあり、これを[[中断配列]]という。例えば、FMR1遺伝子のCGGリピートに含まれるAGG中断配列は、母から子へ受け継がれる際にリピート数が大きく増加するリスクを低下させることが報告されている<ref name="ref27"><pubmed>25210937</pubmed></ref>。 リピート不安定性は、世代間だけでなく[[体細胞]]でも認められる。体細胞では加齢に伴ってリピート数が増加することがあり、同一個体内でも組織や細胞によってリピート数が異なる[[体細胞モザイク]]が生じる。例えば、ハンチントン病では[[神経細胞]]内でCAGリピートがさらに伸長し、[[神経変性]]に関与する可能性が示されている<ref name="ref28"><pubmed>39824182</pubmed></ref>。 == 疾患の分類 == リピート伸長病には、脊髄小脳変性症、[[運動ニューロン疾患]]、[[筋疾患]]などの[[神経筋疾患]]が多いが、神経系以外の領域を主に侵す疾患も報告されている。例えば、[[TCF4]]遺伝子のCTGリピート伸長が関与する[[Fuchs角膜内皮ジストロフィー]]<ref name="ref29"><pubmed>23185296</pubmed></ref>、[[HOXD13]]遺伝子の[[ポリアラニン]]をコードする反復配列の伸長による[[合多指趾症]]<ref name="ref30"><pubmed>8614804</pubmed></ref>などが挙げられる。また、筋強直性ジストロフィーのように、筋症状を主としながら複数の臓器に症状を呈する疾患もある。 代表的なリピート伸長病を'''表1'''に示す。 {| class="wikitable" |+ 表1.主なリピート伸長病の一覧 |- ! 疾患名 !! 原因遺伝子 !! リピート配列 !! 遺伝子内の位置 !! 遺伝形式 |- | 脊髄小脳失調症1型(SCA1) || ''[[ATXN1]]'' || CAG || コード領域 || AD |- | 脊髄小脳失調症2型(SCA2) || ''[[ATXN2]]'' || CAG || コード領域 || AD |- | 脊髄小脳失調症3型/Machado–Joseph病(SCA3/MJD) || ''[[ATXN3]]'' || CAG || コード領域 || AD |- | [[脊髄小脳失調症4型]](SCA4) || ''[[ZFHX3]]'' || GGC || コード領域 || AD |- | 脊髄小脳失調症6型(SCA6) || ''[[CACNA1A]]'' || CAG || コード領域 || AD |- | [[脊髄小脳失調症7型]](SCA7) || ''[[ATXN7]]'' || CAG || コード領域 || AD |- | [[脊髄小脳失調症8型]](SCA8) || ''[[ATXN8OS]]''/''[[ATXN8]]'' || CTG/CAG || 非コード[[RNA]]領域/コード領域 || AD |- | [[脊髄小脳失調症10型]](SCA10) || ''[[ATXN10]]'' || ATTCT || イントロン || AD |- | [[脊髄小脳失調症12型]](SCA12) || ''[[PPP2R2B]]'' || CAG || 5′UTR/[[プロモーター]] || AD |- | [[脊髄小脳失調症17型]](SCA17) || ''[[TBP]]'' || CAG・CAAの混合反復 || コード領域 || AD |- | 脊髄小脳失調症27B型(SCA27B;GAA-FGF14失調症) || ''FGF14'' || GAA || イントロン || AD |- | [[脊髄小脳失調症31型]](SCA31) || ''[[BEAN1]]''/''[[TK2]]'' || TGGAA/TTCCA || イントロン || AD |- | [[脊髄小脳失調症36型]](SCA36) || ''[[NOP56]]'' || GGCCTG || イントロン || AD |- | [[脊髄小脳失調症37型]](SCA37) || ''[[DAB1]]'' || ATTTC || イントロン || AD |- | [[RFC1関連疾患]](CANVAS/[[感覚ニューロパチー・失調症スペクトラム]]) || ''[[RFC1]]'' || AAGGGなど || イントロン || AR |- | フリードライヒ失調症(FRDA) || ''FXN'' || GAA || イントロン || AR |- | 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA) || ''[[ATN1]]'' || CAG || コード領域 || AD |- | [[脆弱X関連振戦/失調症候群]](FXTAS)/脆弱X症候群(FXS) || ''FMR1'' || CGG || 5′UTR || XL |- | [[C9orf72関連筋萎縮性側索硬化症]](ALS)/[[前頭側頭型認知症]](FTD) || ''C9orf72'' || GGGGCC || イントロン/プロモーター || AD |- | 球脊髄性筋萎縮症(SBMA;Kennedy病) || ''AR'' || CAG || コード領域 || XLR |- | ハンチントン病(HD) || ''[[HTT]]'' || CAG || コード領域 || AD |- | [[ハンチントン病類縁疾患2型]](HDL2) || ''[[JPH3]]'' || CTG || 3′UTR/コード領域 || AD |- | 筋強直性ジストロフィー1型(DM1) || ''DMPK'' || CTG || 3′UTR || AD |- | 筋強直性ジストロフィー2型(DM2) || ''CNBP'' || CCTG || イントロン || AD |- | [[眼咽頭型筋ジストロフィー]](OPMD) || ''[[PABPN1]]'' || GCN || コード領域 || AD |- | [[眼咽頭遠位型ミオパチー1]](OPDM1) || ''[[LRP12]]'' || CGG || 5′UTR || AD |- | [[眼咽頭遠位型ミオパチー2]](OPDM2) || ''[[GIPC1]]'' || CGG || 5′UTR || AD |- | [[眼咽頭遠位型ミオパチー4]](OPDM4) || ''[[RILPL1]]'' || CGG || 5′UTR/プロモーター || AD |- | [[NOTCH2NLC神経核内封入体病]]([[NOTCH2NLC関連NIID]])/[[眼咽頭遠位型ミオパチー3]]([[OPDM3]]) || ''NOTCH2NLC'' || CGG || 5'UTR || AD |- | [[家族性成人ミオクローヌスてんかん1]](FAME1/BAFME1) || ''[[SAMD12]]'' || TTTCA || イントロン || AD |- | [[Fuchs角膜内皮ジストロフィー]](TCF4伸長関連) || ''[[TCF4]]'' || CTG || イントロン || AD |- | [[合多指趾症]](HOXD13関連;SPD1) || ''[[HOXD13]]'' || GCN || コード領域 || AD |} FXTASは前変異(CGG約55~200回)の保有者の一部に発症し、脆弱X症候群は通常、全変異(200回超)に伴う。ATXN8OS/ATXN8とBEAN1/TK2は、同じ反復座位を共有し、逆方向に[[転写]]される遺伝子。AD:常染色体顕性遺伝、AR:[[常染色体潜性遺伝]]、XL:[[X連鎖遺伝]]、XLR:[[X連鎖潜性遺伝]]。UTR:非翻訳領域。NはA、C、G、Tのいずれかを表す。 == 診断と検査 == リピート伸長病は、臨床症候や家族歴から疑い、[[遺伝学的検査]]によって原因となるリピート伸長を確認することで診断を確定する。 遺伝学的検査ではリピート伸長の有無とリピート数を評価することが重要となる。比較的短いリピートでは、反復配列を含む領域をPCRで増幅し、[[キャピラリー電気泳動]]によるフラグメント解析によって、増幅産物の長さからリピート数を推定できる。一方、長大なリピートでは全長のPCR増幅が困難であるため、反復配列内に結合する[[プライマー]]を用いるrepeat-primed PCR(RP-PCR)によって伸長の存在を検出する<ref name="ref31"><pubmed>9004136</pubmed></ref>。ただし、RP-PCRでは正確なリピート数を測定できない。リピート数が数千に及ぶような長大なリピート伸長のサイズの推定には、制限酵素で切断した[[DNA]]をプローブで検出する[[サザンブロット|サザンブロット法]]などの手法も用いられる<ref name="ref32"><pubmed>38836869</pubmed></ref>。 近年、遺伝性疾患の診断に[[ショートリードシークエンシング]]による[[エクソーム解析]]や[[全ゲノム解析]]が広く用いられているが、これらの変異解析ではリピート伸長は見逃されることがある。リピート伸長に特化した解析手法によって検出できる場合もあるが、リピート数の正確な測定には限界がある<ref name="ref33"><pubmed>28887402</pubmed></ref>。一方、ロングリードシークエンシングは、反復配列を含む長いDNA断片の配列を直接読み取ることで、リピート伸長の検出に加え、リピート数の測定や中断配列を含む配列構成の解析が可能である<ref name="ref34"><pubmed>34034831</pubmed></ref>。ただし、必要なDNAの品質、解析費用、データ解析、検査法の臨床的妥当性の検証などが課題であり、現時点で一般診療における標準的検査法としては普及していない。一般診療では、臨床像から特定のリピート伸長病が疑われる場合、対象遺伝子座に応じて、PCR、RP-PCR、サザンブロット法などの検査を選択することが基本となる。 == 病態生理 == リピート伸長は、転写、[[RNA代謝]]、翻訳、タンパク質機能など様々な段階で細胞機能を障害しうる。主な病態機序として、反復アミノ酸配列を含むタンパク質の毒性獲得、原因遺伝子の転写抑制、伸長リピートRNAによる毒性、repeat-associated non-AUG(RAN)翻訳による異常タンパク質の産生が知られている<ref name="ref35"><pubmed>34140671</pubmed></ref>。 タンパク質をコードする領域にリピート伸長が存在する場合、その翻訳によって反復アミノ酸配列が異常に伸長したタンパク質が産生され、毒性を獲得することがある。その代表がCAGリピート伸長によるポリグルタミン病である。異常に長いポリグルタミン鎖を含むタンパク質は[[ミスフォールディング]]や[[凝集]]を起こし<ref name="ref36"><pubmed>9267034</pubmed></ref><ref name="ref37"><pubmed>9302293</pubmed></ref>、タンパク質恒常性や転写制御などの細胞機能を障害しうる。 リピート伸長によって原因遺伝子の転写が抑制され、タンパク質の発現低下を引き起こす病態機序も報告されている。例えば、脆弱X症候群では、FMR1遺伝子のCGGリピート伸長に伴う[[エピジェネティック]]な転写抑制によって、[[FMRP]]タンパク質の産生が低下する<ref name="ref38"><pubmed>24578575</pubmed></ref>。 伸長したリピートを含むRNA自体が毒性を示す場合もある。筋強直性ジストロフィー1型では、伸長したCUGリピートを含むRNAが異常な二次構造を形成し、核内に[[RNA foci]]として蓄積する。これらのRNAが[[MBNL]]などの[[RNA結合タンパク質]]を捕捉することで、[[選択的スプライシング]]の異常などが引き起こされるとされる<ref name="ref39"><pubmed>10970838</pubmed></ref>。 さらに、タンパク質をコードしないと考えられていたリピート配列からも、異常なペプチドが産生されることが明らかになっている。伸長したリピートRNAは、通常のAUG[[開始コドン]]に依存しない[[RAN翻訳]]と呼ばれる機構によって翻訳されることがある<ref name="ref40"><pubmed>21173221</pubmed></ref>。例えば、C9orf72遺伝子のGGGGCCリピートからは、2種類のアミノ酸が繰り返される[[ジペプチドリピートタンパク質]]が産生され、神経細胞内に蓄積する<ref name="ref41"><pubmed>23393093</pubmed></ref>。これらの異常タンパク質の一部は細胞毒性を示し、病態に関与すると考えられている。 == 治療 == リピート伸長病の多くでは、疾患の進行を抑制する治療法は確立されておらず、症状に応じた薬物療法や[[リハビリテーション]]などの[[対症療法]]が中心となる。 近年は、原因遺伝子やその転写産物を標的とする治療法の開発が進められている。特に、[[アンチセンス核酸]](ASO)や[[RNA干渉]]を用いて、異常タンパク質の産生やリピートRNAによる毒性を抑制する治療法が注目されている<ref name="ref42"><pubmed>41707138</pubmed></ref><ref name="ref43"><pubmed>31059641</pubmed></ref>。 == 関連項目 == * [[トリプレット病]] * [[ハンチントン病]] * [[脆弱X症候群]] * [[脊髄小脳変性症]] * [[筋強直性ジストロフィー]] * [[筋萎縮性側索硬化症]] * [[前頭側頭型認知症]] * [[サザンブロット]] == 参考文献 == <references />
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