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<div align="right"> <font size="+1">[https://researchmap.jp/tfujiyama 藤山 知之]</font><br> ''筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構''<br> <font size="+1">[https://researchmap.jp/mikiohoshino 星野 幹雄]</font><br> ''国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター''<br> DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2025年8月19日 原稿完成日:2025年9月5日<br> 担当編集委員:[https://researchmap.jp/yamagatm 山形 方人](ハーバード大学・脳科学センター)<br> </div> 英:Pancreas transcription factor 1A<br> 同義語:p48<br> 英略称:PTF1A {{box|text= 膵臓転写因子1A (Pancreas transcription factor 1A, PTF1A)は膵臓の腺房外分泌細胞や多くの中枢神経系ニューロンの分化において重要な役割を持つbHLH型転写因子である。胎生期発達過程において膵臓形成、小脳や脊髄、網膜などにおける主要な神経細胞サブタイプの運命決定、神経回路の構築、さらには視床下部のキスペプチンニューロンを介した脳の性分化にも関与するなど、多様な細胞系譜の分化過程で不可欠な役割を果たすことが明らかになってきた。その異常はヒト先天性疾患(小脳・膵臓無形成を伴う新生児糖尿病)の原因となる。}} == 膵臓転写因子1Aとは == 膵臓転写因子1A(Pancreas transcription factor 1A, PTF1A)/p48は、1996年に[[膵臓]][[外分泌細胞]]で特異的に発現する[[塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス型転写因子]]([[basic helix-loop-helix型転写因子]], [[bHLH型転写因子]])として同定され、初期には膵外分泌酵素遺伝子群の[[プロモーター]]領域に結合する3量複合体[[PTF1]]を構成する48kDaのDNA結合タンパク質として知られていた<ref name=Krapp1996><pubmed>8861960</pubmed></ref><ref name=Knöfler1996><pubmed>8703005</pubmed></ref><ref name=Rose2001><pubmed>11562365</pubmed></ref>。その後、[[マウス]]Ptf1a遺伝子が膵臓外分泌細胞の分化に必須であり、腸管未分化組織から全ての膵[[前駆細胞]]への運命獲得に重要な役割を果たすことが示された<ref name=Krapp1998><pubmed>9851981</pubmed></ref><ref name=Kawaguchi2002><pubmed>12185368</pubmed></ref>。 つづいて血縁家系ゲノム連鎖解析により、PTF1A遺伝子の変異がヒト[[小脳]]・膵臓無形成を伴う新生児[[糖尿病]]と直接関連していることが報告され、PTF1Aの臨床医学的な重要性が注目された<ref name=Sellick2004><pubmed>15543146</pubmed></ref><ref name=Sellick2003><pubmed>14514650</pubmed></ref><ref name=Hoveyda1999><pubmed>10507728</pubmed></ref><ref name=Masui2008><pubmed>18606784</pubmed></ref><ref name=Pan2013><pubmed>23325761</pubmed></ref><ref name=Burlison2008><pubmed>18294628</pubmed></ref><ref name=AlShammari2011><pubmed>21749365</pubmed></ref>。膵発生における知見は、[[遺伝子改変マウス]]を用いた膵臓形成不全モデルや[[膵臓がん]]モデルなどの構築に貢献した<ref name=Adell2000><pubmed>10768861</pubmed></ref><ref name=Masui2007><pubmed>17938243</pubmed></ref><ref name=Magnuson2013><pubmed>23823474</pubmed></ref><ref name=Fujitani2017><pubmed>28420858</pubmed></ref><ref name=VeiteSchmahl2017><pubmed>28697176</pubmed></ref><ref name=Hingorani2003><pubmed>14706336</pubmed></ref>。 神経系発達への関与については、発生中期[[胚]]の[[神経管]]背側での[[mRNA]]発現があることで示唆されていた<ref name=Obata2001><pubmed>11318877</pubmed></ref>。2005年に[[小脳皮質]]を欠失する[[セレベレス変異体]][[マウス]]([[cerebelless]])の原因遺伝子として同定され、[[プルキンエ細胞]]や[[ゴルジ細胞]]などの小脳の全ての種類の[[GABA]]作動性ニューロンがPtf1aを発現する[[第4脳室]][[脳室周囲帯|周囲帯]](ventricular zone)の[[神経上皮]]から発生することが示唆されたことから小脳[[抑制性ニューロン]]の[[運命決定因子]]であることが明らかとなった<ref name=Hoshino2005><pubmed>16039563</pubmed></ref>。また小脳では、PTF1Aが[[OLIG2]]や[[GSX1]]と協調してプルキンエ細胞および[[PAX2]]陽性介在ニューロンといった小脳抑制性ニューロンの多様性を時空間的に制御すること、PTF1Aが別のbHLH型転写因子[[ATOH1]]と拮抗し、GABA作動性神経細胞と[[グルタミン酸]]作動性神経細胞の適切な産生バランスを制御することが報告されている<ref name=Hoshino2006><pubmed>16997750</pubmed></ref><ref name=Wullimann2011><pubmed>21559349</pubmed></ref><ref name=Yamada2014><pubmed>24695699</pubmed></ref><ref name=Seto2014><pubmed>24535035</pubmed></ref><ref name=Pascual2007><pubmed>17360405</pubmed></ref><ref name=Millen2008><pubmed>18513948</pubmed></ref><ref name=Achim2014><pubmed>24196748</pubmed></ref><ref name=Lowenstein2023><pubmed>35262281</pubmed></ref>。 さらに、[[脊髄]]においては、PTF1Aが脊髄の背側領域(dI4–dI6)におけるGABA作動性介在ニューロンの分化に不可欠であり、[[感覚]]入力の統合や[[運動]]制御に関わる神経回路ネットワークの発達において重要な役割を果たすことが知られている<ref name=Glasgow2005><pubmed>16291784</pubmed></ref><ref name=Hori2012><pubmed>22830054</pubmed></ref>。 加えて、[[網膜]]発生過程での[[水平細胞]]と[[アマクリン細胞]]の分化に不可欠であることも示され、抑制性神経細胞の運命決定に関わるPTF1Aの機能が感覚器系にも及ぶことが明らかとなった<ref name=Fujitani2006><pubmed>17075007</pubmed></ref><ref name=Nakhai2007><pubmed>17301087</pubmed></ref><ref name=Dullin2007><pubmed>17910758</pubmed></ref>。 [[脳幹]]においては、[[聴覚]]伝達を司る[[蝸牛神経核]]のGABA作動性および[[グリシン]]作動性ニューロンの発生に関与すること<ref name=Fujiyama2009><pubmed>19439493</pubmed></ref>、小脳プルキンエ細胞へ投射する[[下オリーブ核]]グルタミン酸作動性の[[登上線維]]ニューロンの発生に必要であることが知られている<ref name=Yamada2007><pubmed>17928434</pubmed></ref>。これは、PTF1Aの機能は抑制性ニューロンの運命決定因子としてだけでなく、グルタミン酸作動性ニューロンの産生にも関与するという新たな知見であった<ref name=Aldinger2008><pubmed>18184775</pubmed></ref>。 一方、発生期[[視床下部]]においては、[[性分化]]に関与する[[キスペプチン]]ニューロンの発生に細胞非自律的に必要であることが示され、脳の性分化能の獲得に重要であることが示唆されている<ref name=Fujiyama2018><pubmed>29972793</pubmed></ref>。 このように、Ptf1a遺伝子は膵前駆細胞の運命決定だけでなく、特定の脳領域における神経細胞サブタイプの運命決定において極めて中心的な役割を果たすと考えられている。また、PTF1Aの過剰発現により、[[無脊椎動物]]である[[ホヤ]]の幼生においてドーパミン神経への分化を誘導促進する<ref name=Horie2018><pubmed>30228204</pubmed></ref>。さらに、マウス[[大脳皮質]]での異所性発現では、抑制性ニューロンの特性(遺伝子発現、細胞形態、移動様式)を付与することも示されている<ref name=Hoshino2005><pubmed>16039563</pubmed></ref><ref name=Russ2015><pubmed>25878276</pubmed></ref>。 [[ファイル:Fujiyama Ptf1a Fig1.png|サムネイル|'''図1. ヒトPTF1Aの構造模式図''']] [[ファイル:Q7RTS3.pdb|サムネイル|'''図2. ヒトPTF1A立体構造'''<br>AlphaFold予測(Q7RTS3)]] [[ファイル:Fujiyama Ptf1a Fig3.png|サムネイル|'''図3. PTF1複合体として核内E-box配列に結合している様子''']] == 構造 == === 一次構造 === ヒトPTF1Aタンパク質は328アミノ酸から成り、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス型DNA結合ドメインを有する[[Class II bHLH因子]]群に属する('''図1'''および'''2''')。主に核内で[[転写因子]]として機能する。PTF1Aのサブファミリーに属する因子はこれまで同定されていない。 === 複合体 === PTF1Aは[[Eタンパク質]]および[[Recombination signal Binding Protein for immunoglobulin kappa J region]] ([[RBPJ]]、別名[[mammalian Suppressor of Hairless]])とともに三量複合体PTF1を形成する。まずPTF1AとEタンパク質がヘテロ二量体を形成してDNA上の[[E-box]]配列(CANNTG)に結合する。さらにこの二量体にRBPJあるいは[[Recombination signal Binding Protein for immunoglobulin kappa J region-like]] ([[RBPJL]])がPTF1AのC末端側[[トリプトファン]]残基を介して結合することで、三量体PTF1として転写活性を発揮する('''図3''')<ref name=Obata2001><pubmed>11318877</pubmed></ref><ref name=Duque2022><pubmed>34125483</pubmed></ref><ref name=Beres2006><pubmed>16354684</pubmed></ref>。 [[ファイル:Fujiyama Ptf1a Fig4.png|サムネイル|'''図4.マウス後脳神経管におけるPtf1a遺伝子発現''']] == 発現 == === 組織分布・発現時期 === 胎生期より主に以下の発生過程の組織で観察される。 ==== 膵前駆細胞 ==== 胎生期膵形成初期より発現が開始する。膵外分泌細胞系列、[[ランゲルハンス島]][[β細胞]]などの内分泌細胞や[[導管]]の前駆細胞に発現する。外分泌細胞における遺伝子発現は成体膵で継続する。膵臓における上流因子として転写因子[[HHEX]]がPTF1Aおよび[[NKX6.1]]の発現を亢進することが示されている<ref name=Ito2023><pubmed>37248264</pubmed></ref>。 ==== 小脳原基 ==== 前方背側部の脳室周囲帯にmRNAおよびタンパク質の発現がみられ([[ロンボメア]]1レベル)、GABA作動性ニューロン(プルキンエ細胞、PAX2陽性介在ニューロン、[[小脳核]]抑制性ニューロンなど)の前駆細胞に発現する('''図4''')<ref name=Hoshino2005><pubmed>16039563</pubmed></ref>。一方、[[菱脳唇]]([[rhombic lip]])から産生される小脳興奮性ニューロン([[顆粒細胞]]、小脳核興奮性ニューロンなど)の前駆細胞では他のbHLH因子であるATOH1が発現する<ref name=BenArie1997><pubmed>9367153</pubmed></ref><ref name=Machold2005><pubmed>16202705</pubmed></ref><ref name=Wang2005><pubmed>16202707</pubmed></ref>。 ==== 後方菱脳 ==== 背側の神経上皮で発現。[[背側蝸牛神経核]]および[[腹側蝸牛神経核]]の抑制性ニューロンの前駆細胞(ロンボメア2–5レベル)<ref name=Fujiyama2009></ref>、下オリーブ核ION)登上線維ニューロンの前駆細胞などに発現する(ロンボメア6–8レベル)<ref name=Yamada2007><pubmed>17928434</pubmed></ref>。登上線維ニューロンは分裂終了後にPTF1A発現を消失し、神経管の背側から腹側に移動する。 ==== 脊髄後角 ==== 神経管背側の中間領域(dI4–dI6)における抑制性介在ニューロンの前駆細胞で発現する<ref name=Glasgow2005><pubmed>16291784</pubmed></ref>。この時、遠位の3′エンハンサー領域でPAX6やSOX3が上流因子として機能することや<ref name=Mona2016><pubmed>27350561</pubmed></ref>、PTF1複合体によるautoregulation作用を含む発現調節機構が知られている<ref name=Meredith2009><pubmed>19741120</pubmed></ref>。 ==== 網膜原基 ==== 網膜形成過程の[[外神経芽細胞層]]におけるアマクリン細胞および水平細胞の前駆細胞に発現する<ref name=Fujitani2006><pubmed>17075007</pubmed></ref>。網膜における上流因子として[[FOXN4]], [[RORβ1]]が知られている<ref name=Liu2013><pubmed>23652001</pubmed></ref>。 ==== 前脳(終脳/間脳) ==== [[第三脳室]]周囲の神経上皮および未成熟ニューロンで発現する。マウスでは主にE10.5以降からE14.5までの[[視索前野]]および[[腹側視床]]下部の2カ所の神経上皮領域に発現がみられる<ref name=Fujiyama2018><pubmed>29972793</pubmed></ref>。 == 機能 == === 分子機能 === PTF1AはEタンパク質およびRBPJと三量複合体PTF1を形成することで転写因子として機能する<ref name=Obata2001><pubmed>11318877</pubmed></ref><ref name=Duque2022><pubmed>34125483</pubmed></ref>。 Eタンパク質 (E-protein, E12/E47, TCF3)はbHLHファミリーに属する転写因子であり、PTF1Aとヘテロ二量体を形成してDNA上のE-box配列(CANNTG)に結合する。さらにこの二量体にRBPJが結合する('''図3''')<ref name=Beres2006><pubmed>16354684</pubmed></ref>。 RBPJおよびRBPJLはいずれもNotchシグナル経路の中心的転写因子として知られ、DNA上の[[TC-box]]配列に結合する。活性化には補助因子との複合体形成が必要である。特に、膵外分泌酵素(エラスターゼ-1、 アミラーゼ)の遺伝子や脊髄、網膜のGABA神経系分化関連遺伝子に対する転写制御においてPTF1複合体形成が転写活性に不可欠である<ref name=Masui2007><pubmed>17938243</pubmed></ref><ref name=Masui2010><pubmed>20398665</pubmed></ref><ref name=Hori2008><pubmed>18198335</pubmed></ref><ref name=Lelievre2011><pubmed>21839069</pubmed></ref>。 主な下流遺伝子を'''表1'''に示す。 {| class="wikitable" style="width:100%; text-align:left;" |+ 表1. 主な下流遺伝子 ! 遺伝子 ! 機能・役割 ! 参考文献 |- | '''[[Prdm13]]''' | 小脳GABA作動性ニューロン、視床下部キスペプチンニューロンの発生(マウス・ヒト)<br> 脊髄体性感覚サーキットにおけるE-Iバランス調整<br> 網膜アマクリン細胞の発生 | <ref name=Hanotel2014><pubmed>24370451</pubmed></ref><ref name=Whittaker2021><pubmed>34730112</pubmed></ref><ref name=Chang2013><pubmed>23639443</pubmed></ref><ref name=Watanabe2015><pubmed>25995483</pubmed></ref> |- | '''[[Tfap2a]], [[Tfap2b]]''' | 網膜におけるアマクリン細胞と水平細胞の分化 | <ref name=Jin2015><pubmed>25966682</pubmed></ref> |- | '''[[Nephrin]], [[Neph3]]''' | 後脳〜脊髄領域での発現促進に必要 | <ref name=Nishida2010><pubmed>19887377</pubmed></ref> |- | '''[[Neurog2]]''' | 脊髄における発現制御 | <ref name=Henke2009><pubmed>19641016</pubmed></ref> |- | '''[[Pdx1]]''' | プロモーター領域に結合し発現促進 | <ref name=Wiebe2007><pubmed>17403901</pubmed></ref> |} 標的遺伝子領域の[[クロマチン]]の[[エピジェネティック修飾状態]]([[ヒストン]]修飾、DNA[[メチル化]]など)がPTF1Aの結合効率に影響を与える可能性がある。一例として、PTF1複合体が標的とする膵臓遺伝子や神経管遺伝子のCANNTGモチーフ配列付近におけるオープンクロマチン状態が、標的遺伝子の発現に影響を与えることが示されている<ref name=Meredith2013><pubmed>23754747</pubmed></ref>。 C末端側リジン残基を介して[[E3リガーゼ]]の[[TRIP12]]により[[ユビキチン]]化[[プロテアソーム]]分解制御を受けることが知られている<ref name=Hanoun2014><pubmed>25355311</pubmed></ref>。また[[PCAF]]([[P300/CBPコアクチベーター]]ファミリー)によるbHLHドメイン内[[リジン]]残基の[[アセチル化]]が転写活性に必要であることが報告されている<ref name=Rodolosse2009><pubmed>18834332</pubmed></ref>。[[AKTキナーゼ]]による[[セリン]]残基[[リン酸化]]を介した活性制御の可能性があるが、詳細は不明である<ref name=Jin2019><pubmed>30470852</pubmed></ref>。 [[ファイル:Fujiyama Ptf1a Fig5.jpg|サムネイル|'''図5.マウス胎生12.5日目胚におけるPtf1a遺伝子発現細胞系譜の標識''']] === 組織・個体レベル === PTF1Aは膵臓発達のみならず、[[中枢神経系]]における多様なニューロンの運命決定および領域特異的な神経ネットワーク形成に中心的な役割を果たしている('''図5''')。 ==== 神経系 ==== ===== 小脳原基 ===== 第4脳室周囲帯でGABA作動性ニューロン(プルキンエ細胞、PAX2陽性介在ニューロン、小脳核抑制性ニューロン)の細胞分化を促進し、抑制性ニューロンへの運命決定を誘導する<ref name=Hoshino2005><pubmed>16039563</pubmed></ref><ref name=Pascual2007><pubmed>17360405</pubmed></ref>。Ptf1aの欠損により小脳皮質が消失し、抑制性ニューロンが[[傍小脳脚核]]ニューロンへと運命転換されるなど、小脳皮質の正常な発生が阻害される<ref name=Millen2014><pubmed>24733890</pubmed></ref>。さらに、菱脳より後方の神経管においてPTF1AとATOH1は相互に影響を与えつつ機能する<ref name=Yamada2014><pubmed>24695699</pubmed></ref>。 ===== 脊髄後角前駆細胞 ===== 脊髄の背側領域(dI4–dI6)においてGABA作動性抑制性介在ニューロンの分化を誘導する<ref name=Glasgow2005><pubmed>16291784</pubmed></ref><ref name=Hori2012><pubmed>22830054</pubmed></ref>。また、RBPJとの相互作用が脊髄GABAニューロンの発生に重要である<ref name=Hori2008><pubmed>18198335</pubmed></ref>。さらに、[[体性感覚]]や[[痛み]]など脊髄の感覚情報処理や運動制御に関与する抑制性神経回路形成を促す<ref name=Huang2008><pubmed>18634777</pubmed></ref><ref name=Chang2013><pubmed>23639443</pubmed></ref><ref name=Bikoff2016><pubmed>26949184</pubmed></ref><ref name=Zhang2017><pubmed>29045835</pubmed></ref><ref name=Escalante2020><pubmed>33238109</pubmed></ref>。 ===== 網膜原基 ===== 網膜形成過程の外神経芽細胞層において、[[視覚]]処理に関与する抑制性介在ニューロン(アマクリン細胞および水平細胞)の運命を決定する(マウス、[[ゼブラフィッシュ]]、[[アフリカツメガエル]]などの研究)<ref name=Nakhai2007><pubmed>17301087</pubmed></ref><ref name=Dullin2007><pubmed>17910758</pubmed></ref><ref name=Jusuf2009><pubmed>19732413</pubmed></ref><ref name=Jusuf2011><pubmed>21325522</pubmed></ref><ref name=Mazurier2014><pubmed>24643195</pubmed></ref><ref name=Bessodes2017><pubmed>28863786</pubmed></ref>。 Ptf1a欠損では、これらの細胞が[[網膜神経節細胞]]へ[[運命転換]]を起こす(マウスおよび[[ニワトリ]]での研究)<ref name=Fujitani2006><pubmed>17075007</pubmed></ref><ref name=Lelievre2011><pubmed>21839069</pubmed></ref>。さらに、アマクリン細胞と共通する性質を持つ幼生ホヤの[[ドーパミン]]細胞の発達にも関与する<ref name=RazyKrajka2012><pubmed>22642675</pubmed></ref>。 ===== 後方菱脳神経上皮 ===== 後方菱脳神経上皮は蝸牛神経核、下オリーブ核、[[孤束核]]、[[三叉神経核]]などの前駆細胞である。ロンボメア2–5レベルでは、マウスにおいて聴覚入力処理に関与する蝸牛神経核を構成する主要なニューロン産生に関与し、GABA作動性およびグリシン作動性の抑制性ニューロン([[Cartwheel細胞]]、ゴルジ細胞など)の細胞運命を決定する<ref name=Fujiyama2009></ref>。 一方、蝸牛神経核の興奮性ニューロン分化はATOH1が関与する<ref name=Maricich2009><pubmed>19741118</pubmed></ref>。 ロンボメア6–8レベルでは、下オリーブ核(inferior olivary nucleus)を構成するグルタミン酸作動性登上線維ニューロンの細胞運命を決定する<ref name=Yamada2007><pubmed>17928434</pubmed></ref><ref name=Bae2009><pubmed>19371731</pubmed></ref>。登上線維ニューロンは分裂終了後に神経管の背側から腹側に移動するが、Ptf1a欠失により登上線維ニューロンが産生されず結果として下オリーブ核が消失する。 また、らせん神経節ニューロンの蝸牛神経核内部における正常な投射様式の形成にも必要である<ref name=Elliott2023><pubmed>37055006</pubmed></ref>。 さらに、[[内臓感覚]]および体性感覚の脳幹神経核の発生にも関与することが報告されており、孤束核や[[三叉神経脊髄路核]]・[[三叉神経主知覚核|主知覚核]](Nucleus of solitary tract, spinal and principal trigeminal nuclei)を構成するニューロンや<ref name=Iskusnykh2016><pubmed>26937009</pubmed></ref>、ニワトリの[[dB1 hindbrain interneuron]]の運命決定に関与する<ref name=Kohl2012><pubmed>22539838</pubmed></ref>。 ===== 前脳(終脳/間脳)、視床下部前駆細胞 ===== マウス[[視床下部]]におけるPtf1a機能喪失により、脳の性分化に関与するキスペプチンニューロン数が顕著に減少し、性特異的行動および[[性腺]]発達に異常を引き起こす<ref name=Fujiyama2018><pubmed>29972793</pubmed></ref>。Ptf1a陽性の神経前駆細胞は[[内側視索前野]]や[[腹内側核]]などを含む複数の視床下部神経核ニューロン系譜を形成するが、集団としての生理的機能は不明である。 [[ファイル:Fujiyama Ptf1a Fig6.png|サムネイル|'''図6. マウスにおける膵臓発達'''<br>未分化膵原基からの膵組織の分化プロセス。文献<ref name=Stanger2013><pubmed>23622126</pubmed></ref>より改変。]] ==== 膵臓形成 ==== 胎生期膵形成初期において、外分泌細胞系列の分化を促進し、ランゲルハンス島内分泌細胞や導管の前駆細胞の運命決定にも関与する。Ptf1a欠損マウスでは膵臓の外分泌細胞が欠落し、膵器官も無形成となる<ref name=Kawaguchi2002></ref><ref name=Sellick2004><pubmed>15543146</pubmed></ref>。またRBPJとの相互作用が膵臓の正常発生に重要である<ref name=Masui2007><pubmed>17938243</pubmed></ref>。さらに、Ptf1a遺伝子の発現量の多寡が膵臓の分化、成長、総β細胞数、島形態形成、および内分泌機能に影響を与えることが示されている<ref name=Fukuda2008><pubmed>18591390</pubmed></ref>。成体の外分泌腺房細胞におけるPtf1a欠失が、[[ERストレス]]を介して[[アポトーシス]]を引き起こすことも知られている<ref name=Sakikubo2018><pubmed>30361559</pubmed></ref>。 PTF1Aによって膵運命を決定され原腸から発芽した未分化膵原基は、樹状構造を形成し先端部分(tip領域)と幹部分(trunk領域)に分かれる('''図5''')<ref name=Stanger2013><pubmed>23622126</pubmed></ref><ref name=Pan2011><pubmed>21337462</pubmed></ref>。転写因子PTF1AとNKX6.1が互いに抑制し合うcross-repressiveな作用により、これらの領域で細胞分化の運命決定がなされる<ref name=Schaffer2010><pubmed>20627083</pubmed></ref>。外分泌組織を形成するtip領域の膵外分泌(腺房)前駆細胞ではPTF1Aが[[Dll1]]の発現を活性化し、このDll1によって隣接細胞のNotch経路が活性化され[[Hes1]]が誘導されることで内分泌細胞への分化が抑制される[[側方抑制]]機構が働く<ref name=AhnfeltRonne2012><pubmed>22096075</pubmed></ref>。一方NKX6.1が発現するtrunk領域の細胞では隣接細胞の外分泌細胞分化が抑制され、Notchシグナルと協調して内分泌・導管分化が促進される<ref name=Schaffer2010><pubmed>20627083</pubmed></ref>。 == 疾患との関わり == PTF1A遺伝子の[[機能喪失型変異]]の[[ホモ接合]]により、[[常染色体潜性遺伝]]性の膵形成不全と小脳形成不全が随伴する新生児糖尿病を引き起こすことが知られている<ref name=Hoveyda1999><pubmed>10507728</pubmed></ref><ref name=Sellick2003><pubmed>14514650</pubmed></ref><ref name=Sellick2004><pubmed>15543146</pubmed></ref><ref name=AlShammari2011><pubmed>21749365</pubmed></ref>。膵発達不全に伴い、膵内分泌細胞形成にも影響が及ぶため、インスリン注入に反応しない重度の高血糖状態が観察される<ref name=Sellick2004><pubmed>15543146</pubmed></ref>。 ==関連項目== * [[bHLH因子]] * [[転写制御因子]] * [[小脳]] * [[小脳原基]] * [[脳室帯]] * [[細胞分化]] * [[Notch]] ==参考文献==
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