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CRTC: (CREB-Regulated Transcriptional Coactivators) {{box|text= CRTC(CREB-Regulated Transcriptional Coactivators)は、cAMP応答配列(CRE:cAMP Response Element)を認識するCREB (cAMP Response Element-Binding protein)と結合し、転写を活性化させる因子として機能する。CRTCファミリータンパクはリン酸化されることにより細胞質に局在して不活化状態にあり、脱リン酸化されることで核内に移行し転写を活性化させることから、遺伝子発現のダイナミックな変化に寄与する<ref name=Hirano2013><pubmed>23349290</pubmed></ref><ref name=Nonaka2014><pubmed>25277455</pubmed></ref><ref name=Uchida2017><pubmed>28076781</pubmed></ref>。神経では記憶、食欲、うつ病態、および神経変性疾患との関わりが明らかにされている。サブファミリーごとに発現が異なり、神経で機能する以外にも、肝臓で飢餓応答、また褐色脂肪細胞では低温耐性に関与することがわかっている。}} ==発見== CRTCファミリータンパクである哺乳類CRTC1とCRTC2は、CREB結合配列であるCREの下流でluciferaseを発現するレポーターを用い、CRE依存的な転写を活性化させる因子として同定され、アミノ酸の相同性からCRTC3も同時に報告された<ref name=Conkright2003><pubmed>14536081</pubmed></ref>。その後、ショウジョウバエと線虫でもCRTCが同定されたことから、進化的に保存されたCREB活性化因子だと考えられる<ref name=Altarejos2011><pubmed>21346730</pubmed></ref>。CREB活性化因子として他にも、CREBのリン酸化を介してCREBに結合するヒストンアセチル化酵素CBP(CREB-binding protein)およびp300タンパク質が知られている。CBP/p300がヒストンアセチル化を介してCREB依存的遺伝子発現を誘導する一方、後述のとおりCRTCはCREBと結合して転写複合体を形成することで遺伝子発現を誘導する。CREB活性化機構として、CBPはCREBのリン酸化を必要とするがCRTCには必要なく、後述のようにCRTCの核移行がCREB/CRTC依存的遺伝子発現を誘導する。CREB/CBPとCREB/CRTC経路の下流因子の一部は共通であるものの、それぞれに特異的な標的遺伝子も存在する<ref name=Kasper2010><pubmed>20859256</pubmed></ref>。CBPとCRTCの活性化の時間軸が異なる例も報告され<ref name=Hirano2016><pubmed>27841260</pubmed></ref>、さらにCBPとCRTCによるCREBを介した記憶制御にも異なる役割が報告されている<ref name=Hirano2013><pubmed>23349290</pubmed></ref>。CRTCのクロマチン結合領域はCREBとほぼ共局在することから<ref name=Hirano2016><pubmed>27841260</pubmed></ref>、CRTCは主にCREBを介して転写制御に関与すると考えられる。 ==構造== CRTCファミリータンパクは共通して、N末端にCREB結合ドメインを持ち、C末端にTFIID転写複合体サブユニットであるTAF4と結合する転写活性化ドメインを持つ<ref name=Conkright2003><pubmed>14536081</pubmed></ref>。CRTCのN末端ドメインおよびC末端ドメイン以外の領域は制御領域として考えられ、特にセリン・スレオニンが豊富で、これらアミノ酸がリン酸化されることで核外移行し、CRTCを負に制御している。マウスCRTC2に関しては構造解析が行われ、CRTC2のN末ドメインがCREBのdZipドメインと結合し、CREB/CRTC2複合体が二量体になってCRE配列と結合することがわかっている<ref name=Song2018><pubmed>29733854</pubmed></ref>。 CRTC2のN末はCREBと結合するとともにDNAとも接しており、CREBがDNA二重らせんの主溝を認識する一方、CRTC2が副溝を認識し、CREB/DNAの結合を安定化させる役割があると考えられる<ref name=Song2018><pubmed>29733854</pubmed></ref>。DNA配列が異なると主溝と副溝の距離が変わるため、CRE配列でもその配列次第でCREB/CRTCの結合能が変わりうることが想定される<ref name=Song2018><pubmed>29733854</pubmed></ref>。 ==発現== CRTCは種を超えて全身性で発現している<ref name=Wang2008><pubmed>18460334</pubmed></ref> <ref name=Mair2011><pubmed>21331044</pubmed></ref>。哺乳類ではアイソフォームによって発現に違いがあり、CRTC1が特に神経で<ref name=Altarejos2008><pubmed>18758446</pubmed></ref><ref name=Sekeres2012><pubmed>23223304</pubmed></ref>、CRTC2は中枢神経以外にも脾臓と肝臓で<ref name=Wang2012><pubmed>22495310</pubmed></ref>、またCRTC3は褐色脂肪体で高発現が見られ<ref name=Yoon2018><pubmed>29784793</pubmed></ref>、その他、複数組織で発現が認められる。 ==機能== ===翻訳後修飾によるタンパク制御=== CRTCファミリータンパクの制御は肝臓で発現するCRTC2について先行して解析が進んだ。CRTC2はAMPK(AMP-activated protein kinase)およびAMPK-related kinaseであるSIK2(Salt-inducible kinase2)により定常状態ではリン酸化されている<ref name=Sasaki2011><pubmed>21220102</pubmed></ref><ref name=Screaton2004><pubmed>15454081</pubmed></ref>。複数のリン酸化サイトの中でもマウスCRTC2では171番目のセリンがリン酸化されると14-3-3タンパク質と結合し、その結果、定常状態ではCRTC2が細胞質に局在することで下流遺伝子の発現は抑えられている<ref name=Screaton2004><pubmed>15454081</pubmed></ref>。CRTC2においては上流シグナルであるグルカゴンによりCRTC2の脱リン酸化が誘導され、糖新生に関与する遺伝子の発現が誘導される。CRTC2の脱リン酸化は、グルカゴン受容体を介したcAMP上昇によるSIK2阻害、および細胞内カルシウムの上昇によるカルシウム依存性脱リン酸化酵素カルシニューリンの活性化を介している<ref name=Screaton2004><pubmed>15454081</pubmed></ref> <ref name=Wang2012><pubmed>22495310</pubmed></ref>。マウスCRTC1についても151番目セリンのリン酸化<ref name=Altarejos2008><pubmed>18758446</pubmed></ref>、マウスCRTC3では162番目セリンのリン酸化<ref name=Yoon2018><pubmed>29784793</pubmed></ref>が重要である。異なる脱リン酸化酵素(カルシニューリンおよびPP2Aファミリータンパク)がそれぞれのCRTCタンパクを脱リン酸化することから<ref name=Sonntag2019><pubmed>30611118</pubmed></ref>、CRTCの活性制御機構は活性化される脱リン酸化酵素に違いがあると考えられる。ショウジョウバエのCRTCは157番目のセリンのリン酸化により細胞質に局在し、同様の機構で脱リン酸化され<ref name=Wang2008><pubmed>18460334</pubmed></ref>、線虫でも同様である<ref name=Mair2011><pubmed>21331044</pubmed></ref>。他にも、マウス肝臓においてCRTC2の628番目のリジン残基がアセチル化酵素p300にアセチル化され、SIRT1による脱アセチル化を受ける<ref name=Liu2008><pubmed>18849969</pubmed></ref>。このリジン残基はタンパク分解を誘導するユビキチン化が起きる部位であることから、CRTC2の628番目のリジン残基のアセチル化はタンパク分解を抑制することで遺伝子発現を誘導すると考えられる<ref name=Liu2008><pubmed>18849969</pubmed></ref>。アセチル化の負の作用も報告されており、マウスCRTC1は13番目のリジン残基がアセチル化され、SIRT1による脱アセチル化を受けることにより遺伝子発現を誘導する<ref name=Jeong2011><pubmed>22179316</pubmed></ref>。N末端のCREB結合ドメイン内の13番目リジン残基のアセチル化は、CREB/DNAとの複合体形成に抑制的に働くことが推測される<ref name=Jeong2011><pubmed>22179316</pubmed></ref>。CRTC2の70および171番目のセリンのO-グリコシル化は14-3-3タンパク質との結合を阻害することで、CRTC2の核移行を誘導し、遺伝子発現を誘導する<ref name=Dentin2008><pubmed>18323454</pubmed></ref>。マウスCRTC1の216番目のセリン残基はS-ニトロシル化を受け、N末端CREB結合ドメイン(アミノ酸1-55)よりもC末側に位置するものの、CREBとの結合に阻害的に機能する<ref name=Zhang2025><pubmed>40014571</pubmed></ref>。 ===生体での機能=== 神経で特に発現するCRTC1について、視床下部における食欲制御、また扁桃体および海馬における記憶制御に関わることが報告されている。視床下部でのCREB/CRTC1はレプチンの下流で機能し、レプチンシグナル下流である食欲抑制因子、CartptおよびKiss1の発現を誘導することにより、食欲を減衰させる機能がある<ref name=Altarejos2008><pubmed>18758446</pubmed></ref>。扁桃体と海馬においてCREBが記憶固定化に重要な転写制御因子として古くから知られてきたのと一致して、CRTC1は長海馬長期増強(L-LTP)に必須であること<ref name=Ch'ng2012><pubmed>22770221</pubmed></ref><ref name=Zhou2006><pubmed>17183642</pubmed></ref>、扁桃体および海馬CRTC1は恐怖条件づけ学習における記憶固定化に重要であることが示された<ref name=Nonaka2014><pubmed>25277455</pubmed></ref> <ref name=Uchida2017><pubmed>28076781</pubmed></ref>。CRTC1下流制御遺伝子についてBDNF、Nr4a、c-fos、Fgf1b等遺伝子が報告されており、これらはCBP下流遺伝子と共通であることから、CBPとCRTC1は協調的に働くこと、またCRTC1とCBPのCREB制御における使い分けが提案されてきた。ショウジョウバエにおいては飢餓状態の低インスリン状態がCRTCの脱リン酸化を誘導してCRTCを活性化させ、CBP非依存的に記憶能力を高めることが示された<ref name=Hirano2013><pubmed>23349290</pubmed></ref>。また、ショウジョウバエ匂い嫌悪学習において長期記憶の固定化そのものにはCRTCは必要なく、CBPが重要な役割を果たしている<ref name=Hirano2013><pubmed>23349290</pubmed></ref>。しかし、長期記憶が形成された1日後からCRTCをノックダウンするとその後の記憶の保持や消失に影響が生じる。これらより、ショウジョウバエではCBPとCRTCに記憶過程における時間軸で使い分けがあり、CBPは長期記憶固定化に、CRTCは固定化1日後以降の長期記憶の維持、および消失といった記憶の柔軟性を司ると考えられる<ref name=Hirano2013><pubmed>23349290</pubmed></ref>。マウスでもCBP依存的CREB活性化が一過的な遺伝子発現を誘導し、CRTC1依存的CREB活性化はより持続的な遺伝子発現を制御することが示唆されている<ref name=Uchida2017><pubmed>28076781</pubmed></ref>。CRTC2に関しては、マウス胚性線維芽細胞においてCRTC2とCBPが独立に制御する遺伝子が報告されていることから<ref name=Kasper2010><pubmed>20859256</pubmed></ref>、CRTC1の下流遺伝子についてもCRTC1とCBPが独立に制御する下流遺伝子が存在する可能性がある。 CRTC2とCRTC3に関しては神経以外での機能が報告されている。肝臓におけるCRTC2は飢餓時に分泌されるグルカゴンにより活性化し、糖新生に関わる遺伝子発現を誘導することで血糖値の制御に関わる<ref name=Wang2010><pubmed>20133702</pubmed></ref> <ref name=Han2017><pubmed>29192248</pubmed></ref>。褐色脂肪細胞でのCRTC3のノックアウトマウスは、脂肪細胞での脂肪酸β酸化が亢進しており、体重低下および脂肪量の低下がみられ、かつ低温耐性が増強する<ref name=Yoon2018><pubmed>29784793</pubmed></ref>。CRTC3は褐色脂肪細胞での血管内皮増殖因子A(VEGFA)の発現に関与することから、CRTC3は分泌シグナルを介して褐色脂肪細胞の活性を制御していると提案されている<ref name=Yoon2018><pubmed>29784793</pubmed></ref>。ショウジョウバエCRTCについても脂肪量の調節機能、および酸化ストレス応答に重要であることが報告されており<ref name=Wang2008><pubmed>18460334</pubmed></ref>、線虫crtc-1変異体はおそらく脂肪等のエネルギー恒常性を介して寿命を延長させることも知られている<ref name=Mair2011><pubmed>21331044</pubmed></ref>。 ==疾患との関わり== 神経系で発現するCRTCファミリータンパクが神経可塑性を制御することから、その機能は神経関連疾患と深くかかわりがあると考えられる。CRTC1ノックアウトマウスでは海馬と前頭葉においてCREB下流遺伝子が発現の低下が起き、社会性行動の低下、および攻撃行動の増大が認められる<ref name=Breuillaud2012><pubmed>22592058</pubmed></ref>。このことから、CREB/CRTC1依存的な遺伝子発現誘導とうつ病態との関連が示唆された<ref name=Breuillaud2012><pubmed>22592058</pubmed></ref>。CREB/CRTC依存的な遺伝子発現の活性化は神経変性疾患に対して有効であることが報告されている。Aβ42オリゴマー(早期アルツハイマー病脳で認められる、42アミノ酸からなるAβペプチドが重合した可溶性複合体)により培養神経でCRTC1のS-ニトロシル化が起き、CREB依存的遺伝子発現が阻害される<ref name=Zhang2025><pubmed>40014571</pubmed></ref>。CRTC1のS-ニトロシル化を阻害するとCREB依存的遺伝子発現が回復し、家族性アルツハイマー病原因遺伝子をもつヒトiPS細胞由来の神経における神経突起伸長が促進され、アルツハイマー病モデルマウスでのプレシナプスや長期増強の障害が抑えられる<ref name=Zhang2025><pubmed>40014571</pubmed></ref>。行動レベルでもアルツハイマー病モデルマウスの記憶障害がCRTC1の過剰発現により改善されることが示された<ref name=Parra-Damas2014><pubmed>24760838</pubmed></ref>。ハンチントン病モデルマウスにおいては、SIRT1を過剰発現させるとCRTC1の13番目リジン残基の抑制的アセチル化が脱アセチル化され、その結果CREB/CRTC1依存的な遺伝子発現が誘導され、神経毒性が軽減されることが示されている<ref name=Jeong2011><pubmed>22179316</pubmed></ref>。パーキンソン病モデルとして用いられる6-OHDA処理ラットにおいても、CRTC1の活性化がドーパミン神経の細胞死に対して保護的に作用することが報告された<ref name=Won2016><pubmed>27903866</pubmed></ref>。神経変性疾患以外では、CRTC1はコカインに対する動機づけ行動を抑制することから<ref name=Hollander2010><pubmed>20613834</pubmed></ref>、薬物依存に対するCRTC活性化の有効性が示唆されている。他にも、上流の抑制キナーゼであるSIK2をノックアウトすることでCRTC1を活性化させることにより、無酸素無糖負荷による神経死が軽減されることが示されており、CRTC1の活性化は脳虚血後の神経保護作用を有することが提案されている<ref name=Sasaki2011><pubmed>21220102</pubmed></ref>。 CRTCファミリータンパクと肥満および生活習慣病との関連も示唆されている。上述の視床下部におけるCRTC1の食欲減衰作用、および肝臓CRTC2の糖新生を介した血糖値の制御、褐色脂肪細胞CRTC3による脂肪量の調節が肥満および生活習慣病治療の標的となりうると考えられる。それらに加え、慢性高血糖下では血中グルコースに応答してマウス肝臓においてCRTC2のO-グリコシル化が起きる。これによりCRTC2の過剰な活性化が起きることで血糖値が高く保たれることが示唆され、CRTC2のO-グリコシル化を阻害することで慢性高血糖における耐糖能異常を改善しうることが提案された<ref name=Dentin2008><pubmed>18323454</pubmed></ref>。 図1、CRTCのドメイン構造とリン酸化セリン A、 N末のCBDを介してCREBと結合し、C末のTADを介して転写を活性化させる。 B、 定常状態ではセリン残基のリン酸化によりCRTCは細胞質に局在し、脱リン酸化後、核内に移行して遺伝子発現を活性化させる。 ==参考文献==
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