「Parkin」の版間の差分

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 2004年、[[PINK1]]([[PTEN induced kinase 1]]; [[PARK6]])が、常染色体性潜性若年性パーキンソン病原因遺伝子として同定された<ref name=Valente2004><pubmed>15087508</pubmed></ref> 。遺伝性若年性パーキンソン病のうち、PINK1変異はParkinに次いで頻度が高く、Parkinと臨床像は類似している<ref name=Kumazawa2008><pubmed>18541801</pubmed></ref> 。[[ショウジョウバエ]]を用いた遺伝学的研究から、常染色体性潜性(劣性)若年性パーキンソン病原因遺伝子PINK1がParkinの上流因子であり、PINK1とParkinが[[ミトコンドリア]]の機能維持に関与することが明らかとなった<ref name=Clark2006><pubmed>16672981</pubmed></ref><ref name=Park2006><pubmed>16672980</pubmed></ref><ref name=Yang2006><pubmed>16818890</pubmed></ref> 。その後、[[ヒト]][[培養細胞]]を用いた研究から、PINK1がParkinをリン酸化し<ref name=Kondapalli2012><pubmed>22724072</pubmed></ref><ref name=Shiba-Fukushima2012><pubmed>23256036</pubmed></ref><ref name=Shiba-Fukushima2014a><pubmed>24901221</pubmed></ref>、協働して膜電位の低下したミトコンドリアを除去する[[マイトファジー]](ミトコンドリアを対象とする[[オートファジー]])に関与することが明らかになった('''図1''')<ref name=Narendra2008><pubmed>19029340</pubmed></ref><ref name=Narendra2010><pubmed>20126261</pubmed></ref><ref name=Matsuda2010><pubmed>20404107</pubmed></ref><ref name=Geisler2010><pubmed>20098416</pubmed></ref> 。
 2004年、[[PINK1]]([[PTEN induced kinase 1]]; [[PARK6]])が、常染色体性潜性若年性パーキンソン病原因遺伝子として同定された<ref name=Valente2004><pubmed>15087508</pubmed></ref> 。遺伝性若年性パーキンソン病のうち、PINK1変異はParkinに次いで頻度が高く、Parkinと臨床像は類似している<ref name=Kumazawa2008><pubmed>18541801</pubmed></ref> 。[[ショウジョウバエ]]を用いた遺伝学的研究から、常染色体性潜性(劣性)若年性パーキンソン病原因遺伝子PINK1がParkinの上流因子であり、PINK1とParkinが[[ミトコンドリア]]の機能維持に関与することが明らかとなった<ref name=Clark2006><pubmed>16672981</pubmed></ref><ref name=Park2006><pubmed>16672980</pubmed></ref><ref name=Yang2006><pubmed>16818890</pubmed></ref> 。その後、[[ヒト]][[培養細胞]]を用いた研究から、PINK1がParkinをリン酸化し<ref name=Kondapalli2012><pubmed>22724072</pubmed></ref><ref name=Shiba-Fukushima2012><pubmed>23256036</pubmed></ref><ref name=Shiba-Fukushima2014a><pubmed>24901221</pubmed></ref>、協働して膜電位の低下したミトコンドリアを除去する[[マイトファジー]](ミトコンドリアを対象とする[[オートファジー]])に関与することが明らかになった('''図1''')<ref name=Narendra2008><pubmed>19029340</pubmed></ref><ref name=Narendra2010><pubmed>20126261</pubmed></ref><ref name=Matsuda2010><pubmed>20404107</pubmed></ref><ref name=Geisler2010><pubmed>20098416</pubmed></ref> 。
[[ファイル:Imai Parkin Fig2.jpg|サムネイル|'''図2. Parkinタンパク質のドメイン構造'''<br>ドメインの説明は本文を参照。REP(Repressor Element of Parkin)の役割は図3を参照。図は文献<ref name=Imai2012 />より改変。]]
[[ファイル:Imai Parkin Fig2.jpg|サムネイル|450 px|'''図2. Parkinタンパク質のドメイン構造'''<br>ドメインの説明は本文を参照。REP(Repressor Element of Parkin)の役割は図3を参照。図は文献<ref name=Imai2012 />より改変。]]
[[ファイル:Imai Parkin Fig3.jpg|サムネイル|'''図3. Parkinの活性化と構造変換'''<br>
[[ファイル:Imai Parkin Fig3.jpg|サムネイル|450 px|'''図3. Parkinの活性化と構造変換'''<br>
(左端)不活性型のParkin。ユビキチンリガーゼ活性中心(RING2の緑色の星印)はRING0でマスクされている。<br>
(左端)不活性型のParkin。ユビキチンリガーゼ活性中心(RING2の緑色の星印)はRING0でマスクされている。<br>
'''①''' PINK1が活性化し、ミトコンドリア外膜タンパク質のポリユビキチン(Ub)鎖のSer65がリン酸化(P)される。次に、リン酸化ユビキチンにParkinが結合する。<br>
'''①''' PINK1が活性化し、ミトコンドリア外膜タンパク質のポリユビキチン(Ub)鎖のSer65がリン酸化(P)される。次に、リン酸化ユビキチンにParkinが結合する。<br>
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==活性化機構==
==活性化機構==
 コンパクトに折り畳まれたParkinは、活性中心がマスクされ不活性型である。Parkinの活性化は2つのステップで起こる。1段階目として、PINK1によってSer65が[[リン酸化]]されたユビキチン<ref name=Kane2014><pubmed>24751536</pubmed></ref><ref name=Kazlauskaite2014><pubmed>24660806</pubmed></ref><ref name=Koyano2014><pubmed>24784582</pubmed></ref> がParkinのリン酸基結合ポケットに結合し、ユビキチン様ドメインのリン酸化サイト(Ser65)が露出する。2段階目に、露出したユビキチン様ドメインのSer65がPINK1によりリン酸化され、リン酸化ユビキチン様ドメインがRING0/UPDに結合することで、RING2にある活性中心とRING1にあるユビキチン結合酵素(E2)結合部位が安定的に露出する<ref name=Wauer2015><pubmed>26161729</pubmed></ref>('''図3''')。
 コンパクトに折り畳まれたParkinは、活性中心がマスクされ不活性型である。Parkinの活性化は2つのステップで起こる。1段階目として、PINK1によってSer65が[[リン酸化]]されたユビキチン<ref name=Kane2014><pubmed>24751536</pubmed></ref><ref name=Kazlauskaite2014><pubmed>24660806</pubmed></ref><ref name=Koyano2014><pubmed>24784582</pubmed></ref> がParkinのリン酸基結合ポケットに結合し、ユビキチン様ドメインのリン酸化サイト(Ser65)が露出する。2段階目に、露出したユビキチン様ドメインのSer65がPINK1によりリン酸化され、リン酸化ユビキチン様ドメインがRING0/UPDに結合することで、RING2にある活性中心とRING1にあるユビキチン結合酵素(E2)結合部位が安定的に露出する<ref name=Wauer2015><pubmed>26161729</pubmed></ref>('''図3''')。
[[ファイル:Imai Parkin Fig4.jpg|サムネイル|'''図4. PINK1によるParkinのミトコンドリアへの集積メカニズム'''<br>
[[ファイル:Imai Parkin Fig4.jpg|サムネイル|450 px|'''図4. PINK1によるParkinのミトコンドリアへの集積メカニズム'''<br>
'''①''' 細胞質で不活性状態のParkin。ミトコンドリア外膜タンパク質(S)は、ミトコンドリア局在ユビキチンリガーゼにより、生理的にポリユビキチン化修飾を受けている。<br>
'''①''' 細胞質で不活性状態のParkin。ミトコンドリア外膜タンパク質(S)は、ミトコンドリア局在ユビキチンリガーゼにより、生理的にポリユビキチン化修飾を受けている。<br>
'''②''' ミトコンドリア膜電位が低下し活性化したPINK1によるポリユビキチン鎖のリン酸化(P)。<br>
'''②''' ミトコンドリア膜電位が低下し活性化したPINK1によるポリユビキチン鎖のリン酸化(P)。<br>
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==機能==
==機能==
[[ファイル:Imai Parkin Fig5.jpg|サムネイル|'''図5. PINK1の活性化メカニズム'''<br>
[[ファイル:Imai Parkin Fig5.jpg|サムネイル|450 px|'''図5. PINK1の活性化メカニズム'''<br>
(上, 健康なミトコンドリア) 新規に作られたPINK1は、膜電位依存的輸送経路によりミトコンドリア内膜まで輸送される。内膜上でMPPとPARLにより切断をうけ、未解明の機構で細胞質へと放出される。その後、ユビキチン-プロテアソーム経路で分解される。<br>
(上, 健康なミトコンドリア) 新規に作られたPINK1は、膜電位依存的輸送経路によりミトコンドリア内膜まで輸送される。内膜上でMPPとPARLにより切断をうけ、未解明の機構で細胞質へと放出される。その後、ユビキチン-プロテアソーム経路で分解される。<br>
(下, 膜電位が低下したミトコンドリア) PINK1は外膜に集積し、自己会合・自己リン酸化により活性化する。<br>
(下, 膜電位が低下したミトコンドリア) PINK1は外膜に集積し、自己会合・自己リン酸化により活性化する。<br>
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 生理的なミトコンドリア排除へのParkinの関与も報告されている。寒冷暴露に応じて発達する[[ベージュ脂肪細胞]]は、熱産生のためにミトコンドリアが豊富である。しかし寒冷ストレスがなくなると、脂肪滴貯蔵のためミトコンドリアが少ない[[白色脂肪細胞]]へと変化する。ベージュ脂肪細胞の白色脂肪細胞化の際に不要となったミトコンドリアがParkinによって除去される<ref name=Lu2018><pubmed>29692364</pubmed></ref> 。
 生理的なミトコンドリア排除へのParkinの関与も報告されている。寒冷暴露に応じて発達する[[ベージュ脂肪細胞]]は、熱産生のためにミトコンドリアが豊富である。しかし寒冷ストレスがなくなると、脂肪滴貯蔵のためミトコンドリアが少ない[[白色脂肪細胞]]へと変化する。ベージュ脂肪細胞の白色脂肪細胞化の際に不要となったミトコンドリアがParkinによって除去される<ref name=Lu2018><pubmed>29692364</pubmed></ref> 。
[[ファイル:Imai Parkin Fig6.jpg|サムネイル|'''図6. PINK1によるParkinのミトコンドリアへの集積メカニズム'''<br>
[[ファイル:Imai Parkin Fig6.jpg|サムネイル|450 px|'''図6. PINK1によるParkinのミトコンドリアへの集積メカニズム'''<br>
'''①''' 健康なミトコンドリアは、Miro-Milton-KIF5により、微小管に沿って順行輸送される。<br>
'''①''' 健康なミトコンドリアは、Miro-Milton-KIF5により、微小管に沿って順行輸送される。<br>
'''②''' 膜電位が低下したミトコンドリア上では、PINK1-Parkinが活性化しMiroを分解する。その結果、順行輸送が停止する。
'''②''' 膜電位が低下したミトコンドリア上では、PINK1-Parkinが活性化しMiroを分解する。その結果、順行輸送が停止する。

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