「ノルアドレナリン」の版間の差分
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| MolarMass = 169.18 g/mol | | MolarMass = 169.18 g/mol | ||
| MeltingPt = L: 216.5–218 °C (''decomp.'')<br />D/L: 191 °C (''decomp.'') | | MeltingPt = L: 216.5–218 °C (''decomp.'')<br />D/L: 191 °C (''decomp.'') | ||
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同義語:ノルエピネフリン | 英:noradrenaline, norepinephrine 独:Noradrenalin, Norepinephrin 仏:noradrénaline, norépinéphrine 略称:NA, NE | ||
同義語:ノルエピネフリン | |||
ノルアドレナリンは[[モノアミン]]の一種、また[[カテコールアミン]]の一種である。生体内において、[[神経伝達物質]]または[[wikipedia:ja:ホルモン|ホルモン]]として働く。生体内では[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]から合成される。ノルアドレナリンの[[受容体]]は[[アドレナリン受容体]]ファミリーであり、三量体[[Gタンパク質共役型]]である。[[末梢神経]]系では[[交感神経]]における神経伝達物質として重要である。[[中枢神経]]系では、[[橋]]にある[[青斑核]]にノルアドレナリン作動性神経細胞が多く存在し、そこからほぼ脳全域に投射している。中枢神経系ノルアドレナリンは[[覚醒]]-[[睡眠]]や[[ストレス]]に関する働きをし、[[注意]]、[[記憶]]や[[学習]]などにも影響すると考えられている。 | ノルアドレナリンは[[モノアミン]]の一種、また[[カテコールアミン]]の一種である。生体内において、[[神経伝達物質]]または[[wikipedia:ja:ホルモン|ホルモン]]として働く。生体内では[[wikipedia:ja:チロシン|チロシン]]から合成される。ノルアドレナリンの[[受容体]]は[[アドレナリン受容体]]ファミリーであり、三量体[[Gタンパク質共役型]]である。[[末梢神経]]系では[[交感神経]]における神経伝達物質として重要である。[[中枢神経]]系では、[[橋]]にある[[青斑核]]にノルアドレナリン作動性神経細胞が多く存在し、そこからほぼ脳全域に投射している。中枢神経系ノルアドレナリンは[[覚醒]]-[[睡眠]]や[[ストレス]]に関する働きをし、[[注意]]、[[記憶]]や[[学習]]などにも影響すると考えられている。 | ||
== 発見 | == 発見 == | ||
1946年、[[wikipedia:ja:ウルフ・スファンテ・フォン・オイラー|Ulf Svante von Euler]](スウェーデン)および[[wikipedia:de:Peter Holtz|Peter Holtz]](ドイツ)により、ノルアドレナリンが[[wikipedia:ja:ほ乳類|ほ乳類]]の交感神経において神経伝達物質として働くことが示された<ref name="ref1">'''U S von Euler'''<br> A Specific Sympathomimetic Ergone in Adrenergic Nerve Fibres (Sympathin) and its Relations to Adrenaline and Nor-Adrenaline <br> ''Acta Physiol., Scand. '':1946, 12; 73–97</ref> <ref name="ref2">'''P Holtz'''<br>Über die sympathicomimetische Wirksamkeit von Gehirnextrakten.<br>''Acta Physiol., Scand. '': 1950, 20; 354–362</ref>。 | 1946年、[[wikipedia:ja:ウルフ・スファンテ・フォン・オイラー|Ulf Svante von Euler]](スウェーデン)および[[wikipedia:de:Peter Holtz|Peter Holtz]](ドイツ)により、ノルアドレナリンが[[wikipedia:ja:ほ乳類|ほ乳類]]の交感神経において神経伝達物質として働くことが示された<ref name="ref1">'''U S von Euler'''<br> A Specific Sympathomimetic Ergone in Adrenergic Nerve Fibres (Sympathin) and its Relations to Adrenaline and Nor-Adrenaline <br> ''Acta Physiol., Scand. '':1946, 12; 73–97</ref> <ref name="ref2">'''P Holtz'''<br>Über die sympathicomimetische Wirksamkeit von Gehirnextrakten.<br>''Acta Physiol., Scand. '': 1950, 20; 354–362</ref>。 | ||
== 構造 | == 構造 == | ||
[[wikipedia:ja:カテコール|カテコール]]基と[[wikipedia:ja:アミン#アミノ基|一級アミノ基]]をもつ、カテコールアミン神経伝達物質の一種。また、[[ドーパミン]]、[[セロトニン]]、[[ヒスタミン]]などとともに[[モノアミン系]]神経伝達物質のグループを形成する。 | |||
== 合成 == | |||
[[Image:1NA fig2.jpg|thumb|250px|'''図1 ノルアドレナリン生合成経路''']] | |||
他に、[[副腎髄質]]中にある[[クロム親和性細胞]]においても合成されている。合成に関わる酵素は以下の通り(図1)。 | |||
[[ | *'''[[チロシン水酸化酵素]] (tyrosine hydroxylase, TH):'''EC 1.14.16.2。チロシンより[[L-DOPA]] (L-3,4-dihydroxyphenylalanine)を合成する<ref name="ref3"><pubmed> 15569247 </pubmed></ref> <ref name="ref4"><pubmed> 21176768 </pubmed></ref> <ref name="ref5"><pubmed> 2575455</pubmed></ref>。反応には、[[テトラヒドロビオプテリン]] (tetrahydrobiopterin), O<sub>2</sub>, Fe<sup>2+</sup>が必要。カテコールアミン合成において、[[wikipedia:ja:律速段階|律速段階]]の酵素であると考えられている。その活性制御は、主にタンパク質の量と、[[リン酸化]]による。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する。[[wikipedia:ja:補因子|補因子]]であるテトラヒドロビオプテリンはGTPより合成される。律速酵素は[[GTPシクロヒドラーゼI]] (GTP cyclohydrolase I)である<ref name="ref6"><pubmed> 10727395 </pubmed></ref>。<br> | ||
*'''[[芳香族アミノ酸脱炭酸酵素]] (aromatic L-amino acid decarboxylase, AADC)''':EC 4.1.1.28。L-DOPAよりドーパミンを合成する。他に、この酵素は[[5-ヒドロキシトリプトファン]] (5-hydroxytryptophan)からセロトニン(5-hydroxytryptamine, 5-HT)を合成する反応も触媒する。[[wikipedia:ja:ピリドキサールリン酸|ピリドキサールリン酸]] (pyridoxal phosphate)が必要。全てのカテコールアミン産生細胞に存在する<ref name="ref7"><pubmed> 8897471</pubmed></ref>。<br> | |||
*'''[[ドーパミンβ水酸化酵素]] (dopamine β-hydroxylase, DBH)''':EC 1.14.2.1。ドーパミンよりノルアドレナリンを合成する。[[wikipedia:ja:アスコルビン酸|アスコルビン酸]]、O<sub>2</sub>、Cu<sup>2+</sup>が必要。ノルアドレナリン、アドレナリン産生細胞の[[シナプス小胞]]の中に存在し、シナプス小胞に取り込まれたドーパミンをノルアドレナリンに変換する<ref name="ref8"><pubmed> 6998654 </pubmed></ref>。 | |||
=== | == 放出、再取り込み == | ||
ノルアドレナリンの前駆体であるドーパミンは[[小胞型モノアミントランスポーター]](vesicular monoamine transporter, vMAT)によりシナプス小胞内に輸送される。vMAT1は主に副腎のクロム親和性細胞、vMAT2は神経細胞で発現している。vMATはH<sup>+</sup>との交換輸送によりモノアミンを小胞内に蓄積させる<ref name="ref9"><pubmed> 11099462 </pubmed></ref>。<br> ノルアドレナリンの放出は他の神経伝達物質と同様に、神経活動依存的、[[カルシウム]]依存的なシナプス小胞のエキソサイトーシスによる。 | |||
== | 放出された後、[[ノルエピネフリントランスポーター]](norepinephrine transporter, NET、または[[ノルアドレナリントランスポーター]] (noradrenaline transporter, NAT))により再取り込みされる。他のカテコールアミン同様、細胞外に放出されたノルアドレナリンの量の調節は、この再取込みの寄与が高い<ref name="ref10"><pubmed> 10769386 </pubmed></ref>。NETは[[Na+/K+-ATPase|Na<sup>+</sup>/K<sup>+</sup>-ATPase]]依存的で、Na<sup>+</sup>/Cl<sup>-</sup>の共輸送によりノルアドレナリンを細胞内に輸送する。またNETはリン酸化により制御される<ref name="ref11"><pubmed> 16539676 </pubmed></ref>。<br> | ||
== 代謝分解 == | |||
ノルアドレナリンの代謝分解には次の二つの酵素が重要である。 | |||
=== | *'''[[モノアミン酸化酵素]](monoamine oxidase, MAO)''':MAOはモノアミンのアミノ基を[[wikipedia:ja:アルデヒド|アルデヒド]]基に酸化する。MAOは[[ミトコンドリア]]外膜に局在しに存在し、細胞内のノルアドレナリン(再取込みされたものを含む)の分解に関与する。ただしMAOに比べてvMAT2の方がノルアドレナリンに対する親和性がずっと高いため、シナプス小胞への取り込みの方がMAOによる分解よりも優先されると考えられる<ref name="ref12"><pubmed> 16552415</pubmed></ref>。MAOには[[MAO-A]]と[[MAO-B]]があり、二つの別の遺伝子によりコードされている。MAO-AとMAO-Bはモノアミン作動性神経細胞および[[グリア細胞]]に発現しているが、発現量は細胞の種類により異なり、また動物種によっても違いが見られる<ref name="ref12" />。[[マウス]]脳のノルアドレナリン作動性神経細胞には主にMAO-Aが発現している<ref name="ref13"><pubmed> 11793338 </pubmed></ref>。。 | ||
*'''[[カテコール-O-メチル基転移酵素|カテコール-''O''-メチル基転移酵素]](catechol-''O''-methyltransferase, COMT)''':これはカテコール基の[[wikipedia:ja:メタ|メタ]]位[[wikipedia:ja:水酸基|水酸基]]に[[wikipedia:ja:メチル基|メチル基]]を転移させる。[[wikipedia:ja:腎臓|腎臓]]や[[wikipedia:ja:肝臓|肝臓]]に豊富だが、カテコールアミン作動性神経細胞の投射先においても発現している。細胞外で働くと考えられている<ref name="ref14"><pubmed> 21846718 </pubmed></ref>。 | |||
脳においてノルアドレナリンの多くは、MAO、[[アルデヒド還元酵素]]、およびCOMTにより[[wikipedia:3-Methoxy-4-hydroxyphenylglycol|3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール]] (3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol, MHPG)へ代謝され、さらに[[wikipedia:Vanillylmandelic acid|3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸]] (3-methoxy-4-hydroxymandelic acid) (または[[wikipedia:Vanillylmandelic acid|バニリルマンデル酸]] (vanillylmandelic acid, VMA)となって尿中に排出される<ref name="ref15">'''D E Golan, A H Tashjian Jr, E J Armstrong, A W Armstrong'''<br> Principles of Pharmacology, Second Edition<br>''Wolters Kluwer Health (Philadelphia)'':2002</ref>。MHPGの硫酸化物も尿中に排出される<ref name="ref15" />。 | |||
== | == 主たる投射系と機能 == | ||
===中枢神経系=== | |||
脳におけるノルアドレナリン作動性の神経細胞群は、主に[[髄質]](延髄でしょうか?)、[[橋]]に存在し、A1-A7に分けられている。 | |||
*A1、A2:A1は髄質の腹外側に位置し、A2は背側に位置する。共に[[視床下部]]に上行性投射をし、[[wikipedia:ja:ホルモン|ホルモン]]循環器系や[[wikipedia:ja:ホルモン|ホルモン]]内分泌系の調節を行う。 | |||
*A5、A7:橋の腹外側に位置し、脊髄へ投射し、[[自律神経]]反射や、[[痛覚]]の調節を行う。 | |||
*A6:青斑核(locus ceruleus)と呼ばれる。橋の背側に位置し、最も主要なノルアドレナリン作動性神経細胞の核である。青斑核からは、[[大脳皮質]]、[[視床]]、視床下部、[[小脳]]、[[中脳]]、[[脊髄]]、など脳のほぼ全域にわたって投射している。青斑核のノルアドレナリン作動性神経細胞は覚醒状態や不意な環境変化への応答性に関係している<ref name="ref16"><pubmed> 19190638 </pubmed></ref>。例えば、ラット青斑核神経細胞の発火頻度は、覚醒-睡眠のサイクルに応じて変化し、また継続中の行動を中断するような場合に上昇する<ref name="ref17"><pubmed> 7346592 </pubmed></ref>。さらに近年、ノルアドレナリンの注意、記憶、学習への関与、また[[シナプス可塑性]]への関与が報告されている<ref name="ref16" /> <ref name="ref18"><pubmed> 20465834</pubmed></ref>。これらのことから、ノルアドレナリンの働きは、動物が環境の変化に適応する際に、注意や認知のシフト、そして行動の適応化を早めることであると提唱されている<ref name="ref16" />。<br> | |||
== | ===自律神経系=== | ||
自律神経系のうちの交感神経系では、節後神経細胞がノルアドレナリン作動性であり、脊髄中の[[節前神経細胞]]より[[アセチルコリン]]性の入力を受け、ノルアドレナリン性の出力を[[wikipedia:ja:内臓|内臓]]器官に与える。その結果、[[wikipedia:ja:血管|血管]]の収縮、[[wikipedia:ja:血圧|血圧]]の上昇、[[wikipedia:ja:心拍数|心拍数]]の増加、などを引き起こす。 | |||
== 受容体 == | |||
ノルアドレナリンはアドレナリンと共にアドレナリン受容体(adrenergic receptorまたはadrenoceptor)に結合し活性化する。αおよびβのサブファミリーからなる(表)。より細かくは、α<sub>1A</sub>-α<sub>1D</sub>、α<sub>2A</sub>-α<sub>2C</sub>、β<sub>1</sub>-β<sub>3</sub>、から構成されている。いずれも三量体[[Gタンパク質共役型受容体]]である。α<sub>1</sub>はG<sub>q</sub>、α<sub>2</sub>はG<sub>i</sub>、β<sub>1</sub>-β<sub>3</sub>はG<sub>s</sub>と共役している。 | |||
中枢神経系において、ノルアドレナリンは主にα<sub>1</sub>、α<sub>2</sub>、そしてβ<sub>1</sub>受容体を介して作用し、それぞれに異なる影響を与える。さらにノルアドレナリンの働きは、標的細胞における他の入力にも依存するので、複雑である。 | |||
末梢神経系において、ノルアドレナリンはα<sub>1</sub>およびβ<sub>1</sub>アドレナリン受容体のアゴニストとして作用する。(アドレナリンは、低濃度ではβ<sub>1</sub>およびβ<sub>2</sub>アドレナリン受容体に作用し、高濃度ではα<sub>1</sub>を介した作用が主となる。) | |||
α<sub>2</sub>アドレナリン受容体はノルアドレナリン[[軸索終末]]に存在し([[自己受容体]]またはオートレセプター)、ノルアドレナリンの放出を抑制する<ref name="ref19"><pubmed> 11520889 </pubmed></ref>。 | |||
α<sub>2</sub>アドレナリン受容体はノルアドレナリン[[軸索終末]]に存在し([[自己受容体]]またはオートレセプター)、ノルアドレナリンの放出を抑制する<ref name=" | |||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|- | |- | ||
! style="white-space:nowrap" | 受容体 | ! style="white-space:nowrap"|受容体 | ||
! [[アゴニスト]]選択性 | ! [[アゴニスト]]選択性 | ||
! 主な作用 | ! 主な作用 | ||
! 細胞内シグナル | ! 細胞内シグナル | ||
! style="white-space:nowrap" | [[wikipedia:Adrenergic agonist|アゴニスト]] | ! style="white-space:nowrap"|[[wikipedia:Adrenergic agonist|アゴニスト]] | ||
! style="white-space:nowrap" | [[wikipedia:Adrenergic antagonist|アンタゴニスト]] | ! style="white-space:nowrap"| [[wikipedia:Adrenergic antagonist|アンタゴニスト]] | ||
|- | |- | ||
| style="white-space:nowrap" | [[wikipedia:Α1 adrenergic receptor|α | |! style="white-space:nowrap"| [[wikipedia:Α1 adrenergic receptor|α<sub>1</sub>]]:<br>[[wikipedia:Alpha-1A adrenergic receptor|A]], [[wikipedia:Alpha-1B adrenergic receptor|B]], [[wikipedia:Alpha-1D adrenergic receptor|D]]<sup>†</sup> | ||
| style="white-space:nowrap" | [[ノルアドレナリン]] > [[アドレナリン]] >> [[イソプレナリン]] | | style="white-space:nowrap" | [[ノルアドレナリン]] > [[アドレナリン]] >> [[イソプレナリン]] | ||
| [[wikipedia:ja:平滑筋|平滑筋]]収縮 | | [[wikipedia:ja:平滑筋|平滑筋]]収縮 | ||
| [[Gq alpha subunit|G<sub>q</sub>]]: [[ | | [[Gq alpha subunit|G<sub>q</sub>]]: [[ホスホリパーゼ C]] (PLC) 活性化により[[イノシトール3リン酸]]と[[ジアシルグリセロール]]、細胞内[[カルシウム]]の上昇 | ||
| style="white-space:nowrap" | | |! style="white-space:nowrap"| | ||
''([[wikipedia:Alpha-adrenergic agonist| | ''([[wikipedia:Alpha-adrenergic agonist|α<sub>1</sub>アゴニスト]])'' | ||
*[[ノルアドレナリン]] | *[[ノルアドレナリン]] | ||
| 147行目: | 131行目: | ||
*[[メタラミノール]] | *[[メタラミノール]] | ||
| style="white-space:nowrap" | | | ! style="white-space:nowrap"| | ||
''([[wikipedia:Alpha-1 blocker| | ''([[wikipedia:Alpha-1 blocker|α<sub>1</sub>アンタゴニスト]])'' | ||
*[[アルフゾシン]] | *[[アルフゾシン]] | ||
*[[ドキサゾシン]] | *[[ドキサゾシン]] | ||
*[[ | *[[ヘノキシベンザミン]] | ||
*[[フェントラミン]] | *[[フェントラミン]] | ||
*[[プラゾシン]] | *[[プラゾシン]] | ||
| 178行目: | 162行目: | ||
*[[アミトラズ]] | *[[アミトラズ]] | ||
| style="white-space:nowrap" | | | ! style="white-space:nowrap"| | ||
''([[wikipedia:Α2 blocker|α2アンタゴニスト]])'' | ''([[wikipedia:Α2 blocker|α2アンタゴニスト]])'' | ||
| 192行目: | 176行目: | ||
| [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 | | [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 | ||
| | | | ||
''([[wikipedia:Beta1-adrenergic agonist| | ''([[wikipedia:Beta1-adrenergic agonist|β<sub>1</sub>アゴニスト]])'' | ||
*[[ドブタミン]] | *[[ドブタミン]] | ||
| 199行目: | 183行目: | ||
| | | | ||
''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬| | ''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬|β<sub>1</sub>アンタゴニスト]])'' | ||
*[[メトプロロール]] | *[[メトプロロール]] | ||
| 209行目: | 193行目: | ||
| 平滑筋弛緩 | | 平滑筋弛緩 | ||
| [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 ([[Gi alpha subunit|Gi]]と共役することもある) | | [[Gs alpha subunit|G<sub>s</sub>]]: [[アデニル酸シクラーゼ]]活性化、[[サイクリックAMP|cAMP]]上昇 ([[Gi alpha subunit|Gi]]と共役することもある) | ||
| style="white-space:nowrap" | | |! style="white-space:nowrap"| | ||
''([[wikipedia:ja:交感神経β2受容体作動薬| | ''([[wikipedia:ja:交感神経β2受容体作動薬|β<sub>2</sub>アゴニスト]])'' | ||
*[[サルブタモール]] | *[[サルブタモール]] | ||
| 223行目: | 207行目: | ||
| | | | ||
''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬| | ''([[wikipedia:ja:交感神経β受容体遮断薬|β<sub>2</sub>アンタゴニスト]])'' | ||
*[[ブトキサミン]] | *[[ブトキサミン]] | ||
| 242行目: | 226行目: | ||
|} | |} | ||
'''表 アドレナリン性受容体''' Wikipedia項目[[wikipedia:Adrenergic Receptor|Adrenergic Receptor]]から翻訳、修正の上転載。 <sup>†</sup>α<sub>1C</sub>受容体と呼ばれる物は、存在しない。 | '''表 アドレナリン性受容体''' Wikipedia項目[[wikipedia:Adrenergic Receptor|Adrenergic Receptor]]から翻訳、修正の上転載。 <sup>†</sup>α<sub>1C</sub>受容体と呼ばれる物は、存在しない。 | ||
== | == 抗うつ薬とノルアドレナリン == | ||
気分障害の治療に使われる薬のうち、歴史的に古い[[MAO阻害剤]]、[[三環系抗うつ薬]]はセロトニン系だけでなくノルアドレナリン系を刺激する。近年使用頻度が増えている薬に[[選択的セロトニン再取り込み阻害剤]](SSRI)あるが、これはノルアドレナリン系には作用しない。さらに、[[セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤]](SNRI)も開発され、これはその名の通り、セロトニン系とノルエピネフリン系の両方を選択的に刺激する。 | |||
こうした薬の作用から、うつ状態の原因がセロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミンの減少によるのではないかという[[モノアミン仮説]]が生まれた。しかし、これらの薬の治療効果が現れるのは、モノアミン神経伝達が亢進されるよりもずっと遅いことから、この仮説よりももっと複雑なことが起きていると考えられている<ref name="ref20">'''E R Kandel, J H Schwartz, T M Jessell'''<br> Principles of Neural Science, Fourth Edition<br>''Mc Graw Hill (New York)'':2000</ref> <ref name="ref21">'''N R Carlson'''<br> Physiology of Behavior, Tenth Edition<br>''Pearson Education (Boston)'':2009</ref>。 | |||
== 参考文献 == | |||
<references /> | |||
(執筆者:徳岡宏文、一瀬宏 担当編集者:林 康紀) | |||