「Hodgkin-Huxley方程式」の版間の差分

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''m''、''h''、''n''はTwo-stateモデルに従う値である。 開く速度定数αと閉じる速度定数βはいずれも電位に依存する。 HodgkinとHuxleyは''m''、''h''、''n''のそれぞれについていろいろな電位での αとβの値を実験的に測定し、一連の実験値を便宜的に次の数式で表した。これらの式は何らかの理論から導きだされたものではない。
''m''、''h''、''n''はTwo-stateモデルに従う値である。 開く速度定数αと閉じる速度定数βはいずれも電位に依存する。 HodgkinとHuxleyは''m''、''h''、''n''のそれぞれについていろいろな電位での αとβの値を実験的に測定し、一連のイカ巨大軸索を用いた実験値を便宜的に次の数式で表した。これらの式は何らかの理論から導きだされたものではない。なお注意すべき点として、以下の式で用いられている変数''v''は、膜電位''V''<sub>''m''</sub>そのものではなく静止電位を基準とした電位を意味している。
 
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::<math>\alpha_m = \frac{0.1(-v+25)}{\exp\left(\frac{-v+25}{10}\right)-1}</math>  
::<math>\alpha_m = \frac{0.1(-v+25)}{\exp\left(\frac{-v+25}{10}\right)-1}</math>  
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となる。 <br>  
となる。 <br>  
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== 電位固定法: 基礎となった技術*  ==
Hodgkin-Huxley以前に、電気生理学の実験が行われていなかったわけではない。電流と電位変化に関する研究はかなり多く行われていた。しかしながら、細胞にはいろいろなイオンチャネルを通して電流が流れるため、細胞の電位''v''と外部から流す電流''I''<sub>ext</sub>の間の関係は、単純ではない。そこでHodgkinとHuxleyは、 voltage clamp(電位固定法)を用いて、コンダクタンスの変化を測定して解析した。 voltage clampは1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。
以下は数式的な説明。<br>
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外部より電流''I''<sub>ext</sub>を流した場合、電位の変化は、次の式で示される。
::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math>
''X''はいろいろな種類のチャネルを示している。
この式から、''I''<sub>ext</sub>と電位との関係を理解する事は難しい。しかし''v''が一定となるような外部電流''I''<sub>clamp</sub>を流すと、左辺は0となるため、
::<math> I_{clamp} = \sum_X G_X (v - E_X)\, </math>
という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しさらにチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネル''A''を流れる電流のみを単離して測れたとすると、
::<math>I_{clamp} = G_A (v - E_A)\, </math>
となる。これはOhmの法則である。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub>は実験条件で定まる定数なので、
::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}\, </math>
の関係式を用いて、実験データよりイオンチャネル''A''のコンダクタンス''G''<sub>A</sub>を算出できることになる。
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なお、このTwo-stateモデルは''n''-stateモデルに拡張することが可能であり、拡張された式はMarkov過程のシミュレーション等に用いられている。  
なお、このTwo-stateモデルは''n''-stateモデルに拡張することが可能であり、拡張された式はMarkov過程のシミュレーション等に用いられている。  
== 電位固定法: 基礎となった技術*  ==
Hodgkin-Huxley以前に、電気生理学の実験が行われていなかったわけではない。電流と電位変化に関する研究はかなり多く行われていた。しかしながら、細胞にはいろいろなイオンチャネルを通して電流が流れるため、細胞の電位''v''と外部から流す電流''I''<sub>ext</sub>の間の関係は、単純ではない。そこでHodgkinとHuxleyは、 voltage clamp(電位固定法)を用いて、コンダクタンスの変化を測定して解析した。 voltage clampは1940年代にアメリカの生物物理学者Kenneth Cole (1900 - 1984)らにより開発された。
以下は数式的な説明。<br>
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外部より電流''I''<sub>ext</sub>を流した場合、電位の変化は、次の式で示される。
::<math>\frac{dv}{dt} = -\frac{1}{C}\left(\sum_X G_{X}(v-E_X) - I_{ext}\right)</math>
''X''はいろいろな種類のチャネルを示している。
この式から、''I''<sub>ext</sub>と電位との関係を理解する事は難しい。しかし''v''が一定となるような外部電流''I''<sub>clamp</sub>を流すと、左辺は0となるため、
::<math> I_{clamp} = \sum_X G_X (v - E_X)\, </math>
という関係が得られる。もし溶液の組成を工夫しさらにチャネルのブロッカーなどを用いて、イオンチャネル''A''を流れる電流のみを単離して測れたとすると、
::<math>I_{clamp} = G_A (v - E_A)\, </math>
となる。これはOhmの法則である。ここで''I''<sub>clamp</sub>は実験の測定値、''v''は実験の設定値、''E''<sub>A</sub>は実験条件で定まる定数なので、
::<math>G_{A} = \frac{I_{clamp}}{v-E_A}\, </math>
の関係式を用いて、実験データよりイオンチャネル''A''のコンダクタンス''G''<sub>A</sub>を算出できることになる。
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== HHモデルに対する批判  ==
== HHモデルに対する批判  ==
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== HH方程式を使ってみる  ==
== HH方程式を使ってみる  ==


HH方程式の数値計算には、ノートPCレベルのコンピュータがあれば十分である。基本的には常微分方程式の数値積分なので、C/C++やFortranなどの通常の言語でプログラムを作成すればよい。しかしそのような計算を目的に開発されて来たNEURONシミュレータを用いると、電位固定でのチャネルの性質や、チャネルを細胞に組み込んだ時の電位の変化などを比較的容易に検証する事が出来る。
HH方程式の数値計算には、ノートPCレベルのコンピュータがあれば十分である。基本的には常微分方程式の数値積分なので、C/C++やFortranなどの通常の言語でプログラムを作成すればよい。しかしそのような計算を目的に開発されて来たNEURONシミュレータを用いると、電位固定でのチャネルの性質や、チャネルを細胞に組み込んだ時の電位の変化などを比較的容易に検証する事が出来る。 <br>  
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== References  ==
== References  ==


Journal of Physiologyは、Hodgkin &amp; Huxley (1952)論文の60周年を記念して、2012年5月にオンライン版の特別号を出版している。Hogkin &amp; Huxleyおよび関係する論文は、このサイトからリンクされている。
Journal of Physiologyは、Hodgkin &amp; Huxley (1952)論文の60周年を記念して、2012年5月にオンライン版の特別号を出版している。Hogkin &amp; Huxleyおよび関係する論文は、このサイトからリンクされている。
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