「毛様体神経栄養因子」の版間の差分

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英語名:ciliary neurotrophic factor 英語略称名:CNTF 独:Ciliären Neurotrophen Faktor 仏: facteur neurotrophique ciliaire
英語名:ciliary neurotrophic factor 英語略称名:CNTF 独:Ciliären Neurotrophen Faktor 仏: facteur neurotrophique ciliaire


 毛様体神経栄養因子([[wikipedia:ciliary_neurotrophic_factor|CNTF]])はニワトリ胚抽出物に含まれる、毛様体ニューロンの生存を維持する栄養因子として発見された<ref><pubmed> 451576 </pubmed></ref>。その後、様々なニューロンに対して栄養因子活性を持つ分子として知られるようになった。アミノ末端に分泌やグリコシル化のコンセンサス配列を持っておらず、どのような機構で細胞外に分泌されるのか正確なところはわかっていない。CNTFは障害によって活性化される因子として知られ、様々な病態で分泌されることがわかっている。
 毛様体神経栄養因子([[wikipedia:ciliary_neurotrophic_factor|CNTF]])はニワトリ胚抽出物に含まれる、毛様体ニューロンの生存を維持する栄養因子として発見された<ref><pubmed> 451576 </pubmed></ref>。その後、様々なニューロンに対して栄養因子活性を持つ分子として知られるようになった。また、[[神経幹細胞]]に対して増殖促進活性が認められる。アミノ末端に分泌やグリコシル化のコンセンサス配列を持っておらず、どのような機構で細胞外に分泌されるのか正確なところはわかっていない。CNTFは障害によって活性化される因子として知られ、様々な病態で分泌されることがわかっている。


== シグナル伝達==
== シグナル伝達==


 CNTFは細胞膜上の[[wikipedia:ciliary_neurotrophic_factor_receptor|CNTFα受容体]](CNTFRα)に結合する<ref><pubmed> 9716487 </pubmed></ref>。CNTFRは[[wikipedia:glycosylphosphatidylinositol|glycosylphosphatidylinositol]](GPI)リンカーによって細胞膜上に分布し、[[wikipedia:ja:インターロイキン-6|インターロイキン-6]](IL-6) [[白血球遊走阻止因子]] (LIF)、[[wikipedia:oncostatin_M| oncostatin M]]等の[[wikipedia:ja:サイトカイン|サイトカイン]]の受容体とともにクラスI型サイトカイン受容体に分類される。CNTF受容体複合体のサブユニットであるCNTFRとCNTFが結合すると、膜貫通型のシグナル伝達サブユニットである[[wikipedia:leukaemia_inhibitory_factor_receptor|白血球遊走阻止因子β受容体]](LIFRβ)と[[wikipedia:glycoprotein_130|gp130]]をリクルートして活性化し、シグナルを細胞内に伝える。受容体複合体の形成により、細胞質内に分布する[[リン酸化酵素]]である[[wikipedia:ja:ヤーヌスキナーゼ|ヤーヌスキナーゼ]] ([[wikipedia:Janus kinase 1|Jak1]]/[[wikipedia:Janus kinase 2|2]]/[[wikipedia:Janus kinase 3|3]]や[[wikipedia:Tyrosine kinase 2|Tyk2]])が活性化され、gp130の細胞内領域がリン酸化される。すると、[[転写制御因子]]である[[STAT3|signal transducer and activator of transcription 3(STAT3)]]がこのリン酸化部位に結合してリン酸化を受け、2量体形成と[[核]]移行がおきてターゲット遺伝子の[[wikipedia:ja:転写|転写]]活性化をおこなう。gp130やJak、STATといった分子はCNTF以外のIL-6やLIF等のサイトカインによるシグナル伝達にも共通して用いられるため、各種細胞のサイトカインに対する反応特異性は主に受容体の発現によって決められると考えられている。一方、CNTFRαは[[ホスホリパーゼC]]を介してGPIリンカーを切断されて分泌型受容体になるため、LIFRβとgp130を発現している細胞ではCNTFと分泌型CNTFRαが供給されればシグナル伝達がおきることも報告されている。CNTFや分泌型CNTFRαは血清中や[[脳脊髄液]]中に検出される。
 CNTFはlong-chain α-helix-bundle[[wikipedia:ja:サイトカイン|サイトカイン]]に分類され、[[wikipedia:glycoprotein_130|gp130]]を共通の受容体複合体サブユニットとして使う[[wikipedia:ja:インターロイキン-6|インターロイキン-6]](IL-6)、IL-11、[[白血球遊走阻止因子]] (LIF)、[[wikipedia:oncostatin_M| oncostatin M]]と同じサブファミリーに属する。細胞膜上の[[wikipedia:ciliary_neurotrophic_factor_receptor|CNTFα受容体]](CNTFRα)に結合する<ref><pubmed> 9716487 </pubmed></ref>。CNTFRは[[wikipedia:glycosylphosphatidylinositol|glycosylphosphatidylinositol]](GPI)リンカーによって細胞膜上に分布し、IL-6 、LIF、 oncostatin M等のサイトカインの受容体とともにクラスI型サイトカイン受容体に分類される。CNTF受容体複合体のサブユニットであるCNTFRとCNTFが結合すると、膜貫通型のシグナル伝達サブユニットである[[wikipedia:leukaemia_inhibitory_factor_receptor|白血球遊走阻止因子β受容体]](LIFRβ)とgp130をリクルートして活性化し、シグナルを細胞内に伝える。受容体複合体の形成により、細胞質内に分布する[[リン酸化酵素]]である[[wikipedia:ja:ヤーヌスキナーゼ|ヤーヌスキナーゼ]] ([[wikipedia:Janus kinase 1|Jak1]]/[[wikipedia:Janus kinase 2|2]]/[[wikipedia:Janus kinase 3|3]]や[[wikipedia:Tyrosine kinase 2|Tyk2]])が活性化され、gp130の細胞内領域がリン酸化される。すると、[[転写制御因子]]である[[STAT3|signal transducer and activator of transcription 3(STAT3)]]がこのリン酸化部位に結合してリン酸化を受け、2量体形成と[[核]]移行がおきてターゲット遺伝子の[[wikipedia:ja:転写|転写]]活性化をおこなう。gp130やJak、STATといった分子はCNTF以外のIL-6やLIF等のサイトカインによるシグナル伝達にも共通して用いられるため、各種細胞のサイトカインに対する反応特異性は主に受容体の発現によって決められると考えられている。一方、CNTFRαは[[ホスホリパーゼC]]を介してGPIリンカーを切断されて分泌型受容体になるため、LIFRβとgp130を発現している細胞ではCNTFと分泌型CNTFRαが供給されればシグナル伝達がおきることも報告されている。CNTFや分泌型CNTFRαは血清中や[[脳脊髄液]]中に検出される。


== 栄養因子としての活性==
== 栄養因子としての活性==
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