「血管性認知症」の版間の差分

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== 血管性認知症の治療  ==
== 血管性認知症の治療  ==


 降圧療法には脳梗塞と同様に[[wikipedia:ja:ACE阻害薬|ACE阻害薬]]・[[wikipedia:ja:アンジオテンシンII受容体拮抗薬|ARB]]、[[wikipedia:ja:カルシウム拮抗薬|カルシウム拮抗薬]]、[[wikipedia:ja:利尿薬|利尿薬]]が適用される。カルシウム拮抗薬の[[wikipedia:ja:ニトレンジピン|ニトレンジピン]]を用いたSyst-Eur試験では、高血圧患者の認知症の発症抑制が示されている。80歳以上の高齢者を対象とするHYVET -cog試験では、ACE阻害薬、利尿薬の認知症抑制効果は認めなかったが、HYVET -cog試験を含む過去4試験のメタ解析では認知症が13%減少している<ref name="ref5"><pubmed>18614402</pubmed></ref>。[[アンギオテンシンII]]は[[アセチルコリン]]の遊離抑制に作用するため、[[レニンアンギオテンシン系]](RAS)抑制薬には[[コリン系]]の賦活効果があり、認知症への効果も期待される。血管性認知症では微小出血(Microbleeds)を伴い易く、特にその多発例では出血性リスクが危惧される。大血管の高度狭窄を伴う場合は別にして、抗[[wikipedia:ja:血小板|血小板]]を行う場合は厳格な血圧管理下のもとで[[wikipedia:ja:シロスタゾール|シロスタゾール]]のような出血性合併症の少ない薬剤が望ましい。  
 降圧療法には脳梗塞と同様に[[wikipedia:ja:ACE阻害薬|アンギオテンシン変換酵素 (ACE)阻害薬]]・[[wikipedia:ja:アンジオテンシンII受容体拮抗薬|アンジオテンシンII受容体拮抗薬]] (ARB)、[[wikipedia:ja:カルシウム拮抗薬|カルシウム拮抗薬]]、[[wikipedia:ja:利尿薬|利尿薬]]が適用される。カルシウム拮抗薬の[[wikipedia:ja:ニトレンジピン|ニトレンジピン]]を用いたSyst-Eur試験では、高血圧患者の認知症の発症抑制が示されている。80歳以上の高齢者を対象とするHYVET -cog試験では、ACE阻害薬、利尿薬の認知症抑制効果は認めなかったが、HYVET -cog試験を含む過去4試験のメタ解析では認知症が13%減少している<ref name="ref5"><pubmed>18614402</pubmed></ref>。[[アンギオテンシンII]]は[[アセチルコリン]]の遊離抑制に作用するため、[[レニンアンギオテンシン系]](RAS)抑制薬には[[コリン系]]の賦活効果があり、認知症への効果も期待される。血管性認知症では微小出血(Microbleeds)を伴い易く、特にその多発例では出血性リスクが危惧される。大血管の高度狭窄を伴う場合は別にして、抗[[wikipedia:ja:血小板|血小板]]を行う場合は厳格な血圧管理下のもとで[[wikipedia:ja:シロスタゾール|シロスタゾール]]のような出血性合併症の少ない薬剤が望ましい。  


 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の[[ドネペジル]]、[[ガランタミン]]、[[リバススチグミン]]、[[NMDA型グルタミン酸受容体]]拮抗薬の[[メマンチン]]が有効とする報告があるが、わが国では認められていない。[[wikipedia:ja:釣藤散|釣藤散]]は血管性認知症の認知機能改善効果がある。また、[[wikipedia:ja:八味地黄丸|八味地黄丸]]で血管性認知症や混合型認知症、アルツハイマー病患者に対して認知機能とADLの改善が報告されている。意欲・自発性の低下には[[塩酸アマンタジン]]、[[ニセルゴリン]]が有用である。[[三環系抗うつ薬]]は血圧変動のため白質病変を増悪する可能性や抗コリン作用の問題があり、抑うつには[[selective serotonin reuptake inhibitor]](SSRI)や[[serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor]](SNRI)を用いる。脳血管障害後遺症によるめまいには[[イブジラスト]]が有効である。血管性認知症の進行期には、嚥下障害が進行して誤嚥性肺炎をきたし易くなる。ACE阻害薬は咳漱反射を亢進させ誤嚥性肺炎の予防に有効である。また、塩酸アマンタジン、シロスタゾールも脳内[[ドーパミン]]、[[サブスタンスP]]を増加させるため、誤嚥性肺炎の予防に用いられる。  
 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の[[ドネペジル]]、[[ガランタミン]]、[[リバススチグミン]]、[[NMDA型グルタミン酸受容体]]拮抗薬の[[メマンチン]]が有効とする報告があるが、わが国では認められていない。[[wikipedia:ja:釣藤散|釣藤散]]は血管性認知症の認知機能改善効果がある。また、[[wikipedia:ja:八味地黄丸|八味地黄丸]]で血管性認知症や混合型認知症、アルツハイマー病患者に対して認知機能とADLの改善が報告されている。意欲・自発性の低下には[[塩酸アマンタジン]]、[[ニセルゴリン]]が有用である。[[三環系抗うつ薬]]は血圧変動のため白質病変を増悪する可能性や抗コリン作用の問題があり、抑うつには[[選択的セロトニン再取り込み阻害剤]](selective serotonin reuptake inhibitor, SSRI)や[[セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤]](serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor, SNRI)を用いる。脳血管障害後遺症によるめまいには[[イブジラスト]]が有効である。血管性認知症の進行期には、嚥下障害が進行して誤嚥性肺炎をきたし易くなる。ACE阻害薬は咳漱反射を亢進させ誤嚥性肺炎の予防に有効である。また、塩酸アマンタジン、シロスタゾールも脳内[[ドーパミン]]、[[サブスタンスP]]を増加させるため、誤嚥性肺炎の予防に用いられる。


== 参考文献  ==
== 参考文献  ==