「前庭動眼反射」の版間の差分

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== 動特性 ==
== 動特性 ==


 VORはslowの眼球運動である。通常0.1-1Hzの周波数で、刺激をする半規管の面に平行になるように頭を固定し、暗闇の中で回転台(ターンテーブル)を[[wikipedia:ja:正弦波|正弦波]]状に振動させてVORを誘発する。赤外線テレビカメラもしくは[[wikipedia:ja:サーチコイル|サーチコイル]]により、誘発された眼球運動を記録する。[[サッケード]]状の[[急速眼球運動]]、瞬きや遅いドリフトを除去し、VORに由来する眼球運動を抽出する。それをもとに、VORの利得(ゲイン)と位相差を算出する。図2にVORの計測の例を示す。前述のごとくVORは頭(台)とは逆方向に動きであるので、回転台と眼球運動のズレを、伝統的に位相の進み(phase advance)と呼ぶ(図2B)。  
 VORはslowの眼球運動である。通常0.1-1Hzの周波数で、刺激をする半規管の面に平行になるように頭を固定し、暗闇の中で回転台(ターンテーブル)を[[wikipedia:ja:正弦波|正弦波]]状に振動させてVORを誘発する。赤外線テレビカメラもしくは[[wikipedia:Search_coil|サーチコイル]]により、誘発された眼球運動を記録する。[[サッケード]]状の[[急速眼球運動]]、瞬きや遅いドリフトを除去し、VORに由来する眼球運動を抽出する。それをもとに、VORの利得(ゲイン)と位相差を算出する。図2にVORの計測の例を示す。前述のごとくVORは頭(台)とは逆方向に動きであるので、回転台と眼球運動のズレを、伝統的に位相の進み(phase advance)と呼ぶ(図2B)。  


 水平性のVORの動特性は魚([[wikipedia:ja:コイ|コイ]]、[[wikipedia:ja:キンギョ|キンギョ]])、[[wikipedia:ja:ニワトリ|ニワトリ]]、[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]、[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]、[[wikipedia:ja:ウサギ|ウサギ]]、ネコ、サルやヒトで測定されている。ゲインは動物種によってほぼ一定で周波数依存性はあまりない。サルでは1前後、ヒトでは0.8~0.9、ネコは0.6~0.8程度で。他の動物種では0.3~0.6程度である。図2Bにウサギの水平性VORの動特性を示す。垂直性のVORは、測定が水平性のVORに比べて大がかりになるので、あまり調べられていないが、ゲインは一般的に水平性VORのゲインより低い。位相差はゲインが高いところでは0度付近であり、ゲインが下がるにつれて進みが大きくなる<ref name="ref2" /> <ref name="ref3"><pubmed>6609085</pubmed></ref>。  
 水平性のVORの動特性は魚([[wikipedia:ja:コイ|コイ]]、[[wikipedia:ja:キンギョ|キンギョ]])、[[wikipedia:ja:ニワトリ|ニワトリ]]、[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]、[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]、[[wikipedia:ja:ウサギ|ウサギ]]、ネコ、サルやヒトで測定されている。ゲインは動物種によってほぼ一定で周波数依存性はあまりない。サルでは1前後、ヒトでは0.8~0.9、ネコは0.6~0.8程度で。他の動物種では0.3~0.6程度である。図2Bにウサギの水平性VORの動特性を示す。垂直性のVORは、測定が水平性のVORに比べて大がかりになるので、あまり調べられていないが、ゲインは一般的に水平性VORのゲインより低い。位相差はゲインが高いところでは0度付近であり、ゲインが下がるにつれて進みが大きくなる<ref name="ref2" /><ref name="ref3"><pubmed>6609085</pubmed></ref>。  


[[Image:図2VOR.jpg|thumb|250px|<b>図2.VORの測定法</b><br />(A)回転台の正弦波状回転により生じたアカゲザルの眼球運動。黒線は眼球位置データ。青線は眼球位置データから急速相とドリフトを除去したもの。&lt;span class=]]&lt;pubmed&gt;20674618&lt;/pubmed&gt;より改変。(B)VORのゲインと位相差。青線は平均眼球位置とレース。赤線は頭(台)の位置とレース。(C)オランダウサギ(□)と黒眼ウサギ(●)のVORの利得と位相。<ref name="ref3" />より改変。" class="fck_mw_frame fck_mw_right" /&gt;
[[Image:図2VOR.jpg|thumb|250px|<b>図2.VORの測定法</b><br />(A)回転台の正弦波状回転により生じたアカゲザルの眼球運動。黒線は眼球位置データ。青線は眼球位置データから急速相とドリフトを除去したもの。
<ref><pubmed>20674618</pubmed></ref>より改変。(B)VORのゲインと位相差。青線は平均眼球位置とレース。赤線は頭(台)の位置とレース。(C)オランダウサギ(□)と黒眼ウサギ(●)のVORの利得と位相。<ref name="ref3" />より改変。]]


== 小脳片葉によるゲインの適応制御  ==
== 小脳片葉によるゲインの適応制御  ==