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中脳周囲灰白質 (periaqueductal gray) | |||
解剖 | |||
第三脳室と第四脳室を結ぶ中脳水道を取り巻く細胞集団。水道周囲灰白質ともいう。中脳周囲灰白質の正中腹側部には、吻側からDarkschewisch核、Edinger-Westphal核 (エディンガー・ウェストファル核)(動眼神経副核)、動眼神経核、滑車神経核などが続く。その尾側にはセロトニン作動性ニューロンを豊富に含む背側縫線核が、腹外側部にはアセチルコリン作動性ニューロンを多く含む外背側被蓋核が拡がる。 | |||
線維連絡 | |||
求心性投射 | |||
大脳辺縁系(海馬、扁桃体)、視床下部、不確帯、分界条床核、脚傍核などから、情動や自律神経系の変化に伴う入力を受ける。上丘、下丘、脳幹網様体、三叉神経脊髄路核、脊髄などからは、感覚性の入力を受ける。(ラット、ネコ、ウサギなどは)一次運動野からの入力も受ける。興奮性入力としては、グルタミン酸作動性ニューロンが多いが、視床下部の結節乳頭核からは、ヒスタミン作動性、外側部からはオレキシン作動性ニューロンが投射する。脳幹網様体からは、青斑核を始め、いくつかのニューロン群(A1、A2、A5)から、ノルアドレナリン作動性入力を、C1、C2ニューロン群からアドレナリン作動性入力を、縫線核群からはセロトニン作動性入力を、外背側被蓋核や脚橋被蓋核からアセチルコリン作動性入力を受ける。 | |||
遠心性投射 | |||
視床下部、不確帯、脳幹網様体、上丘、外側脚傍核、縫線核群、脊髄などに投射する。さまざまな情報を統合して、適切な行動様式発現のための情報を脳幹網様体(おもに延髄)や脊髄に送る。また、これらの領域からは、いずれも求心性投射を受けており、密接な相互連絡が形成されている。 | |||
おもな神経伝達物質 | |||
PAGのニューロンは、以下のような物質を神経伝達物質/神経修飾物質として、含有する。 | |||
グルタミン酸、アスパラギン酸 | |||
GABA、グリシン | |||
エンケファリン、ダイノルフィン、サブスタンスP、コレシストキニン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ペプチド(CRF)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ニューロメディンB、ガラニン、LHRH、ACTH、一酸化窒素(NO) | |||
痛覚抑制作用 | |||
PAGから視床に投射する上行性抑制系と延髄に投射する下行性抑制系がある。上行性抑制系としては、背側縫線核からのセロトニン作動性ニューロンが、視床の腹側基底核群や髄板内核に投射し、痛覚の伝達を抑制している。 | |||
下行性抑制系は、背内側部(dmPAG)、腹外側部(vmPAG)から吻側延髄腹内側部 (rostroventromedial medulla; RVM) に投射する。主にグルタミン酸作動性であり、その一部は、ニューロテンシン(NT)を伝達物質にもつ<ref><pubmed>6132659</pubmed></ref>。(6132659 )。RVMには、セロトニン作動性ニューロンを含む大縫線核(Raphe Magnus: RMn)、非セロトニン作動性の巨大細胞網様核、傍巨大細胞網様核などが存在し、これらのニューロンが、脊髄後核の痛覚受容ニューロンを抑制する。PAGからの下行性抑制系は、RVMの脊髄投射ニューロンを活性化することによって、痛覚抑制を引き起こす。 | |||
これらのPAGニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けている<ref><pubmed> 11287471</pubmed></ref>(11287471)。視床下部から投射するβエンドルフィン作動性ニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンなどのオピエート系は、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより、痛覚抑制を引き起こす<ref><pubmed>1450948</pubmed></ref>、(1450948)。オピエート系と独立に、エンドカンナビノイド系も、このGABA作動性ニューロンの作用(GABA放出)を抑えることにより、痛覚抑制を引き起こすと考えられている。 たとえば、PAG内のニューロテンシン作動性ニューロンは、RMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンに興奮性に作用する<ref><pubmed>11287471</pubmed></ref>。一方、エンドカンナビノイドを介して、このニューロンへのGABA放出を抑制している<ref><pubmed>19359367</pubmed></ref>、(19359367)。サブスタンスP、コレシストキニンも、ニューロテンシンと同様のメカニズムで、痛覚抑制に関与する<ref><pubmed>19494144, 21525858</pubmed></ref>。(19494144, 21525858) | |||
痛覚抑制作用 | |||
上行性抑制系と下行性抑制系があり、上行性抑制系は、背側縫線核から視床腹側基底核群や髄板内核に投射するセロトニン作動性ニューロンが痛覚受容ニューロンの反応を抑制する(*****)。 視床髄板内核には、モルフィンが作用し、痛覚受容ニューロンの反応を抑制する(*****)。 | |||
下行性抑制系は、A5、A6、A7を起始とするノルアドレナリン作動性ニューロン群と、大縫線核(Raphe Magnus: RMn)からのセロトニン作動性ニューロン群からなり、いずれも、脊髄後核の痛覚受容ニューロンを抑制する。PAGの背内側部(dmPAG)、腹外側部(vmPAG)からRMnにグルタミン酸作動性ニューロンが投射する。このPAGニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けており<ref><pubmed>11287471</pubmed></ref>、視床下部から投射するβエンドルフィンニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンは、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより、痛覚抑制を引き起こす<ref><pubmed>1450948</pubmed></ref>。そのほか、PAGではさまざまなペプタイドが痛覚抑制に関与している。RMnに投射するPAGニューロンの一部は、ニューロテンシンを伝達物質にもち、RMnに興奮性に作用する<ref><pubmed>6518391</pubmed></ref>。ニューロテンシン作動性ニューロンは、PAG内の介在ニューロンとしても存在し、RMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンに興奮性に<ref><pubmed> 11287471</pubmed></ref>、GABA作動性ニューロンには抑制性に作用することによって<ref><pubmed> 19359367 </pubmed></ref>(19359367)痛覚抑制を起こす。 | |||
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2012年7月21日 (土) 14:47時点における版
中脳周囲灰白質 (periaqueductal gray)
解剖
第三脳室と第四脳室を結ぶ中脳水道を取り巻く細胞集団。水道周囲灰白質ともいう。中脳周囲灰白質の正中腹側部には、吻側からDarkschewisch核、Edinger-Westphal核 (エディンガー・ウェストファル核)(動眼神経副核)、動眼神経核、滑車神経核などが続く。その尾側にはセロトニン作動性ニューロンを豊富に含む背側縫線核が、腹外側部にはアセチルコリン作動性ニューロンを多く含む外背側被蓋核が拡がる。
線維連絡
求心性投射 大脳辺縁系(海馬、扁桃体)、視床下部、不確帯、分界条床核、脚傍核などから、情動や自律神経系の変化に伴う入力を受ける。上丘、下丘、脳幹網様体、三叉神経脊髄路核、脊髄などからは、感覚性の入力を受ける。(ラット、ネコ、ウサギなどは)一次運動野からの入力も受ける。興奮性入力としては、グルタミン酸作動性ニューロンが多いが、視床下部の結節乳頭核からは、ヒスタミン作動性、外側部からはオレキシン作動性ニューロンが投射する。脳幹網様体からは、青斑核を始め、いくつかのニューロン群(A1、A2、A5)から、ノルアドレナリン作動性入力を、C1、C2ニューロン群からアドレナリン作動性入力を、縫線核群からはセロトニン作動性入力を、外背側被蓋核や脚橋被蓋核からアセチルコリン作動性入力を受ける。
遠心性投射 視床下部、不確帯、脳幹網様体、上丘、外側脚傍核、縫線核群、脊髄などに投射する。さまざまな情報を統合して、適切な行動様式発現のための情報を脳幹網様体(おもに延髄)や脊髄に送る。また、これらの領域からは、いずれも求心性投射を受けており、密接な相互連絡が形成されている。
おもな神経伝達物質
PAGのニューロンは、以下のような物質を神経伝達物質/神経修飾物質として、含有する。 グルタミン酸、アスパラギン酸 GABA、グリシン エンケファリン、ダイノルフィン、サブスタンスP、コレシストキニン、ニューロテンシン、コルチコトロピン放出ペプチド(CRF)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ニューロメディンB、ガラニン、LHRH、ACTH、一酸化窒素(NO)
痛覚抑制作用
PAGから視床に投射する上行性抑制系と延髄に投射する下行性抑制系がある。上行性抑制系としては、背側縫線核からのセロトニン作動性ニューロンが、視床の腹側基底核群や髄板内核に投射し、痛覚の伝達を抑制している。 下行性抑制系は、背内側部(dmPAG)、腹外側部(vmPAG)から吻側延髄腹内側部 (rostroventromedial medulla; RVM) に投射する。主にグルタミン酸作動性であり、その一部は、ニューロテンシン(NT)を伝達物質にもつ[1]。(6132659 )。RVMには、セロトニン作動性ニューロンを含む大縫線核(Raphe Magnus: RMn)、非セロトニン作動性の巨大細胞網様核、傍巨大細胞網様核などが存在し、これらのニューロンが、脊髄後核の痛覚受容ニューロンを抑制する。PAGからの下行性抑制系は、RVMの脊髄投射ニューロンを活性化することによって、痛覚抑制を引き起こす。 これらのPAGニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けている[2](11287471)。視床下部から投射するβエンドルフィン作動性ニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンなどのオピエート系は、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより、痛覚抑制を引き起こす[3]、(1450948)。オピエート系と独立に、エンドカンナビノイド系も、このGABA作動性ニューロンの作用(GABA放出)を抑えることにより、痛覚抑制を引き起こすと考えられている。 たとえば、PAG内のニューロテンシン作動性ニューロンは、RMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンに興奮性に作用する[4]。一方、エンドカンナビノイドを介して、このニューロンへのGABA放出を抑制している[5]、(19359367)。サブスタンスP、コレシストキニンも、ニューロテンシンと同様のメカニズムで、痛覚抑制に関与する[6]。(19494144, 21525858)
痛覚抑制作用
上行性抑制系と下行性抑制系があり、上行性抑制系は、背側縫線核から視床腹側基底核群や髄板内核に投射するセロトニン作動性ニューロンが痛覚受容ニューロンの反応を抑制する(*****)。 視床髄板内核には、モルフィンが作用し、痛覚受容ニューロンの反応を抑制する(*****)。
下行性抑制系は、A5、A6、A7を起始とするノルアドレナリン作動性ニューロン群と、大縫線核(Raphe Magnus: RMn)からのセロトニン作動性ニューロン群からなり、いずれも、脊髄後核の痛覚受容ニューロンを抑制する。PAGの背内側部(dmPAG)、腹外側部(vmPAG)からRMnにグルタミン酸作動性ニューロンが投射する。このPAGニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けており[7]、視床下部から投射するβエンドルフィンニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンは、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより、痛覚抑制を引き起こす[8]。そのほか、PAGではさまざまなペプタイドが痛覚抑制に関与している。RMnに投射するPAGニューロンの一部は、ニューロテンシンを伝達物質にもち、RMnに興奮性に作用する[9]。ニューロテンシン作動性ニューロンは、PAG内の介在ニューロンとしても存在し、RMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンに興奮性に[10]、GABA作動性ニューロンには抑制性に作用することによって[11](19359367)痛覚抑制を起こす。
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Mitchell, V.A., Kawahara, H., & Vaughan, C.W. (2009).
Neurotensin inhibition of GABAergic transmission via mGluR-induced endocannabinoid signalling in rat periaqueductal grey. The Journal of physiology, 587(Pt 11), 2511-20. [PubMed:19359367] [PMC] [WorldCat] [DOI]