「シナプス後肥厚」の版間の差分

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 免疫電子顕微鏡による観察からは、様々なPSD蛋白質が膜直下から鉛直方向に層構造を作っていること、また、シナプス中心から水平方向に周辺部に向かっても蛋白質それぞれの分布をしていることが知られている。  
 免疫電子顕微鏡による観察からは、様々なPSD蛋白質が膜直下から鉛直方向に層構造を作っていること、また、シナプス中心から水平方向に周辺部に向かっても蛋白質それぞれの分布をしていることが知られている。  


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== 分子構造のダイナミクス  ==
 岡部らはPSDのコア蛋白質であるPSD-95をGFP融合蛋白とし、神経細胞に導入した上で、継時観察を行った。それによると、PSDは常に形態的に変化していることが判った。さらに、一個のPSDに存在するPSD-95-GFPの蛍光を褪色させて、その回復を測定することによりPSD-95のturnoverを観察した。その結果、PSDに存在するPSD-95は早いturnoverを示す成分(数十分の単位)と1時間程度の観察ではほとんどturnoverが認められない2つの成分が有ることが判った。様々な蛋白質についてさらに検討を加えた所、蛋白質によってアクチンのように殆どの分子が数分以内に入れ替わる分子もある一方で、PSD-95のように遅い分子も有ることが判った。PSDの蛋白質は樹状突起から供給されるのに加え、隣りのシナプスからも供給される。
 
 分子のturnoverの速度を規定しているのは、その蛋白質の分子量と形状により影響される拡散速度に加え、結合部位の存在や蛋白質の修飾などが深く関わっているものと考えられる。また、この移行が、拡散による能動的な過程か、あるいはモーター蛋白質を利用した受動的過程は判っていないが、おそらく両者が有るものと考えられる。
 
 同じ蛋白質で早い成分と遅い成分が有るとき、それらがPSDでいかに配置されているかは興味深い問題であるが、これもまだ明らかにされていない。


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 神経活動依存的なAMPA型グルタミン酸受容体のシナプスへの移行がシナプス可塑性の主要な機構であり、その裏打ち構造であるPSDがいかに変化するかはシナプス可塑性の分子機構を理解するのに重要である。神経活動依存的なシナプスへの移行はCaMKIIで初めて見いだされ、これはCa2+/calmodulinによるキナーゼ活性の活性化による。しかし、数百に及ぶPSD構成要素がいかにシナプス可塑性で変化していくかの全体像はまだ得られていない。


== 分子構造のダイナミクス  ==
==将来展望==
 当初、PSDの観察に用いられてきた電子顕微鏡は、生組織に用いることが出来ないと言う大きな欠点が有った。一方で、光学顕微鏡は生組織を観察できるが、分解能に限度が有り、PSDの詳しい構造はみることが出来ない。最近、超高解像度顕微鏡と呼ばれる技術が開発され、100 nm以下の分解能で構造を観察することが出来るようになりつつ有る。まだ、光褪色などの問題を抱えるが、将来的には生細胞でのPSD動態観察に応用可能であると期待される。


== 参考文献  ==
== 参考文献  ==