「概念形成」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
21行目: 21行目:


=== 各論 ===
=== 各論 ===
 ヒトを対象とした機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた研究からも、概念学習で生じる脳活動の変化には皮質や基底核等の複数の領域が関与すること等、動物実験の結果を支持する報告がなされている<ref name="Seger2010" />。Chaoらは、概念学習で生じる脳活動の変化を捉えるために、健常成人に対して動物や道具のモノクロ写真を提示し、その4日後に命名課題を行っている際のfMRI信号を記録、解析した。その結果、事前に見た写真では、腹側経路の物体認知に関わる脳活動がより強く生じ、その中でも動物と道具という異なるカテゴリーでは、それぞれ右上側頭回、紡錘状回に特徴的な活動が観察できた<ref name="Chao01"><pubmed>11950772</pubmed></ref>。また、Mahonらは、様々なカテゴリーの写真を見せ、同一カテゴリー内の単語を提示しその対象の大きさを判断させるといった課題を用いてfMRI実験を行った。健常被験者と先天盲の被験者を用いたところ、健常被験者では視覚を用いた課題の遂行時に活動が観察された腹側後頭側頭皮質が、先天盲の被験者では聴覚を用いた課題の遂行時に活動することが明らかになった <ref name="Mahon_03"><pubmed>19679078</pubmed></ref>。さらに、視覚等の単感覚入力だけでなく視覚と聴覚といった複数の感覚入力を統合させ概念を形成する過程を評価した研究から、より広範囲の多感覚野が関与することが示唆されている<ref name="Bushara2003"><pubmed>12496761</pubmed></ref>。このように、神経画像手法、特にfMRIの出現により、ヒトの脳内機構に対する実験的研究が可能となり、多くの研究が行われている。このfMRIは全脳からの信号計測が可能であること等から、より広範囲の脳領域の関わりが着目されている。
 ヒトを対象とした機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた研究からも、概念学習で生じる脳活動の変化には皮質や基底核等の複数の領域が関与すること等、動物実験の結果を支持する報告がなされている<ref name="Seger2010" />。Chaoらは、概念学習で生じる脳活動の変化を捉えるために、健常成人に対して動物や道具のモノクロ写真を提示し、その4日後に命名課題を行っている際のfMRI信号を記録、解析した。その結果、事前に見た写真では、腹側経路の物体認知に関わる脳活動がより強く生じ、その中でも動物と道具という異なるカテゴリーでは、それぞれ右上側頭回、紡錘状回に特徴的な活動が観察できた<ref name="Chao01"><pubmed>11950772</pubmed></ref>。また、Mahonらは、様々なカテゴリーの写真を見せ、同一カテゴリー内の単語を提示しその対象の大きさを判断させるといった課題を用いてfMRI実験を行った。健常被験者と先天盲の被験者を用いたところ、健常被験者では視覚を用いた課題の遂行時に活動が観察された腹側後頭側頭皮質が、先天盲の被験者では聴覚を用いた課題の遂行時に活動することが明らかになった <ref name="Mahon_03"><pubmed>19679078</pubmed></ref>。さらに、視覚等の単感覚入力だけでなく視覚と聴覚といった複数の感覚入力を統合させ概念を形成する過程を評価した研究から、より広範囲の多感覚野が関与することが示唆されている<ref name="Bushara2003"><pubmed>12496761</pubmed></ref>。このように、神経画像手法、特にfMRIの出現により、ヒトの脳内機構に対する実験的研究が可能となり、多くの研究が行われている。fMRIは全脳からの信号計測が可能であること等から、より広範囲の脳領域の関わりが着目されている。




44

回編集