「錐体細胞」の版間の差分

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 大脳皮質の錐体細胞は、脳スライス標本(in vitro)やin vivo条件の電気生理記録から得られた発火パターンから、いくつかのサブタイプに分けられてきた<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref> <ref name="ref9"><pubmed>2999347</pubmed></ref> <ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref> (図3)。  
 大脳皮質の錐体細胞は、脳スライス標本(in vitro)やin vivo条件の電気生理記録から得られた発火パターンから、いくつかのサブタイプに分けられてきた<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref> <ref name="ref9"><pubmed>2999347</pubmed></ref> <ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref> (図3)。  


 最も多く見られるのは、脱分極パルスに対して等間隔で規則的に発火するregular spiking(RS) 細胞であり、[[wikipedia:Vernon Benjamin Mountcastle|Mountcastle]]によって名づけられた<ref name="ref11"><pubmed>4977839</pubmed></ref>。RS細胞は、閾値以上の電流注入に対して持続的な反復発火で応答し、その注入電流と発火頻度は線形に相関していることから<ref name="ref12"><pubmed>6087761</pubmed></ref> <ref name="ref13"><pubmed>6481432</pubmed></ref>、細胞への入力の時間情報などを運ぶのに適すると考えられる。持続通電中に発火頻度が徐々に落ちる適応(accommodation)の程度によってさらにサブグループに分けられることもある<ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref><ref name="ref14"><pubmed>12626627</pubmed></ref><ref name="ref15"><pubmed>8395586</pubmed></ref>。  
 最も多く見られるのは、脱分極パルスに対して等間隔で規則的に発火するregular spiking(RS) 細胞であり、[[wikipedia:Vernon Benjamin Mountcastle|Mountcastle]]によって名づけられた<ref name="ref11"><pubmed>4977839</pubmed></ref>。RS細胞は、閾値以上の電流注入に対して持続的な反復発火で応答し、その注入電流と発火頻度は線形に相関していることから<ref name="ref12"><pubmed>6087761</pubmed></ref> <ref name="ref13"><pubmed>6481432</pubmed></ref>、細胞への入力の時間情報などを運ぶのに適すると考えられる。持続通電中に発火頻度が徐々に落ちる適応(accommodation)の程度によってさらにサブグループに分けられることもある<ref name="ref10"><pubmed>1729440</pubmed></ref> <ref name="ref14"><pubmed>12626627</pubmed></ref> <ref name="ref15"><pubmed>8395586</pubmed></ref>。  


 Intrinsically Bursting(IB)細胞は、脱分極パルスに対して高頻度で連続発火し<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref>、特に閾値より少し上の電流注入に対しては顕著な脱分極に乗った3-5発のバースト発火(約200Hz)を示すのが特徴である。  
 Intrinsically Bursting(IB)細胞は、脱分極パルスに対して高頻度で連続発火し<ref name="ref8"><pubmed>6296328</pubmed></ref>、特に閾値より少し上の電流注入に対しては顕著な脱分極に乗った3-5発のバースト発火(約200Hz)を示すのが特徴である。  
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 このような発火パターンは、細胞膜上のNa, K, Ca等の[[イオンチャネル]]の発現を反映している。IB細胞やFRB細胞においては、注入電流と発火頻度の関係は非線形な相関であり入力-出力の関係はRS細胞とは異なる。  
 このような発火パターンは、細胞膜上のNa, K, Ca等の[[イオンチャネル]]の発現を反映している。IB細胞やFRB細胞においては、注入電流と発火頻度の関係は非線形な相関であり入力-出力の関係はRS細胞とは異なる。  


 電気生理的特性は、他の特徴とも関係していることが知られている。上述の三種の錐体細胞は大脳皮質2-6層に存在するが、IB細胞は5層に多く<ref name="ref18"><pubmed>1691879</pubmed></ref> <ref name="ref19"><pubmed>14614077</pubmed></ref>、FRB細胞は2-4層に多い。5層のIB細胞は同層のRS細胞と比べて細胞体が大きく、樹状突起を広く伸ばしており、軸索は5-6層で分枝する。これに対して、RS細胞は細胞体や樹状突起の分枝範囲が小さく、軸索は1-4層で分枝する<ref name="ref20"><pubmed>2585046</pubmed></ref>。皮質内・皮質下から皮質へ層特異的な入力があることから、各サブタイプの錐体細胞は異なる入力を受ける可能性がある。また、RS細胞とIB細胞は皮質内で構成する神経回路や投射先が異なる<ref name="ref21"><pubmed>11331387</pubmed></ref> <ref name="ref22"><pubmed>15248197</pubmed></ref> <ref name="ref23"><pubmed>17124287</pubmed></ref>。錐体細胞の投射先や形態、発火様式などの特徴はそれぞれに相関しており、各サブタイプの入出力特性の違いや結合特異性の差異から、これらのサブタイプは機能的に異なる役割を果たすと考えられている。  
 電気生理的特性は、他の特徴とも関係していることが知られている。上述の三種の錐体細胞は大脳皮質2-6層に存在するが、IB細胞は5層に多く<ref name="ref18"><pubmed>1691879</pubmed></ref> <ref name="ref19"><pubmed>14614077</pubmed></ref>、FRB細胞は2-4層に多い。5層のIB細胞は同層のRS細胞と比べて細胞体が大きく、樹状突起を広く伸ばしており、軸索は5-6層で分枝する。これに対して、RS細胞は細胞体や樹状突起の分枝範囲が小さく、軸索は1-4層で分枝する<ref name="ref20"><pubmed>2585046</pubmed></ref>。皮質内・皮質下から皮質へ層特異的な入力があることから、各サブタイプの錐体細胞は異なる入力を受ける可能性がある。また、RS細胞とIB細胞は皮質内で構成する神経回路や投射先が異なる<ref name="ref21"><pubmed>11331387</pubmed></ref> <ref name="ref22"><pubmed>15248197</pubmed></ref> <ref name="ref23"><pubmed>17124287</pubmed></ref>。錐体細胞の投射先や形態、発火様式などの特徴はそれぞれに相関しており、各サブタイプの入出力特性の違いや結合特異性の差異から、これらのサブタイプは機能的に異なる役割を果たすと考えられている。


== 発生・分化  ==
== 発生・分化  ==