「遅いシナプス後電位」の版間の差分

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== 先駆的研究について  ==
== 先駆的研究について  ==


[[Image:Taroishikawa fig 1.jpg|thumb|right|400px|'''ウシガエル交感神経節における4種類のシナプス応答'''<BR> A. (左)速い興奮性シナプス後電位、(右)閾値を超えて活動電位を発火している。B. 遅い抑制性シナプス後電位。 C. 遅いシナプス後電位。D. 後期の遅いシナプス電位。Kuffler(1980)<ref name=ref12/>より許可を得て転載。]] 遅いシナプス電位については、1950年代から1980年代にかけて、[[wikipedia:ja:ウシガエル|ウシガエル]]の交感神経節([[wikipedia:Sympathetic ganglion|Sympathetic ganglion]])を用いた研究で多くの事実が明らかにされた。このシナプスでは、ニコチン型[[wikipedia:jp:アセチルコリン受容体|アセチルコリン受容体]]を介した速い興奮性シナプス電位の他に、ムスカリン型アセチルコリン受容体を介した遅い抑制性電位と興奮性電位があり、さらに、LHRH-like peptideによる後期の遅いシナプス電位late slow synaptic potentialがあることが明らかにされた<ref><pubmed>35789</pubmed></ref><ref name="ref12"><pubmed>6110694</pubmed></ref>。これらの発見の経緯は久場による総説<ref>'''久場健司'''<BR>興奮膜とシナプス生理学の黎明の頃―纐纈教三先生の研究史を辿りながら<BR>''日本生理学雑誌'': 2007, 69(12): 362-377[http://physiology.jp/exec/nisseishi/backnumber/151 日本生理学雑誌 第69巻 12号]</ref>に詳しい。
[[Image:Taroishikawa fig 1.jpg|thumb|right|400px|'''ウシガエル交感神経節における4種類のシナプス応答'''<BR> A. (左)速い興奮性シナプス後電位、(右)閾値を超えて活動電位を発火している。B. 遅い抑制性シナプス後電位。 C. 遅いシナプス後電位。D. 後期の遅いシナプス電位。Kuffler(1980)<ref name=ref12/>より許可を得て転載。]] 遅いシナプス電位については、1950年代から1980年代にかけて、[[wikipedia:ja:ウシガエル|ウシガエル]]の交感神経節([[wikipedia:Sympathetic ganglion|Sympathetic ganglion]])を用いた研究で多くの事実が明らかにされた。このシナプスでは、ニコチン性[[wikipedia:jp:アセチルコリン受容体|アセチルコリン受容体]]を介した速い興奮性シナプス電位の他に、ムスカリン性アセチルコリン受容体を介した遅い抑制性電位と興奮性電位があり、さらに、LHRH-like peptide(哺乳動物の[[wikipedia:jp:性腺刺激ホルモン放出ホルモン|LHRH]]に類似したペプチド)による後期の遅いシナプス電位late slow synaptic potentialがあることが明らかにされた<ref><pubmed>35789</pubmed></ref><ref name="ref12"><pubmed>6110694</pubmed></ref>。これらの発見の経緯は久場による総説<ref>'''久場健司'''<BR>興奮膜とシナプス生理学の黎明の頃―纐纈教三先生の研究史を辿りながら<BR>''日本生理学雑誌'': 2007, 69(12): 362-377[http://physiology.jp/exec/nisseishi/backnumber/151 日本生理学雑誌 第69巻 12号]</ref>に詳しい。
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== 伝達物質と受容体の種類  ==
== 伝達物質と受容体の種類  ==


速いシナプス伝達を担うイオンチャネル共役型受容体はそれ自体にイオンが透過する孔(pore)を持っているのに対し、遅いシナプス伝達を担う代謝型受容体はそれ自体にはイオンチャンネルとしての機能はなく、細胞内シグナル伝達を介してイオンチャンネルに働きかけることによって膜電位に影響を与える。神経系において遅いシナプス伝達を担う代謝型受容体の殆どは[[wikipedia:ja:Gタンパク質共役受容体|Gタンパク質共役受容体]](G-protein coupled receptors <ref>'''Bertil Hille'''<BR>G protein-coupled receptor<BR>''Scholarpedia'': 2009, 4(12):8214 [http://www.scholarpedia.org/article/G_protein-coupled_receptor Scholarpedia]</ref>)である。 神経系に存在する主なGタンパク質共役受容体としては、代謝型グルタミン酸受容体、GABA受容体(B型)、ドーパミン受容体、セロトニン(5-HT)受容体(3型を除く)、アドレナリン受容体、アデノシン受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、カンナビノイド受容体 、ヒスタミン受容体、P2Y受容体(ATPなどプリンヌクレオチドの受容体)があり、各々のリガンドにより活性化される。 また、神経栄養因子(BDNF等)がその受容体(TrkB等)を介した細胞内シグナル伝達によって膜電位を変化させることもある<ref><pubmed>12671646</pubmed></ref>。<br>  
速いシナプス伝達を担うイオンチャネル型受容体はそれ自体にイオンが透過する孔(pore)を持っているのに対し、遅いシナプス伝達を担う代謝型受容体はそれ自体には[[wikipedia:jp:イオンチャンネル|イオンチャンネル]]としての機能はなく、[[wikipedia:jp:シグナル伝達#細胞内シグナル伝達|細胞内シグナル伝達]]を介してイオンチャンネルに働きかけることによって[[wikipedia:jp:膜電位|膜電位]]に影響を与える。神経系において遅いシナプス伝達を担う代謝型受容体の殆どは[[wikipedia:ja:Gタンパク質共役受容体|Gタンパク質共役受容体]](G-protein coupled receptors <ref>'''Bertil Hille'''<BR>G protein-coupled receptor<BR>''Scholarpedia'': 2009, 4(12):8214 [http://www.scholarpedia.org/article/G_protein-coupled_receptor Scholarpedia]</ref>)である。 神経系に存在する主なGタンパク質共役受容体としては、代謝型[[wikipedia:jp:グルタミン酸受容体|グルタミン酸受容体]]([[wikipedia:Metabotropic glutamate receptor|metabotropic glutamate receptor]])、[[GABA受容体]](B型)([[wikipedia:GABAB receptor|GABA<sub>B</sub> receptor]])、[[wikipedia:jp:ドーパミン受容体|ドーパミン受容体]]([[wikipedia:Dopamine receptor|dopamine receptor]])、[[セロトニン#セロトニン受容体|セロトニン(5-HT)受容体]]([[wikipedia:5-HT receptor|serotonin receptor]])(3型を除く)、[[wikipedia:jp:アドレナリン受容体|アドレナリン受容体]]([[wikipedia:Adrenergic receptor|adrenergic receptor]])、[[wikipedia:jp:アデノシン受容体|アデノシン受容体]]([[wikipedia:Adenosine receptor|adenosine receptor]])、[[wikipedia:jp:アセチルコリン受容体#ムスカリン受容体|ムスカリン性アセチルコリン受容体]]([[wikipedia:Muscarinic acetylcholine receptor|muscarinic acetylcholine receptor]])、[[wikipedia:jp:アナンダミド#カンナビノイド受容体|カンナビノイド受容体]]([[wikipedia:Cannabinoid receptor|cannabinoid receptor]])、[[wikipedia:jp:ヒスタミン受容体|ヒスタミン受容体]]([[wikipedia:Histamine receptor|histamine receptor]])、[[wikipedia:jp:P2受容体ファミリー|P2Y受容体]]([[wikipedia:P2Y receptor|P2Y receptor]])があり、各々の[[wikipedia:jp:リガンド|リガンド]]により活性化される。 また、[[wikipedia:jp:神経栄養因子|神経栄養因子]]([[wikipedia:jp:脳由来神経栄養因子|BDNF]]等)がその受容体([[wikipedia:TrkB receptor|TrkB]]等)を介した細胞内シグナル伝達によって膜電位を変化させることもある<ref><pubmed>12671646</pubmed></ref>。<br>  


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