「視覚系の発生」の版間の差分

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[[Image:9 視覚系の発生.png|thumb|280px|<b>図9.眼杯のパターン形成と水晶体胞に分化に関わる分子の存在部位</b><br />A, 初期眼胞期; B, 後期眼胞期;C, 眼杯期。文献<ref name=ref6 />の図を改変。<br> TGFβ: Transforming Growth Factor β<br> FGF: Fibroblast Growth Factor<br> CHX10(VSX2): Visual system homeobox 2 <br> MITF: Microphthalmia-associated transcription factor<br> PAX6: Paired homebox-6 <br>SOX2: SRY (sex determining region Y)-box 2 <br>LMAF: <br>SIX3: Sine oculis-related homeobox-3 <br>PROX1: Prospero homeobox protein 1 <br>BMP4: Bone morphogenetic protein 4]]
[[Image:9 視覚系の発生.png|thumb|280px|<b>図9.眼杯のパターン形成と水晶体胞に分化に関わる分子の存在部位</b><br />A, 初期眼胞期; B, 後期眼胞期;C, 眼杯期。文献<ref name=ref6 />の図を改変。<br> TGFβ: Transforming Growth Factor β<br> FGF: Fibroblast Growth Factor<br> CHX10(VSX2): Visual system homeobox 2 <br> MITF: Microphthalmia-associated transcription factor<br> PAX6: Paired homebox-6 <br>SOX2: SRY (sex determining region Y)-box 2 <br>LMAF: lens-specific Maf <br>SIX3: Sine oculis-related homeobox-3 <br>PROX1: Prospero homeobox protein 1 <br>BMP4: Bone morphogenetic protein 4]]


 眼胞から眼杯が形成されるときに、将来、光を受容して情報処理を行う神経網膜領域と網膜色素上皮(Retinal Pigment Epithelium: RPE)の領域が決まってくる。これには、細胞非自律的な組織間相互作用によるしくみと細胞自律的なしくみの2つが関わっている。眼胞に隣接した表皮外胚葉からの[[線維芽細胞増殖因子]]([[Fibroblast Growth Factor]]: [[FGF]])が、神経網膜の分化を促し、眼周囲間葉から分泌される[[形質転換増殖因子β]]([[Transforming Growth Factor β]]:[[TGFβ]])ファミリー分子がRPEの分化を促す(図9)。これら分泌因子の作用を受けて、予定神経網膜領域にはChx10 ([[Vsx2]]と同じ)などの転写因子が遺伝子発現するようになり、一方、予定RPE領域には[[Mitf]]などが発現するようになり、それぞれの分化が細胞自律的なしくみで進行する。[[Chx10]]はocular retardation (or) 変異マウスの原因遺伝子であり、Mitfはmicrophthalmia (mi) 変異マウスの原因遺伝子である。最近、マウスの[[胚性幹細胞]]([[ES細胞]])由来の上皮シートから三次元培養により眼杯が形成された<ref name="ref8"><pubmed>21475194</pubmed></ref>。培養皿で形成された眼杯において、神経網膜とRPEとが分化することが示された。このことは、眼杯のパターン形成と網膜細胞の分化が周囲の組織の介在なしに自律的に進行することを示している。  
 眼胞から眼杯が形成されるときに、将来、光を受容して情報処理を行う神経網膜領域と網膜色素上皮(Retinal Pigment Epithelium: RPE)の領域が決まってくる。これには、細胞非自律的な組織間相互作用によるしくみと細胞自律的なしくみの2つが関わっている。眼胞に隣接した表皮外胚葉からの[[線維芽細胞増殖因子]]([[Fibroblast Growth Factor]]: [[FGF]])が、神経網膜の分化を促し、眼周囲間葉から分泌される[[形質転換増殖因子β]]([[Transforming Growth Factor β]]:[[TGFβ]])ファミリー分子がRPEの分化を促す(図9)。これら分泌因子の作用を受けて、予定神経網膜領域にはChx10 ([[Vsx2]]と同じ)などの転写因子が遺伝子発現するようになり、一方、予定RPE領域には[[Mitf]]などが発現するようになり、それぞれの分化が細胞自律的なしくみで進行する。[[Chx10]]はocular retardation (or) 変異マウスの原因遺伝子であり、Mitfはmicrophthalmia (mi) 変異マウスの原因遺伝子である。最近、マウスの[[胚性幹細胞]]([[ES細胞]])由来の上皮シートから三次元培養により眼杯が形成された<ref name="ref8"><pubmed>21475194</pubmed></ref>。培養皿で形成された眼杯において、神経網膜とRPEとが分化することが示された。このことは、眼杯のパターン形成と網膜細胞の分化が周囲の組織の介在なしに自律的に進行することを示している。