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== 電位依存性塩素チャネル(ClCチャネル) == | == 電位依存性塩素チャネル(ClCチャネル) == | ||
ClCチャネルをコードする遺伝子は、Jentschらによりシビレエイ(学名 ''Torpedo marmorata'')の発電器官からクローニングされ、Clc-0と命名された(Jentsch et al, 1990, Nature<ref><pubmed>2174129</pubmed></ref>)。現在ほ乳類では9種類の遺伝子(ヒト:''CLCN1, CLCN2, CLCN3, CLCN4, CLCN5, CLCN6, CLCN7, CLCNKA, CLCNKB'')が同定されている。 X線結晶構造解析から同定された全てのClCチャネルの基本構造(右図)は共通し、18のセグメントで構成された複雑なトポロジーを持つ。ClCチャネルは、1つのポアをもつサブユニットタンパク質が2つ会合して二量体を形成するため、計2つのポアを有するDouble-barreledチャネルである。各ポアはイオン選択性やコンダクタンスなどの特性を保持しており、他方のポアの開閉状態に関わらず独立して開閉する。一方で2つのポアは同時にも機能しうる。真核生物のClCタンパク質のC末端には、タンパク質-タンパク質相互作用やチャネルの活性に重要な役割を持つ2つのcystathionine-&beta-synthase (CBS) ドメインが存在する。 | ClCチャネルをコードする遺伝子は、Jentschらによりシビレエイ(学名 ''Torpedo marmorata'')の発電器官からクローニングされ、Clc-0と命名された(Jentsch et al, 1990, Nature<ref><pubmed>2174129</pubmed></ref>)。現在ほ乳類では9種類の遺伝子(ヒト:''CLCN1, CLCN2, CLCN3, CLCN4, CLCN5, CLCN6, CLCN7, CLCNKA, CLCNKB'')が同定されている。[[ファイル:ClC.jpg]] X線結晶構造解析から同定された全てのClCチャネルの基本構造(右図)は共通し、18のセグメントで構成された複雑なトポロジーを持つ。ClCチャネルは、1つのポアをもつサブユニットタンパク質が2つ会合して二量体を形成するため、計2つのポアを有するDouble-barreledチャネルである。各ポアはイオン選択性やコンダクタンスなどの特性を保持しており、他方のポアの開閉状態に関わらず独立して開閉する。一方で2つのポアは同時にも機能しうる。真核生物のClCタンパク質のC末端には、タンパク質-タンパク質相互作用やチャネルの活性に重要な役割を持つ2つのcystathionine-&beta-synthase (CBS) ドメインが存在する。 | ||
== カルシウム依存性塩素チャネル == | == カルシウム依存性塩素チャネル == | ||
[[ファイル:CaCC.jpg]] | |||
=== CLCAチャネル === | === CLCAチャネル === | ||
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== CFTR == | == CFTR == | ||
[[ファイル:CFTR.jpg]] | |||
CFTRは12回膜貫通型糖タンパク質であり、6 個の疎水性膜貫通構造と 2 個の ATP 結合部(nucleotide-binding domain, NBD)および PKA によるリン酸化を受ける調節(R)ドメインの繰り返しモチーフから構成される。Rドメインがリン酸化を受けた状態でNBDの二量体化に伴ってチャネルゲートが開き、NBD二量体の解離によってチャネルゲートが閉じると考えられている。 | CFTRは12回膜貫通型糖タンパク質であり、6 個の疎水性膜貫通構造と 2 個の ATP 結合部(nucleotide-binding domain, NBD)および PKA によるリン酸化を受ける調節(R)ドメインの繰り返しモチーフから構成される。Rドメインがリン酸化を受けた状態でNBDの二量体化に伴ってチャネルゲートが開き、NBD二量体の解離によってチャネルゲートが閉じると考えられている。 | ||
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基本的に塩素チャネルは齧歯類の脳でユビキタスに発現する。ClC-2は大脳皮質、海馬、嗅球や小脳における大型ニューロンに強く発現する(Clayton et al, 1998)。ClC-3は海馬、小脳、嗅球に強く発現する(Kawasaki et al, 1994)。マウスClCaファミリーは嗅球に特徴的な強い発現がみられる(Piirsoo et al, 2009) 。 | 基本的に塩素チャネルは齧歯類の脳でユビキタスに発現する。ClC-2は大脳皮質、海馬、嗅球や小脳における大型ニューロンに強く発現する(Clayton et al, 1998)。ClC-3は海馬、小脳、嗅球に強く発現する(Kawasaki et al, 1994)。マウスClCaファミリーは嗅球に特徴的な強い発現がみられる(Piirsoo et al, 2009) 。 | ||
{| | {| border="1" cellspacing="1" cellpadding="1" width="1000" | ||
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| 遮断薬(阻害剤) | | 遮断薬(阻害剤) | ||
| シングルチャネル<br>コンダクタンス (pS) | | シングルチャネル<br>コンダクタンス (pS) | ||
| イオン選択性<br> | | イオン選択性<br> | ||
| 関連するヒトの疾患 | | 関連するヒトの疾患 | ||
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114行目: | 114行目: | ||
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| CLC | | CLC | ||
| 9AC<br>CPP<br>クロロトキシン<br>ジフェニルホスフィン酸クロリド<br>DIDS<br>IAA-94<br>NPPB<br>ニフルミン酸<br>タモキシフェン<br> | | 9AC<br>CPP<br>クロロトキシン<br>ジフェニルホスフィン酸クロリド<br>DIDS<br>IAA-94<br>NPPB<br>ニフルミン酸<br>タモキシフェン<br> | ||
| 1-9 | | 1-9 | ||
| Cl- > Br- > I- | | Cl- > Br- > I- | ||
128行目: | 128行目: | ||
※ 注釈 9AC:9-アントラセンカルボン酸 (9-anthracene-carboxylic acid) CPP:3-(4-クロロフェノキシ)プロパン酸 (p-chlorophenoxy-propionic acid) DCPIB:4-(2-butyl-6,7-dichloro-2-cyclopentylindan-1-on-5-yl)oxybutyric acid DIDS:4,4-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2-ジスルホン酸, 二ナトリウム塩(4,4′-Diisothiocyanatostilbene-2,2′-disulfonic acid disodium salt hydrate) DNDS:4,4'-ジニトロスチルベン-2,2'-ジスルホン酸二ナトリウム(4,4'-dinitrostilbene-2,2'-disulfonate) NPPB:2-[(3-フェニルプロピル)アミノ]-5-ニトロ安息香 (Nitro-2-(3-phenylpropylamino)benzoic acid) SITS:4-アセチルアミノ-4'-イソチオシアナトスチルベン-2,2'-ジスルホン酸ジナトリウム(4-Acetamido-4′-isothiocyanato-2,2′-stilbenedisulfonic acid disodium salt hydrate) THIP:4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-3(2H)-オン•塩酸塩(4,5,6,7-Tetrahydroisoxazolo[5,4-c]pyridin-3-ol hydrochloride) TPMPA:(1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)メチルホスフィン酸((1,2,5,6-Tetrahydropyridin-4-yl)methylphosphinic acid) | ※ 注釈 9AC:9-アントラセンカルボン酸 (9-anthracene-carboxylic acid) CPP:3-(4-クロロフェノキシ)プロパン酸 (p-chlorophenoxy-propionic acid) DCPIB:4-(2-butyl-6,7-dichloro-2-cyclopentylindan-1-on-5-yl)oxybutyric acid DIDS:4,4-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2-ジスルホン酸, 二ナトリウム塩(4,4′-Diisothiocyanatostilbene-2,2′-disulfonic acid disodium salt hydrate) DNDS:4,4'-ジニトロスチルベン-2,2'-ジスルホン酸二ナトリウム(4,4'-dinitrostilbene-2,2'-disulfonate) NPPB:2-[(3-フェニルプロピル)アミノ]-5-ニトロ安息香 (Nitro-2-(3-phenylpropylamino)benzoic acid) SITS:4-アセチルアミノ-4'-イソチオシアナトスチルベン-2,2'-ジスルホン酸ジナトリウム(4-Acetamido-4′-isothiocyanato-2,2′-stilbenedisulfonic acid disodium salt hydrate) THIP:4,5,6,7-テトラヒドロイソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン-3(2H)-オン•塩酸塩(4,5,6,7-Tetrahydroisoxazolo[5,4-c]pyridin-3-ol hydrochloride) TPMPA:(1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)メチルホスフィン酸((1,2,5,6-Tetrahydropyridin-4-yl)methylphosphinic acid) | ||
<br> 参考文献 | <br>参考文献 |
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