「GSK-3β」の版間の差分
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英語名:Glycogen synthase kinase 3β 英略称:GSK-3β | 英語名:Glycogen synthase kinase 3β 英略称:GSK-3β | ||
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK)は、[[wikipedia:ja:プロリン|プロリン]]指向性[[wikipedia:ja:セリン|セリン]]/[[wikipedia:ja:スレオニン|スレオニン]][[タンパク質リン酸化酵素|リン酸化酵素]]のひとつであり、最初に[[wikipedia:ja:グリコーゲン合成酵素|グリコーゲン合成酵素]]を[[リン酸化]]して不活化する酵素として見出された。そのうちGSK-3βは、[[Wnt]], [[Shh]]などの[[シグナル伝達]]の制御に関与しており、[[wikipedia:ja:胚発生|胚発生]]における[[wikipedia:ja:体軸|体軸]]形成や神経系の[[分化]]に重要な役割を果たしている<ref name=ref3><pubmed>1333807</pubmed></ref>。 | グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK)は、[[wikipedia:ja:プロリン|プロリン]]指向性[[wikipedia:ja:セリン|セリン]]/[[wikipedia:ja:スレオニン|スレオニン]][[タンパク質リン酸化酵素|リン酸化酵素]]のひとつであり、最初に[[wikipedia:ja:グリコーゲン合成酵素|グリコーゲン合成酵素]]を[[リン酸化]]して不活化する酵素として見出された。そのうちGSK-3βは、[[Wnt]], [[Shh]]などの[[シグナル伝達]]の制御に関与しており、[[wikipedia:ja:胚発生|胚発生]]における[[wikipedia:ja:体軸|体軸]]形成や神経系の[[分化]]に重要な役割を果たしている<ref name=ref3><pubmed>1333807</pubmed></ref>。 | ||
==ファミリー== | ==ファミリー== | ||
[[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]では、GSK-3は51 kDaのα (GSK-3α)と47kDaのβ(GSK-3β)の二つのアイソフォームに分類される<ref name=ref1><pubmed>7980435</pubmed></ref>。これらの2つのアイソフォームは、キナーゼドメイン内では98%と高い相同性を示すが、76個のC末アミノ酸残基では36%の相同性しかない。GSK- | [[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]では、GSK-3は51 kDaのα (GSK-3α)と47kDaのβ(GSK-3β)の二つのアイソフォームに分類される<ref name=ref1><pubmed>7980435</pubmed></ref>。これらの2つのアイソフォームは、キナーゼドメイン内では98%と高い相同性を示すが、76個のC末アミノ酸残基では36%の相同性しかない。GSK-3βには、[[wikipedia:ja:選択的スプライシング|スプライシング変異体]]であるGSK-3β2が存在する。GSK-3β2の量はGSK-3β全体の15%以下であり、GSK-3βのキナーゼドメイン内に13アミノ酸残基の挿入を認める。 | ||
GSK-3β2は、[[tauタンパク質]]に対するキナーゼ活性がGSK-3βよりも減弱している<ref name=ref2><pubmed>19607922</pubmed></ref>。 | GSK-3β2は、[[tauタンパク質]]に対するキナーゼ活性がGSK-3βよりも減弱している<ref name=ref2><pubmed>19607922</pubmed></ref>。 | ||
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==構造== | ==構造== | ||
Gsk-3βは、多くの”activation-segment”タンパクキナーゼと同様にアミノ末端βシートドメインとカルボシキル末端αへリックスドメインを持つ(Fig.1)。Gsk-3betaの基質は、グリコーゲン合成酵素、translation initiation factor elF2B, C/EBFα転写因子、βカテニンなどがあげられる。Gsk-3βの基質は、本来のリン酸化部位のカルボシキル末に位置する”priming”残基が先にリン酸化を受けることによって効率よくリン酸化を受ける。Gsk-3βの活性中心(P0)に隣接するアルギニン96、アルギニン180、リシン205からなるpositively charged pocket(P+4)に”priming”残基のリン酸基が結合する(Fig.2)。この結合によってGsk-3βのキナーゼドメインの方向が最適化され、基質がGsk-3βの活性中心の適切な位置にはまりリン酸化を受ける[4]。Gsk-3βはダイマーとして結晶化されることより、ダイマー構造をとっていると考えられる[4] (Fig.3)。 | |||
インスリンシグナルは、PKB/AktによるGsk-3βのセリン9のリン酸化を引き起こしGsk-3βのキナーゼ活性を抑制する。これはGsk-3βのセリン9がpositively charged pocket(P+4)を占領することでリン酸化されたGsk-3βのアミノ末端がcompetitive pseudosubstrateとしてGsk-3βの活性中心に結合するためでないかと考えられる[4]。 | |||
==発現== | |||
[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/68269508 GSK-3β]は | |||
(編集コメント:組織発現パタンに関する御記述を御願い出来ればと思います) | |||
[[ | (編集コメント:細胞内発現パタンに関する御記述を御願い出来ればと思います) | ||
GSK-3β2は[[細胞体]]に認められる。 | |||
==活性調節== | |||
===Aktによるリン酸化による調節=== | ===Aktによるリン酸化による調節=== | ||
GSK-3βは、細胞が静止状態にあるときには活性型である。細胞が[[wikipedia:ja:インスリン|インスリン]]などの物質で処理をされると、GSK-3βは[[ホスファチジルイノシトール#ホスファチジルイノシトール3キナーゼとPI3キナーゼシグナル伝達経路|ホスファチジルイノシトール‐3キナーゼ]](PI-3K)の関与で不活化される。つまり、インスリンなどで処理された細胞の内部ではPI-3K-[[Akt]]経路が活性化し、その結果GSK-3βのセリン9のリン酸化が起こり不活性型となる<ref name=ref4><pubmed>11440715</pubmed></ref>。 | |||
===基質のプライミングリン酸化による調節=== | |||
GSK-3βの基質は、本来のリン酸化部位のC末に位置する"priming"残基が先にリン酸化(priming phosphorylation)を受けている方が効率よくリン酸化できる。GSK-3βのactivation loop (T-loop)に位置するスレオニン216のリン酸化により基質結合部位が開き、アルギニン96, アルギニン180, リシン205からなるpositively charged pocketにリン酸化された基質の"priming"残基が結合する。この結合によってキナーゼドメインの方向が最適化され、基質がGSK-3βのcatalytic grooveの適切な位置にはまりリン酸化をうける<ref name=ref4 /> 。 | |||
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==機能== | ==機能== | ||
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(執筆者:河野利恵、太田訓正 担当編集委員:大隅典子) | |||