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体性感覚とは触覚、温度感覚、痛覚の皮膚感覚と、筋や腱、関節などに起こる深部感覚から成り、内臓感覚は含まない。深部感覚とは皮膚表面の感覚に対する身体内部の感覚を意味し、固有感覚または自己受容感覚と呼ばれる。筋受容器からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。  
体性感覚とは触覚、温度感覚、痛覚の皮膚感覚と、筋や腱、関節などに起こる深部感覚から成り、内臓感覚は含まない。深部感覚とは皮膚表面の感覚に対する身体内部の感覚を意味し、固有感覚または自己受容感覚と呼ばれる。筋受容器からの伸縮の情報により、身体部位の位置感覚が得られる。  


目次
== 皮膚感覚受容器  ==


1 皮膚感覚受容器
=== 機械受容器  ===


2 体部位再現
mechanoreceptor


3 体性感覚皮質
 外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの組織の変化を検出し、[[受容野]]の広さと刺激への順応の早さが異なる4種類の細胞がある。<br>


== 皮膚感覚受容器 ==
==== マイスナー小体  ====


 機械受容器(mechanoreceptor)は、外部との接触または自己の運動や姿勢の変化によって起こる、圧迫・伸展などの組織の変化を検出し、[[受容野]]の広さと刺激への順応の早さが異なる4種類の細胞がある。
 機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が早い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する。


 マイスナー小体は機械受容器の4割以上を占め、皮膚の表面近い真皮に存在し、受容野が狭く、順応が早い(RAI, rapid adapting)。接触した対象の細部を検出し、体表面の限局した部分の触覚情報を処理する。
==== メルケル盤 ====


 メルケル盤は表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。
 表皮の最深部にあり、受容野は狭いが、順応が遅い(SAI, slow adapting)。  


 パチニ小体は表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が早い(RAII)。
==== パチニ小体 ====


 ルフィニ終末も表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない。
 表皮の深部にあり、受容野が広く境界が不鮮明であり、順応が早い(RAII)


 温度感覚器は身体部位によって密度が異なり、また一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である冷点は温点よりも圧倒的に多い。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。冷受容器(冷線維)と温受容器(温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には痛覚が生じる。
==== ルフィニ終末 ====


 侵害受容器は末梢神経の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みはAδ線維とC線維によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。島皮質後部が痛みの中枢と見なされている。
 表皮の深部にあり、受容野が広いが順応が遅い(SAII)。広い受容野を持つ受容器は、たとえば掌への機械刺激と手の甲への機械刺激を区別しない。


 かゆみは痛覚と共通する点が多く、化学刺激(ヒスタミン)等で引き起こされる。
=== 温度感覚器  ===


 深部感覚器と機械受容器の信号は脊髄の後索から内側毛帯を通り視床腹側後外側核に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は脊髄後角から脊髄網様体路および脊髄視床路を通り、視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達する。視床核を中継し、SIや島皮質へ投射される。 
 身体部位によって密度が異なり、また一定の面積に刺激があると温感が生じると考えられている。冷たいと感じる点である冷点は温点よりも圧倒的に多い。24~30℃の間では0.5~1℃の弁別が可能であり、体表全体の温度変化ならば0.01℃の差を弁別できる。冷受容器(冷線維)と温受容器(温線維)があり、それぞれ15~33℃、33~45℃の刺激に反応する。これらの範囲外の温度には痛覚が生じる。


== 体部位再現 ==
=== 侵害受容器 ===


体部位再現(somatotopy)とは、脳の機能局在が身体部に対してもあり、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが幻肢である。
 末梢神経の自由終末であり、組織の侵害・損傷により遊離した発痛物質に反応する。痛みはAδ線維とC線維によって伝えられ、前者は機械受容器でもあり、後者は機械刺激に加え、化学的刺激、熱刺激にも反応する。Aδ線維は温感、C線維は冷感も伝える。痛みには馴化がない。島皮質後部が痛みの中枢と見なされている。


== 体性感覚皮質 ==
=== かゆみ ===


大脳皮質の頭頂葉に体性感覚野がある。第一体性感覚野(primary somatosensory area, SI)は中心後回、ブロードマンの脳地図の3,1,2野にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、43野に当たる。SI、SIIそれぞれに体部位再現がある。また、視床は末梢から脊髄を通して体性感覚入力を受け、皮体性感覚野等に投射する。中心後回の後部に上頭頂小葉があり、前方に5野、後下方に7野がある。5野は体性感覚連合野と呼ばれることもあり、2野からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は視覚が主であるが、聴覚、体性感覚、前庭感覚の連合野であり、空間知覚に関わる。 島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの情動的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。
 痛覚と共通する点が多く、化学刺激(ヒスタミン)等で引き起こされる。


==関連項目==
=== 上行系 ===


==参考文献==
 深部感覚器と機械受容器の信号は脊髄の後索から内側毛帯を通り視床腹側後外側核に達する。温度・侵害および一部の機械受容器からの信号は脊髄後角から脊髄網様体路および脊髄視床路を通り、視床腹側後外側核や視床髄板内核群などに到達する。視床核を中継し、SIや島皮質へ投射される。 
 
== 体部位再現  ==
 
 体部位再現(somatotopy)とは、脳の機能局在が身体部に対してもあり、脳の局所と各身体部位に点対点の対応関係があるこという。体性感覚と運動の体部位局在がある。よく使われる体部位ほど対応する脳の局所も広くなるとされる。ホムンクルスと呼ばれるヒトの体部位再現地図においては、顔や手指の領域が広い。動物種により体部位再現地図は様々であり、ヒトでも個人差がある<ref>''Penfield, W., & Rasmussen, T.''<br>The cerebral cortex of man: a clinical study of localization of function.<br>''New York: Macmillan'':1950</ref>。身体部位の切断等により体部位再現の再構築が起き、異なる身体部位への感覚が失った身体部位への感覚を生じさせるのが幻肢である。
 
== 体性感覚皮質  ==
 
 大脳皮質の頭頂葉に体性感覚野がある。第一体性感覚野(primary somatosensory area, SI)は中心後回、ブロードマンの脳地図の3,1,2野にある。第二体性感覚野(secondary somatosensory area, SII)は頭頂弁蓋部に位置し、43野に当たる。SI、SIIそれぞれに体部位再現がある。また、視床は末梢から脊髄を通して体性感覚入力を受け、皮体性感覚野等に投射する。中心後回の後部に上頭頂小葉があり、前方に5野、後下方に7野がある。5野は体性感覚連合野と呼ばれることもあり、2野からの投射を受け、視覚と体性感覚の統合、特に到達運動等との関わりが大きい。7野は視覚が主であるが、聴覚、体性感覚、前庭感覚の連合野であり、空間知覚に関わる。
 
 島皮質は痛覚の処理に関わっており、特に島前部が痛みの情動的側面<ref><pubmed> 12965300 </pubmed></ref>、後部が感覚的処理<ref><pubmed> 22036962 </pubmed></ref>に関わっていると考えられている。
 
== 関連項目 ==
 
== 参考文献 ==


<references />(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)
<references />(執筆者:橋本照男、入來篤史 担当編集委員:藤田一郎)