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αアクチニンは1965年に発見されたアクチン結合タンパク質である。非骨格筋型はカルシウム制御を受けている。脳には骨格筋型も存在し、細胞骨格の一員として様々な生理機能に関与している。骨格筋からアクチン結合タンパク質として、その後、βアクチニン(CapZ)、γアクチニン、EUアクチンが報告されているが、αアクチニンとは全く別種のタンパク質と考えられる。 | |||
==研究の歴史== | ==研究の歴史== | ||
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ACTN1と4のC末端[[カルモジュリン]]様ドメインのEFハンドは機能しており、[[カルシウム]]を結合するカルシウム制御性因子である。骨格筋型のACTN2と3の[[wikipedia:JA:EFハンド|EFハンド]]はカルシウム結合能を失っている。 | ACTN1と4のC末端[[カルモジュリン]]様ドメインのEFハンドは機能しており、[[カルシウム]]を結合するカルシウム制御性因子である。骨格筋型のACTN2と3の[[wikipedia:JA:EFハンド|EFハンド]]はカルシウム結合能を失っている。 | ||
<gallery widths=250px> | <gallery widths=250px> | ||
Image:ActinBindingDomain.png|<b> | Image:ActinBindingDomain.png|<b>図1.αアクチニンの構造</b><br>[[カルポニン]]様ドメイン、[[スペクトリン]]様繰り返し配列(SpR)、EFハンド(骨格筋タイプではCa結合能を失っている)を持つカルモジュリン様ドメイン(CaM)からなる。二つの分子がN末端とC末端をアンチパラレルに結合したホモダイマーとなり、その両端がアクチン結合能を持つ。 | ||
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==ファミリー== | ==ファミリー== | ||
ヒトのαアクチニンにはACTN1、2、3、4の4個が見出されている。 | ヒトのαアクチニンにはACTN1、2、3、4の4個が見出されている。 | ||
==発現== | ==発現== | ||
代表的なアクチン結合タンパク質の名に恥じず、αアクチニンは基本的にはアクチン線維と共存している。アクチン線維の構造の制御と他のタンパク質をアクチン線維(細胞骨格)に結合する足場/骨格タンパク質(scaffold protein)として機能している。シナプスにおいてはシナプス後膜 (post-synaptic densities)に局在しアクチン線維とNMDA 受容体の連絡に関与していると考えられている。ACTN2は海馬の歯状回(dentate gyrus)で CA1 より強く発現している<ref><pubmed>9454847</pubmed></ref>。細胞骨格と悪性腫瘍はその浸潤や増殖の過程で様々な関係が報告されていている。いわゆる細胞骨格タンパク質が転写制御を行うことが見いだされているが<ref><pubmed>20593452</pubmed></ref>、αアクチニンについても転写を活性化することが報告されている<ref name=ref100><pubmed>20037648</pubmed></ref>。脳腫瘍との関連では、たとえば脳腫瘍のなかで最も悪性のglioblastomaの浸潤との関連が指摘されている<ref name=ref100 />。 | |||
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|+''' | |+'''表.アクチニンサブタイプの分布、Ca結合能、ノックアウトマウスでの表現型''' | ||
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==機能== | ==機能== | ||
αアクチニンはアクチン結合タンパク質でありF-actin(線維状アクチン)を架橋する、いわゆる細胞骨格タンパク質である。細胞骨格を介して数多くの機能に間接的に直接的に関与している<ref><pubmed>21241830</pubmed></ref>。 | |||
===シグナル伝達に関わる分子としてのαアクチニン=== | |||
αアクチニンはシグナル伝達に関与する分子群の足場タンパク質として機能している。また、様々なシグナル伝達経路でその機能が調節されている。 | |||
#プロテアーゼ(カルパイン)を介した制御<br>αアクチニンはMAPKKKであるMEKK1に結合し,MEKK1を介したカルパインの活性化を制御している。 | |||
#イノシトールリン脂質を介したシグナル伝達<br>αアクチニンはPIP2やPIP3に結合し、これらの結合はαアクチニンのインテグリンに対する結合を阻害し、またアクチン線維架橋能も低下する。また、αアクチニンはPI3キナーゼの調節サブユニットに直接結合する。 | |||
#タンパク質キナーゼによるリン酸化<br>αアクチニンはFAK(focal adhesion kinase)などのチロシンキナーゼでリン酸化される。 | |||
#カルシウムイオンを介した調節<br>非筋型αアクチニンはカルシウムイオンと結合するとアクチン線維に対する結合能が低下する。 | |||
===αアクチニンのシナプスに於ける機能=== | |||
αアクチニンはシナプスにおいて相互作用する分子が複数同定されており、シナプスにおいて重要な働きをしていると考えられている。 | |||
#NMDA受容体<br>ACTN2はNMDA受容体とシナプス後膜(PSD)で特異的に結合している。この結合は、Ca/CaM で阻害されるので、NMDA受容体に抑制的に働いていると考えられている。 | |||
#Densin<br>Densinは膜貫通型糖タンパク質で細胞質側にPDZドメインをもち、シナプス後膜(PSD)に発現している。αアクチニンはDensinと特異的に結合している。またDensinはCaMKIIとも結合するので、ACTN-CaMKII-Densin複合体がシナプスの機能に関与していると考えられている。 | |||
#A2A受容体<br>αアクチニンはアデノシンA2A受容体に結合し、A2A受容体の凝集と細胞内移行(internalization)に関与していると考えられている。 | |||
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Image:AlphaActin.png|<b> | Image:AlphaActin.png|<b>図2.αアクチニンによるF-actinの束化</b><br>αアクチンはアクチン結合蛋白質であり、Fアクチン(線維状アクチン)を束ねる。 | ||
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<*注2> 丸山工作は反論の論文をProc Natl Acad Sci誌が掲載を認めないことに不満を唱えた。結局、反論論文はJ. Biochem<ref><pubmed>7298603</pubmed></ref>に掲載された。 | <*注2> 丸山工作は反論の論文をProc Natl Acad Sci誌が掲載を認めないことに不満を唱えた。結局、反論論文はJ. Biochem<ref><pubmed>7298603</pubmed></ref>に掲載された。 | ||
<gallery widths=250px heights=300px> | <gallery widths=250px heights=300px> | ||
Image:betaactin.png| | Image:betaactin.png|'''図3.アクチン線維(F-actin)の方向性'''<br>アクチン線維にミオシン頭部を結合させて電子顕微鏡で観察すると鏃(やじり)構造が観察される。矢印の頭部にあたる端を矢じり端、反対の尾部にあたる端を反矢じり端という。</gallery> | ||
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===Euアクチニンとγアクチニン=== | ===Euアクチニンとγアクチニン=== | ||
丸山工作の一派により、ウサギ骨格筋からγアクチニン<ref><pubmed>1002672</pubmed></ref>とニワトリ骨格筋からEuアクチニン<ref><pubmed> | 丸山工作の一派により、ウサギ骨格筋からγアクチニン<ref><pubmed>1002672</pubmed></ref>とニワトリ骨格筋からEuアクチニン<ref><pubmed>6783638</pubmed></ref>が報告されている。それぞれ1報告のみであり、クローニングもされておらず、詳細は不明である。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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<references /> | <references /> | ||
(執筆者:丸山敬、太田安隆 担当編集委員:尾藤晴彦) |