「膜容量測定法」の版間の差分

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==膜容量測定法の長所と短所==
==膜容量測定法の長所と短所==


 この測定は、電気的であるために、ミリ秒近くの速さや0.1 fFの微小な変化も測定可能である。実際、オンセル記録では単一小胞の開口放出やエンドサイトーシスがステップ状に計測することができ、その大きさが分泌小胞やエンドサイトーシスに関わる小胞の[[電子顕微鏡]]的な大きさと一致する。その場合、[[膜融合]]や分裂の際に形成される安定な中間段階と考えられている[[融合細孔]]の性質を調べることができる。また、[[シナプス]]のミリ秒の開口放出の定量化も可能である。膜容量測定の原理からすると理想的な[[空間的膜電位固定]](space clamp)がかかっている必要があるが、[[軸索終末]]への応用も試みられている<ref><pubmed>19279571</pubmed></ref>。この場合、高周波正弦波の軸索での減衰から、単一終末の開口放出やエンドサイトーシスを記録することが可能である。
 この測定は、電気的であるために、ミリ秒近くの速さや0.1 fFの微小な変化も測定可能である。実際、オンセル記録では単一小胞の開口放出やエンドサイトーシスがステップ状に計測することができ、その大きさが分泌小胞やエンドサイトーシスに関わる小胞の[[電子顕微鏡]]的な大きさと一致する。その場合、[[膜融合]]や分裂の際に形成される安定な中間段階と考えられている[[融合細孔]]の性質を調べることができる。また、[[シナプス]]のミリ秒の開口放出の定量化も可能である。膜容量測定の原理からすると理想的な[[空間的膜電位固定]](space clamp)がかかっている必要があるが、[[軸索終末]]への応用も試みられている<ref><pubmed>19279571</pubmed></ref>。この場合、高周波正弦波が軸索に沿って著しく減衰するので、単一終末の開口放出やエンドサイトーシスを記録することが可能と考えられている。


 一方、測定は開口放出による膜面積の増大とエンドサイトーシスによる膜面積の減少の和を見ており、これらを分離することは原理的に不可能である。また、単一小胞のステップが見えない場合には、小胞の種類を特定することができない<ref><pubmed>16150796</pubmed></ref>。膜面積当たりの膜容量一定の仮定がどれだけ厳密に成り立っているのか検証する方法がない。そして、画像による開口放出の検出と異なり、開口放出の最終段階のみ、エンドサイトーシスの初期段階のみが測定可能である。この様な短所はあるものの、電気生理学固有のシグナル/ノイズ比の良さや時間分解の高さがあり、開口放出やエンドサイトーシスの研究の一手法として今後も用いられていくであろう。
 一方、測定は開口放出による膜面積の増大とエンドサイトーシスによる膜面積の減少の和を見ており、これらを分離することは原理的に不可能である。また、単一小胞のステップが見えない場合には、小胞の種類を特定することができない<ref><pubmed>16150796</pubmed></ref>。膜面積当たりの膜容量一定の仮定がどれだけ厳密に成り立っているのか検証する方法がない。そして、画像による開口放出の検出と異なり、開口放出の最終段階のみ、エンドサイトーシスの初期段階のみが測定可能である。この様な短所はあるものの、電気生理学固有のシグナル/ノイズ比の良さや時間分解の高さがあり、開口放出やエンドサイトーシスの研究の一手法として今後も用いられていくであろう。