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| <div align="right">
| | 前脳はヒトの脳のもっとも大きな部分であり、中枢神経系の再前端領域に位置する。発生過程では脳になる神経間域は前脳(forebrainもしくはprosencephalon)、中脳(midbrain, mesencephalon)、後脳(hindbrainもしくはrhombencephalon)と言った3領域に区分される。前脳域は5脳胞期に終脳(telencephalon)と間脳(Diencephalon)に分かれる。ちなみに終脳は大脳と呼ばれることがあるが、記述によっては間脳を含んだ脳部位を大脳とよぶ場合がある。大脳は英語でcerebrumであるが、中脳水道は英語でcerebral aqueductと言うが中脳の構造である。同様に大脳脚cerebral peduncleも中脳の構造であるが、これは大脳の入出力繊維を含んでいる。 |
| <font size="+1">[http://researchmap.jp/yukatsuyama 勝山 裕]</font><br>
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| ''滋賀医科大学 解剖学講座''<br>
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| DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年1月9日 原稿完成日:2014年11月13日<br>
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| 担当編集委員:[http://researchmap.jp/noriko1128 大隅 典子](東北大学 大学院医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 脳神経科学コアセンター 発生発達神経科学分野)<br>
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| 英:forebrain、prosencephalon 独:Vorderhirn 仏:prosencéphale
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| {{box|text= 前脳はヒトの脳のもっとも大きな部分であり、[[中枢神経系]]の再前端領域に位置する。大脳(扁桃体、海馬などの辺縁皮質を含む)、[[中隔核]]、[[乳頭体]]、[[視床前核]]、[[嗅球]]といった大脳皮質外の構造、[[視床]]、[[視床上部]]、[[視床下部]]などからなる領域である。発生過程の三脳胞期のもっとも前方のふくらみである前脳胞から由来する。前脳の発生過程で両半球が分離されない脳形成不全を[[全前脳胞症]]([[holoprosencephaly]])とよび、正中部の脳、顔面の構造に奇形を生じる。}}
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| ==前脳とは== | | == 終脳(もしくは大脳) == |
| [[ファイル:終脳の発達図.jpg|thumb|220px|'''図.三脳胞期と五脳胞期'''<br>終脳(黒田一樹、佐藤真)から引用。]]
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| 脳になる[[神経管]]の三領域のうち、最も吻側の領域、ならびにそこから発生した脳領域を指す。その尾側に[[中脳]] (midbrain, mesencephalon)、[[後脳]] (hindbrainもしくはrhombencephalon)が続く。神経管発生初期にはそれぞれの領域が膨らんで胞状である事から形態的に[[前脳胞]]、[[中脳胞]]、[[後脳胞]]と呼び、この時期を[[三脳胞期]]と呼ぶ。その後、前脳域は[[終脳]] (telencephalon)と[[間脳]] (diencephalon)に分かれ、[[五脳胞期]]と呼ばれる<ref name=ref1>'''von Baer KE'''<br>Über Entwickelungsgeschichte der Thiere. Beobachtung und Reflexion. <br>Königsberg, Bornträger. 1828 [https://ia600402.us.archive.org/9/items/berentwickelun01baer/berentwickelun01baer.pdf PDF]</ref>。
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| ==区分==
| | 哺乳類の脳では表面から脳の深部にむかって大脳皮質、大脳白質、大脳基底核となっている。 |
| === 終脳 ===
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| 終脳は[[大脳]]と呼ばれることがあるが、記述によっては間脳を含んだ脳部位を大脳とよぶ場合がある。大脳は英語でcerebrumであるが、[[中脳水道]]は英語でcerebral aqueductと言うが中脳の構造である。同様に[[大脳脚]] (cerebral peduncle)も中脳の構造であるが、これは大脳の入出力線維を含んでいる。
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| [[wikipedia:ja:哺乳類|哺乳類]]の脳では表面から脳の深部にむかって[[大脳皮質]]、[[白質|大脳白質]]、[[大脳基底核]]となっている。
| | 大脳皮質は層構造を呈する神経細胞から構成されている。特に発生過程で6層構造をとる領域を新皮質とされるが、成熟した新皮質の全ての領野で6層がみられる訳ではない。 |
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| 大脳皮質は層構造を呈する神経細胞から構成されている。特に発生過程で6層構造をとる領域を[[新皮質]]とされるが、成熟した新皮質の全ての領野で6層がみられる訳ではない。
| | 大脳白質は、大脳への入出力繊維を含む交連繊維(脳梁や前交連)。 |
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| 大脳[[白質]]は、大脳への入出力線維を含む[[交連線維]]([[脳梁]]や[[前交連]])からなる。
| | 扁桃体や海馬は大脳皮質の一部であり、終脳に含まれる。扁桃体や海馬を含む大脳底部の脳幹を囲む様な領域を辺縁皮質とよぶ。辺縁系limbic system(もしくは大脳辺縁系)と言う場合には海馬、海馬傍回、帯状回、梨状葉皮質、扁桃体に加え、中隔核、乳頭体、視床前核、嗅球といった大脳皮質外の構造、神経核と脳弓や嗅条の様なそれらをつなぐ神経線維も含まれる。 |
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| [[扁桃体]]や[[海馬]]は大脳皮質の一部であり、終脳に含まれる。扁桃体や海馬を含む大脳底部の[[脳幹]]を囲む様な領域を[[辺縁皮質]]とよぶ。[[辺縁系]] (limbic system)(もしくは大脳辺縁系)と言う場合には海馬、[[海馬傍回]]、[[帯状回]]、[[梨状葉皮質]]、扁桃体に加え、[[中隔核]]、[[乳頭体]]、[[視床前核]]、[[嗅球]]といった大脳皮質外の構造、[[神経核]]と[[脳弓]]や[[嗅条]]の様なそれらをつなぐ神経線維も含まれる。
| | == 間脳 == |
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| === 間脳 ===
| | 視床、視床上部、視床下部に分けられ、これらは発生過程で背腹軸にそった3領域(蓋板→視床上部、翼板→視床、基板→視床下部)から分化する。 |
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| [[視床]]、[[視床上部]]、[[視床下部]]に分けられ、これらは発生過程で背腹軸にそった3領域([[蓋板]]→視床上部、[[翼板]]→視床、[[基板]]→視床下部)から[[分化]]する<ref name=ref2><pubmed>22593732</pubmed></ref>。
| | 視床上部は松果体と手綱核を含む。 |
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| 視床上部は[[松果体]]と[[手綱核]]を含む。
| | 視床下部は自律神経系と内分泌系の最高中枢であり、機能がことなる細かい神経核が存在する。 |
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| 視床下部は[[自律神経系]]と[[内分泌系]]の最高中枢であり、機能が異なる細かい神経核が存在する。
| | 内包は視床と大脳基底核の間にある白質部分で間脳に含まれる。大脳皮質への入出力繊維が通過する。内包前脚側は大脳基底核のレンズ核と尾状核を分ける。内包のくの字部分は内包膝と言う。内包後脚側は視床とレンズ核を分ける。 |
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| [[内包]]は視床と大脳基底核の間にある白質部分で間脳に含まれる。大脳皮質への入出力線維が通過する。内包前脚側は大脳基底核の[[レンズ核]]と[[尾状核]]を分ける。内包のくの字部分は[[内包膝]]と言う。内包後脚側は視床とレンズ核を分ける。
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| == 疾患との関わり ==
| | (執筆者:勝山裕 担当編集者:大隅典子) |
| 正常な前脳の発生では分離した左右の半球が生じるが、[[全前脳胞症]]の場合、この分離が起きないか不十分になる。障害が軽度の場合、脳は比較的正常な形態をもって産まれてくるが、眼、鼻、上唇に形成異常や[[知的障害]]、[[運動障害]]がみられる。障害が重度な場合には顔面と脳の構造と機能が大きく失われ死産となる。特に激しい障害では眼が顔面の中心に1つのみ形成される[[単眼症]](cyclopia)となる。この疾患の原因として[[Sonic hedgehog]]遺伝子などが知られている<ref name=ref3><pubmed>8896571</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>8896572</pubmed></ref>。
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| ==関連項目==
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| *[[脳胞]]
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| *[[神経管]]
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| *[[終脳]]
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| ==参考文献==
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| <references />
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2013年2月9日 (土) 13:53時点における版
前脳はヒトの脳のもっとも大きな部分であり、中枢神経系の再前端領域に位置する。発生過程では脳になる神経間域は前脳(forebrainもしくはprosencephalon)、中脳(midbrain, mesencephalon)、後脳(hindbrainもしくはrhombencephalon)と言った3領域に区分される。前脳域は5脳胞期に終脳(telencephalon)と間脳(Diencephalon)に分かれる。ちなみに終脳は大脳と呼ばれることがあるが、記述によっては間脳を含んだ脳部位を大脳とよぶ場合がある。大脳は英語でcerebrumであるが、中脳水道は英語でcerebral aqueductと言うが中脳の構造である。同様に大脳脚cerebral peduncleも中脳の構造であるが、これは大脳の入出力繊維を含んでいる。
終脳(もしくは大脳)
哺乳類の脳では表面から脳の深部にむかって大脳皮質、大脳白質、大脳基底核となっている。
大脳皮質は層構造を呈する神経細胞から構成されている。特に発生過程で6層構造をとる領域を新皮質とされるが、成熟した新皮質の全ての領野で6層がみられる訳ではない。
大脳白質は、大脳への入出力繊維を含む交連繊維(脳梁や前交連)。
扁桃体や海馬は大脳皮質の一部であり、終脳に含まれる。扁桃体や海馬を含む大脳底部の脳幹を囲む様な領域を辺縁皮質とよぶ。辺縁系limbic system(もしくは大脳辺縁系)と言う場合には海馬、海馬傍回、帯状回、梨状葉皮質、扁桃体に加え、中隔核、乳頭体、視床前核、嗅球といった大脳皮質外の構造、神経核と脳弓や嗅条の様なそれらをつなぐ神経線維も含まれる。
間脳
視床、視床上部、視床下部に分けられ、これらは発生過程で背腹軸にそった3領域(蓋板→視床上部、翼板→視床、基板→視床下部)から分化する。
視床上部は松果体と手綱核を含む。
視床下部は自律神経系と内分泌系の最高中枢であり、機能がことなる細かい神経核が存在する。
内包は視床と大脳基底核の間にある白質部分で間脳に含まれる。大脳皮質への入出力繊維が通過する。内包前脚側は大脳基底核のレンズ核と尾状核を分ける。内包のくの字部分は内包膝と言う。内包後脚側は視床とレンズ核を分ける。
(執筆者:勝山裕 担当編集者:大隅典子)