「カルシニューリン」の版間の差分

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{{Infobox protein family
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| Symbol =CaN, CN, PP2B, ppp3, caln; ccn1; cna1; calna1
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| Name = Calcineurin
| Name = Calcineurin
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英:Calcineurin 英略称:CaN, CN  
英:Calcineurin 英略称:CaN, CN, caln, ccn1, cna1, calna1


同義語:Protein phosphatase 2B (PP2B), Protein phosphatase 3 (ppp3), calcium-dependent serine-threonine phosphatase, caln; ccn1; cna1; calna1
同義語:Protein phosphatase 2B (PP2B), Protein phosphatase 3 (ppp3), calcium-dependent serine-threonine phosphatase


 カルシニューリンは、脳神経系に豊富に発現するカルシウム・カルモジュリン依存的セリン-スレオニン脱リン酸化酵素である。PP1/PP2A/calcineurin スーパーファミリーに属する<ref><pubmed>11015619</pubmed></ref> 。免疫系で抗原提示細胞からT細胞への活性化、特にIL-2, IL-4遺伝子発現調節を担う転写因子NFATを脱リン酸化して活性化することから<ref><pubmed>19596245</pubmed></ref>、cyclosporinA や FK506といったカルシニューリン阻害剤は免疫抑制剤として使用されてきた。脳神経系においては、シナプス刺激などによるカルシウムにより活性化され、NFAT, dynamin I, Inhibitor-1(l-I)/DARPP-32, tau, CRTC, GluA1, FMRP, Bcl-2, GABA<sub>A</sub> receptor といった多様な基質を脱リン酸化する。長期抑制・長期増強などのシナプス可塑性、ひいては記憶学習や、神経突起伸長・細胞内カルシウム・遺伝子発現調節・アポトーシスの制御に関わるとされている。  
 カルシニューリンは、脳神経系に豊富に発現するカルシウム・カルモジュリン依存的セリン-スレオニン脱リン酸化酵素である。PP1/PP2A/calcineurin スーパーファミリーに属する<ref><pubmed>11015619</pubmed></ref> 脳神経系においては、シナプス刺激などによるカルシウムにより活性化され、NFAT, dynamin I, Inhibitor-1(l-I)/DARPP-32, tau, CRTC, GluA1, FMRP, Bcl-2, GABA<sub>A</sub> receptor といった多様な基質を脱リン酸化する。長期抑制・長期増強などのシナプス可塑性、ひいては記憶学習や、神経突起伸長・細胞内カルシウム・遺伝子発現調節・アポトーシスの制御に関わるとされている。  


== カルシニューリンとは  ==
== カルシニューリンとは  ==
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 カルシニューリンは 触媒サブユニットであるCalcineurin A (57-59 kDa)と、修飾サブユニットであれるCalcineurin B (19-20 kDa)からなる。それぞれ、3種(PPP3CA, PPP3CB, and PPP3CC)と2種(PPP3R1, PPP3R2)の遺伝子にコードされる。PPP3R2はtestes特異的発現とされているが、その他はubiquitousに発現する。PPP3CCもtestes特異的とされていたが、脳における発現が確認されている。ラット脳内ではPPP3CAの方がPPP3CBよりも豊富に発現している。 Calcineurin A は、N末端より、触媒ドメイン・Calcineurin B 結合ドメイン・CaM結合ドメイン・自己抑制ドメイン(AID)からなる。触媒ドメインはPP2Aと49%、PP1と39%という高い相同性を持つ。Calcineurin B はカルモジュリンと相同性があり、4つのCa<sup>2+</sup>結合ドメインであるEF-handを有し、N末端にミリストイル化を受ける。Calcineurin Bの1つのCa<sup>2+</sup>結合ドメインは高親和性で(Kd = 10<sup>-7</sup> M)、その他は低親和性(Kd = 0.5 ~ 1 uM)であるが、カルモジュリンと異なり、Calcineurin BはEDTA存在下でもCalcineurin A に結合する。  
 カルシニューリンは 触媒サブユニットであるCalcineurin A (57-59 kDa)と、修飾サブユニットであれるCalcineurin B (19-20 kDa)からなる。それぞれ、3種(PPP3CA, PPP3CB, and PPP3CC)と2種(PPP3R1, PPP3R2)の遺伝子にコードされる。PPP3R2はtestes特異的発現とされているが、その他はubiquitousに発現する。PPP3CCもtestes特異的とされていたが、脳における発現が確認されている。ラット脳内ではPPP3CAの方がPPP3CBよりも豊富に発現している。 Calcineurin A は、N末端より、触媒ドメイン・Calcineurin B 結合ドメイン・CaM結合ドメイン・自己抑制ドメイン(AID)からなる。触媒ドメインはPP2Aと49%、PP1と39%という高い相同性を持つ。Calcineurin B はカルモジュリンと相同性があり、4つのCa<sup>2+</sup>結合ドメインであるEF-handを有し、N末端にミリストイル化を受ける。Calcineurin Bの1つのCa<sup>2+</sup>結合ドメインは高親和性で(Kd = 10<sup>-7</sup> M)、その他は低親和性(Kd = 0.5 ~ 1 uM)であるが、カルモジュリンと異なり、Calcineurin BはEDTA存在下でもCalcineurin A に結合する。  


== 構造 ==
==立体構造 ==


 1995年に、カルシニューリン(C末端のCaM結合ドメイン・AIDドメインを欠く)と FKBP12-FK506 との複合体の構造が発表された。 <ref><pubmed>8524402</pubmed></ref>, <ref><pubmed>7543369</pubmed></ref>  
 1995年に、カルシニューリン(C末端のCaM結合ドメイン・AIDドメインを欠く)と FKBP12-FK506 との複合体の構造が発表された。 <ref><pubmed>8524402</pubmed></ref>, <ref><pubmed>7543369</pubmed></ref>  
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== 阻害剤  ==
== 阻害剤  ==


 Cyclosporine-A, FK506は、それぞれ cyclophilin, FKBP (FK506-binding protein) のimmunophilinと結合し、カルシニューリン活性を阻害する。その他、PP1, PP2Aの阻害剤である Okadaic acid も高い濃度(~4 uM)では、カルシニューリン活性を阻害する。  
 Cyclosporine-A, FK506は、それぞれ cyclophilin, FKBP (FK506-binding protein) のimmunophilinと結合し、カルシニューリン活性を阻害する。免疫系で抗原提示細胞からT細胞への活性化、特にIL-2, IL-4遺伝子発現調節を担う転写因子NFATを脱リン酸化して活性化することから<ref><pubmed>19596245</pubmed></ref>、cyclosporinA や FK506といったカルシニューリン阻害剤は免疫抑制剤として使用されてきた。その他、PP1, PP2Aの阻害剤である Okadaic acid も高い濃度(~4 uM)では、カルシニューリン活性を阻害する。


== 脳神経系における役割  ==
== 脳神経系における役割  ==
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<references />  
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<br> (執筆者:野中美応、担当編集委員:尾藤晴彦)
(執筆者:野中美応、担当編集委員:尾藤晴彦)