「チロシンリン酸化」の版間の差分

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==チロシンフォスファターゼ==
==チロシンフォスファターゼ==


 チロシンフォスファターゼには、107種が存在する。チロシンキナーゼと同様に、チロシンフォスファターゼは、膜貫通領域を持つ受容体型および膜貫通領域を持たない非受容体型に大別される<ref><pubmed>17057753</pubmed></ref>。神経系で重要な役割を果たすものとして、受容体型では[[wikipedia:PTPRF|LAR]]、[[wikipedia:PTPRS|PTP&sigma;]]、[[wikipedia:PTPRD|PTP&delta;]]、[[wikipedia:PTPRZ1|PTP&zeta;]]、非受容体型ではPTP1B、[[wikipedia:PTEN_(gene)|PTEN]]、STEP、PTP-SL、SHP1、[[wikipedia:PTPN11|SHP-2]]、などがある<ref><pubmed>14625689</pubmed></ref>。チロシンキナーゼ同様に、チロシンフォスファターゼも、受容体型は細胞膜上に、非受容体型は細胞質に存在する。 (この項目でチロシンフォスファターゼをカバーすることになりましたので、受容体型、非受容体型に分けて詳しくご解説頂ければと思います。どのような受容体があるか、受容体からチロシンフォスファターゼにどのように情報が伝わるかが判っていたら御記述下さい)
 チロシンフォスファターゼには、107種が存在する。チロシンキナーゼと同様に、チロシンフォスファターゼは、膜貫通領域を持つ受容体型および膜貫通領域を持たない非受容体型に大別される<ref><pubmed>17057753</pubmed></ref>。チロシンキナーゼ同様に、チロシンフォスファターゼも、受容体型は細胞膜上に、非受容体型は細胞質に存在する。チロシンフォスファターゼはチロシンキナーゼと違いその基質特異性は低く、リン酸化チロシンを含む多くのタンパク質を認識してそれぞれ脱リン酸化する。神経発生の過程における神経接着や軸索の伸長とガイダンス、シナプス形成、シナプス可塑性の調節におけるチロシンフォスファターゼの機能が明らかにされている。
チロシンフォスファターゼはチロシンキナーゼと違いその基質特異性は低く、リン酸化チロシンを含む多くのタンパク質を認識してそれぞれ脱リン酸化する。神経発生の過程における神経接着や軸索の伸長とガイダンス、シナプス形成、シナプス可塑性の調節におけるチロシンフォスファターゼの機能が明らかにされている。
(この項目でチロシンフォスファターゼをカバーすることになりましたので、受容体型、非受容体型に分けて詳しくご解説頂ければと思います。どのような受容体があるか、受容体からチロシンフォスファターゼにどのように情報が伝わるかが判っていたら御記述下さい)
 


=== 受容体型チロシンフォスファターゼ===
=== 受容体型チロシンフォスファターゼ===
 全ての受容体型チロシンフォスファターゼは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内の2つのフォスファターゼドメイン(D1およびD2)を持つ。細胞外には、イムノグロブリンドメインやフィブロネクチンⅢ型ドメインの繰り返し配列を持つ例が知られる。細胞内のD1およびD2ドメインは、280程のアミノ酸残基からなり、活性中心配列は(I/V)HCXAGXXR(S/T)Gである。これらのドメインは高度に保存されているが、膜に近い側のD1ドメインが主としてフォスファターゼ活性を担い、C末端側のD2ドメインは様々な結合タンパク質と会合する<ref><pubmed>17085782</pubmed></ref>。受容体型チロシンフォスファターゼのリガンド分子に付いては未だ不明な点が多いが、これまでに、(1) ヘパラン硫酸プロテオグリカンであるSyndecanがLARと結合してそのフォスファターゼ活性を抑制し、軸索伸長を制御する、(2) PleiotrophinがリガンドとしてPTP&zeta;に結合し、その活性を低下させて基質である&beta;cateninのチロシンリン酸化を亢進し、神経細胞移動を制御する、(3) シナプス前膜側のPTP&delta;がシナプス後膜側の精神疾患原因遺伝子IL1RAPL1と''trans''-synapticに結合し、シナプス形成を促進する、等の研究報告が知られている。
 全ての受容体型チロシンフォスファターゼは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内の2つのフォスファターゼドメイン(D1およびD2)を持つ。細胞外には、イムノグロブリンドメインやフィブロネクチンⅢ型ドメインの繰り返し配列を持つ例が知られる。細胞内のD1およびD2ドメインは、280程のアミノ酸残基からなり、活性中心配列は(I/V)HCXAGXXR(S/T)Gである。これらのドメインは高度に保存されているが、膜に近い側のD1ドメインが主としてフォスファターゼ活性を担い、C末端側のD2ドメインは様々な結合タンパク質と会合する<ref><pubmed>17085782</pubmed></ref>。神経系で重要な役割を果たすものとして、受容体型では[[wikipedia:PTPRF|LAR]]、[[wikipedia:PTPRS|PTP&sigma;]]、[[wikipedia:PTPRD|PTP&delta;]]、[[wikipedia:PTPRZ1|PTP&zeta;]]がある。受容体型チロシンフォスファターゼのリガンド分子に付いては未だ不明な点が多いが、これまでに、(1) ヘパラン硫酸プロテオグリカンであるSyndecanがLARと結合してそのフォスファターゼ活性を抑制し、軸索伸長を制御する、(2) PleiotrophinがリガンドとしてPTP&zeta;に結合し、その活性を低下させて基質である&beta;cateninのチロシンリン酸化を亢進し、神経細胞移動を制御する、(3) シナプス前膜側のPTP&delta;がシナプス後膜側の精神疾患原因遺伝子IL1RAPL1と''trans''-synapticに結合し、シナプス形成を促進する、等の研究報告が知られている。


=== 非受容体型チロシンフォスファターゼ===
=== 非受容体型チロシンフォスファターゼ===
 非受容体型チロシンフォスファターゼは受容体型チロシンフォスファターゼと異なり、膜貫通ドメインを持たず、1つのフォスファターゼドメインとそのN末かC末側に様々なドメインを有する。
 非受容体型チロシンフォスファターゼは受容体型チロシンフォスファターゼと異なり、膜貫通ドメインを持たず、1つのフォスファターゼドメインとそのN末かC末側に様々なドメインを有する。神経系で重要な役割を果たすものとして、PTP1B、[[wikipedia:PTEN_(gene)|PTEN]]、STEP、PTP-SL、SHP1、[[wikipedia:PTPN11|SHP-2]]、などがある<ref><pubmed>14625689</pubmed></ref>。


==生理機能==
==生理機能==
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