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脊髄内のニューロンは[[軸索]]の投射部位によって、大きく、 | |||
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の3つに分けられる。運動ニューロンは前根に軸索を送り、筋を支配するニューロンである。上行路ニューロンは、軸索を脳にまで伸ばし、脳に情報を伝えるニューロンである。介在ニューロンは、軸索の伸長部位が脊髄内に限られているニューロンであり、脊髄内での情報処理に携わる。 | |||
ニューロンの数としては、介在ニューロンが圧倒的に多い。軸索の範囲が脊髄内に限られるニューロンを示す言葉としては、[[脊髄固有ニューロン]](propriospinal neuron)も使われる。介在ニューロンと脊髄固有ニューロンの区別は必ずしも明確ではない。厳密には、軸索が[[白質]]内を走行し、細胞体とは異なる髄節に終止するニューロンを脊髄固有ニューロンというが、白質内の軸索の走行距離が比較的短く、近くの髄節に終止するニューロンは介在ニューロンと呼ばれることが多い。また、軸索の伸長範囲が明確に分かっていない場合も多く、そのような場合、脊髄内の情報処理に関わるニューロンとして介在ニューロンの言葉が広い意味で使われる。したがって、比較的長距離の情報伝達を行うニューロンも介在ニューロンとして扱われる。この場合、[[大脳皮質]]における介在ニューロン(局所介在ニューロンの意味で用いられる)とは、意味するポイントが異なる点に中板必要である。 | |||
脊髄内には非常に他種類の介在ニューロンが存在すると考えられているが、一般に、介在ニューロンの役割、結合様式を電気生理学的、解剖学的手法のみで調べることは簡単ではなく、何種類の介在ニューロンが存在しているか答えることは難しい。この点に関して、遺伝子発現との関連から介在ニューロンのクラスを同定する手法が有力な手段であると考えられ、今後の進展が期待される。 | 脊髄内には非常に他種類の介在ニューロンが存在すると考えられているが、一般に、介在ニューロンの役割、結合様式を電気生理学的、解剖学的手法のみで調べることは簡単ではなく、何種類の介在ニューロンが存在しているか答えることは難しい。この点に関して、遺伝子発現との関連から介在ニューロンのクラスを同定する手法が有力な手段であると考えられ、今後の進展が期待される。 | ||
感覚ニューロンや運動ニューロンと特徴的な結合をしている介在ニューロンに関しては再現的な同定が可能である。そのような介在ニューロンの例として、たとえば[[レンショウ(Renshaw)細胞]]や[[Ia抑制性ニューロン]]があげられる。 | |||
== レンショウ細胞 == | |||
運動ニューロンからの[[反回抑制]](recurrent inhibition)に関わる介在ニューロンである。運動ニューロンからの出力は筋に伝達されるが、同時に軸索側枝を介してレンショウ細胞に伝えられる。レンショウ細胞は[[グリシン]]作動性で抑制性であり、その軸索は同名筋と協力筋を支配する運動ニューロンに投射する。したがって、運動ニューロン軸索のインパルスは、2シナプス性に運動ニューロンを抑制することになる(反回抑制)。反回抑制は、運動ニューロンの出力の利得を調節しているものと考えられる。 | |||
==Ia抑制性ニューロン== | |||
伸長反射(stretch reflex)において脊髄内の拮抗抑制(antagonistic inhibition)に携わるニューロンである。伸長反射が起こる際には、[[筋紡錘]]に一次終末をもつIa感覚ニューロンが発火し、その発火は当該筋を支配する運動ニューロンに興奮性の作用を誘発する(Ia感覚ニューロンはその筋を支配する運動ニューロンに直接興奮性のシナプスを作っている)。同時に、Ia感覚ニューロンの発火は拮抗筋を支配する運動ニューロンに抑制を導く。これは、Ia感覚ニューロンが脊髄内でIa抑制性ニューロンに興奮性のシナプスを作っており、そして、Ia抑制性ニューロンが拮抗筋を支配する運動ニューロンに抑制性のシナプスを作っていることによる(2シナプス性の抑制)。すなわち、Ia抑制性ニューロンは、Ia感覚ニューロンから直接入力を受け、符号を反転して拮抗筋を抑制するニューロンである。この拮抗抑制は、スムーズな反射の達成に重要である。またIa抑制性ニューロンには一次求心性線維からだけでなく、皮質、[[赤核]]、[[前庭脊髄路]]などの下行性線維からの入力が入ることが知られており、反射の際だけでなく、通常の運動においても大事な役割を果たしていると考えられている。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
2013年3月19日 (火) 10:19時点における版
同義語:脊髄介在ニューロン
脊髄内の神経細胞で、脊髄内での情報処理に関わるニューロンのこと。
脊髄内のニューロンは軸索の投射部位によって、大きく、
- 運動ニューロン(motoneuron)
- 上行路ニューロン
- 介在ニューロン(interneuron)
の3つに分けられる。運動ニューロンは前根に軸索を送り、筋を支配するニューロンである。上行路ニューロンは、軸索を脳にまで伸ばし、脳に情報を伝えるニューロンである。介在ニューロンは、軸索の伸長部位が脊髄内に限られているニューロンであり、脊髄内での情報処理に携わる。
ニューロンの数としては、介在ニューロンが圧倒的に多い。軸索の範囲が脊髄内に限られるニューロンを示す言葉としては、脊髄固有ニューロン(propriospinal neuron)も使われる。介在ニューロンと脊髄固有ニューロンの区別は必ずしも明確ではない。厳密には、軸索が白質内を走行し、細胞体とは異なる髄節に終止するニューロンを脊髄固有ニューロンというが、白質内の軸索の走行距離が比較的短く、近くの髄節に終止するニューロンは介在ニューロンと呼ばれることが多い。また、軸索の伸長範囲が明確に分かっていない場合も多く、そのような場合、脊髄内の情報処理に関わるニューロンとして介在ニューロンの言葉が広い意味で使われる。したがって、比較的長距離の情報伝達を行うニューロンも介在ニューロンとして扱われる。この場合、大脳皮質における介在ニューロン(局所介在ニューロンの意味で用いられる)とは、意味するポイントが異なる点に中板必要である。
脊髄内には非常に他種類の介在ニューロンが存在すると考えられているが、一般に、介在ニューロンの役割、結合様式を電気生理学的、解剖学的手法のみで調べることは簡単ではなく、何種類の介在ニューロンが存在しているか答えることは難しい。この点に関して、遺伝子発現との関連から介在ニューロンのクラスを同定する手法が有力な手段であると考えられ、今後の進展が期待される。
感覚ニューロンや運動ニューロンと特徴的な結合をしている介在ニューロンに関しては再現的な同定が可能である。そのような介在ニューロンの例として、たとえばレンショウ(Renshaw)細胞やIa抑制性ニューロンがあげられる。
レンショウ細胞
運動ニューロンからの反回抑制(recurrent inhibition)に関わる介在ニューロンである。運動ニューロンからの出力は筋に伝達されるが、同時に軸索側枝を介してレンショウ細胞に伝えられる。レンショウ細胞はグリシン作動性で抑制性であり、その軸索は同名筋と協力筋を支配する運動ニューロンに投射する。したがって、運動ニューロン軸索のインパルスは、2シナプス性に運動ニューロンを抑制することになる(反回抑制)。反回抑制は、運動ニューロンの出力の利得を調節しているものと考えられる。
Ia抑制性ニューロン
伸長反射(stretch reflex)において脊髄内の拮抗抑制(antagonistic inhibition)に携わるニューロンである。伸長反射が起こる際には、筋紡錘に一次終末をもつIa感覚ニューロンが発火し、その発火は当該筋を支配する運動ニューロンに興奮性の作用を誘発する(Ia感覚ニューロンはその筋を支配する運動ニューロンに直接興奮性のシナプスを作っている)。同時に、Ia感覚ニューロンの発火は拮抗筋を支配する運動ニューロンに抑制を導く。これは、Ia感覚ニューロンが脊髄内でIa抑制性ニューロンに興奮性のシナプスを作っており、そして、Ia抑制性ニューロンが拮抗筋を支配する運動ニューロンに抑制性のシナプスを作っていることによる(2シナプス性の抑制)。すなわち、Ia抑制性ニューロンは、Ia感覚ニューロンから直接入力を受け、符号を反転して拮抗筋を抑制するニューロンである。この拮抗抑制は、スムーズな反射の達成に重要である。またIa抑制性ニューロンには一次求心性線維からだけでなく、皮質、赤核、前庭脊髄路などの下行性線維からの入力が入ることが知られており、反射の際だけでなく、通常の運動においても大事な役割を果たしていると考えられている。
参考文献
(執筆者:東島眞一 担当編集委員:岡本仁)