「アパシー」の版間の差分

編集の要約なし
34行目: 34行目:
 アパシーは介護者にとっての負担感を大きくする要因でもある。アルツハイマー病患者の介護者の負担感は患者のアパシースコアとの間に強い相関が認められたが、認知機能障害の程度やADL障害の程度とは関連がなかったと報告されている<ref name=ref17><pubmed>12571824</pubmed></ref>。また、アパシーは患者の[[wikipedia:ja:生活の質|生活の質]](Quality of Life; QOL)にも影響を及ぼす可能性がある。老人ホームの居住者を対象とした検討では認知機能障害があまりない対象ではアパシーは主観的なQOLを低下させていたと報告されている<ref name=ref15><pubmed>15804630</pubmed></ref>。このようにアパシーはさまざまな臨床症状に悪影響を与えることが報告されているが、この影響はアパシーによるモチベーションの障害が影響を及ぼしている[[wikipedia:ja:廃用症候群|廃用症候群]]と呼ぶべきものであるのか、その他の要因を介しているのかは今後の検討が必要である。  
 アパシーは介護者にとっての負担感を大きくする要因でもある。アルツハイマー病患者の介護者の負担感は患者のアパシースコアとの間に強い相関が認められたが、認知機能障害の程度やADL障害の程度とは関連がなかったと報告されている<ref name=ref17><pubmed>12571824</pubmed></ref>。また、アパシーは患者の[[wikipedia:ja:生活の質|生活の質]](Quality of Life; QOL)にも影響を及ぼす可能性がある。老人ホームの居住者を対象とした検討では認知機能障害があまりない対象ではアパシーは主観的なQOLを低下させていたと報告されている<ref name=ref15><pubmed>15804630</pubmed></ref>。このようにアパシーはさまざまな臨床症状に悪影響を与えることが報告されているが、この影響はアパシーによるモチベーションの障害が影響を及ぼしている[[wikipedia:ja:廃用症候群|廃用症候群]]と呼ぶべきものであるのか、その他の要因を介しているのかは今後の検討が必要である。  


== 想定されるメカニズム ==


 アパシーは[[パーキンソン病]]やアルツハイマー病、脳卒中後患者など脳器質疾患患者で多い症状とされ<ref name=ref2 />、アパシーが引き起こされるメカニズムもモチベーションの障害などの症状の神経心理学的な特徴<ref name=ref18><pubmed>16207933</pubmed></ref>、基礎疾患の病態<ref name=ref19><pubmed>17765337</pubmed></ref> <ref name=ref20><pubmed>15964021</pubmed></ref>や治療効果のある薬剤<ref name=ref21><pubmed>12426416</pubmed></ref> <ref name=ref22><pubmed>12670060</pubmed></ref>、脳卒中患者のアパシーにおける脳損傷部位、アパシー患者における[[PET]]や[[SPECT]]、[[MR spectroscopy]]などの機能的脳画像研究などさまざまな検討がなされている(表)。これらの検討からは[[ドーパミン]]や[[アセチルコリン]]などの[[神経伝達物質]]の異常やモチベーションに関連する神経回路として[[前頭葉]]−皮質下回路のどこかが損傷されるとアパシーが引き起こされるとの仮説が提唱39)されているが、報告によって結果には差異が見られる。この結果の差異は使用されている診断基準や重症度評価の違いもあるが、そもそもアパシーはさまざまな疾患で認められる臨床症状あるいは症候群であり、さまざまな原因によって類似した症状が引き起こされるためと考えられる。  
== 想定されるメカニズム  ==
 
 アパシーは[[パーキンソン病]]やアルツハイマー病、脳卒中後患者など脳器質疾患患者で多い症状とされ<ref name="ref2" />、アパシーが引き起こされるメカニズムもモチベーションの障害などの症状の神経心理学的な特徴<ref name="ref18"><pubmed>16207933</pubmed></ref>、基礎疾患の病態<ref name="ref19"><pubmed>17765337</pubmed></ref> <ref name="ref20"><pubmed>15964021</pubmed></ref>や治療効果のある薬剤<ref name="ref21"><pubmed>12426416</pubmed></ref> <ref name="ref22"><pubmed>12670060</pubmed></ref>、脳卒中患者のアパシーにおける脳損傷部位、アパシー患者における[[PET]]や[[SPECT]]、[[MR spectroscopy]]などの機能的脳画像研究などさまざまな検討がなされている(表)。これらの検討からは[[ドーパミン]]や[[アセチルコリン]]などの[[神経伝達物質]]の異常やモチベーションに関連する神経回路として[[前頭葉]]−皮質下回路のどこかが損傷されるとアパシーが引き起こされるとの仮説が提唱39)されているが、報告によって結果には差異が見られる。この結果の差異は使用されている診断基準や重症度評価の違いもあるが、そもそもアパシーはさまざまな疾患で認められる臨床症状あるいは症候群であり、さまざまな原因によって類似した症状が引き起こされるためと考えられる。  
 
{| width="200" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1"
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|-
|
|
|
|}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==