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====Active repression==== | ====Active repression==== | ||
ホモ二量体、あるいは、他の抑制型bHLH転写因子とヘテロ二量体を形成し、ターゲットDNA配列に結合する。WRPWドメインでコリプレッサーであるTLEと結合し、TLEに結合している[[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|ヒストン脱アセチル化酵素]]をリクルートすることによって[[ | ホモ二量体、あるいは、他の抑制型bHLH転写因子とヘテロ二量体を形成し、ターゲットDNA配列に結合する。WRPWドメインでコリプレッサーであるTLEと結合し、TLEに結合している[[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|ヒストン脱アセチル化酵素]]をリクルートすることによって[[クロマチン]]構造変化を引き起こし、ターゲット遺伝子の転写を抑制する。 | ||
一方、TLE非依存型の転写抑制活性も報告されており、Hes1に関しては、bHLHドメインで[[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|Silent information regulator 2]] ([[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|Sir2]])ホモログである[[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|Sirt1]]をリクルートする<ref><pubmed>12535671</pubmed></ref> 。(ショウジョウバエホモログであるhairyやE(spl)では、WRPWモチーフ近傍で[[C-terminal binding protein]] ([[CtBP]])と結合してヒストン脱アセチル化酵素をリクルートすると報告されている。<ref><pubmed>9524128</pubmed></ref>) | 一方、TLE非依存型の転写抑制活性も報告されており、Hes1に関しては、bHLHドメインで[[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|Silent information regulator 2]] ([[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|Sir2]])ホモログである[[アセチル化#ヒストン脱アセチル化酵素|Sirt1]]をリクルートする<ref><pubmed>12535671</pubmed></ref> 。(ショウジョウバエホモログであるhairyやE(spl)では、WRPWモチーフ近傍で[[C-terminal binding protein]] ([[CtBP]])と結合してヒストン脱アセチル化酵素をリクルートすると報告されている。<ref><pubmed>9524128</pubmed></ref>) | ||
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====Passive repression==== | ====Passive repression==== | ||
活性化型のbHLH型転写因子と結合して認識DNA配列への結合を阻害することにより、間接的にターゲット遺伝子の転写を抑制する。例えば、構成的に発現しているbHLH転写因子である[[Eタンパク質]] | 活性化型のbHLH型転写因子と結合して認識DNA配列への結合を阻害することにより、間接的にターゲット遺伝子の転写を抑制する。例えば、構成的に発現しているbHLH転写因子である[[wikipedia:ja:Eタンパク質|Eタンパク質]]と結合し、認識配列である[[wikipedia:E-box|E-box]]への結合を阻害する<ref><pubmed>1400497</pubmed></ref>。ショウジョウバエにおいて[[神経分化]]を促進する[[achate-scute遺伝子]]のマウスホモログ[[Mash1]]は、Eタンパク質とヘテロダイマーを形成して機能する活性化型の転写因子だが、HesはEタンパク質との結合によるpassive repressionと、Mash1のプロモーターのclass C siteに直接結合するactive repressionの二つのメカニズムで、二重にMash1の活性を制御している<ref name="ref3" />。 | ||
=== 発現のオシレーション === | === 発現のオシレーション === | ||
[[Image:Kobayashi fig 3.jpg|thumb|350px|'''図3.Hes1の発現のオシレーション''']] | [[Image:Kobayashi fig 3.jpg|thumb|350px|'''図3.Hes1の発現のオシレーション''']] | ||
Hes遺伝子の発現は、特徴的な[[wikipedia:ja:ネガティブフィードバックループ|ネガティブフィードバックループ]]を形成している。Hes1、Hes7は自身のプロモーター配列に複数の[[N-box配列]]を持っており、自身の転写発現を抑制することができる。しかし、Hes1、Hes7共にmRNA、タンパク質が不安定で速やかに分解されるため、転写抑制が解除される結果、再び発現が誘導される<ref name="ref3" />。この繰り返しによって、Hes1、Hes7の発現は、特徴的な短周期の周期的振動(オシレーション)を示すことが報告されており、[[wikipedia:ja:マウス|マウス]]では約二時間の周期性を示す。 | |||
この周期的な発現パターンは、胚発生の過程において重要な役割を担っていることが分かってきた。Hes1は[[神経分化]] | この周期的な発現パターンは、胚発生の過程において重要な役割を担っていることが分かってきた。Hes1は[[神経分化]]における未分化細胞の維持や[[分化]]のタイミングの制御に<ref><pubmed>18400163</pubmed></ref>、Hes7については周期的な[[体節]]形成のタイミングを測る時計として機能する<ref name="ref10" />。Hes1については、[[線維芽細胞]]での発現振動や、[[ES細胞]]での発現振動が報告されており、前者では[[細胞増殖|細胞の増殖]]に、後者では分化の不均一性に寄与している<ref><pubmed>12399594</pubmed></ref><ref><pubmed>16432209</pubmed></ref><ref><pubmed>17592117</pubmed></ref><ref><pubmed>19684110</pubmed></ref>。 | ||
=== 神経発生における機能 === | === 神経発生における機能 === | ||
Hes1、Hes3、Hes5は発生期の脳に発現し、神経分化を抑制して[[神経幹細胞|神経幹]]/[[神経前駆細胞|前駆細胞]] | Hes1、Hes3、Hes5は発生期の脳に発現し、神経分化を抑制して[[神経幹細胞|神経幹]]/[[神経前駆細胞|前駆細胞]]の[[増殖]]、維持に働く。発生期の脳では、神経幹/前駆細胞として、初期では[[神経上皮細胞]]が、その後(マウスでは胎生約8.5日目から)[[放射状グリア]]細胞が現れるが、[[ノックアウトマウス]]による解析から、Hes1、Hes5は放射状グリア細胞の維持に、Hes1、Hes3、Hes5は神経上皮細胞の維持に必須であることが示されている<ref name="ref3" /><ref name="ref4" />。 | ||
Hes1, Hes3, Hes5は発生期の脳の境界構造の維持にも重要である<ref><pubmed>11500373</pubmed></ref><ref><pubmed>16728479</pubmed></ref>。[[間脳]]の[[前視床]]と[[視床]]を区切る境界構造である[[zona limitans intrathalamica]] (ZLI)は、Hes1、Hes5が無いと構造自体が失われる。Hes1、Hes3、Hes5が無いと、[[中脳]]と[[後脳]]の境界構造である[[isthmus]]で、また、[[神経管]]の左右を区切る境界構造(背側側の[[ | Hes1, Hes3, Hes5は発生期の脳の境界構造の維持にも重要である<ref><pubmed>11500373</pubmed></ref><ref><pubmed>16728479</pubmed></ref>。[[間脳]]の[[前視床]]と[[視床]]を区切る境界構造である[[zona limitans intrathalamica]] (ZLI)は、Hes1、Hes5が無いと構造自体が失われる。Hes1、Hes3、Hes5が無いと、[[中脳]]と[[後脳]]の境界構造である[[isthmus]]で、また、[[神経管]]の左右を区切る境界構造(背側側の[[蓋板]]、腹側側の[[底板]])で、遺伝子発現や構造の異常が生じる。この異常は、これらの領域でHesにより抑制されていた神経分化が昂進することによると考えられる。 | ||
==関連項目== | ==関連項目== |