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最近は、自己に関する神経科学的研究も盛んで、自己意識、自己顔、自己評価などに関する脳内基盤が検討されている。それらによると、自己顔を観察すると、自己以外の見慣れた顔を観察した時と比べて、右側の運動前野や下前頭回などの前頭領域<ref><pubmed>15019708</pubmed></ref>や、右の下頭頂葉<ref><pubmed>15588605</pubmed></ref><ref><pubmed>15808992</pubmed></ref>などの自己に関する情報を処理する領域が賦活することが示されている。 | |||
ヒト乳幼児を対象にした研究は少ないが、近年構造MRIを用いた見当もなされている。Lewis and Carmody (2008)は、1-2歳児を対象に、自己認識の発達と、脳内の変化の関連を調べた。行動実験として、鏡像認知と、2つの尺度が用いられた。1つは、自由遊びの中の、ふり遊びの頻度。もう1つは、子どもが"me", "my", "mine"などの自己に関する発話をするかを、母親に尋ねたものである。これらをまとめて、自己発達の行動指標として、どの脳領域のと関連があるかが調べられた。その結果、左の側頭・頭頂連結部と行動指標の間にのみ有意な相関がみられた。<br> | ヒト乳幼児を対象にした研究は少ないが、近年構造MRIを用いた見当もなされている。Lewis and Carmody (2008)は、1-2歳児を対象に、自己認識の発達と、脳内の変化の関連を調べた。行動実験として、鏡像認知と、2つの尺度が用いられた。1つは、自由遊びの中の、ふり遊びの頻度。もう1つは、子どもが"me", "my", "mine"などの自己に関する発話をするかを、母親に尋ねたものである。これらをまとめて、自己発達の行動指標として、どの脳領域のと関連があるかが調べられた。その結果、左の側頭・頭頂連結部と行動指標の間にのみ有意な相関がみられた。<br> | ||
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2013年4月23日 (火) 15:38時点における版
鏡像認知とは、個体が鏡に映った像を自己のものだと認識することである。もとはチンパンジーを対象にした研究から始まり、ヒトの乳幼児を対象にした研究に広がった。現在では様々な種を対象にした研究がなされており、鏡像認知のテストであるマークテストやルージュテストは、自己認識のリトマス紙的な指標として用いられている。
チンパンジーを対象にした鏡像認知
Gallupは,チンパンジーの自己認識を調べるため、鏡を見たことのないチンパンジーに鏡を見せて,その様子を観察した[1]。鏡を見せた当初は,鏡に映った像に対して威嚇するような行動をとるなど,その像が自分であるとは認識している様子はなく,むしろ他者がいるかのように振る舞っていた。ところが,数日もたつとこのような行動はなくなり,むしろ,鏡を使って歯の隙間に挟まった食べ物をとるなど,自分の体を整えるような行動が見られるようになった。Gallupは、より実験的に自己認識を調べるため、マークテストを実施した。この実験では、チンパンジーが麻酔をされている間に,眉や耳のあたりに赤い染料をつけられた。そして,麻酔から醒めた後に,チンパンジーがどのような行動をとるかが検討された。その結果,鏡を見せる前には,チンパンジーは赤い染料部分がつけられた部分をほとんど触れないのに対して,鏡を見せた後には頻繁にその部分を頻繁に触れることが観察された。鏡を使って自分自身に対して行動が向けられたことから,チンパンジーは鏡に映った像を自分であると理解できると結論づけられた。
このマークテストは,自己認識の発達のリトマス紙的存在として様々な種の動物に用いられており,霊長類以外ではイルカやアジアゾウなどは自己像について感受性があるという結果が示されている[2][3]。サルについては,訓練をすることによって同様の結果が見られることも示されている[4]。
ヒト幼児を対象にした鏡像認知
ヒト乳幼児を対象にした鏡像認知実験は,口紅などをつけるのでルージュテストと呼ばれることが多い。これまでの研究によると,ルージュテストに通過できるようになるのは,2歳前後だと結論づけられている[5]。1歳以下の乳児は鏡を見せられても,チンパンジーが初めて鏡に接したときと類似して,他者に対するようにふるまう。18か月以降になると,鏡に映った自己像を見て,自分の顔についた染料を触れるようになる。2歳を過ぎるころには,多くの子どもがこのルージュテストに通過することができるようになる。このことと関連して,2歳前後になると,写真に写った自分を理解できるようにもなる[6]。
さらに,この時期の子どもは,恥ずかしがったりするなど,自己と関連するような感情を示すようになり[7],自分の名前を呼ぶようになったりもする。
脳内基盤
最近は、自己に関する神経科学的研究も盛んで、自己意識、自己顔、自己評価などに関する脳内基盤が検討されている。それらによると、自己顔を観察すると、自己以外の見慣れた顔を観察した時と比べて、右側の運動前野や下前頭回などの前頭領域[8]や、右の下頭頂葉[9][10]などの自己に関する情報を処理する領域が賦活することが示されている。
ヒト乳幼児を対象にした研究は少ないが、近年構造MRIを用いた見当もなされている。Lewis and Carmody (2008)は、1-2歳児を対象に、自己認識の発達と、脳内の変化の関連を調べた。行動実験として、鏡像認知と、2つの尺度が用いられた。1つは、自由遊びの中の、ふり遊びの頻度。もう1つは、子どもが"me", "my", "mine"などの自己に関する発話をするかを、母親に尋ねたものである。これらをまとめて、自己発達の行動指標として、どの脳領域のと関連があるかが調べられた。その結果、左の側頭・頭頂連結部と行動指標の間にのみ有意な相関がみられた。
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