「カイニン酸型グルタミン酸受容体」の版間の差分

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== 病態との関連 ==
== 病態との関連 ==


=== 1 ===
==== てんかん ====


=== 2 ===
マウスないしラットでのカイニン酸腹腔内投与は、発作性神経活動やヒトの側頭葉てんかんで見られるような神経損傷パターンを引き起こすことから、実験的てんかんモデルとして広く用いられてきた。GluK2を欠損させたマウスでは、海馬CA3野錐体細胞のカイニン酸への感受性が低下しており、またカイニン酸投与を行ってもてんかん発作を生じない。GluK1選択的アンタゴニストは、ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニストのピロカロピン投与や電気刺激によって引き起こされる海馬スライスでのてんかん様活動やin vivoでの発作性神経活動を抑える。てんかん原生を獲得した海馬歯状回には異所性に苔状線維投射が生じるが、この異所性シナプスではカイニン酸受容体応答を生じるようになる。


=== 3 ===
==== 慢性疼痛 ====


カイニン酸受容体は脊髄の痛覚伝達路に選択的に発現し、その局在の特異性に基づいて痛覚制御のターゲットとして注目を集め、多くの生理学的な研究が行われてきた。感覚神経の後根神経節では低濃度のカイニン酸によって脱分極が引き起こされる。また、その神経終末部のカイニン酸受容体が活性化すると、シナプス前部からの神経伝達物質の放出が抑制される。炎症性また神経障害性の慢性疼痛に対して、GluK1を含むカイニン酸受容体の抑制は鎮痛効果を示すことが報告されている。
==== 片頭痛 ====
疼痛の研究は片頭痛の動物モデルに適応されてきている。脳幹三叉神経核尾側の神経細胞は、カプサイシンによる髄膜への侵害刺激に反応してc-Fosが発現するが、スマトリプタンやジヒドロエルゴタミンなどの片頭痛に効果的な薬物の前処置によりc-Fosの発現は低下し、GluK1アンタゴニストも同様の効果を示すことが報告されている。


<references/>
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(執筆者:鈴木江津子・神谷温之、担当編集委員:尾藤晴彦)
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