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== 細胞種 ==
== 細胞種 ==
 海馬の主要な細胞は錐体細胞(pyramidal cell)である。錐体細胞層は、細胞の大きさと形状から、さらにCA1野、CA2野、CA3野と3つに分類される[1, 2]。CAは、フランスの解剖学者Garengeotが1742年にアンモン角(cornu ammonis)と名付けたことに由来している。
 海馬の主要な細胞は錐体細胞(pyramidal cell)である。錐体細胞層は、細胞の大きさと形状から、さらにCA1野、CA2野、CA3野と3つに分類される<ref name=ref1><pubmed>17659782</pubmed></ref> <ref name=ref2>'''Lorente de Nó, R.'''<br>Studies of the structure of the cerebral cortex. II. Continuation of the study of the ammonic system. <br>''J Psychol Neurol'' 46, 113-177. 1934</ref>。CAは、フランスの解剖学者Garengeotが1742年にアンモン角(cornu ammonis)と名付けたことに由来している。


 海馬錐体細胞の細胞体は錐体細胞層の厚みの方向に約3~6個、同じ向きに並んでいる。錐体細胞は細胞体層を挟んで両方向に樹状突起を伸ばしている。尖端樹状突起(apical dendrite)は細胞体の尖頂側(錐体細胞の形は円錐形である)から起始し、海馬の中心方向(歯状回側)へと伸びている。CA1野の錐体細胞は、存在する層やカルビンジンに対する免疫標識によって3つのサブタイプに分類される[3-7]
 海馬錐体細胞の細胞体は錐体細胞層の厚みの方向に約3~6個、同じ向きに並んでいる。錐体細胞は細胞体層を挟んで両方向に樹状突起を伸ばしている。尖端樹状突起(apical dendrite)は細胞体の尖頂側(錐体細胞の形は円錐形である)から起始し、海馬の中心方向(歯状回側)へと伸びている。CA1野の錐体細胞は、存在する層やカルビンジンに対する免疫標識によって3つのサブタイプに分類される<ref name=ref3><pubmed>6751467</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>8757246</pubmed></ref> <ref name=ref5><pubmed>9875359</pubmed></ref> <ref name=ref6><pubmed>17185334</pubmed></ref> <ref name=ref7><pubmed>1702115</pubmed></ref>


 海馬錐体細胞の樹状突起の定量的な解析の結果、CA1錐体細胞は位置によらず樹状突起の規模はほぼ一定で、平均すると全長は約12,000~13,000 μmであることが知られている[8, 9]。平均的なCA1錐体細胞は興奮性入力を30,000、抑制性入力を1,700ほど持っていると見積もられている[9]。抑制性入力は尖端樹状突起の近位に多く、スパインを介さずに主軸(shaft)に直接入力している[10]
 海馬錐体細胞の樹状突起の定量的な解析の結果、CA1錐体細胞は位置によらず樹状突起の規模はほぼ一定で、平均すると全長は約12,000~13,000 μmであることが知られている<ref name=ref8><pubmed>8576427</pubmed></ref> <ref name=ref9><pubmed>11226691</pubmed></ref>。平均的なCA1錐体細胞は興奮性入力を30,000、抑制性入力を1,700ほど持っていると見積もられている<ref name=ref9 />。抑制性入力は尖端樹状突起の近位に多く、スパインを介さずに主軸(shaft)に直接入力している<ref name=ref10><pubmed>11182239</pubmed></ref>


 錐体細胞層以外の層に存在するニューロンはインターニューロン(interneuron)と推定されるが、必ずしもこの限りではない。例えば、CA1野の放線状層からは、樹状突起にスパインを有する大きな細胞を見出している。このニューロンの軸索は海馬采(fimbria)に向かい、ミエリン化されていて太い[5]
 錐体細胞層以外の層に存在するニューロンはインターニューロン(interneuron)と推定されるが、必ずしもこの限りではない。例えば、CA1野の放線状層からは、樹状突起にスパインを有する大きな細胞を見出している。このニューロンの軸索は海馬采(fimbria)に向かい、ミエリン化されていて太い<ref name=ref5 />


 インターニューロンは古来、局所に集中した軸索叢(plexus)を持ち、GABA(抑制性神経伝達物質のひとつ)を放出し、樹状突起にスパインがない神経細胞として定義されている。細胞標識法や電気生理学的な記録法が進歩し、インターニューロンは従来考えられていたよりもずっと多様であることがわかり、伝統的な定義だけでは、どれも必ず例外が現れる[11]。しかし実質上は、歯状回や海馬のインターニューロンのほとんどは、シナプス標的を局所に持ち、スパインを欠き、GABA作動性であると大雑把に捉えて問題はない[12]。海馬CA1野のインターニューロンには、存在する場所やシナプス標的によって、少なくとも21種の亜種が存在する[13]
 インターニューロンは古来、局所に集中した軸索叢(plexus)を持ち、GABA(抑制性神経伝達物質のひとつ)を放出し、樹状突起にスパインがない神経細胞として定義されている。細胞標識法や電気生理学的な記録法が進歩し、インターニューロンは従来考えられていたよりもずっと多様であることがわかり、伝統的な定義だけでは、どれも必ず例外が現れる<ref name=ref11><pubmed></pubmed></ref>。しかし実質上は、歯状回や海馬のインターニューロンのほとんどは、シナプス標的を局所に持ち、スパインを欠き、GABA作動性であると大雑把に捉えて問題はない<ref name=ref12><pubmed></pubmed></ref>。海馬CA1野のインターニューロンには、存在する場所やシナプス標的によって、少なくとも21種の亜種が存在する<ref name=ref13><pubmed></pubmed></ref>


== 解剖学的特徴 ==
== 解剖学的特徴 ==
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 場所細胞とは、動物が特定の場所(場所受容野)に存在する時に、高い頻度で発火するニューロンのことである。場所細胞は、Tolmanが提唱した認知地図仮説の裏付けともされている。
 場所細胞とは、動物が特定の場所(場所受容野)に存在する時に、高い頻度で発火するニューロンのことである。場所細胞は、Tolmanが提唱した認知地図仮説の裏付けともされている。


 海馬CA1野の場所細胞の細胞内動態(発火メカニズム)は、生体動物を対象としたパッチクランプ記録法により明らかになった[14]。また、ある錐体細胞が場所受容野を持つか持たないか、すなわち、場所細胞となるかならないかは、細胞の内因的特性によって予め決まっている[15]。また海馬CA1錐体細胞は、脱分極性および過分極性電流の注入により、可逆的に場所細胞へと変化することも知られている[16]
 海馬CA1野の場所細胞の細胞内動態(発火メカニズム)は、生体動物を対象としたパッチクランプ記録法により明らかになった<ref name=ref14><pubmed></pubmed></ref>。また、ある錐体細胞が場所受容野を持つか持たないか、すなわち、場所細胞となるかならないかは、細胞の内因的特性によって予め決まっている<ref name=ref15><pubmed></pubmed></ref>。また海馬CA1錐体細胞は、脱分極性および過分極性電流の注入により、可逆的に場所細胞へと変化することも知られている<ref name=ref16><pubmed></pubmed></ref>
 
== 参考文献 ==
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