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DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年7月9日 原稿完成日:2013年8月20日<br> | |||
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I=N''P''<sub>o</sub>i | I=N''P''<sub>o</sub>i | ||
一方で、図2に図解したケースでは、開口確率''P''<sub>o</sub>が同じにも関わらずそれぞれのゲート機能(振る舞い)は異なっていると解釈できる。つまり''P''<sub>o</sub>はイオンチャネルの開きやすさの指標となるが、[[ゲート]]機能の絶対的な指標ではない。 | |||
イオンチャネルの機能は[[膜電位]]変化や選択的な[[リガンド]]との結合で制御されるが、このような場合、開口確率が変化していることが多い。 | |||
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== 開口確率の求め方 == | |||
[[Image:Open_probability_fig1.png|thumb|right|336x257px|<b>図1.Kir2.1チャネルのsingle channel recordingの解析</b><br>A: single channel current ([K]<sub>o</sub>=[K]<sub>i</sub>=150 mM、-100 mV、室温)。 B: Amplitude Histogram。この場合の''P''<sub>o</sub>は0.91であった。]] | |||
[[Image:Open_probability_fig2.png|thumb|right|336px|'''図2.異なる振る舞いをみせるシングルチャネルの仮想的電流''']] | |||
一個のイオンチャネルからの記録を行なっている時、このイオンチャネルの開口確率(''P''<sub>o</sub>)はamplitude histogramから簡単に求めること出来る(図1B) 。チャネルが開口している状態の部分の面積(チャネルが開口している時間の長さに比例)をヒストグラム全体の面積(記録を行った時間の長さに比例)で割れば良い。 | |||
複数個(N個)のチャネルがパッチ内にあるときは、そのパッチのチャネルの平均''P''<sub>o</sub>は、<br> <br> <math>P_o=\sum_{k=1}^NkAk/k\sum_{k=1}^NAk</math> <br> <br> で求めることが出来る。 | |||
例えば、3個のイオンチャネルが含まれる場合は、以下の式から求めることが出来る。<br> <br> <math>P_o=\frac{3A3+2A2+1A1+0A0}{3 (A3+A2+A1+A0)}</math> <br> | |||
ここで、A3は3個全てが開いている状態の部分の面積である。<br> | |||
== | ==開口確率の構造基盤== | ||
開口確率はチャネルの開閉に繋がる構造変化の平衡の全体を反映するものである。つまり、この平衡に影響を及ぼす部位はチャネルの開口確率の値に関わる。 | |||
チャネルの開口確率を決定している機構的な構造としては以下のようなものが考えられる。 | |||
#チャネルの開構造open structure、閉構造closed structureの構造的安定性に関わる部位 | |||
#チャネルのゲーティングに繋がる構造変化に関わる部位 | |||
#リガンド結合部位や電位センサー領域などチャネルのゲート機能を制御する外部刺激や情報(神経伝達物質や薬物なども含む)を受容する部位 | |||
上記1-3は形式上分類したが、それらはお互い密接に関係するものであるため、ある部位がどの機能に関わるか定義できない可能性もある。 | |||
また、これらの構造的基盤はチャネルの種類によって異なるため、例えば活性化状態にあるイオンチャネルにおける開口確率もチャネルの種類によって異なる。 | |||
==関連項目== | |||
*[[イオンチャネル]] | *[[イオンチャネル]] | ||
*[[ゲート]] | |||
*[[パッチクランプ法]] | |||
== 参考文献 == | |||
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2014年6月26日 (木) 10:11時点における最新版
古谷 和春、倉智 嘉久
大阪大学 医学系研究科
DOI:10.14931/bsd.2016 原稿受付日:2012年7月9日 原稿完成日:2013年8月20日
担当編集委員:林 康紀(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
英:open probability、英語略:Po 独:Offenwahrscheinlichkeit 仏:probabilité d'ouverture
イオンチャネルのシングルチャネル記録を行なうと、チャネルの開閉が確率論的な振る舞いをすることが分かる(図1A)。イオンチャネルが開いた状態にある確率を開口確率(もしくは開確率)という[1]。イオンチャネルの開きやすさの指標として用いられ、イオンチャネルの個数N、シングルチャネル電流iとともに生体膜のイオン電流量を規定する。
I=NPoi
一方で、図2に図解したケースでは、開口確率Poが同じにも関わらずそれぞれのゲート機能(振る舞い)は異なっていると解釈できる。つまりPoはイオンチャネルの開きやすさの指標となるが、ゲート機能の絶対的な指標ではない。
イオンチャネルの機能は膜電位変化や選択的なリガンドとの結合で制御されるが、このような場合、開口確率が変化していることが多い。
開口確率の求め方
一個のイオンチャネルからの記録を行なっている時、このイオンチャネルの開口確率(Po)はamplitude histogramから簡単に求めること出来る(図1B) 。チャネルが開口している状態の部分の面積(チャネルが開口している時間の長さに比例)をヒストグラム全体の面積(記録を行った時間の長さに比例)で割れば良い。
複数個(N個)のチャネルがパッチ内にあるときは、そのパッチのチャネルの平均Poは、
で求めることが出来る。
例えば、3個のイオンチャネルが含まれる場合は、以下の式から求めることが出来る。
ここで、A3は3個全てが開いている状態の部分の面積である。
開口確率の構造基盤
開口確率はチャネルの開閉に繋がる構造変化の平衡の全体を反映するものである。つまり、この平衡に影響を及ぼす部位はチャネルの開口確率の値に関わる。
チャネルの開口確率を決定している機構的な構造としては以下のようなものが考えられる。
- チャネルの開構造open structure、閉構造closed structureの構造的安定性に関わる部位
- チャネルのゲーティングに繋がる構造変化に関わる部位
- リガンド結合部位や電位センサー領域などチャネルのゲート機能を制御する外部刺激や情報(神経伝達物質や薬物なども含む)を受容する部位
上記1-3は形式上分類したが、それらはお互い密接に関係するものであるため、ある部位がどの機能に関わるか定義できない可能性もある。 また、これらの構造的基盤はチャネルの種類によって異なるため、例えば活性化状態にあるイオンチャネルにおける開口確率もチャネルの種類によって異なる。
関連項目
参考文献
- ↑ Bertil Hille
Ion Channels of Excitable Membrane third edition
Sinauer Associates,Inc.(Massachusetts,USA)