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英語名:caffeine 独:koffein、仏:caféine 
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''九州大学 大学院薬学府''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年8月19日 原稿完成日:2014年1月5日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英語名:caffeine 独:Koffein、仏:caféine 
 
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 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。天然に存在するメチルキサンチンとしては、他にテオフィリン、テオブロミンなどがある。コーヒー、紅茶、茶等に含まれるが、カフェインの含有量はコーヒーに最も多い。1819年にドイツのフリードリヒ・ルンゲによってコーヒーから単離された。メチルキサンチン類は、非選択的なホスホジエステラーゼ阻害作用を有し、cAMPを増加させる。^ Weinberg, BA; BK Bealer (2001). The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6
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 カフェインは、主にCYP1A2により肝で代謝を受け、3種類のジメチルキサンチン(パラキサンチン、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。したがって、カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤(シメチジン、フルボキサミン、オランザピンなど)との併用では中枢作用が増強されることがある。また、モノアミン酸化酵素でも代謝され、モノアミン酸化酵素阻害薬との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。
 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。紅茶、茶等に含まれるが、コーヒーに最も多い。中枢刺激作用を持つ。その作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害作用、アデノシン受容体阻害作用などが知られている。}}
 
ホスホジエステラーゼ
 
 ホスホジエステラーゼは11のファミリーに分類されている。
 
ホスホジエステラーゼ1ファミリー
 
 カルシウムおよびカルモデュリン依存性のホスホジエステラーゼで、さらに1A、1B、1Cに分類される<ref><pubmed> 4331465 </pubmed></ref>。ホスホジエステラーゼ1Aは、数種の細胞機能において、フィードバックをかけながら調節している。ホスホジエステラーゼ1Bノックアウトマウスは、自発運動量が増加し、記憶・学習能力が低下する<ref><pubmed>12077213 </pubmed></ref>。
 
ホスホジエステラーゼ2ファミリー
 
 ホスホジエステラーゼ2ファミリーは、GAFドメインのひとつに結合しているcGMPによって、アロステリックに刺激される。ホスホジエステラーゼ2の阻害剤は、記憶の獲得と強化を促進すると考えられる<ref><pubmed> 17207788 </pubmed></ref>。
 
ホスホジエステラーゼ3ファミリー
 
 ホスホジエステラーゼ3Aと3Bに分類される。ホスホジエステラーゼ3阻害剤には、シロスタゾール、ミルリノン、アムリノンなどが循環器疾患に用いられる薬物が広く知られるが、中枢作用は比較的少ない。
 
ホスホジエステラーゼ4ファミリー
 
 PDE4阻害剤であるrolipramなどは、抗うつ効果のみならず、学習・記憶を増強する報告がある<ref><pubmed> 15498513 </pubmed></ref>, <ref><pubmed> 15272207</pubmed></ref>。
 
ホスホジエステラーゼ5ファミリー
 
 PDE5は、学習・記憶に関連しているという報告がある<ref><pubmed>15630588 </pubmed></ref>。
 
ホスホジエステラーゼ6~8ファミリー
 
ホスホジエステラーゼ9ファミリー
 
 PDE9阻害剤であるBAY73-6691が、アルツハイマー病治療に有効である可能性があり、研究が進められている(^ Wunder F, Tersteegen A, Rebmann A, Erb C, Fahrig T, Hendrix M. Characterization of the first potent and selective PDE9 inhibitor using a cGMP reporter cell line. Molecular Pharmacology. 2005 Dec;68(6):1775-81. PMID 16150925 )。また、他のPDE9阻害剤が、動物モデルにおける長期増強現象ならびに認知機能の改善効果があることが報告されている(Hendrix, 2005)。
 
ホスホジエステラーゼ10ファミリー
 
 PDE10は中枢疾患治療のターゲットになりうる。PDE10阻害剤であるpapavarineは、統合失調症によって誘発される認知機能障害を改善する。その他、長期増強現象、ハンチントン病、にも関与している。
 
ホスホジエステラーゼ11ファミリー


 最も新しく発見されたホスホジエステラーゼファミリーである。中枢作用についての詳細は、今のところ明らかになっていない。
==概要==
 カフェインは、天然に存在する[[メチルキサンチン]]類に属する[[wj:アルカロイド|アルカロイド]]で、[[wj:コーヒー|コーヒー]]、[[wj:茶|茶]]など、さまざまな植物の種子、葉などに含まれるが、中でも[[wj:コーヒー|コーヒー]]に最も多く含まれている。なお、天然に存在するメチルキサンチンとしては、他に[[テオフィリン]]、[[テオブロミン]]などがある。カフェインは、1819年にドイツの[[w:Friedlieb Ferdinand Runge|フリードリープ・ルンゲ]]によって、コーヒーから単離された。コーヒー等の天然由来成分として摂取されている他、[[wj:清涼飲料水|清涼飲料水]]にも含まれていることがある。また、市販の[[wj:総合感冒薬|総合感冒薬]]、[[wj:解熱鎮痛薬|解熱鎮痛薬]]などにも含まれている。


中枢神経作用
== 薬理作用 ==
 中枢神経刺激作用として、[[覚醒作用]]、および[[精神作業]]効率を高め、[[疲労]]感を減弱させる作用を持つ<ref><pubmed> 12204388 </pubmed></ref>。一方、離脱症状として、[[頭痛]]、[[易疲労感]]、[[眠気]]、[[不快気分]]、いらいら、集中困難、吐き気、筋のこわばりなどがある<ref>American Psychiatric Association (2013) Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Fifth Edition. </ref>。その他の作用としては、[[wj:利尿|利尿]]作用、[[wj:平滑筋|平滑筋]]弛緩作用、[[wj:心筋|心筋]]刺激作用などがある<ref>http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/summary/summary.cgi?cid=2519</ref>。


 大脳皮質の感覚受容器、運動中枢に作用。用量増加により延髄の呼吸中枢刺激。延髄の迷走神経中枢刺激。弱いが精神的依存を誘発する。
==作用機序==
 カフェインの作用機序としては、非選択的な[[ホスホジエステラーゼ]]阻害作用により[[cAMP]]を増加させる作用<ref>Weinberg, BA; BK Bealer<br>The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6, 2001</ref>、および[[アデノシン受容体]]阻害作用<ref><pubmed>6309393</pubmed></ref>、および[[細胞内カルシウムストア]]への作用<ref><pubmed>3193957</pubmed></ref>などが知られている


精神疾患
==代謝==
 カフェインは、主に[[CYP1A2]]により肝で代謝を受け、3種類の[[ジメチルキサンチン]]([[パラキサンチン]]、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤([[フルボキサミン]]など)や、他のCYP1A2により代謝される薬剤([[オランザピン]]など)との併用で、中枢作用が増強されることがある。また、[[モノアミン酸化酵素]]阻害作用があり、[[モノアミン酸化酵素阻害薬]]との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。


 カフェインは中枢興奮作用を有するため、過剰摂取の代表的症状としては、不眠を誘発する。カフェインの摂取は、パニック障害を悪化させる可能性があるが、これはアデノシン産生低下に起因する。
==副作用==
 カフェインは中枢興奮作用を有するため、過剰摂取の代表的症状としては、[[不眠]]を誘発する。カフェインの摂取は、[[パニック障害]]を悪化させる可能性が報告されている。カフェインが[[精神依存]]を引き起こすかどうかについては議論がある。


== 参考文献 ==
<references />
<references />

2014年6月26日 (木) 11:29時点における最新版

島添 隆雄
九州大学 大学院薬学府
DOI:10.14931/bsd.3560 原稿受付日:2013年8月19日 原稿完成日:2014年1月5日
担当編集委員:加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名:caffeine 独:Koffein、仏:caféine 

カフェイン
Caffeine molecule
Systematic (IUPAC) name
1,3,7-Trimethyl-1H-purine-2,6(3H,7H)-dione
3,7-Dihydro-1,3,7-trimethyl-1H-purine-2,6-dione
Clinical data
AHFS/Drugs.com monograph
Pregnancy cat. C(US)
Legal status Unscheduled (AU) GSL (UK) OTC (US)
Dependence liability Moderate
Routes Oral, insufflation, enema
Pharmacokinetic data
Bioavailability 99%
Protein binding 17% to 36%
Metabolism demethylation by CYP1A2
Half-life 5 hours
Excretion urine (100%)
Identifiers
ATC code N06BC01
PubChem CID 2519
DrugBank DB00201
ChemSpider 2424 YesY
UNII 3G6A5W338E YesY
KEGG D00528 YesY
ChEBI CHEBI:27732 YesY
ChEMBL CHEMBL113 YesY
Chemical data
Formula C8H10N4O2 
Mol. mass 194.19 g/mol
SMILES eMolecules & PubChem

 カフェインはメチルキサンチン類に属するアルカロイドである。紅茶、茶等に含まれるが、コーヒーに最も多い。中枢刺激作用を持つ。その作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害作用、アデノシン受容体阻害作用などが知られている。

概要

 カフェインは、天然に存在するメチルキサンチン類に属するアルカロイドで、コーヒーなど、さまざまな植物の種子、葉などに含まれるが、中でもコーヒーに最も多く含まれている。なお、天然に存在するメチルキサンチンとしては、他にテオフィリンテオブロミンなどがある。カフェインは、1819年にドイツのフリードリープ・ルンゲによって、コーヒーから単離された。コーヒー等の天然由来成分として摂取されている他、清涼飲料水にも含まれていることがある。また、市販の総合感冒薬解熱鎮痛薬などにも含まれている。

薬理作用

 中枢神経刺激作用として、覚醒作用、および精神作業効率を高め、疲労感を減弱させる作用を持つ[4]。一方、離脱症状として、頭痛易疲労感眠気不快気分、いらいら、集中困難、吐き気、筋のこわばりなどがある[5]。その他の作用としては、利尿作用、平滑筋弛緩作用、心筋刺激作用などがある[6]

作用機序

 カフェインの作用機序としては、非選択的なホスホジエステラーゼ阻害作用によりcAMPを増加させる作用[7]、およびアデノシン受容体阻害作用[8]、および細胞内カルシウムストアへの作用[9]などが知られている

代謝

 カフェインは、主にCYP1A2により肝で代謝を受け、3種類のジメチルキサンチンパラキサンチン、テオブロミン、テオフィリン)になる。これらの化合物も、やはりホスホジエステラーゼを非特異的に阻害する。カフェインはCYP1A2を阻害する薬剤(フルボキサミンなど)や、他のCYP1A2により代謝される薬剤(オランザピンなど)との併用で、中枢作用が増強されることがある。また、モノアミン酸化酵素阻害作用があり、モノアミン酸化酵素阻害薬との併用では頻脈・血圧上昇が見られやすい。

副作用

 カフェインは中枢興奮作用を有するため、過剰摂取の代表的症状としては、不眠を誘発する。カフェインの摂取は、パニック障害を悪化させる可能性が報告されている。カフェインが精神依存を引き起こすかどうかについては議論がある。

参考文献

  1. Caffeine, International Occupational Safety and Health Information Centre (CIS)
  2. Caffeine (anhydrous). sigmaaldrich.com
  3. Harry G. Brittain, Richard J. Prankerd
    Profiles of Drug Substances, Excipients and Related Methodology, volume 33: Critical Compilation of pKa Values for Pharmaceutical Substances
    Academic Press, 2007
  4. Smith, A. (2002).
    Effects of caffeine on human behavior. Food and chemical toxicology : an international journal published for the British Industrial Biological Research Association, 40(9), 1243-55. [PubMed:12204388] [WorldCat] [DOI]
  5. American Psychiatric Association (2013) Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders. Fifth Edition.
  6. http://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/summary/summary.cgi?cid=2519
  7. Weinberg, BA; BK Bealer
    The World of Caffeine. Routledge. ISBN 0-415-92722-6, 2001
  8. Daly, J.W., Butts-Lamb, P., & Padgett, W. (1983).
    Subclasses of adenosine receptors in the central nervous system: interaction with caffeine and related methylxanthines. Cellular and molecular neurobiology, 3(1), 69-80. [PubMed:6309393] [WorldCat] [DOI]
  9. Thayer, S.A., Hirning, L.D., & Miller, R.J. (1988).
    The role of caffeine-sensitive calcium stores in the regulation of the intracellular free calcium concentration in rat sympathetic neurons in vitro. Molecular pharmacology, 34(5), 664-73. [PubMed:3193957] [WorldCat]