「超解像蛍光顕微鏡」の版間の差分
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==光学顕微鏡の分解能== | ==光学顕微鏡の分解能== | ||
===光の回折と点拡がり関数、エアリーディスク=== | |||
光は電磁波の一種であり、波としての性質を持つ。波である光が、限られた大きさの開口を通ると、通り抜けた光の波面はホイヘンス-フレネルの原理によって変化する。開口面から十分遠い面での光波の振幅分布は、フラウンホーファー回折と呼ばれる分布を示す。 | 光は電磁波の一種であり、波としての性質を持つ。波である光が、限られた大きさの開口を通ると、通り抜けた光の波面はホイヘンス-フレネルの原理によって変化する。開口面から十分遠い面での光波の振幅分布は、フラウンホーファー回折と呼ばれる分布を示す。 | ||
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<math> \lambda </math>: 光の波長。 | <math> \lambda </math>: 光の波長。 | ||
と表される。この分布は、中心に高い山があり、それを同心円状の低い縞が囲むような形になる。最初の極小までの半径は、 | |||
<math>x( \theta ) = \frac{2\pi a \sin \theta }{ \lambda } \approx 3.831706...</math>, | |||
∴ <math> \sin \theta \approx 1.2197\frac{ \lambda }{2 a } = 0.6098\frac{ \lambda }{ a }</math> | |||
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===2点分解能=== | |||
光学顕微鏡の分解能は、2点分解能で表現される事が多い。つまり、2つの点光源を、異なる点として識別できるような、2点間の最小角度、又は距離である。螢光顕微鏡のように、独立に発光する二つの光源の場合、収差のない理想的な光学系では、レイリー基準により、上の式で表される、エアリーディスクの最初の極小までの半径に相当する角度だとされる。<ref group="注">Abbeの回折限界, Sparrowの回折限界</ref><ref group="注">明視野、condenserを考慮したもの。Hopkinsの分解能</ref> | |||
この2点分解能を、顕微鏡の試料面上の2光源間の最小距離<math>R</math>で表すと、<math>R = f \sin \theta</math> (<math>f</math>: 焦点距離)となる。開口数<math>\mathrm{NA} = \sin \alpha \approx a / f</math> (<math>\alpha </math>: 光源からレンズの開口半径を見込む角度)とすると、 | |||
<math>R = 1.2197\frac{ \lambda }{2 \mathrm{NA} } = 0.6098\frac{ \lambda }{ \mathrm{NA} }</math> | |||
これが、光学顕微鏡の2点分解能としてよく使われる式である。 | |||
高倍率の対物レンズでは、入射角の大きい光の全反射を防いで、開口数を大きくするため、液浸が使われる事が多い。その場合、<math> \mathrm{NA} = n \sin \alpha</math> (<math>n</math>: レンズと物体の間の媒質の屈折率。) となり、開口数が1より大きいレンズも使えるようになる。2点分解能の式は同様である。波長<math>\lambda</math> = 550 nm, 油浸で開口数<math>\mathrm{NA}</math> = 1.4 - 1.6程度だと、分解能<math>R</math>は、240 - 210 nm程度になる。 | |||
==超解像蛍光顕微鏡== | ==超解像蛍光顕微鏡== | ||
超解像蛍光顕微鏡とは、上述の、対物レンズの回折限界で制限される分解能を越える (超解像)蛍光像を作る顕微鏡のことである。分解能を超える手法としては、RESOLFTを利用するもの、単分子の局在は2点分解能よりも細かく決められる事を利用するもの、励起照明を工夫して回折限界以上の高周波成分の情報を得るもの、統計学的手法を使うものなど、多くの手法が開発、実用化されている。ここでは、代表的なものを紹介する。 | 超解像蛍光顕微鏡とは、上述の、対物レンズの回折限界で制限される分解能を越える (超解像)蛍光像を作る顕微鏡のことである。分解能を超える手法としては、RESOLFTを利用するもの、単分子の局在は2点分解能よりも細かく決められる事を利用するもの、励起照明を工夫して回折限界以上の高周波成分の情報を得るもの、統計学的手法を使うものなど、多くの手法が開発、実用化されている。ここでは、代表的なものを紹介する。 | ||
===RESOLFT (REversible Saturable OpticaL Fluorescence Transitions)=== | ===RESOLFT (REversible Saturable OpticaL Fluorescence Transitions)=== | ||
===Localization Microscopy | <ref><b> S.W. Hell, S. Jakobs, L. Kastrup</b> | ||
<p style=" border:none; outset none; margin:0em; padding:0em; background-color:#fff;"> | |||
Imaging and writing at the nanoscale with focused visible light through saturable optical transitions | |||
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<i>Appl. Phys. A</i>: 2003, 77(7);859-860 [http://www.worldcat.org/issn/1432-0630 [WorldCat.org]] | |||
[http://dx.doi.org/10.1007/s00339-003-2292-4 [DOI]] | |||
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<ref><pubmed>14595362</pubmed></ref> | |||
<ref><pubmed>15464894</pubmed></ref> | |||
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===Localization Microscopy=== | |||
#PALM, fPALM | |||
#STORM, dSTORM | |||
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==注釈== | |||
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==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |
2014年9月10日 (水) 00:36時点における版
川岸 将彦, 寺田 純雄
東京医科歯科大学
英: Super-resolution microscopy
光学顕微鏡は、光の屈折、反射などを使って、物体を拡大して観察する器械である。しかし、光という電磁波を利用するため、その分解能は、光の回折限界(可視光では250 nm程度)によって制限される。そのため、従来の光学顕微鏡では、それよりも小さい構造を見る事は出来なかった。螢光顕微鏡とは、励起光を当てて、螢光色素、螢光蛋白質から発せられる螢光を観察する光学顕微鏡であるが、やはり、分解能には制限があった。それに対して、超解像螢光顕微鏡とは、励起照明法や、観察される螢光分子、解析方法などの工夫により、光の回折限界で制限される分解能を超える (超解像)螢光像を作る顕微鏡である。
光学顕微鏡の分解能
光の回折と点拡がり関数、エアリーディスク
光は電磁波の一種であり、波としての性質を持つ。波である光が、限られた大きさの開口を通ると、通り抜けた光の波面はホイヘンス-フレネルの原理によって変化する。開口面から十分遠い面での光波の振幅分布は、フラウンホーファー回折と呼ばれる分布を示す。
レンズは、屈折によって、光の平面波を、収斂/発散する球面波に変化させる光学素子である。レンズの径は有限なので、フラウンホーファー回折と同様の回折が、焦点面において形成される。
この回折のため、点光源から発した光がレンズを通って像を形成しても、その像は一点には収斂せず、3次元に一定の広がりと強度分布をもったものになる。この分布を、点拡がり関数 (点像分布関数, Point spread function, PSF)と呼ぶ。顕微鏡に即して言えば、点状の物体を拡大した像は、単純に拡大された形状になるのではなく、周囲に一定の滲み、広がりを持ったものになる。
無限遠にある点光源から、円形開口を通過した光が、収差のない理想的なレンズ光学系によって像を形成した時、そこに形成されるPSFを、エアリーディスク (Airy disc)と呼ぶ。その焦点面での光強度の分布は
,
: レンズの中心から、焦点面上の観察点を見た観察角。光軸方向を0とする。
: 光軸上の、つまり、最も明るい点での光強度。
: 一次の第一種ベッセル函数。
: 円形開口の半径。顕微鏡のレンズの半径に当たる。
: 光の波長。
と表される。この分布は、中心に高い山があり、それを同心円状の低い縞が囲むような形になる。最初の極小までの半径は、
, ∴
が成り立つ位置になる。
2点分解能
光学顕微鏡の分解能は、2点分解能で表現される事が多い。つまり、2つの点光源を、異なる点として識別できるような、2点間の最小角度、又は距離である。螢光顕微鏡のように、独立に発光する二つの光源の場合、収差のない理想的な光学系では、レイリー基準により、上の式で表される、エアリーディスクの最初の極小までの半径に相当する角度だとされる。[注 1][注 2]
この2点分解能を、顕微鏡の試料面上の2光源間の最小距離で表すと、 (: 焦点距離)となる。開口数 (: 光源からレンズの開口半径を見込む角度)とすると、
これが、光学顕微鏡の2点分解能としてよく使われる式である。
高倍率の対物レンズでは、入射角の大きい光の全反射を防いで、開口数を大きくするため、液浸が使われる事が多い。その場合、 (: レンズと物体の間の媒質の屈折率。) となり、開口数が1より大きいレンズも使えるようになる。2点分解能の式は同様である。波長 = 550 nm, 油浸で開口数 = 1.4 - 1.6程度だと、分解能は、240 - 210 nm程度になる。
超解像蛍光顕微鏡
超解像蛍光顕微鏡とは、上述の、対物レンズの回折限界で制限される分解能を越える (超解像)蛍光像を作る顕微鏡のことである。分解能を超える手法としては、RESOLFTを利用するもの、単分子の局在は2点分解能よりも細かく決められる事を利用するもの、励起照明を工夫して回折限界以上の高周波成分の情報を得るもの、統計学的手法を使うものなど、多くの手法が開発、実用化されている。ここでは、代表的なものを紹介する。
RESOLFT (REversible Saturable OpticaL Fluorescence Transitions)
STED
Localization Microscopy
- PALM, fPALM
- STORM, dSTORM
- ...
注釈
参考文献
- ↑ S.W. Hell, S. Jakobs, L. Kastrup
Imaging and writing at the nanoscale with focused visible light through saturable optical transitions
Appl. Phys. A: 2003, 77(7);859-860 [WorldCat.org] [DOI]
- ↑
Hell, S.W. (2003).
Toward fluorescence nanoscopy. Nature biotechnology, 21(11), 1347-55. [PubMed:14595362] [WorldCat] [DOI] - ↑
Hell, S.W., Dyba, M., & Jakobs, S. (2004).
Concepts for nanoscale resolution in fluorescence microscopy. Current opinion in neurobiology, 14(5), 599-609. [PubMed:15464894] [WorldCat] [DOI]