「高親和性コリントランスポーター」の版間の差分

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<font size="+1">奥田 隆志</font><br>
<font size="+1">奥田 隆志</font><br>
''慶應義塾大学薬学部''<br>
''慶應義塾大学薬学部''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年7月11日 原稿完成日:2014年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年7月11日 原稿完成日:2014年7月11日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br>
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{{PBB|geneid=60482}}
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== クローニングと構造 ==
== クローニングと構造 ==
 高親和性[[コリン]]トランスポーターは2000年に[[線虫]]''[[Caenorhabditis elegans]]'' および[[ラット]]から最初にクローニングされ、CHT1と名付けられた<ref><pubmed> 10649566 </pubmed></ref>。CHT1は約580のアミノ酸からなる13回膜貫通タンパク質で、N末端は細胞外側、C末端は細胞内側に位置する<ref><pubmed> 23132865 </pubmed></ref>。Na<sup>+</sup>依存性[[グルコーストランスポーター]]ファミリーに属し([[SLC5A7]])、他のメンバーと20 – 25%の相同性がある。
 高親和性[[コリン]]トランスポーターは2000年に[[線虫]]''[[Caenorhabditis elegans]]'' および[[ラット]]から最初にクローニングされ、CHT1と名付けられた<ref><pubmed> 10649566 </pubmed></ref>。CHT1は約580のアミノ酸からなる13回膜貫通タンパク質で、N末端は細胞外側、C末端は細胞内側に位置する<ref><pubmed> 23132865 </pubmed></ref>。Na<sup>+</sup>依存性[[グルコーストランスポーター]]ファミリーに属し([[SLC5A7]])、他のメンバーと20–25%の相同性がある。


== 発現分布 ==
== 発現分布 ==
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== コリン輸送とアセチルコリン合成 ==
== コリン輸送とアセチルコリン合成 ==
 CHT1はNa<sup>+</sup>濃度勾配に依存して細胞外からコリンを輸送する(''K''<sub>m</sub>: 1 – 5 &mu;M)。この輸送は起電性であるが、1分子のコリンに対して共輸送されるNa<sup>+</sup>の分子数は一義的に決まらず、膜電位に依存する<ref><pubmed> 17005849 </pubmed></ref>。コリン輸送はCl<sup>-</sup>やpHにも依存するが、Cl<sup>-</sup>は[[アロステリック因子]]として働くと考えられる。CHT1の特異的阻害剤は[[ヘミコリニウム-3]]で、競合的に阻害する(''K''<sub>i</sub>: 1 – 10 nM)。CHT1によるコリン取り込みはアセチルコリン合成の律速段階である。アセチルコリンはコリン作動性神経末端でChATの触媒により合成されるが、ChATのコリンに対する親和性は低く(''K''<sub>m</sub>: 〜1 mM)、通常の細胞内コリン濃度で飽和しないのでアセチルコリン合成の律速因子にはならないと考えられる。実際にCHT1によって取り込まれたコリンは速やかにアセチルコリンに変換される。
 CHT1はNa<sup>+</sup>濃度勾配に依存して細胞外からコリンを輸送する(''K''<sub>m</sub>: 1–5 &mu;M)。この輸送は起電性であるが、1分子のコリンに対して共輸送されるNa<sup>+</sup>の分子数は一義的に決まらず、膜電位に依存する<ref><pubmed> 17005849 </pubmed></ref>。コリン輸送はCl<sup>-</sup>やpHにも依存するが、Cl<sup>-</sup>は[[アロステリック因子]]として働くと考えられる。CHT1の特異的阻害剤は[[ヘミコリニウム-3]]で、競合的に阻害する(''K''<sub>i</sub>: 1–10 nM)。CHT1によるコリン取り込みはアセチルコリン合成の律速段階である。アセチルコリンはコリン作動性神経末端でChATの触媒により合成されるが、ChATのコリンに対する親和性は低く(''K''<sub>m</sub>: 〜1 mM)、通常の細胞内コリン濃度で飽和しないのでアセチルコリン合成の律速因子にはならないと考えられる。実際にCHT1によって取り込まれたコリンは速やかにアセチルコリンに変換される。


== 生理的機能と関連疾患 ==
== 生理的機能と関連疾患 ==
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