「小胞GABAトランスポーター」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0148418 高森 茂雄]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0148418 高森 茂雄]</font><br>
''同志社大学 脳科学研究科''<br>
''同志社大学 脳科学研究科''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2014年4月29日 原稿完成日:2014年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年4月29日 原稿完成日:2015年1月16日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br>
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== GABA輸送機構 ==
== GABA輸送機構 ==
[[image:小胞GABAトランスポーター1.jpg|thumb|350px|'''図1.抑制性シナプス終末におけるシナプス小胞GABA再充填機構'''<br>抑制性神経伝達物質であるGABAは、シナプス終末の細胞質に存在するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)の働きにより興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸から作られる。VGATによるGABA輸送は、液胞型プロトンATPaseが形成するプロトン電気化学勾配によって駆動されるが、輸送メカニズムの詳細は不明である。現在、GABA/プロトンの対向輸送モデルと、GABA/Cl–の共輸送モデルが提唱されている。]]
[[image:小胞GABAトランスポーター1.jpg|thumb|350px|'''図1.抑制性シナプス終末におけるシナプス小胞GABA再充填機構'''<br>抑制性神経伝達物質であるGABAは、シナプス終末の細胞質に存在するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)の働きにより興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸から作られる。VGATによるGABA輸送は、液胞型プロトンATPaseが形成するプロトン電気化学勾配によって駆動されるが、輸送メカニズムの詳細は不明である。現在、GABA/プロトンの対向輸送モデルと、GABA/Cl<sup>–</sup>の共輸送モデルが提唱されている。]]


 GABAおよびグリシンのシナプス小胞内への輸送は、プロトンの電気化学勾配を駆動力とする[[二次輸送]]である<ref name=ref15><pubmed>1678614</pubmed></ref> <ref name=ref16><pubmed>2903047</pubmed></ref> <ref name=ref17><pubmed>2566998</pubmed></ref>。プロトン勾配は、液胞型プロトンATPaseが細胞質から小胞内腔にプロトンを運ぶことにより、[[膜電位]]勾配(小胞内が+)とpH勾配(小胞内が酸性)が形成される。[[グルタミン酸]]の輸送は、主に膜電位勾配、[[アセチルコリン]]や[[モノアミン]]類の輸送は主にpH勾配によって駆動されることが知られているが、GABAおよびグリシンの輸送は丁度その中間に位置しているとされている<ref name=ref18><pubmed>9843673</pubmed></ref>。基質とプロトンとの共役を含めVGAT/VIAATの詳細な輸送メカニズムは不明であるが、最近、VGAT/VIAATの再構成実験の結果から、VGAT/VIAATは膜電位勾配を駆動力として使い、GABAとCl<sup>–</sup>を1:2で輸送する共輸送体であるとする新しい仮説が提唱された<ref name=ref19><pubmed>19843525</pubmed></ref>(図1)。
 GABAおよびグリシンのシナプス小胞内への輸送は、プロトンの電気化学勾配を駆動力とする[[二次輸送]]である<ref name=ref15><pubmed>1678614</pubmed></ref> <ref name=ref16><pubmed>2903047</pubmed></ref> <ref name=ref17><pubmed>2566998</pubmed></ref>。プロトン勾配は、液胞型プロトンATPaseが細胞質から小胞内腔にプロトンを運ぶことにより、[[膜電位]]勾配(小胞内が+)とpH勾配(小胞内が酸性)が形成される。[[グルタミン酸]]の輸送は、主に膜電位勾配、[[アセチルコリン]]や[[モノアミン]]類の輸送は主にpH勾配によって駆動されることが知られているが、GABAおよびグリシンの輸送は丁度その中間に位置しているとされている<ref name=ref18><pubmed>9843673</pubmed></ref>。基質とプロトンとの共役を含めVGAT/VIAATの詳細な輸送メカニズムは不明であるが、最近、VGAT/VIAATの再構成実験の結果から、VGAT/VIAATは膜電位勾配を駆動力として使い、GABAとCl<sup>–</sup>を1:2で輸送する共輸送体であるとする新しい仮説が提唱された<ref name=ref19><pubmed>19843525</pubmed></ref>(図1)。