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== 小脳神経回路の神経活動の同期的振動 == | == 小脳神経回路の神経活動の同期的振動 == | ||
神経細胞集団の同期した[[スパイク]]発射や[[膜電位]]の小さな振動が、脳の情報処理の基盤となるという仮説が、[[海馬]]や[[大脳皮質]][[視覚野]]について提出されている<ref name="ref4"><pubmed>14643372</pubmed></ref>。小脳でも複数の場所で神経活動の同期振動が見られ、それがタイミング制御に関係しているとする考え方が提出されている。小脳皮質の顆粒細胞層の局所電場電位に、10Hz程度の同期的振動があることが知られている。[[顆粒細胞層]]は顆粒細胞と[[ゴルジ細胞]]からなるが、この同期的振動に、これらの神経細胞の膜の性質や神経細胞間ネットワークなどが関与することが示唆されている(次節参照)。この振動は主に動物が静止している時に観測され、運動開始とともに消失するのが特徴であり、運動の開始に関係すると考えられている<ref name="ref5"><pubmed>19409229</pubmed></ref>。小脳皮質に登上線維を送る下オリーブ核の神経細胞には電気的結合があり、その膜電位にも小さな10Hz程度の同期振動が見られる。[[Harmaline]] | 神経細胞集団の同期した[[スパイク]]発射や[[膜電位]]の小さな振動が、脳の情報処理の基盤となるという仮説が、[[海馬]]や[[大脳皮質]][[視覚野]]について提出されている<ref name="ref4"><pubmed>14643372</pubmed></ref>。小脳でも複数の場所で神経活動の同期振動が見られ、それがタイミング制御に関係しているとする考え方が提出されている。小脳皮質の顆粒細胞層の局所電場電位に、10Hz程度の同期的振動があることが知られている。[[顆粒細胞層]]は顆粒細胞と[[ゴルジ細胞]]からなるが、この同期的振動に、これらの神経細胞の膜の性質や神経細胞間ネットワークなどが関与することが示唆されている(次節参照)。この振動は主に動物が静止している時に観測され、運動開始とともに消失するのが特徴であり、運動の開始に関係すると考えられている<ref name="ref5"><pubmed>19409229</pubmed></ref>。小脳皮質に登上線維を送る下オリーブ核の神経細胞には電気的結合があり、その膜電位にも小さな10Hz程度の同期振動が見られる。[[Harmaline]]'''(どのような薬物かもう少し詳しくご説明下さい)'''という薬物を全身投与すると、全身に10Hz程度の振戦症状が出現することから、下オリーブ核の神経細胞の同期的振動が、小脳のベースクロックとなるという考え方が提出されている<ref name="ref6"><pubmed>3795074</pubmed></ref>。しかし、無麻酔覚醒の動物から記録される下オリーブ核の神経活動(複雑発射)には同期する傾向はなく、むしろ運動の開始や運動誤差を反映していることが報告されており、この考え方は広く認められるにはいたっていない<ref name="ref7"><pubmed>16182386</pubmed></ref> <ref name="ref8">'''Ito M.'''<br>The cerebellum: Brain for an Implicit Self.<br>''FT Press'', New York, 2011</ref> <ref name="ref9">'''永雄総一, 山崎匡'''<br>生体の科学 2012, 63:3-10. </ref>。 | ||
== 小脳皮質によるタイミング学習の理論 == | == 小脳皮質によるタイミング学習の理論 == |