「中脳」の版間の差分

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英語名: midbrain、mesencephalon
英語名:midbrain、mesencephalon 独:Mittelhirn 仏:mésencéphale


{{box|text=
{{box|text= 中脳は間脳と橋の間に位置し、中脳水道より背側の中脳蓋と、腹側の中脳被蓋、大脳脚の3つの部分に大別される。中脳蓋には上丘と下丘が、中脳被蓋には黒質や赤核が、また、中心灰白質には動眼神経核や滑車神経核が存在する。}}
 中脳は間脳と橋の間に位置し、中脳水道より背側の中脳蓋と、腹側の中脳被蓋、大脳脚の3つの部分に大別される。中脳蓋には上丘と下丘が、中脳被蓋には黒質や赤核が、また、中心灰白質には動眼神経核や滑車神経核が存在する。
[[ファイル:Midbrain small.gif|サムネイル|右|'''図1. 中脳の位置を様々な方向から見た動画'''<br />
}}
中脳を赤で、それ以外の部位を半透明にして示してある。([http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Midbrain_small.gif Wikipedia]より引用。原図は[http://dbcls.rois.ac.jp/services/contents/bp3d Anatomography])]]
[[image:中脳の前頭断.jpg|thumb|350px|'''図2.中脳の前頭断'''<br>動眼神経核を通る断面]]


[[image:中脳の前頭断.jpg|thumb|350px|'''図1.中脳の前頭断'''<br>動眼神経核を通る断面]]
==中脳とは==
 中脳とは間脳と橋の間に位置する脳構造である。(編集コメント:間脳並びに橋との明瞭な境界構造がありましたら御記述ください)
 
 [[中脳水道]]より背側の[[中脳蓋]]と、腹側の[[中脳被蓋]]、[[大脳脚]]の3つの部分に大別される。中脳蓋には、[[視覚]]反射中枢である[[上丘]]および[[聴覚]]中枢である[[下丘]]が存在する。中脳被蓋には、[[黒質]]や[[赤核]]など、主として運動制御に関与する[[神経核]]が存在する。[[中脳水道]]の[[周囲灰白質]]である[[中心灰白質]]には、[[動眼神経核]]や[[滑車神経核]]など、[[眼球運動]]を支配する[[脳神経核]]が存在する。また、中脳の中心部には[[脳幹網様体]]が分布し、脳幹を貫くカラム構造の最前方部を形成する。


==構造==
==構造==
 中脳は、[[中脳水道]]より背側の[[中脳蓋]]と、腹側の[[中脳被蓋]]、[[大脳脚]]の3つの部分に大別される。中脳蓋には、[[視覚]]反射中枢である[[上丘]]および[[聴覚]]中枢である[[下丘]]が存在する。中脳被蓋には、[[黒質]]や[[赤核]]など、主として運動制御に関与する[[神経核]]が存在する。[[中脳水道]]の[[周囲灰白質]]である[[中心灰白質]]には、[[動眼神経核]]や[[滑車神経核]]など、[[眼球運動]]を支配する脳神経核が存在する。また、中脳の中心部には[[脳幹網様体]]が分布し、脳幹を貫くカラム構造の最前方部を形成する。以下に、主な構造について概説する。
===上丘===
===上丘===
 上丘は、7層から成る明瞭な層構造を示す。[[哺乳類]]より下等の[[脊椎動物]]では、上丘はもっとも重要な視覚中枢であり、[[視蓋]]とよばれる。哺乳類の上丘では、視覚中枢としての機能が失われ、移動目標の捕捉や[[追視]]のための[[眼球]]および頭頸部の反射運動に関与する。特に、上丘により誘発される眼球運動は、[[サッカード]]と呼ばれる[[衝動性眼球運動]]としてよく知られている。このような視覚性反射に関わる[[網膜]]からの[[視索]]線維は、[[視床]]の[[外側膝状体]]には終止せず、対側優位に上丘の浅層に直接投射する([[網膜視蓋投射]])。網膜視蓋投射線維網は上丘において網膜部位局在的に分布する。また、大脳皮質[[後頭葉]]の[[一次視覚野]]から上丘浅層に投射する皮質視蓋投射も正確な部位局在性を示す。上丘浅層が主に視覚入力を受ける層であるのに対して、上丘深層は眼球運動に関わる[[中脳網様体]]や頭頸部の運動に関わる脊髄(頸髄上部)に投射線維を送る出力層である。
 上丘は、7層から成る明瞭な層構造を示す。[[哺乳類]]より下等の[[脊椎動物]]では、上丘はもっとも重要な視覚中枢であり、[[視蓋]]とよばれる。哺乳類の上丘では、視覚中枢としての機能が失われ、移動目標の捕捉や[[追視]]のための[[眼球]]および頭頸部の反射運動に関与する。特に、上丘により誘発される眼球運動は、[[サッカード]]と呼ばれる[[衝動性眼球運動]]としてよく知られている。このような視覚性反射に関わる[[網膜]]からの[[視索]]線維は、[[視床]]の[[外側膝状体]]には終止せず、対側優位に上丘の浅層に直接投射する([[網膜視蓋投射]])。網膜視蓋投射線維網は上丘において網膜部位局在的に分布する。また、大脳皮質[[後頭葉]]の[[一次視覚野]]から上丘浅層に投射する皮質視蓋投射も正確な部位局在性を示す。上丘浅層が主に視覚入力を受ける層であるのに対して、上丘深層は眼球運動に関わる[[中脳網様体]]や頭頸部の運動に関わる脊髄(頸髄上部)に投射線維を送る出力層である。
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===黒質===
===黒質===
 黒質は中脳被蓋の腹側部に位置し、背側の[[黒質緻密部|緻密部]]と腹側の[[黒質網様部|網様部]]に分けられる。黒質の緻密部は[[ドーパミン]]作動性ニューロンを含み、ドーパミン合成過程で[[wikipedia:ja:メラニン|メラニン]]色素を産生するため肉眼的に黒く見える。ドーパミンニューロンは線条体に投射し([[黒質線条体路]])、このニューロンの変性・脱落により重篤な運動障害を主徴とする[[パーキンソン病]]が発症する。黒質緻密部の内側には、もうひとつのドーパミンニューロン群である[[腹側被蓋野]]が存在し、大脳皮質に投射する[[中脳皮質路]]と辺縁系に投射する中脳辺縁系路が起こる。これらの神経路は[[認知機能]]や精神活動に関係すると考えられている。黒質の網様部は[[GABA]]作動性ニューロンを含み、[[大脳基底核]]の出力部として、視床や上丘などに投射する。
 黒質は中脳被蓋の腹側部に位置し、背側の[[黒質緻密部|緻密部]]と腹側の[[黒質網様部|網様部]]に分けられる。黒質の緻密部は[[ドーパミン]]作動性ニューロンを含み、ドーパミン合成過程で[[wj:メラニン|メラニン]]色素を産生するため肉眼的に黒く見える。ドーパミンニューロンは線条体に投射し([[黒質線条体路]])、このニューロンの変性・脱落により重篤な運動障害を主徴とする[[パーキンソン病]]が発症する。黒質緻密部の内側には、もうひとつのドーパミンニューロン群である[[腹側被蓋野]]が存在し、大脳皮質に投射する[[中脳皮質路]]と辺縁系に投射する中脳辺縁系路が起こる。これらの神経路は[[認知機能]]や精神活動に関係すると考えられている。黒質の網様部は[[GABA]]作動性ニューロンを含み、[[大脳基底核]]の出力部として、視床や上丘などに投射する。


===赤核===
===赤核===
 赤核は中脳被蓋の内側部に位置し、鉄分を含有するためピンク色の外観を呈する。赤核は対側の[[小脳核]]から上行性投射を、[[大脳皮質]][[運動野]]から下行性投射を受ける。[[大細胞性赤核]]と[[小細胞性赤核]]に分類されるが、ヒトでは大部分が小細胞性であり、同側の[[下オリーブ核]]や網様体に投射する。大細胞性赤核のニューロンは脊髄に投射する。このような線維結合から、赤核は運動野と脊髄の間の中継部位として(皮質―赤核―脊髄路)、また、下オリーブ核を介した小脳へのフィードバック系の中継部位として(赤核―オリーブ核―小脳路)、運動制御に関わる神経核であると考えられている。
 赤核は中脳被蓋の内側部に位置し、鉄分を含有するためピンク色の外観を呈する。赤核は対側の[[小脳核]]から上行性投射を、[[大脳皮質]][[運動野]]から下行性投射を受ける。[[大細胞性赤核]]と[[小細胞性赤核]]に分類されるが、ヒトでは大部分が小細胞性であり、同側の[[下オリーブ核]]や網様体に投射する。大細胞性赤核のニューロンは脊髄に投射する。このような線維結合から、赤核は運動野と脊髄の間の中継部位として(皮質―赤核―脊髄路)(編集コメント:これは、「皮質―赤核―脊髄路」として一語でしょうか?)また、下オリーブ核を介した小脳へのフィードバック系の中継部位として(赤核―オリーブ核―小脳路)(編集コメント:これは、「赤核―オリーブ核―小脳路」として一語でしょうか?)、運動制御に関わる神経核であると考えられている。


===中脳被蓋を通る神経線維===
===中脳被蓋を通る神経線維===