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<font size="+1">[http://researchmap.jp/ishida.it 石田 裕昭]</font><br>
''Italian Institute of Technology (IIT), Brain Center for Motor and Social Cognition (BCSMC), Parma, Italy.''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年5月8日 原稿完成日:2012年6月8日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0048432 定藤 規弘](自然科学研究機構 生理学研究所 大脳皮質機能研究系)<br>
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英語名:Body schema 独:Körperschema 仏:schéma corporel
英語名:Body schema 独:Körperschema 仏:schéma corporel


類義語:Body image
類義語:Body image


 
{{box|text=
 じぶんが今椅子に座っていること、また、右足を左足の上に組んでいることをひとは観察によることなく直接知っている。あるいは、暗闇であってもじぶんが蚊に刺されれば、即座にその身体箇所に手のひらを持っていくことができる。このような場面で働いている身体に関わる潜在的な[[知覚]]の枠組みのことを、身体図式という<ref name=ref1>'''Head H, Holmes G.''' <br>Sensory disturbances from cerebral lesions. <br>''Brain''. 1911; 34: 102-245.</ref>。
 じぶんが今椅子に座っていること、また、右足を左足の上に組んでいることをひとは観察によることなく直接知っている。あるいは、暗闇であってもじぶんが蚊に刺されれば、即座にその身体箇所に手のひらを持っていくことができる。このような場面で働いている身体に関わる潜在的な[[知覚]]の枠組みのことを、身体図式という<ref name=ref1>'''Head H, Holmes G.''' <br>Sensory disturbances from cerebral lesions. <br>''Brain''. 1911; 34: 102-245.</ref>。
}}


== 身体図式とは ==
== 身体図式とは ==
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== 身体に関わる意識 ==
== 身体に関わる意識 ==


 意識下で作動する身体図式は、[[身体イメージ]]とは区別される (body image)。身体イメージとは、「私は、身長170cmで、瘦せ型である。大きな耳を持っている。」というような顕在的な自己身体に関する知識を指す<ref name=ref2>'''Gallagher, S.''' <br>How the Body Shapes the Mind (p. 304). <br>Oxford University Press. 2006, ISBN: 9780191622571</ref> <ref name=ref3>'''田中彰吾'''<br>身体イメージの哲学 Body Image. <br>''Clinical Neuroscience.'' 2011; 29, p.868-871.</ref>。自己概念としての身体と区別して、潜在的な身体図式の存在を主張する根拠とされてきた現象が、[[幻影肢]]である。幻影肢とは、戦場での負傷や交通事故などによって、四肢を切断する手術を受けたひとが、既に存在しないはずの手足の末端に痛み(幻肢痛)や[[wikipedia:JA:かゆみ|かゆみ]]を感じる現象を指す。幻影肢は、特に手足の切断手術の場合は90%以上という高い頻度で出現するが、 四肢に限らず、顔面、[[wikipedia:JA:乳房|乳房]]、[[wikipedia:JA:耳|耳]]、[[wikipedia:JA:内蔵|内蔵]]など身体のどの部分でも生じ、時間の経過とともにほぼ消失すると言われている。
 意識下で作動する身体図式は、[[身体イメージ]]とは区別される (body image)。身体イメージとは、「私は、身長170cmで、瘦せ型である。大きな耳を持っている。」というような顕在的な自己身体に関する知識を指す<ref name=ref2>'''Gallagher, S.''' <br>How the Body Shapes the Mind (p. 304). <br>Oxford University Press. 2006, ISBN 9780191622571</ref> <ref name=ref3>'''田中彰吾'''<br>身体イメージの哲学 Body Image. <br>''Clinical Neuroscience.'' 2011; 29, p.868-871.</ref>。自己概念としての身体と区別して、潜在的な身体図式の存在を主張する根拠とされてきた現象が、[[幻影肢]]である。幻影肢とは、戦場での負傷や交通事故などによって、四肢を切断する手術を受けたひとが、既に存在しないはずの手足の末端に痛み(幻肢痛)や[[wikipedia:JA:かゆみ|かゆみ]]を感じる現象を指す。幻影肢は、特に手足の切断手術の場合は90%以上という高い頻度で出現するが、 四肢に限らず、顔面、[[wikipedia:JA:乳房|乳房]]、[[wikipedia:JA:耳|耳]]、[[wikipedia:JA:内蔵|内蔵]]など身体のどの部分でも生じ、時間の経過とともにほぼ消失すると言われている。


 田中と湯浅<ref name=ref4>'''田中彰吾、 湯浅泰雄'''<br>身体図式からイマジナル・ボディへ<br>''人体科学'' 2001; 21-29.</ref>は現象学的な観点から幻影肢と身体図式の関係について、次のように述べている。
 田中と湯浅<ref name=ref4>'''田中彰吾、 湯浅泰雄'''<br>身体図式からイマジナル・ボディへ<br>''人体科学'' 2001; 21-29.</ref>は現象学的な観点から幻影肢と身体図式の関係について、次のように述べている。
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<references />
<references />
(執筆者:石田裕昭 担当編集者:定藤規弘)
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