「S100タンパク質」の版間の差分

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S100 蛋白質は、EF-hand型カルシウム結合性ドメイン(loop-helix-loop)をもつ蛋白質群であり、現在までに20種類以上のサブファミリーが同定されている。S100という名称は「中性硫酸アンモニウムに完全に(100%)溶ける(Soluble)」という特性に由来している。分類として、現在のところS100A1~S100A18、S100B、S100P、S100Z、Calbindin D9k (S100G)、Profilaggrin、Trychohyalin、Repetinに分類される。S100Bは特に脳での発現が高いことで知られている。哺乳類の中枢神経系では、グリア細胞の一種であるアストロサイトに選択的に発現する。末梢神経系ではグリア細胞のシュワン細胞に発現する。S100蛋白質群の機能は、カルシウムバッファー以外にも多岐にまたがると考えられており、未解明な部分が多い。またS100蛋白質は細胞内のシグナル伝達のみならず、細胞外にも分泌される事が知られており、実際に血漿や脳脊髄液からも検出される。培養細胞系では、細胞外のS100Bは神経細胞の生存にかかわる栄養因子として働くことが提唱されていたが、S100Bノックアウト動物の神経回路形成に重篤な欠損がないことから、栄養因子としての機能は限定的であると考えられている。
S100 蛋白質は、EF-hand型カルシウム結合性ドメイン(loop-helix-loop)をもつ蛋白質群であり、現在までに20種類以上のサブファミリーが同定されている。S100という名称は「中性硫酸アンモニウムに完全に(100%)溶ける(Soluble)」という特性に由来している。分類として、現在のところS100A1~S100A18、S100B、S100P、S100Z、Calbindin D9k (S100G)、Profilaggrin、Trychohyalin、Repetinに分類される。S100Bは特に脳での発現が高いことで知られている。哺乳類の中枢神経系では、グリア細胞の一種であるアストロサイトに選択的に発現する。末梢神経系ではグリア細胞のシュワン細胞に発現する。S100蛋白質群の機能は、カルシウムバッファー以外にも多岐にまたがると考えられており、未解明な部分が多い。またS100蛋白質は細胞内のシグナル伝達のみならず、細胞外にも分泌される事が知られており、実際に血漿や脳脊髄液からも検出される。培養細胞系では、細胞外のS100Bは神経細胞の生存にかかわる栄養因子として働くことが提唱されていたが、S100Bノックアウト動物の神経回路形成に重篤な欠損がないことから、栄養因子としての機能は限定的であると考えられている。


構造:
 
== 構造 ==
S100蛋白質群は、モノマーとして二つのEF-hand型カルシウム結合ドメインを有する。この二つのカルシウム結合ドメインは、其々構造とカルシウム結合能が異なる。C端末側の12アミノ酸残基からなるリンカーループはカルモジュリンおよびトロポニン-C様のカルシウム結合を持ち、解離定数Kdは10-50n程度であるとされている。一方、N端末側の14アミノ酸残基からなる疑似正準的なEF-handリンカーループはKd=200-500µM程度の比較的弱いカルシウム結合能を持つ。ほとんどのS100蛋白質は生体内では二つの同一ポリペプチドが非共有結合で結合されている二量体として存在する。
S100蛋白質群は、モノマーとして二つのEF-hand型カルシウム結合ドメインを有する。この二つのカルシウム結合ドメインは、其々構造とカルシウム結合能が異なる。C端末側の12アミノ酸残基からなるリンカーループはカルモジュリンおよびトロポニン-C様のカルシウム結合を持ち、解離定数Kdは10-50n程度であるとされている。一方、N端末側の14アミノ酸残基からなる疑似正準的なEF-handリンカーループはKd=200-500µM程度の比較的弱いカルシウム結合能を持つ。ほとんどのS100蛋白質は生体内では二つの同一ポリペプチドが非共有結合で結合されている二量体として存在する。


分布:
 
== 分布 ==
 
S100蛋白質は、その種類により生体内での局在がある。例えばS100A1は平滑筋の細胞質にある一方、100A2は平滑筋の核内に存在する。S100Bは脳での発現が顕著に認められ、中でもグリア細胞の一種であるアストロサイトに選択的に発現する。S100Pは胎盤の発現が高い。
S100蛋白質は、その種類により生体内での局在がある。例えばS100A1は平滑筋の細胞質にある一方、100A2は平滑筋の核内に存在する。S100Bは脳での発現が顕著に認められ、中でもグリア細胞の一種であるアストロサイトに選択的に発現する。S100Pは胎盤の発現が高い。


機能:
== 機能 ==
 
S100蛋白質群の機能は、蛋白質のリン酸化、細胞成長、細胞運動性、細胞周期調節、翻訳、細胞分化、細胞生存など、多様であると提案されている。また、様々な疾患に関係するとされている。
S100蛋白質群の機能は、蛋白質のリン酸化、細胞成長、細胞運動性、細胞周期調節、翻訳、細胞分化、細胞生存など、多様であると提案されている。また、様々な疾患に関係するとされている。

2012年3月4日 (日) 17:21時点における版

S100 蛋白質は、EF-hand型カルシウム結合性ドメイン(loop-helix-loop)をもつ蛋白質群であり、現在までに20種類以上のサブファミリーが同定されている。S100という名称は「中性硫酸アンモニウムに完全に(100%)溶ける(Soluble)」という特性に由来している。分類として、現在のところS100A1~S100A18、S100B、S100P、S100Z、Calbindin D9k (S100G)、Profilaggrin、Trychohyalin、Repetinに分類される。S100Bは特に脳での発現が高いことで知られている。哺乳類の中枢神経系では、グリア細胞の一種であるアストロサイトに選択的に発現する。末梢神経系ではグリア細胞のシュワン細胞に発現する。S100蛋白質群の機能は、カルシウムバッファー以外にも多岐にまたがると考えられており、未解明な部分が多い。またS100蛋白質は細胞内のシグナル伝達のみならず、細胞外にも分泌される事が知られており、実際に血漿や脳脊髄液からも検出される。培養細胞系では、細胞外のS100Bは神経細胞の生存にかかわる栄養因子として働くことが提唱されていたが、S100Bノックアウト動物の神経回路形成に重篤な欠損がないことから、栄養因子としての機能は限定的であると考えられている。


構造

S100蛋白質群は、モノマーとして二つのEF-hand型カルシウム結合ドメインを有する。この二つのカルシウム結合ドメインは、其々構造とカルシウム結合能が異なる。C端末側の12アミノ酸残基からなるリンカーループはカルモジュリンおよびトロポニン-C様のカルシウム結合を持ち、解離定数Kdは10-50n程度であるとされている。一方、N端末側の14アミノ酸残基からなる疑似正準的なEF-handリンカーループはKd=200-500µM程度の比較的弱いカルシウム結合能を持つ。ほとんどのS100蛋白質は生体内では二つの同一ポリペプチドが非共有結合で結合されている二量体として存在する。


分布

S100蛋白質は、その種類により生体内での局在がある。例えばS100A1は平滑筋の細胞質にある一方、100A2は平滑筋の核内に存在する。S100Bは脳での発現が顕著に認められ、中でもグリア細胞の一種であるアストロサイトに選択的に発現する。S100Pは胎盤の発現が高い。

機能

S100蛋白質群の機能は、蛋白質のリン酸化、細胞成長、細胞運動性、細胞周期調節、翻訳、細胞分化、細胞生存など、多様であると提案されている。また、様々な疾患に関係するとされている。