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国際頭痛分類は国際疾病分類との整合性に配慮されており、分類は階層化されている。さらに、各頭痛の[[操作的診断基準]]が記載されている。第1部 一次性頭痛、第2部 二次性頭痛、第3部:有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛に大別され、14のグループに分類されている(表1)。ICHD-3βの頭分類は階層的に作成されており、コード番号が割り振られている。各頭痛性疾患には操作的診断基準が掲載されている。 | 国際頭痛分類は国際疾病分類との整合性に配慮されており、分類は階層化されている。さらに、各頭痛の[[操作的診断基準]]が記載されている。第1部 一次性頭痛、第2部 二次性頭痛、第3部:有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛およびその他の頭痛に大別され、14のグループに分類されている(表1)。ICHD-3βの頭分類は階層的に作成されており、コード番号が割り振られている。各頭痛性疾患には操作的診断基準が掲載されている。 | ||
一次性頭痛は、頭痛の原因となる他の患がなく、頭痛そのものが障害となっている神経疾患である。 片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経自律神経性頭痛(群発頭痛)が代表的である。 | |||
二次性頭痛とは、頭蓋内や頭部、顔面、全身の疾患の症状として頭痛が出現するものである。二次性頭痛には、頭蓋内疾患、脳血管障害など多くの原因が挙げられる。国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3β)では、第二部、5章以降に掲載されている(表1)。 | |||
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==一次性頭痛== | ==一次性頭痛== | ||
===片頭痛=== | ===片頭痛=== | ||
migraine | 片頭痛(migraine)は「偏頭痛」と記載されることもあるが、医学用語として用いる場合は「片頭痛」を用いる。ただし、中国では偏頭痛が使用されている。 | ||
片頭痛発作の特徴として、拍動性、片側性に加え、日常生活に支障をきたすこと、日常動作により頭痛が悪化すること、悪心、嘔吐や、光過敏、音過敏を伴うことが重視されている。これらの特徴を中心に診断基準が作成され、1988年以来、世界各国で検証、使用されている(表3)。「片頭痛」と表記されるにもかかわらず、しばしば両側性の頭痛がおこり、また非拍動性の片頭痛もあるので診断に際し注意が必要である。片頭痛は日常生活に支障をきたす頻度の高い疾患であり、患者のQOLを阻害し、医療経済的に大きな損失をもたらしている。 | 片頭痛発作の特徴として、拍動性、片側性に加え、日常生活に支障をきたすこと、日常動作により頭痛が悪化すること、悪心、嘔吐や、光過敏、音過敏を伴うことが重視されている。これらの特徴を中心に診断基準が作成され、1988年以来、世界各国で検証、使用されている(表3)。「片頭痛」と表記されるにもかかわらず、しばしば両側性の頭痛がおこり、また非拍動性の片頭痛もあるので診断に際し注意が必要である。片頭痛は日常生活に支障をきたす頻度の高い疾患であり、患者のQOLを阻害し、医療経済的に大きな損失をもたらしている。 | ||
==== 分類 ==== | |||
前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛に大別される。ICHD-3βでは表2に示すごとくのサブタイプ、サブフォームが規定されている。 | |||
頭痛分類における、前兆(aura)は[[大脳皮質]]または脳幹の一過性局在性神経症候をさす。閃輝暗点が代表的である。視覚障害、感覚障害、失語性[[言語]]障害を典型的前兆としている。 | 頭痛分類における、前兆(aura)は[[大脳皮質]]または脳幹の一過性局在性神経症候をさす。閃輝暗点が代表的である。視覚障害、感覚障害、失語性[[言語]]障害を典型的前兆としている。 | ||
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食欲の変化、悪心、気分変調などが片頭痛発作に先行することがあるが、これら漠然とした症状は前兆と区別し予兆(premonitory symptom)とする。予兆は「前兆のない片頭痛」でもしばしばみられる。 | 食欲の変化、悪心、気分変調などが片頭痛発作に先行することがあるが、これら漠然とした症状は前兆と区別し予兆(premonitory symptom)とする。予兆は「前兆のない片頭痛」でもしばしばみられる。 | ||
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===その他の一次性頭痛=== | ===その他の一次性頭痛=== | ||
片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経自律神経性頭痛が主要な一次性頭痛であるが、その他の一次性頭痛として表8のようなものが記載されている<ref name=ref6 />。一次性雷鳴頭痛は、[[ | 片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経自律神経性頭痛が主要な一次性頭痛であるが、その他の一次性頭痛として表8のようなものが記載されている<ref name=ref6 />。一次性雷鳴頭痛は、[[くも膜下出血]]の際の頭痛に類似した突発性の激しい頭痛であるが、他に原因となる疾患がないものである。6.7.3 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛」との鑑別が問題となる。 | ||
「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」は、かき氷を摂取した際に多くの人が経験する頭痛である。アイスクリーム頭痛と称されることもある。 | 「冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛」は、かき氷を摂取した際に多くの人が経験する頭痛である。アイスクリーム頭痛と称されることもある。 | ||
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==二次性頭痛== | ==二次性頭痛== | ||
二次性頭痛の診断には、その頭痛が他の疾患によって惹起されていることを明瞭に示される必要がある。以前よりある一次性頭痛が、頭痛を起こしうる器質疾患の発症により増悪している場合もあるので注意が必要である。 | |||
一次性頭痛の一般診断基準を表9に示した。頭痛と原因となりうる疾患の関係を確認して二次性頭痛の診断を行う。前述のごとくICHD-3βの第2部 5章~12章に二次性頭痛が掲載されており、各々の診断基準が示されている。 | |||
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===頭頸部血管障害による頭痛 === | ===頭頸部血管障害による頭痛 === | ||
表10にサブタイプの一覧を示した。ICHD-3βで新たに掲載された6.7.3 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛」は、性行為、労作、ヴァルサルヴァ手技あるいは感情などが引き金になり、典型的には1〜2週間にわたって雷鳴頭痛を繰り返す可逆性脳血管攣縮症候群によって引き起こされる頭痛である。頭痛はRCVSの唯一の症状のことがある。一次性雷鳴頭痛とRCVSによる頭痛の鑑別が重要で、疑わしい場合には6.7.3.1 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛の疑い」とすることが推奨されている。 | 表10にサブタイプの一覧を示した。ICHD-3βで新たに掲載された6.7.3 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛」は、性行為、労作、ヴァルサルヴァ手技あるいは感情などが引き金になり、典型的には1〜2週間にわたって雷鳴頭痛を繰り返す可逆性脳血管攣縮症候群によって引き起こされる頭痛である。頭痛はRCVSの唯一の症状のことがある。一次性雷鳴頭痛とRCVSによる頭痛の鑑別が重要で、疑わしい場合には6.7.3.1 「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による頭痛の疑い」とすることが推奨されている。 | ||
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403行目: | 400行目: | ||
===ホメオスターシス障害による頭痛=== | ===ホメオスターシス障害による頭痛=== | ||
10.1.2 「飛行機頭痛」が、ICHD-3βでこの章に加えられた。また、付録にはA10.8.1「宇宙飛行による頭痛」も加えられている。10.3「高血圧性頭痛」もここで定義されている。通常の高血圧は頭痛の原因とみなされず、多くは頭痛の結果として血圧が上昇傾向にあるということにも注意が必要である(表11)。 | 10.1.2 「飛行機頭痛」が、ICHD-3βでこの章に加えられた。また、付録にはA10.8.1「宇宙飛行による頭痛」も加えられている。10.3「高血圧性頭痛」もここで定義されている。通常の高血圧は頭痛の原因とみなされず、多くは頭痛の結果として血圧が上昇傾向にあるということにも注意が必要である(表11)。 | ||
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435行目: | 431行目: | ||
===頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛=== | ===頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛あるいは顔面痛=== | ||
ICHD-2のA11.5.1「鼻粘膜接触点頭痛」はA11.5.3「鼻粘膜、鼻甲介、鼻中隔の障害による頭痛」に集約されている(表12)。 | ICHD-2のA11.5.1「鼻粘膜接触点頭痛」はA11.5.3「鼻粘膜、鼻甲介、鼻中隔の障害による頭痛」に集約されている(表12)。 | ||
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464行目: | 459行目: | ||
==有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛== | ==有痛性脳神経ニューロパチーおよび他の顔面痛== | ||
三叉神経痛をはじめ各種神経痛、有痛性脳神経ニューロパチーが掲載されている(表13)。 | |||
症候性三叉神経痛( symptomatic trigeminal neuralgia)の名称がICHD-3βでは有痛性三叉神経ニューロパチー(painful trigeminal neuropathy)に変更された。ICHD-2の13.17「眼筋麻痺性片頭痛」は以前より片頭痛のサブフォームではなく、ニューロパチーと考えられており、13章に分類されていたが、ICHD-3βでは“片頭痛”の用語が消え 13.6「虚血性眼球運動麻痺による頭痛」に包括された。 | |||
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510行目: | 503行目: | ||
==その他の頭痛性疾患== | ==その他の頭痛性疾患== | ||
第14章には14.1 「分類不能の頭痛」、14.2「詳細不明の頭痛」が掲載されている。ICHD- | 第14章には14.1 「分類不能の頭痛」、14.2「詳細不明の頭痛」が掲載されている。ICHD-3βの頭痛分類のいずれにも該当しないものは「分類不能の頭痛」として記載しておき、将来の知見の集積をまつように設計されている。 | ||
頭痛の存在は確実であるが、正確な頭痛の分類に必要な情報が不足している場合には「詳細不明の頭痛」としてコード化しておく。 | |||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |